先日、取材中にとあるメーカーのアングラーに質問を受けました。そのアングラーさんは、私が雑誌取材でルアーの重心移動システムについて調べて記事にしていることを知っていたのです。
「フカポンさん、掛け値なしに考えて性能面で最高だった重心移動システムってどれですか?」
常識ある編集者なら「いや、どこも特長がありましてですね、比べようがないですよ」と玉虫色の返答をしそうなものですが、実は即答したんですよね(尋ねてたメーカーさんもオリジナルの重心移動システムがあるのにソレですと言わないアカンやつ)。ハイ、今日はそんなお話です。
重心移動システムにもいろいろあるけれど
「こと、ルアーを飛ばして、機能させる←(編集者的玉虫色的部分は今回はココ)というギミックにおいてはシマノさんのAR-Cが最強だと思います」
その答えに、そのアングラーさんは驚いた風でもなくこう答えました。
「あ、やっぱりそうですか〜。AR-C搭載のルアーって何故かひとのびするんですよね。あれ、なんでなんすかねぇ〜」
どの重心システムが採用されているルアーが最高ですか? と聞かれれば、「んなもんわかりませんし」と答えるところです。だって、各社の考え抜かれた重心移動システムはそれぞれのルアーに最適化されて機能しているのですから。
ただ、「ルアーを遠方に飛ばして」、「そのルアーを着水と同時に機能させる」という2点において、もっとも高性能なのは、今回紹介するシマノのAR-Cだと感じたんですよね。
根拠がなくてこんな恐ろしいこと言うわけがありませぬ。ので、AR-Cという重心移動システムの解説かたがた根拠をご説明いたします(笑)。
まずはAR-Cの基本ギミックをみてみよう
はい。HFEのフカポンです。もふもふ釣り場ネコの原稿でも書こうと思ったのですが、また飛び道具か?と訝しげな顔をされたので、一転、こんなマジメなお話を…。
ルアーには様々な叡智が詰め込まれていることは、釣り人なら誰もが認めるところですよネ。現在発売されているルアーに求められている性能はいろいろとありますが、飛距離を出して、遠くの魚を狙う性能というのは、ルアーに内包すべきギミックとしては優先度の高いモノ。
そんなスキルをルアーに持たせちゃったのが、これからお話する重…
当時のK-TENシステムの特許にも、円筒状のウエイトそのものに磁石をハイブリッドすることで特許を回避し、オリジナリティを獲得しており、斬新かつ野心的な構造だったと思います(マグ・ドライブも特許を獲得していました)。
このマグ・ドライブ型の重心移動機構はシマノのAR-Cだけでなく、バスデイのシャフトグライダーシステム、DAIWAにサイレントオシレートシステム、メガバスのLBO Iなどに採用されていることからも、機構的に優れていることがわかります。
マグ・ドライブ型の重心移動システムの最も大きな利点のひとつは、ウエイトが円筒化することでルアーをよりスリムにできることでした。この機構の登場により、よりスリムでベイトフィッシュに近いフォルムの重心移動システム搭載型ルアーが設計しやすくなったといえるでしょう。
ちなみに、DAIWAは特にこの利点をしっかりと突いたルアーを投入しています。いわゆるダブルサイレントオシレートシステム搭載型ルアーです。2つの重心移動システムの内包は、このスリム化の恩恵をしっかりと落とし込んだ機構だといえるでしょう。全長としては大型で、なおかつ細身のミノー……。うぅん、実に合理的。
今回は、世紀の発明といえるこの「重心移動システム」において、DAIWAのアプローチはどうだったのか??をHFE(自称ハイパーフィッシングエディター)目線で語らせて下さい。
【釣具の歴史に残る発明!】ルアーの重心移動システムで飛距離はどれだけアップするの? 実験結果から見るその効果は約◯倍!!【K-TEN・二宮正樹】 – 釣りプラス|バス釣り・ルアー…
AR-Cのギミック凄いけど、本当にうまく機能するの?
脱線しました。AR-Cのギミックについて解説しましょう。AR-Cはマグ・ドライブ型をベースとしておりますが、慣性移動でルアーボディの飛行進行側にウエイトを押し込み、特殊なスプリングの力で、着水時にはアクションに最適な位置にウエイトを戻すという仕組みになっております。
ほぼ、100%! 着水時にはルアーが仕事をする位置にウエイトが移動している。つまり、固定重心と遜色ない働きをするということです。これは画期的です。
ですが、ひねくれ編集者、「ちょっと待てよ」となりました。
スプリングでウエイトを押し戻す原理はわかります。
しかし、ルアーの飛行時に慣性力を失い、ウエイトが飛行の妨げになる位置に押し戻されては、ルアーそのものが失速するのでは? と純粋に思ったのでした。
ルアーが「飛行する」!?
しかし、それについてはこういう見解でした。
ルアーの飛行ベクトルが、上方に傾いているとき、もしくはそこからルアーが平行になり、慣性力が働いている間までは、確かにウエイトがルアーの飛行方向に重心移動していたほうが良いことは間違いありません。
しかし、ルアーはやがて下方に傾き、慣性力が減衰しはじめるます。このとき進行方向側にウエイトが移動したままだと、重力の影響を受けて失速するベクトルにウエイトが作用しはじめます。つまり、ウエイトが失速に加担するってことですね。
ですがAR-Cの場合、その減速タイミングに入る前にウエイトがスプリングによって押し戻されています。
これにより(このタイミングで)、ルアーのウエイト位置は多少ルアーのフロントよりではありますが、ミッドに位置します。こうなるとどうなるか。
「飛行します(揚力を得て)」
お、おおお、なるほど。それはたしかに理屈ですし、多くのアングラーがAR-Cルアーを使う際によく聞く、「ひと伸びする」という感覚とも合致します。つまり、飛行の妨げになるどころか、あるタイミングになると、ウエイトが元に戻る事象が飛行にひと役買うということなのですね。これは盲点でした。
これを意図的に設計したのか、偶然の産物、副次的効果だったのかについては、聞きそびれましたが、狙ってやっていたとしたらシマノ開発陣恐るべしですね……。
ただ、ルアーの性能は重心移動の優劣にあらず。ですよね?
と、機構的に両手をあげてすげぇです! ってAR-Cを解説させていただいたんですが、冒頭に書いたように活かすも殺すもルアーそのもののデザイン次第。そこはあらためて強調させていただきたく思います。各社魅力的なデザインのルアーがいくつもありますし、その多様性たるやここで改めて書くまでもないでしょう。
さて、ルアーのギミックとして多様性があり、様々なメーカーが様々な切り口で設計してきた重心移動システムに関する考察も、これで最後になります。
ぜひ、過去記事もご覧他いただきながら、ご賞味いただければ幸いです。
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はい。HFEのフカポンです。もふもふ釣り場ネコの原稿でも書こうと思ったのですが、また飛び道具か?と訝しげな顔をされたので、一転、こんなマジメなお話を…。
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そんなスキルをルアーに持たせちゃったのが、これからお話する重…
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