伏兵・西川慧が上位停滞の隙に大逆転&生涯初優勝!【JBトップ50第4戦桧原湖エバーグリーンインターナショナルCUP詳報】



減水とターンオーバー、さらには追い打ちをかけるように本戦直前に訪れた台風21号による濁りの全域拡散…。9月7日(金)から9日(日)の3日間、国内有数のスモールマウスレイク・桧原湖(福島県)を舞台に開催されたJBトップ50第4戦『エバーグリーンインターナショナルCUP』は、例年になくローウエイトスコアで進行した。コンディションの悪化に加え、日に日にタフさを極めていった最終日、驚くべき事件が起きた。予選暫定上位陣の多くが決め手に欠くなかで、ジャッカルの隠し球・西川慧(にしかわ・さとし)選手が終了間際の30分で2尾のキロアップをキャッチしてジャンプアップに成功。5尾3865グラムの単日首位ウエイトで、暫定4位から見事に大逆転優勝を果たした!

予選首位・三原直之 vs 2位・小林知寛に全ギャラリー注目の裏で、まさかのドラマが!

予選2日間を終えて暫定首位に立ったのは、イマカツの切り札・三原直之選手。初日に圧巻のビッグフィッシュ賞獲得ラージマウス(1498グラム)を含む4910グラムを持ち込んだのに続き、2日目も堅調にスモールマウスで3キロ台。

最終日決勝は暫定2位の小林知寛選手に1436グラムもの差を開け、誰もが三原選手の優勝を確信。

通常であれば小林選手が猛追したとしても寄せ付けることなく、単独ゴールの可能性は実に高い大量ウエイト差と言える。

大会3日間で唯一のビッグウエイトとなったのが初日の三原直之選手が叩き出した4910グラム。他に4キロ台選手は皆無。ウエイト戦において絶対的に有利な「大きな貯金」はあったが…。

しかし、決勝DAYは直前の公式プラクティス開始日から数えて5日目にしてフィールドが最も混雑する日曜日。今戦もまた、トップ50ではもはや恒例とも言える『魔の最終日』が訪れてしまった…。

JBNBC公式Twitterにて、同船したオブザーバーが随時リアルタイムで釣果を報告していることはご存知だろうか。ルアーマガジン記者Aは三原選手、記者Bは小林選手に同船して決勝日の模様をアップし続けたのは言うまでもない。

帰着時間の13時まであと30分となった段階で、三原選手は3尾、小林選手は4尾。このまま終了となれば、三原選手の逃げ切り優勝は確実。小林選手はこの時、およそ2キロ弱をライブウェルに収めていたが、1400グラムもの差を埋めるにはやや物足りない数字。たとえ三原選手の3尾が小ぶりなキーパーであったとしても逆転は不可能だ。

終了間際に起きるドラマ=勝利のパターン。誰もがそう信じて疑わないが、今戦ばかりは小林選手よりさらに一枚上手がいた…。

13時35分、小林選手が操るロッド・ファクトHFAS-64XULSTが突如、弧を描く。

慎重なやりとりを続け、水面まで魚が浮上すると明らかにそれまでの魚より大きいことを知る。13時37分、およそ2分ものファイトの末、無事ネットインしたのは推定1キロのビッグスモールマウスだった。

小林「ヨッシャー! うわ、めっちゃ足が震えてますわ(笑)」

終了間際のキッカーフィッシュ! 興奮のあまり、思わず武者震い。この瞬間、記者Bは三原選手のスコアこそ知り得ていないが、なぜか小林選手の逆転優勝を確信した。昨季の七色ダム戦で1656グラム差を覆し大逆転優勝を果たしたことは記憶に新しいが、今戦はフィールドこそ違えど差となる数字は200グラムほど少ない。

“怪物・小林知寛、またしても大逆転優勝!”

9月26日発売『ルアーマガジン11月号』、トップ50記事トップページの見出しが記者Bの頭をよぎる。しかし、帰着後、ウェイインが始まると、まさか、ま・さ・かの結果に、選手およびメディア関係者のみならずギャラリーの多くがどよめいたのだった。

桧原湖優勝レースで3度目の正直。勝利への強い思いが悲願の達成へ

西川 慧(にしかわ・さとし)1988年11月26日生まれ、熊本県出身・滋賀県在住。右投げ・Bait左/Spinning左巻き。スポンサー:ジャッカル。ジャッカル営業マンとして就業の傍ら、トップ50シリーズ参戦5年目。2015桧原湖では4位、16霞ヶ浦では7位、17桧原湖では3位と優勝レースには度々顔を見せながらも最終日に惜しくも失速。桧原湖戦では3度目の正直となる今戦、ついに悲願の初優勝を果たした。

西川「終了間際の12時30分に1300、45分にキロフィッシュで入れ替えしました!」

バスボートを牽引する大排気量SUVでステージ前に颯爽と登場した西川慧選手は、両手に1尾ずつ2本持ちでギャラリーにアピール。MCのコール「5尾3865グラム、逆転トップです!」の言葉に両手を天へと突き上げる。ウェイインショーは、暫定2位の小林選手が3078グラム、同じく1位の三原選手1326グラムと続き、西川選手の記録は破られることなく初優勝が決定した。

西川「使ったのはスピナーベイト『メディス』3/8オンス。残り1時間、このままでは勝てない、勝負に行こうと、湖内で最もウィードが濃い『こたかもり』エリアのシャローで引き倒した」

今戦直前の公式プラクティスでは台風で濁りが拡散したため、不安定なディープを捨てシャローに入り込んだビッグを狙う選手は多く「本戦時には叩き切られてしまったのではないか」と西川選手は認識。その証拠に初日2日目ともにそこでは小型しか釣れていない。最終日へ向かって日に日に濁りがクリアアップしていく中で、通常であればセオリーではないシャローで西川選手はラスト1時間の勝負に出た。

西川「トップ50参戦5年目で桧原湖戦は3度のトレーラーウェイイン。去年は暫定首位で決勝を迎えるも3位後退。今年はどうしても勝ちたかった!」

誰も手付かずだったこたかもりのシャローにビッグスモールマウスは戻ってきていた。西川選手の強い思いが魚に通じたと言ってもいいのかもしれない。

三原「これまでの桧原湖戦はすべて予選落ち。そう考えれば今戦は上出来です」

小林「勝つと思ってたんすか? 自分ではお立ち台もやばいんちゃうかと思ってましたわ(笑)」

メディアは三原vs小林の一騎打ちを想定していたが、思わぬ伏兵・西川慧に殺(や)られた第3戦桧原湖。真実は小説より奇なりだ。試合詳細は、9月26日発売の『ルアーマガジン2018年11月号』をご覧いただきたい。



AOYレース正念場! 最終戦は、早野剛史vs藤田京弥の一騎打ちか!?

左から暫定5位篠塚亮、2位藤田京弥、1位早野剛史、3位黒田健史、4位佐々一真。最年長で38歳、最年少で22歳、ボリュームゾーンは30代前半。トップ50ニューエイジが暫定5位を占めた。

今戦プレビューではそれまでの暫定首位から3位までが優勝宣言を果たしたことをお伝えした。うち早野剛史選手が3位、藤田京弥選手が5位と、ともに2戦連続で上位入賞を果たし、暫定成績で他選手より頭ひとつリードする形となった。

トップ2を含め、まずは第4戦終了時点での暫定順位を10位までを見てみたい。

年間順位は各戦の獲得得点、全5戦の合算で決定。各戦ごとに1位50点、2位49点〜40位11点(41位以下及び2日間ノーフィッシュは一律5点)を獲得。年間上位30位が翌年のシード権を得る。

江口俊介選手はまさかの43位とキャリアの底を叩き、暫定2位から大きく順位を下げたが、それでも10位と最終戦の結果次第では挽回の余地がある。3位黒田健史選手、8位小林明人選手、9位山岡計文選手は今季まだ表彰台に立っていないが、各試合の平均スコアは高く10位内にランキングしているのも興味深い。

最終戦霞ヶ浦で優勝すれば現時点の獲得ポイントに50点を積み上げることができる。一方で最悪の場合は参加点の5点のみ。こうしたルールを加味すると、A.O.Y.(=年間優勝)の座は現時点で首位と45ポイント差以内の選手に限られる。が、しかし、現実的には首位との差がより少ないほうが可能性は高く、5位佐々選手まで、さらに突き詰めるなら3位黒田選手までの三つ巴と考えるのが妥当だろう。

しかし、”魔の最終日”と並んで選手達に恐れられているのが”魔の最終戦”。過去には2003年に24ポイント差を覆した深江真一選手(現B.A.S.S.エリートプロ)が、2015年には28ポイント差を覆した青木大介選手が、それぞれ逆転A.O.Y.を獲得した歴史がある。

何が起きても不思議ではないトップ50最終戦。今季は霞ヶ浦(茨城県)が舞台で、史上初となる土浦新港がメイン会場。試合プレビューは当サイトで大会前日、10月11日(木曜日)にお届けする予定だ。

*詳細はNBCNEWS参照。

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