激突!青木大介vs小森嗣彦、再びマッチアップか!?【7/6〜8 JBトップ50第3戦七色ダムプレビュー】



来たる7月6日(金)から8日(日)の3日間、奈良県七色ダムでJBトップ50第3戦が開催される。2018シーズンを折り返すド真ん中の一戦は、続く第4戦桧原湖・第5戦霞ヶ浦の伝統戦と同様に、今や準伝統戦とも言える紀伊半島リザーバーラウンド。底まで透き通るクリアウォーターに、大小問わず気難しい個体、そして国内有数のモンスター棲息地。どれをとっても他レイクとは様相が異なる七色ダムは、個々の経験値の差が大きく響くフィールドとも目されている。本稿では、この地で幾多の激戦を繰り広げてきた青木大介&小森嗣彦の両選手に注目。またしても両雄を含む強豪が突き抜けるのか、それとも刺客は現れるのか。注目の一戦となることは間違いない。

2017年は青木vs小森の隙を突き、怪物・小林知寛が大逆転!

昨季、同時期に開催された七色ダム戦を振り返れば、初日に圧巻のほぼ10ポンドオーバーを含む約13キロを持ち込んだ小林知寛選手がトップカテゴリー通算2勝目を飾ったことは記憶に新しい。初日は問答無用の首位も2日目にスコアダウンして尻すぼみの予選3位通過。誰もが上位2選手に注目している隙を突き、首位との差1656グラムを覆しても余りある大逆点劇を演出することに成功したのだ。

昨季初日、トップ50屈指の怪物アングラー・小林知寛選手が魅せたのは4315グラム・61センチ。2日目は失速も、最終日に再度3キロに迫るモンスターを持ち込み、上位2選手を奈落の底へと突き落とした。

この際、予選首位だったのは青木大介選手、次点がわずか、わ・ず・か・に5グラム差で追う小森嗣彦選手。本稿トップ画像は、予選終了時に撮影した1枚。この時はまだ背後に迫り来る”怪物”の存在を知らないが、おそらくは最終日の二人は互いを強く意識し合って試合に臨んだに違いない。

トップ50では、常に1・2を争う強豪同士。勝利数では青木4 vs 小森6、A.O.Y.(=年間優勝)数は青木3 vs 小森3、クラシック勝利数は青木2 vs 小森1。ほぼ互角と言える戦績、それも超ハイレベルで行われる戦いが常に注目の的であることは言うまでもない。

七色ダムは上位入賞選手が決まっている!? 小林知寛、山岡計文含む4選手が肉薄!

これまでの七色ダムにおけるトップ50戦は、2008年の初開催から2017年までの間に計4戦が行われてきた。各戦の成績を基に割り出した平均成績を見ると、彼らの突出した成績に気づくことになる。

首位は昨季をもってトップ50を引退した北大祐さんがランクしたが、2位から5位までは平均順位が実に肉薄している。以下、6位には市村直之選手が14.25位、7位には今江克隆選手17.75位、8位には今季休戦中の五十嵐誠選手18.75位と続く。

現役選手では昨季の覇者・小林選手が平均6位でトップにランキング。続く青木・山岡計文・小森の3選手との差はわずか。ごく少数の選手が上位を独占していることを考えれば、先に解説した通り、この地・七色ダムは経験値の差が色濃く出るフィールドであることを理解できるはずだ。

小林・山岡の両選手は、準地元・地元というアドバンテージを考慮に入れ、今戦ではあえて注目選手に挙げず、前戦の北浦戦で注目した。残すは2選手、それが青木・小森の両雄だ。

なぜこうも上位選手が決まってしまうフィールドなのか。我々は、そこが知りたい。まずは小森嗣彦選手にその謎を解き明かしてもらうことにしよう。

“Who is the Strongest?” 3 Times Champion 現代リザーバーメソッドの始祖・小森嗣彦

こもり・つぐひこ/世に流布する30代ピークパフォーマンス説を覆し、43歳を迎えてもなお最前線を張る強豪選手。40代初となる史上最年長A.O.Y.に最も近い存在だ。見出しは、イメージカラーのパープルに染まる愛艇サイドを走る英文字で『誰が最も強いんだ?(言ってみな?)』の意。その威圧感たるや、マジ半端ない。

小森「七色ダムは他のトーナメントリザーバーと性格が大きく異なる。大小の個体にそう大差がない他とは異なり、明らかにでかバスが数多く見えるのは間違いない。この魚たちを『釣れない』と思うのか、『釣れる』と感じるのか。差はそこにある」

受話器の向こうで小森選手は七色ダムをこう分析した。「国内に存在する多くのリザーバーには傾向がある」と次の通りに解説を続けた。

小森「初日にインレット(=流れ込み)のサイトフィッシングでビッグウェイトを演出しても、2日目以降はハイプレッシャーで潰れ、最終的には中流のミドルレンジでまとめて来た選手が勝つ。が、七色ダムはそれだけでは勝てない」

気難しいでかバスを諦めず、必ず「釣れる」と踏み、前代未聞にしてこの地におけるトップ50史上1DAYレコード・7355グラムを叩き出し見事に栄冠を勝ち獲ったのが2016年のこと。小森選手のブレイクスルーは、プリプラクティス時の状況を前にして脳裏をよぎった「この国でサイトが最も得意な男」の存在が起因したのだという。

2016七色ダム表彰台の面々。頂点に小森選手、その左には、永遠のライバル・青木選手が並ぶ。この構図、上下が逆になるだけで幾度目にしてきたことか。なお3位は五十嵐誠、4位SHINGO、5位北大祐の各選手。

小森「プロとしての総合経験値では負けない。しかし、サイト戦ともなれば青木選手は間違いなく釣ってくる。彼と同じ土俵で戦わなければ、絶対に勝ちは見えてこない。そして、挑んだ結果です」

この際に編み出したのが、回遊する大型のスクールを探し、行く先々で仕掛ける攻撃的サイトフィッシング。『現代リザーバーメソッド』とも呼ばれる、小森選手がオリジネイターの釣り方だ。後の2017弥栄ダム及び七色ダム戦では同様の手法で上位に名を連ねる選手も多かったばかりか、全国各地で多くのフォロワーを生んでいることでも知られる。

小森「一昨季(=2016年)に僕が勝ったことで彼はプライドをひどく傷つけられたと思う。昨季には勝負を仕掛けられ、僅差で僕が負けてしまったが、今季は絶対に負けたくない。日本一サイトが得意な男と対等に勝負できる、そんな自分を見せたい」

奇しくもインタビュー時は6月27日。志半ばにして世を去った親友にして良きライバル、故人・井手隆之さん(*2002ワールドチャンプ)の13年目の命日前日だった。ひとしきり話を聞き終えたあと、小森選手は最後に、こう付け加えた。

故・井手隆之(いで・たかゆき)国内で最も早くパンチングを実戦投入するなどストロングな釣りを軸に、ワールドシリーズ(現トップ50)昇格初年度にA.O.Y.を獲得。03年には亀山ダムでトップカテゴリー初優勝。「目指すは2度目の年間チャンプ」を念頭に日々邁進の矢先、05年6月28日急逝。写真を見てもわかる通り、小森選手はその意思を継ぎ同スポンサーを胸に戦っている。*写真はルアーマガジン2005年5月号「孤高のシャローマン 湖上の風になる…」より。

小森「(井手さんから)いつも良い刺激をもらっていた。彼がいたから今の自分がある。次も、何より良い試合をしたい。そう報告してきます」

湖上の風となった友に、強くなった自分を魅せたい。勝利のカップが何よりの追悼だ。



“Remember me for Centuries!” ラストイヤーを迎え、なお勝利に貪欲・青木大介

あおき・だいすけ/写真は17七色ダムDAY1。4890グラムで単日3位の好スタートも表情は厳しい。最終日を予感していたかのような気配も。昨季は第2戦弥栄ダム優勝時に話題となった「チョーチンシークレット」は未だ非公開。よもや今戦でも発動か? 見出しは自身のテーマソングの一節で、「何世紀にも渡って俺は語り継がれる」の意。イメージカラーはもちろんブルーだ。

青木「(現時点の年間成績は)崖っぷちで、今は小指で支えているくらいの状況…(笑)」

強豪の一角、青木大介選手には縁あって直接インタビューすることができた。我々が知りたいのは今季、第2戦北浦では7位とまずまずのスコアを取り戻したが、なぜ開幕戦で39位だったのか。まずはそこに切り込んでみた。

青木「ま、釣りなんで、良いときも悪いときもある」

キャリアの底を叩く波乱の幕開けも想定内ということか。A.O.Y.を獲得するには残す3戦で猛反撃をせねばならぬ状況だが、その表情に恐れる様子はない。かつて2015年、初戦遠賀川を27位でスタートするも、最終戦では見事に大逆転を図り2度目のA.O.Y.へと輝いた経験がある。勝ちグセという強い武器を既に身に纏っているからだろうか。

青木「開幕戦が若干苦手だとはいえ、今季は悪すぎましたね。というわけで、今季はもう何も怖いものはない。勝つしかない」

昨季の七色ダム戦を振り返れば、予選首位ながらも最終日に小林選手に逆転を許し、準優勝に甘んじた。苦い思い出だろうと思いきや、意外にも笑顔でこう反応。

青木「もはやアレは爆弾…事件が起きてしまった(笑)。想像すら付かなかった…。そういう殺(や)られ方をしちゃうんだと…。実は昨季で最も『勝てる』と思っていた試合が七色ダムだったんですが…」

昨季のA.O.Y.(=年間優勝)、青木大介選手はこの一戦を挟む第2戦弥栄ダムと第4戦桧原湖で、史上稀に見る年間2勝を果たしたことはご存知だろう。「必死になって久々に勝てた」という17快進撃の始まりとなった弥栄ダム、「諦めずに貫いた結果、相手が失速した」という貫禄勝ちの桧原湖。勝ち方は様々だが、七色ダムに限っては予選で首位に立った時点で、実は勝利を予感していたのだというから驚きだ。

青木「小森さんと釣りが似ている? 確かに投げてるモノは似ているかもしれないけど、僕の釣りとは似て非なるものじゃないかと。だから昨季は勝てるだろうと思ってたんです。その釣りは一昨季から手の内だった。けど、天候が不順な日程だったので、メインにならず他の釣りも機能した感じです」

2017準優勝時に青木選手がメインとして使用したのがエコレインズスワンプミニ(カラー:リンタロウ=写真)とトルキーストレート3.8インチ(カラー:ミミズちゃん、DSTYLE)の1/32オンスネコリグ。小森選手は16優勝時及び17第3位の際、同じくミミズ系カラーの「241シナモン」のエコ4インチカットテールワームのネコリグを使用。

何と、小森選手と同時期に「現代リザーバーメソッド」を駆使! なおかつ、手法も異なる? 具となったミミズカラー・ストレートワーム・ネコリグという部分ばかりに目が向きがちだが、食わせという部分では大きく異なることを匂わせた。

青木「ただ、細かい部分はさておき、もう誰もが知っちゃっている釣りなんで、小森さんも僕もそれだけじゃ勝てないと思う。えぇ、そのためにプリプラで準備をしたつもりです。新しい釣り? フフフ。あとは『あっ、出会っちゃった!』みたいなのが、そろそろ欲しいですね(笑)」

昨季の初日と最終日の小林選手、2日目の江口俊介選手(*3132グラム)のような出会い系を待望。今季、水中のシーズンは全国的に例年より数週間の遅れが見られるとの報もある。七色ダムも例に漏れないとすれば、またしてもモンスター出現の可能性は高くなるだけに、大いに期待したいところだ。

超大型ルーキー・藤田京弥、クリアウォーター戦で本領を発揮か!?

ふじた・きょうや/今季開幕戦・野村ダムの初日、単日2位となる5820グラムを持ち込み、華々しいデビューを飾った藤田京弥選手。聞けば「すべてサイトです。絶対トップウェイトだと思ってウェイインしたら2位…」。層の厚さを実感したという。

年間レース首位は2戦連続で準優勝を果たし、長きにわたるスランプ期から完全復調を果たした江口俊介選手。続くのは第2戦、地元北浦で見事に有言実行の優勝を果たした篠塚亮選手。3位には開幕戦で初優勝の早野剛史選手が続き、例年より高水準スコアで上位がリードを見せている。

小森選手は首位との差18ポイントで暫定6位、青木選手は42ポイント差で22位。両雄が今戦でどう上位を脅かすのか興味深いところだが、各選手は誰に注目しているのか質問を投げかけてみた。

小森「今までは青木選手、それにサイトの流儀が異なるが山岡選手の後は入りたくないと思ってきた。しかし、今季は『もうひとり』増えた」

青木「小林選手は突拍子もない爆弾(笑) 山岡選手、小森選手はまぁ無難に上位に来るでしょうね。ていうか、『サイトしかしない彼』を注目しといた方がいいですよ。他の釣りはまだ覚えていなくても、サイトに関しては思いっきりキテますよ」

思いがけず、両雄の口から飛び出たのが超大型ルーキーの存在。それが、今季鳴り物入りでデビューした藤田京弥選手だ。若干22歳ながらクリアウォーター戦で獲った優勝カップ及び盾の数はひと桁を超え、この春にはマスターズ第2戦三瀬谷ダムで10個目を獲得。現在トップ50では暫定7位と、昇格初年度のA.O.Y.を狙える位置に着けている末恐ろしい存在だ。

上記の開幕前インタビューでは「七色ダムと桧原湖の僕に注目して欲しいです!」と語った藤田選手。第2戦の篠塚選手と同じく、有言実行で勝利を果たすのか気になるところだ。巷では「ポスト青木大介」とも呼ばれているが…?

青木「え? まだ早いでしょ(笑)」

小森「強気、かつ絶対に負けたくないって感じさせる姿勢。うーん、手強いですね」

注目の第3戦は明日6時半、七色ダム・スロープロクマルをメイン会場に開催。ウェイインは14時30分スタート。最終日の会場イベントも魅力だが、圧巻のモンスターが持ち込まれる(であろう)初日からの観戦をぜひオススメしておきたい。

大会詳細はJBNBC公式サイト・NBCNEWSで。

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