「アクアリウム」という趣味に目覚めハマりまくっているルアマガファミリー・フカポンがお届けする連載企画「釣った、採った!で魚を飼ったり育てたり。アクアリウム奮闘記」。第3回は、飼うと最高に楽しい日本淡水魚「オヤニラミ」をどこでどう採るか、について(…からの、タモ網を使った採捕についての考え方も示す)。
オヤニラミを飼いたい
当連載含めて、アクアリム遊びへの愛を語っていたら、触発されて一緒に仕事をしているカメラマン氏が「自分もアクアリウムを始めたい。オヤニラミを飼いたい」ということに。この一連の流れを題材に今回の話を進めます。
〈おことわり〉オヤニラミは、日本のレッドデーターブックという肩書では絶滅危惧種に指定されている魚。「絶滅危惧種を採捕するなんてけしからん」という向きもあるかもしれませんが、今や日本の淡水魚のほとんどが国や県の定めるところの絶滅危惧種に指定されていたりします。筆者としては、こういった魚に関心を持ち、自然環境や生態系について考える機会と捉え、決まりごとに反しない常識の範囲内での採捕および飼育は是と考えています。
狙いたい魚がどこにいるかを探す
最初に、探したい川(水域・水系)の名前と探したい魚の名前をネット検索してみましょう。その際に注目したいのは、その川の水系に生息している種の”調査報告書”的なもの。まずはこれを参考にすると良いかと思います。ただしこの調査報告書、はるか昔のものであることも多く、今現在の話ではないかもしれません。でも、コレぐらいの情報で現地に出向き、魚を探してみるだけでも十分に楽しいものです。
〈補足〉ちなみに、大学や環境保護団体的な組織などが頻繁に種の調査を行っていますが、そういった機関でも種の調査漏れはよくあることだそう。
さて、「オヤニラミを採って飼いたい」というカメラマン氏、エラいのは「魚に出会うまでの過程も楽しみたい」という気概。ピンポイントで「どこにいるの?」とは聞いてこなかったんですよね。まぁ、筆者も安々と「どこそこで採れますよ」なんて話はしませんが(笑)
オヤニラミは元来は中部〜西日本の一部に生息する魚で、県によっては天然記念物に指定されていたり、採捕・移動や飼育の規制などもあります。しかし後に様々な要因により生息域が拡大。現在では本来は在来種として生息しないとされている地域での生息も確認されています。
筆者の生活圏である関東近郊河川では、特段の規制はなされておらず、採取することが可能。
〈補足〉…というか、そもそも本来の生息域ではないわけで、ということはつまり、たとえ絶滅危惧種といえどもその川の生態系にとって影響を与える存在だとみなされるワケで…。
ともあれ、元来の生息域だろうが、広がった生息域だろうが、オヤニラミ(および飼いたい対象魚全般)を見つけた場合、具体的なポイントを他人に公開しない(特にネットに)ことをオススメします(世の中にはその情報を使ってゴニョゴニョしようとする輩がいらっしゃいますからね)。
どんな場所を好むのか
「オヤニラミはどういった場所にいるんですか?」
「あくまで自分の経験上なんだけど、水通しの良いワンド。そのボサの中かな…。採捕の仕方もあるけど、ともあれまずは自分で見つけてみて(笑)」
「それって、魚の釣れる一級の場所とほぼ一緒ですね(笑)」
「まぁ、オヤニラミのサイズや遊泳力(あまり泳げない)を考えれば、どういう規模のどういう場所にいるか、そのスケールを勘案すればなんとなくわかるでしょ? あ、それから、死んだ水じゃダメなんだけど、基本的に流れを好まない傾向はあるみたいよ〜」
そんなやりとりがあった翌日、カメラマン氏から早速オヤニラミ採捕成功の知らせが届きました。【◯◯水系のオヤニラミの生息の記録】と、アドバイスした”生息環境”から正解を導き出した模様。釣り人の嗅覚、こういうときはホント侮れません。捕れた時はいたく感動したようですが、ともあれ一発目で探し当てるとはなかなかのツワモノです…。
ところで採捕法について。タモ網による採捕は許されるのか否か?
ここまで論を進めた上で、さてその採捕の方法について。ココを避けて通るわけにはいかないので、あらためて取り上げます。
“釣り”という行為は、遊漁の手法にひとつとして合法行為とみなされます。漁業権が発生する河川においては、その地区の漁業法にのっとった上で釣りができます。
ただ、オヤニラミを釣るとなると、釣り針で釣れるぐらい大きくなった個体が対象ということになり、仮に釣れたとしても、こと”飼う”という目的においては、ちょっと難しいのではないかと。
そこでオススメしたいのが、「タモ網」を使った採取。普通に川遊びをしている方にはおなじみの手法だったりします。
が、しかし。川や湖で遊ぶ人には遵守すべき規則=内水面漁業規則があり、その規則からタモ網による魚の採取は”厳密にはアウト”という見解があるとのこと。
そこで、いちおうメディアにて情報を発信する立場として、深掘り調査してみました。
いくつかの都道府県水産課に問い合わせをしたかぎり、タモ網の使用の是非を明確化していない都道府県の場合、「叉手網漁・押網漁に該当するので”厳密には”禁止と指導している(東京都)」という杓子定規な回答が。そして、「まぁ、とはいっても、子供が使うようなタモ網で生物を採捕する程度のことなら…。そうですねぇ、常識の範囲内であれば罰せられるようなことはありませんよ」と付け加えられました。
〈補足〉上記は東京都の農林水産課からの回答。概ねこのように答える都道府県が多いようです。「そんなことは黙認してるんだから常識の範囲内でやってくれ」と解釈できなくもないですね。 ちなみに筆者が漁協員を務めている埼玉県入間川漁業協同組合では、遊漁券を買ってくれるんならタモ網もOK。さらに中学生までなら無料、というスタンスです。
とはいえ。今どきは”コンプライアンス”なるものがありますから。「ガサガサ程度ならOKですよ。常識の範囲内であれば」と言われても、「でもそれって”厳密には”アウトだろ!」という話になりかねません。
漁業規則自体はかなり以前に決められたものであり、変更が加えられていません(融通が効きにくく、変更するのが難しい類いのルールのひとつでもある)。実際のところ、無許可で河川内で生物を乱獲し、それを売りさばいたりする心ない輩もいるわけで、そういう連中を制する厳しめの規則として、環境保護的観点において機能していると言えるでしょう。
ただ、規則を読んで気になったのは、禁止と定められていている漁具(行為)について。言及されている「叉手網」や「押網」の定義は、厳密に言うと”漁”の手法です。また、網のサイズや形にしても、定義らしい定義がなされていなかったりもします(網のサイズや形を定めている都道府県も一部ありますが)。
〈参考〉東京都内水面漁業規則より抜粋
第二十八条 次に掲げる漁具または漁法により、水産動物を採捕してはならない。
一 やな
二 張切網
三 なで網
四 押網
五 三枚網
六 びんどまたはこれに類似する漁具
七 かい掘
八 瀬干
九 火光を利用する漁具または漁法
十 水中に電流を通じてする漁具または漁法
十一 水中銃その他弾力を利用して発射する錯具
悶々としつつ、しつこく東京都に問い合わせ。すると都の見解によれば…、
「まぁ、細かく言うとですね。網を地面に押し付けて魚を網に追い込む採捕法がそれらの漁法に当てはまります。その手法で採ったら厳密にはタモ網でもアウトです。でも、網を地面に付けないで魚を採捕する場合はそれらの漁法にあたりません」
え? じゃあ例えば水中に草が生えてます。それを足でボサ蹴りします。で、網に魚などを追い込みます。網は地面に付けてません。これはOK?
「厳密に言えばOKです」
なるほど、網を地面に付けない手法であれば、基本的にタモ網を使った魚の採捕は違法ではないという見解。そもそも地面に網を付けていたかどうかを証明するのは難しいわけで、その意味においてコレはただの屁理屈にすぎないかもしれませんが、少なくとも頭ごなしに違法だのなんだの叫ぶ相手には効力を発揮するかと(網のサイズなどが明確化されている都道府県もありますが、その漁業規則自体、多くは”漁の手法”のことを指していますから、やはり適用可かと)。
誤解のないように申し上げますが、筆者は水遊びをマナーを守りつつ楽しみたいだけであって、抜け道を探して屁理屈が言いたいワケではありません。漁業権のある川でタモ網で採捕をしたいのであれば、川を管理している漁協への協力費として遊漁料を支払うのもひとつの礼儀だと思っています。たとえ漁業権対象魚種の採捕が目的でなかったとしても、それで課題解決につながるのなら安いものです。
ただ、とにかく頭ごなしに「違法だ、出て行け」みたいな議論については釈然とせず(筆者自身は直接言われたことはありませんが)。タモ網による採捕が「とにかく叉手網や押網に該当するから違法だ、密漁だ」と突きつけられたら、グヌヌヌ…となってしまうワケで。「常識の範囲内であればタモ網で魚採るくらい問題ないですよ」と公的に曖昧なコト言われても、「厳密に言うと違法」という旗印をゴリ押しされるとこちらは弱い。ゆえに今回ツッコミを入れた次第です。
ということで、タモ網で採取する手法で行きます
長々とお付き合いありがとうございます。そんなこんなで、基本的にタモ網によるガサガサ採捕はセーフとして、オヤニラミをタモ網で正々堂々と狙ってみてください。
〈補足〉ここまでの話は、規則で明確に定められていないにもかかわらず、タモ網による採捕を違法行為と糾弾する向きに対して反論したまでであり、そもそもタモ網の使用自体をNGと定めている漁協管理下の話には及びません。
それにしても。度が過ぎる人がいるからこそ厳しく取り締まる必要があるのもまた一理とはいえ、レジャーとして節度を守って遊びたい人までもがその行為を一律に禁じられて、そこにいる生物に対しヒトが関心を持たなくなってしまうことで、川も人も得することなんてあるんだろうか? と思ったり…。
〈補足、というか自説〉そういう部分を規則でがんじがらめにしたら、誰も水辺環境に興味を持たなくなる。結果、税金を消費しまくる護岸工事(という名の環境破壊!?)が進められてもスルーしてしまうような社会になってしまうのが怖い。
ともあれ、くれぐれもマナーを守り、管理されている方々に最大限の敬意を払って遊ぶこと。いわゆる常識の範囲内で遊ぶことになんら問題はありませんから。
ついでに行政には「こういう水遊びについてもルールを明記化してほしい」と伝えたところ、「ご意見賜りました」との反応が。決める側としては面倒かもしれませんが、タモ網採取も”遊漁”の一種として扱ってもらえれば、少々の問題は解決すると思うのですけどネ。
というわけでスミマセン、主役のオヤニラミからだいぶ話が逸れてしまいました。次回は「採捕したオヤニラミを飼う」段階に入りたいと思います。