オイカワの産卵床設置を今年もやってきたよ!【漁業組合のお仕事シリーズ・埼玉県入間川】



さて、公益財団法人日本釣振興会と、私の所属しております入間川漁業共同組合とタッグを組みまして、オイカワの産卵床設置を行いました(2019年6月14日)。実は去年も同じ取り組みを行っているのですが、今年は去年行った産卵床設置のノウハウをフィードバックさせつつパワーアップ! 河川管理や遊漁者のために漁業組合という組織がどんな取り組みを行っているのかご理解いただき、釣りのライセンス料とも言える「遊漁料」がどのような形で活かされているのか、知っていただければこれ幸いです!



今回は日本釣振興会のバックアップでこの事業が行われました。川が豊かになれば釣り人が増え、なおかつ、そのお金で、環境を整備できます。遊漁料は、釣り人のためだけでなく全体の河川環境維持のために使われているんですよ。

今回の増殖ターゲットはオイカワ! なんでオイカワなん?

今回、産卵床を設置したオイカワですが、実は入間川の在来魚です。これは去年知ったときに私もびっくりしたのです。オイカワって西日本に広く分布している魚で、関東以北のオイカワは移入魚が繁殖したものだと思っていたのですが、多摩川水系、荒川水系の一部には在来としてのオイカワが繁殖しており、今回、産卵床が設置されることになった入間川水系霞川のオイカワも、DNA的な解析で在来魚として確定している経緯があったりします。

また、入間川漁業組合ではオイカワについても釣りの対象魚として増殖義務を負っておりますので、よりわかりやすい形でその義務をこなす一環とも言えます。最近、その美しさからオイカワを専門に釣ってインスタってる人も多く、その写真を見るとちょっとびっくりしますよ!

5月〜7月にかけてが繁殖期で、美しいカラーに。これでマダマダな感じ。
こちらはノー繁殖期ですが、それでもキレイかと。


2種類の産卵床を造成してきました!

オイカワは流速30cm/s程度、水深30cm以下の砂利を産卵の場に選ぶ傾向があります。そこで、その条件を満たした流域を人工的に作ろうというのが取り組みです。オイカワは夏前の水温が上がり切る前に産卵のピークを迎える魚です。実は去年は猛暑で夏がはやくいらっしゃったので、水温が微妙な時期の産卵床設置になってしまい、今回はその反省を活かして6月中旬にこの取り組みを行うことになりました。

川耕し

ひとつめの産卵床造成の手法は、川底をクワやスコップなどで掘り返して戻し、川石に着いた苔や泥などを洗い流し、平らにすることでオイカワの産卵床として機能させる手法です。後述する川砂利を敷き詰める手法に比べ、労力も少なく、予算もいりません。産卵期終了後の後処理も少ないので、気軽にやれるオイカワ増殖法です。

流速があまりはやくなく、水深も30cm以下、水量の上限にもなるべく耐えうる立地を選んでクワ入れ。石を洗うように転がし、ならしていく。
上流側に集めた石で簡易の堰を作り、下流の流速を若干弱める。これを二段構えで行った。
川耕しの効果測定のため、産卵床造成範囲をロープで囲み、サギやカワウによる被害に遭わないように防鳥テープを張った。これは後日撤去される。

木枠による造成

1〜2畳程度の木枠を組み立て、川底に流されないように設置し、その枠内に産卵に適した大きさとなる砂利を敷き詰めることでオイカワの産卵床を造成する方法。ホームセンターなどで売られている川砂利の大粒と小粒を用意し、それを流し込みます。川耕しに比べてのメリットは、オイカワが産卵するのにジャストサイズの砂利を用意しますので、効果が安定すること。デメリットは若干コストがかかることと、使用後の撤去作業が必須なことでしょうか。

上流側に鉄筋を打ち込み、ワイヤーで木枠を固定。木は浮きますので枠の上に石を重しにおいていきます。
木枠の設置後にバケツリレーで、砂利を流し込んでいきます。最初は大粒の砂利を入れ、その後に小粒の砂利をしきつめていきました。
これが完成図。木枠を設置することで砂利の拡撹を防ぐことができます。この設置からだいたい一週間が勝負。


さぁ、オイカワが増えてくれるといいですね!

産卵床の設置は、成魚などの放流と違い地域の個体の固有遺伝子の保存という側面でも、環境に優しい手法と言えます。川がもつ生産能力を少しだけ人間の手でパワーアップさせてあげるという方法なんですよね。今年の経験をまた来年に活かして、より効率の良い増殖法を確立し、適正な数の魚が泳ぐ環境を作り上げるのも、漁業組合が担っている役目だったりします。

さぁ、オイカワファンの皆様、いまが美しいオイカワを愛でる最高のシーズンです。私も、ちょっと十二単衣をまとったようなオイカワを求めて、川に釣りにでかけたいと思います。ガサでもいいかな〜。