いよいよ明日に迫った国内最高峰バストーナメント・JBトップ50第5戦霞ヶ浦(茨城県)。年間全5試合で最強の座を競う、いわば”日本一決定戦”の山場だ。第4戦を終了した時点で、A.O.Y.(=Angler Of the Year、年間チャンピオン)の座を獲得できる選手は5人にほぼ絞られた。暫定上位から、早野剛史(中央)・藤田京弥(中央左)・黒田健史(中央右)・篠塚亮(左)・佐々一真(右)。明日からの3日間、彼らがどんな戦いを繰り広げ、誰が日本一の巨大トロフィーを手にするのか。今回の前日プレビューはA.O.Y.に最も近い上位3選手にインタビューを敢行した。
“魔の最終戦”は会場を土浦新港に移し、真の霞ヶ浦戦に
西は愛媛・野村ダムから、北は福島・桧原湖まで全5戦で国内No.1の座を競う2018JBトップ50シリーズも、残すは最終戦のみ。明日から茨城・霞ヶ浦を舞台に3日間の日程で第5戦「がまかつCUP」が開催される。
例年10月の第2週末にかけて行われる霞ヶ浦戦は、9月の桧原湖戦と同様にもはやトップ50の伝統戦。広大な水系、そして気まぐれな秋という季節柄、各選手の経験値が問われ、上位と下位の差が著しいというデータもある。誰が呼んだか、”魔の最終戦”。大会最終日、最後の瞬間まで各選手の動向から目が離せない。
従来、懸念とされてきたのが、この季節に吹きやすい北東の風。昨季は会場を直撃する強風が止まず、大会中日となる2日目のみの開催で試合は成立。これまで北浦・潮来マリーナが会場のため、霞ヶ浦戦とは名ばかりの全水系戦だったのも否めない。しかし、今季は新たに会場を西浦・土浦新港へと移し、なおかつ大会エリアを北利根川・潮来大橋までに限定。大会中止を危惧することなく、”完全なる霞ヶ浦戦”として久々の開催となる。
僅差で並ぶ早野剛史/藤田京弥/黒田健史の三つ巴戦が濃厚に
最終戦を迎えるに当たり、まずはこちらをご覧いただきたい。これまでに消化した4戦までのA.O.Y.レース暫定順位は以下の通りだ。
暫定首位は前戦プレビュー時と変わらず、早野剛史選手が死守。現在次点の藤田京弥選手との差をさらに1ポイント広げ、7ポイントのリード。暫定2位だった江口俊介選手はまさかのスコアダウンで10位まで後退。代わって首位との差を詰め、3位まで上昇してきたのが黒田健史選手だ。
最終戦で逆転A.O.Y.の可能性を残すのは、首位・早野選手と45ポイント差以内の選手のみ。上表組のキャプション詳細を踏まえるとそれは明確。10位の江口選手がちょうど45点差で、その範疇のエンドラインに入る。
仮に早野選手が最終戦で5点のみとなった場合、優勝の50点を獲得した選手が逆転できるという算段。ただし、その2選手間に1選手たりとも入らないわけではない。これまでの実例から見ても、多くて25点差内が逆転A.O.Y.の現実的な数字と考えることができそうだ。
となれば、上位3選手の三つ巴戦となることは濃厚。僅差で迎える首位・早野剛史と次点・藤田京弥の攻防、そして後方から逆転首位の機会を窺う黒田健史という構図が浮かぶ。
「狙うは優勝のみ」。常時ブーストMAXの黒田健史、トップスピードに乗る!
黒田「首位と18点差ですか? 10何点差というのは知っていましたが、細かい数字までは理解していませんでした」
最終戦を控え、2週間前までのプリプラクティスを終えた黒田健史選手に直撃。意気込みを聞くと、意外にも気負いを感じさせない。むしろニュートラルな印象を受けた。
20代の頃、’08JB津風呂湖A.O.Y.から権利を得てトップ50に昇格して4年間で一時降格。一昨季にJB2ndカテゴリーのマスターズ戦年間上位で再度昇格を果たした苦労人。昨季は弥栄ダムで第4位入賞を果たし、ダブルエントリーのマスターズ戦では最終戦野尻湖で優勝。30代を迎え、心身ともに充実の時を迎え、ついに頭角を現してきたと言えそうだ。
黒田「僕には安定感というものがない。単日トップウェイトを獲ることはあっても、翌日は20位台に落ちたりと…。3日間通してスコアを下げない成績がなかなか難しい」
とはいえ、今季の成績は自己評価より存分な安定感が見える。開幕戦の愛媛・野村ダムを第5位で好スタート以降、12位・9位・16位と、表彰台こそないものの堅調なスコアを重ね、他選手が持ち崩していく中で暫定3位まで順位を上げてきた。
黒田「去年トップ50に復帰して、僕の中では正直な話、何も変わっていない。今年はたまたま安定したように見えますが、予選を突破して決勝へ進める30位内なぞ、そもそも狙っていない」
かつての弥栄ダムではアベンタクローラーRSを軸に5キロを叩き出し2日目首位、今季の七色ダム2日目にはヴェイン8インチフリーリグで同じく首位となる7キロ超の好記録。「桧原湖以外でスピニングの出番はない」という、希有のストロングスタイルを貫く。現在、安定感を匂わせるのは各手法の精度を日々高めてきたからなのではないか。
黒田「頭の中には常に一番。昔からリスクを背負い、ブーストをかけて試合に挑んでいます。(A.O.Y.は)まったく意識していません。優勝したい。ただそれだけです」
勝利へと向かうひたむきな前傾姿勢の黒田選手。そろそろトップカテゴリー初優勝を獲っても何ら不思議ではない。序盤からギアを上げ、トップスピードのままゴールを迎えたいところだ。
ルーキーイヤー&最年少&マスターズとの2冠。藤田京弥、3つの”史上初”を賭けた正念場に挑む!
トップ50最終戦を前に早くもシーズン終了を迎えたのが、JBマスターズシリーズ。両シリーズにダブルでフル参戦を続けていた今季の藤田京弥選手、何とマスターズA.O.Y.の座を獲得したとの報が入稿直前に舞い込んできた!
開幕戦の河口湖で準優勝を果たしたのに続き、続く三瀬谷ダム戦では見事に優勝。第3戦の霞ヶ浦戦こそ29位だが、最終戦野尻湖では8位と気を吐き、次点に20ポイント以上もの差を広げ、まずはひとつめとも言える年間優勝の証・巨大トロフィーを手にしたのだ。
京弥「トップ50は暫定2位ですけど、そこ(=A.O.Y.)に関しては何も考えていません。とにかく釣ることだけです」
今季鳴り物入りでトップカテゴリーデビューを果たした京弥選手。通常ならルーキーイヤーに洗礼やプレッシャーは付き物で、最終戦を前に逆転A.O.Y.を狙える位置につけるとは誰が予想しただろうか。最終戦の結果次第では、最高峰シリーズ21年目にして史上初となる2冠制覇、なおかつ最年少&ルーキーイヤーの記録付きとなる可能性も残している。
今季、彼の非凡な才能が際立ったのは、第3戦の奈良・七色ダム。難攻不落とさえ囁かれる激ムズリザーバーにおいて、得意のサイトフィッシングを引っ提げ堂々のトップカテゴリー初優勝。それも自身初のフィールドでルーキー初かつ最年少優勝の史上初尽くしだったことは記憶に新しい。
10年にひとりの逸材とも囁かれる末恐ろしい存在だが、懸念材料となるのは最終戦の舞台となる霞ヶ浦の経験値。マッディウォーターは得意のサイトフィッシングを封じ込める。
京弥「元々、僕はNBC南千葉チャプター出身で、高滝ダムがホームです。カバー撃ちを始め、マッディ〜ステインの釣りは大好きなんですよ」
2015年にヒューマン河口湖校へ進学のため、その湖畔へと移住。クリアウォーターがサイトフィッシングの腕を日々底上げして、今や同湖を始め各地で圧倒的な強さを発揮していることは誰もが知る。しかし、京弥選手はサイトだけが武器ではない。
京弥「サイトは、見える大きな魚を獲ったほうが(試合で勝つために)効率がいいだけで選んでいる釣り方。ただ霞ヶ浦というフィールドに関しては…どうやったら釣れるのか。とにかく1尾1尾、確実に獲ることだけを考えて挑みます」
京弥選手の上と下には、霞ヶ浦経験値の高い2選手が揃う。不利な条件ではあることは否めないが、生涯初の七色ダムで初優勝、初と2度目のスモールマウス戦で連続表彰台など、彼に不可能はないはずだ。しかし、語気は強めず極めて冷静だ。
京弥「年間上位で終えること。必要以上に意識せず、とにかく釣る。それしか考えていません」
京弥選手のトーナメントシャツを見ても分かる通り、スポンサーはアパレルブランドの5150プロダクツのみ。ロッドやルアー、ラインなどのスポンサーはない。水面下では早くから各メーカーが熾烈な争奪戦を繰り広げている模様。今冬のストーブリーグでは一躍脚光を浴びそうだ。
他を寄せ付けぬ王者の風格。早野剛史、ポール・トゥ・ウィンか!
早野「絶対、獲ります」
いきなりのパンチライン。インタビューを開始するや、語気を強めるでもなく、気負いを見せるでもなく、普段の会話のようにフラットな口調でこう語った早野剛史選手。
今季の彼は、何かが吹っ切れた。前戦プレビューでもビッグマウスを辞さずに勝利宣言を放ち、頂点こそ逃したものの表彰台に上る第4位を難なく獲得。最終戦を前に暫定首位の座を守り続けている。
早野「(A.O.Y.を)意識してどうこうなるってものでもない。最終戦のフィールドとしっかり向き合って戦うだけです」
その舞台とはもちろん霞ヶ浦。昨季、それまで住んでいた河口湖畔から、「修行のため」と全く性質の異なる霞ヶ浦水系の湖畔へと移住。その年に、09年以来実に8年ぶりとなるJB霞ヶ浦シリーズ参戦で見事にA.O.Y.を獲得。野望に満ちたトーナメント人生のプランは間違いではない。最終戦を確実に締めくくる可能性は他選手より圧倒的に高いだろう。
早野「プリプラですか? 2週間前の状況がそのまま試合当日に繋がるわけではないので。ただ水位だけは気にしています」
インタビュー時は、霞ヶ浦トーナメントエリアへの立ち入りが禁止となるオフリミット期間。その日は、エリア外の北浦水系でメディア取材を行ったという。
早野「まずまずの結果は出ました。ただ霞ヶ浦と北浦は似て非なるものですから」
早野選手からひとしきり話を聞いた数日後、記者は縁あって北浦水系の湖上へ出る機会に恵まれた。各エリアで同船者を乗せメディア取材やガイド業に勤しむトップ50選手に遭遇する。トーナメントエリア外に選手が集中するだけとシンプルに考えれば、それも一理ある。だが、そんな中でもひときわ目を引いたのが、早野選手の存在だった。
遠目にも鮮やかなスカイブルーの艇体にSHIMANOロゴでラッピングされたバスキャット。船上にはひとり、早野選手のみがフロントデッキに立ちロッドを構えていた。その時、彼が何をしていたのかは定かではない。ただひとつ言えることは、たとえエリア外であれ、日々の練習が彼の血となり肉となり、現在の強さへと繋げているという事実だ。
早野「緊張感もなくて、何だかスミマセン(笑)」
王者の風格さえ漂わせる早野選手。14マスターズA.O.Y.に続く自身2冠目となるビッグタイトル、巨大トロフィーは今季、その頭上に掲げられるのか。大いに期待していいだろう。
最終日決勝DAY、10月14日(日)は「ファン感謝祭」開催!
上位3選手に続くのは、暫定4位に篠塚亮選手、5位に佐々一真選手。
篠塚選手は今季第2戦、自身のホームとも言える北浦でトップカテゴリー2勝目を獲得。最終戦も同じくホームの範疇だけに、これまで希有の”年間2勝目”も視野に挑む模様。
一方、佐々選手も昇格初年度の16年に霞ヶ浦戦に続き今季第2戦でも2度の第3位入賞を果たし、最終戦へ賭ける意思は強い。
A.O.Y.は、優勝は、どの選手が勝ち獲るのか。明日6時半、土浦新港を会場にスタート。予選2日間は午後3時から、最終日決勝は午後1時からウェイインを開始。
最終日には、トップ50プロ選手によるトークショーや抽選会などイベント盛りだくさんの「ファン感謝祭」も開催。港内には有料駐車場も完備。生観戦がてら、こちらもぜひ楽しみにしていただきたい。
詳細はNBCNEWSで。