『ルアーマガジン・ソルト』誌の連載企画「タックル進化論」を担当するフカポン。タックルハウス社のK−TENシステムから始まったルアーの「重心移動システム」に注目し、その機構や歴史、各社の同システムのバリエーションについて取材を続けてきたが、本稿ではメガバス社の最新重心移動システム「LBO」について深掘り。後編ではLBOの小型化を実現した「LBO II」について解説する。
重心移動システム「LBO」を小さくできないものか?
はい。HFE(自称Hyper Fishing Editor)のフカポンです。メガバスルアーに搭載されている最新の重心移動システムLBOの考察記事後編です。前編はこちら↓
さて、重心移動システムとしてはかなり完成されているというお話をした「LBO(Liner Bearing Oscillator)」ですが、そのシステムそのものは比較的大型なので、搭載できるルアーが限定されてしまうということも書かせていただきました。
前回は特に指摘しなかったのですが、比較的、ウエイトシステムが大型化することもあり、ウエイト重心が低く設計しにくいという制約も物理的にありました。
システムが大型化すると、小型や細身のルアーに搭載しにくく、仮に搭載できたとしても期待通りのアクションに調整することは簡単なことではないと推測されます。
そこでメガバスはそういった小型、細身のルアーにも搭載できるシステムにLBOを昇華できないかと模索したようです。一度はあれほど大掛かりなギミックを設計しているわけですから、そこからの大幅な仕様変更はコスト面でも容易ではなかったかと思いますが、メガバスはしれっとそれをやってきました。その小回りの良さに感服。
専用の移動ルーム内をウエイトが移動するという発想。「LBO Ⅱ」爆誕!
そこで、新たに生まれてきたのが「LBO Ⅱ」です。
LBOⅡはシャフトを移動するウエイトではなく、専用ルーム内をウエイトが移動するシステムとして変貌します。上が、そのシステムそのものを抜き出した写真ですが、一目瞭然ですね。圧倒的にシステムがコンパクトになっています。
LBOはシャフトに接するウエイトの内側にボールベアリングの機構を内蔵していましたが、LBO Ⅱは専用ルームの外壁に接するウエイトの外側に、ボールベアリングの機構が露出しているのがわかるでしょうか。しかし、なぜ専用ルームを作る必要があったの? ルアーそのものの型にはめ込めば…と思われた方もいるかもしれません。取材を進めた結果、以下のことがわかりました。
LBOⅡはボールベアリングでウエイト移動時の摩擦係数を極限まで減らすギミックです。専用のルームの精度なくしては意図した動きも、耐久性も確保できない。そこで、このルームが設計されたようです。これによりLBOⅡは実用レベルでは破損し得ない耐久性と、性能を担保する精度が達成できたとのこと。
「LBO / LBOII」が根本的にスゴいと思ったワケ
さて、そもそも小生がこのシステムをなぜスゴいぜと思ったのかをまとめてみました。
1)ほんの少し、ルアーが前方に傾いただけでウエイトが然るべき位置に戻る。
これは、掛け値なしにトップクラス。たぶん追従を許さないレベルのスムーズさ。つまり、着水後リトリーブに入る段階で十中八九ルアーが機能する状態になる。そのタイムラグは相当少ない。使用していてもそれは感じるレベル。メーカーの解説動画を見るとその機能差が一目瞭然です。で、実釣でも実感できるレベルなのです。
2)キャスト時にほぼ100%に近い確度でキャストに最適な位置にウエイトが移動している。
メガバスの解説ではキャスト時の慣性力が働いた段階で、ウエイトをホールドしている磁着から開放され、キャストに最適なルアー後方にウエイトが移動している。
実はこの点、基本的にどの重心移動システムもそうなるようにセッティングはされているのですが、正直なところうまくその状態にならないままルアーが飛行する事象が少なからず発生しています。ルアーの後方にウエイトが配置されるように自発的に準備をしておけば100%そのような状態にならないのですが、キャスト回数が多くなると、そういった保険動作を加えずにキャストしたりしてしまいがち。そんな場合キャスト距離は短くなります。
地味なんですが、LBOもLBOⅡもそういったことが非常に起こりにくい設計になっています。キャスト数が増えたときの安定性は数多ある重心移動システムのなかでもトップクラス。
3)通常のシステムより飛距離が120%アップというデータがある。
小生、「X-80SW LBO」を実釣で使用してみたのですが、確かに通常のモデルに比べると体感できるくらい飛距離が伸びます(むしろ、神バランスのX-80SWがこのシステム搭載時にも同等の釣獲能力を発揮するのかという不安がありましたが、その心配は無用でした)。下記表はメーカー公表値ですが、バイアスが働いていると仮定せずとも性能値は出ると思います。
最後に、あえての弱点も考察。これはメガバス開発陣も認めていますが、コストが少々上がること。まぁ、そのコスト分の性能付与はされていると思いますので、コレはさしたる弱点ではない気がします。
そして、現時点ではウエイトが高比重のタングステン化できていないことでしょうか。加工の問題、特許の問題、単純なコスト上昇の問題。どんな問題が絡んでいるかは憶測に過ぎませんが、タングステン化には少なからずハードルがあるのではないかとは思います。
これは個人的に気になって、メガバス開発陣にぶつけてみた疑問ではありますが、円筒状のウエイトギミックでウエイトが間延びすることから、低重心になるのはともかく、重量が分散化してある方向のアクションは出にくいのではないかな?と(ロールは出しやすけど、頭側のウォブは出しにくいのじゃないのかなとか)。さぁ、その疑問に対する答えは?
「それはルアーの設計でどうにでもなりますよ、フカポンさん」
(ウエイトサイズも数種類あるっていってんじゃん)ですよね〜。小生ごときの危惧などとるに足らず。どんだけルアーを生み出してきたメーカーだと思ってんだ!ですよね(笑)
とまぁ、割に真面目に当該システムを考察してみました。LBOという新しいギミック。皆さんにとっては魅力的なものになるのでしょうか。そうなるといいですね。
しっかし、楽しいですね。あれよこれよと考えて見るのは(見当違いだとしてもです)。それでは次のギミックのお話にご期待くださいませ。
(メガバスルアーの最新重心移動システム「LBO」。『ルアーマガジン・ソルト2018年7月号』に掲載されている「タックル進化論」にてさらなる詳細を掘り下げている。気になる方はぜひご覧あれ!)