幻の魚をガサガサで狙った話。【チョウセンブナ奮闘記】



はい。今回は、ちょっと変わったお魚の話をさせてください。チョウセンブナという外来魚が欲しくて、広い霞ヶ浦を駆けずり回ったときのお話です。狙った魚は尽く仕留めてきた、小生の所属するガサガサチームですが、このお魚は、捕獲に本当に苦労いたしました…。あ、ガサガサというのはタモ網で魚を採る原始的な遊びのことです(笑)



幻の魚、チョウセンブナってなんなんさ?

資料を読み解くと、もともとは、朝鮮半島〜大陸に天然分布するお魚で、1910年前後に朝鮮半島から移入され、なんだかんだと日本各地に分布、何処にでも見られる淡水魚でした。

が、高度成長期の劣悪な環境を経て、数が減少し現在は国内生息地が限られいるレア魚。外来種なのに長野県飯綱町では天然記念物に指定されていたりと稀有な種なのであります。

種としてはラビリンス器官と呼ばれる特殊な呼吸器官を持っており、溶存酸素量の低い環境下でもしぶとく生息できる逞しさをもっております。ケミカルじゃない水質の汚染には強い魚なんですけど、農薬やらなんやらには弱い種なんですよね。ちなみに、ベタとかそちらに近い種です。

ガサガサ仲間から、すげぇキレイでそそる魚がいるんだぜと教えられ、図鑑で見た時に一目惚れ…。やだ…野生のチョウセンブナを見てみたい。可能ならば飼ってみたい! ならば行くしかないでしょ!!!となったわけです。

限られた生息域、チーム活動圏内では茨城県の霞ヶ浦水系にいるとの情報を!

この手の淡水魚の生息域情報なんて、ネットで検索したところで大した情報は出てきません。基本的な情報は秘匿されるので、自力で探すしか無いのです。

私の住む関東圏近隣で、コイツが生息しているであろうという大まかな場所はわかりました。「茨城県の霞ヶ浦水系♡」。……。広すぎぃ! 見つけるの大変すぎぃ! ざっくり情報すきぃ!

まずは、仲間5人で霞ヶ浦へ当て所ない旅…。

さぁ、宝探しみたいなものです。チョウセンブナの生息域のキーワードをいくつか抜き出しました。

超汚い水路とか水たまりみたいな場所にいるよ。なんなら油みたいなの浮いてるような場所。え?こんなところにいるの?って感じのトコロ!♡

はぁ、薄い情報だなー。だがしかし!その程度の薄っすい情報からいくつかの捜索エリアが絞り込まれました。幸い、小生、以前はルアーマガジンの編集として仕事をしておりましたので、霞ヶ浦界隈の土地勘はあります。

そこで、チョウセンブナの生息域になりそうな水路群を、かたっぱし捜索することになりました。確か、1回めの捜索は2017年の秋口だったように記憶しております。

見つければ、付近にたくさんいる。いるところにはいる…。どこにいるのさ、幻の魚! さぁ、尋常に勝負!



手がかりをひとつひとつ潰すも1回目捜索は不発

ガサチームのひとりが、昔にたまたま覗いた水路でチョウセンブナを見つけたということで、まずはその界隈を探すことになりました。確かにその水路、情報にあるような、汚い水路なんですよね。そこでドロドロになりながら捜索するも見つからず…。

そこで、ちょっと山側に足を伸ばして田んぼの脇の水路をあさっていると、タイリクバラタナゴやヤリタナゴが見つかります。ん?この水路…水がいいな…。ということで、さらに上流に詰めます。するとメンバーのひとりが水路の砂の中からミミズみたいな何かをすくいあげました。

こんな感じの水路を何本も何本も何本も捜索します…。

「あ?あ? スナヤツメだ! へー。霞ヶ浦水系にいるんだねー」

ミミズかよ!

チームの淡水魚マニアが一瞬で判別(まぁ、実は、ルアマガプラス記事内でもおなじみの、LMLのテスター・フッキー氏なんですが…)。

スナヤツメは、多摩川水系にもいる種です。以前、鉄腕ダッシ◯で、超レア魚として紹介されたこともありましたが、いわゆるガサガサクラスター界隈では、さほど珍しい種としては認識されていません。

この水路ではスナヤツメの他に、カラドジョウを捕獲。カラドジョウは…、外来種ですよ。
この子がスナヤツメ。魚族には思えない…。

ただ、霞ヶ浦水系で狙って見つけるのは、それなりに難しいと思います。なにせ、生息できる環境が狭いですので。探してみると、その水路にはスナヤツメがわんさか。おそらく環境が良いんですね。仲間が数尾持ち帰って飼うことになりましたが、ほとんどはリリース。

結局、初回の捜索遠征では夕方まで各地を駆けずり回りましたが見つけることはできませんでした。

途中、とある店でチョウセンブナの情報を聞き込みをしたら「知ってるけど教えないよ〜。いるところにはいるよ〜」ともったいぶられましたが、まぁ、当然の反応です。



2回め遠征は春先!

さぁ、2回目の遠征が2018年の春に行われました。前回、調べきれなかった場所を潰していく旅です。しかし、なにか尻尾を掴んだ気がしていたエリアに出向くと、ちょうど、田んぼの農薬を散布する時期だったらしく、生命反応が濃かったエリアには魚の死骸が山積み…。これ、毎年の光景なんでしょうね。確かに、魚がいなくなるわけだ…。

タナゴの産卵床になる二枚貝も大量に死骸として積み上げられいて、なんとも言えない気分になりました。やはり、こういう要因での影響は大きいのでしょうね。

その遠征の午後になっても糸口が見つからないチョウセンブナ遠征…。メンバーのひとりが、見つけたチョウセンブナに関する霞ヶ浦水系の1枚の写真…。

「なんか、ここで獲った的な話なんですけどねー」

「景色とか写ってない?」

「景色じゃないですけど、護岸は写ってますよ。さすがにそれじゃわからないでしょ」

と、渡されたのを見た小生……。ん?んんんん?? この護岸のパターン見たことあるな。ルアマガの取材で…。

「あ、あああああ!ここ、◯◯だ!! このエリア前の遠征で探しはしたけど、半分残したでしょ!そっち側なはず!」

ということで、奇跡の護岸パターン特定で、その場所を探し当てたのであります。広い霞ヶ浦…、僅かな手がかりでドンピシャその場所を見つけたぞっ! そして写真と一緒に写っている水路を捜索すると…。

い・ま・し・た♡ チョウセンブナー!!

確か、遠征は2018年。今も元気に仲間の水槽で飼われているチョウセンブナ。貴重な魚ですが、それを知ることで考えさせられることが多々あります。

人っこいない、田んぼの真ん中で、当時参加していたメンバー4人でハイタッチ! 雄叫びをあげたのでした。やべぇ。でかいバス釣ったときよりテンション上がりましたわ〜。

正解を得てから、色々なマニアな人に聞いてみると、やはり生息域は狭いもののいるところにはワンサカいるみたいですね。でも、その特定までがかなりの道のりのようで…。

生息域は確かに、汚い小さな水路でした。ですが、思いの外、新鮮な水の供給はなされている場所でした。底質も良く、閉鎖された環境に見えて、水が生きていたいたんですよね。汚れに強い魚とはいえ、やはり環境のいい場所にいることがわかりました。

やっぱり、野外に出ることで、いろんなことがわかります。こういった宝探しも楽しいものですよ! 見つけても、景色を写した写真は出したらだめですよ。護岸もやめたほうがいいかもですね(笑)