日本という国は、本当に生物多様性に満ち溢れた国です。ここまで多種多様な生物が生息する地域というのは世界でもそう多くありません。何気なく生活していたら気づきにくいかもしれませんが、とても恵まれた国なんですヨ! そういった自然の中で見つけた美しい生き物たちを少しづつご紹介させていただいているのですが、特に記者がハマっている日本の淡水魚にただいまクローズアップ中。幻の魚「チョウセンブナ」、「カマキリ(アユカケ)」に続き、さぁ、本丸に切り込みましょう! 日本のタナゴ族に焦点をあてて、その魅力に迫ったお話をさせていただければと思います。
とっても愛嬌のあるレア魚。そして「いい川」に棲む魚
実は…
タナゴという美しい魚たち
さて、日本淡水魚を飼育するアクアリストたちに人気の魚種といえば「タナゴ」。大きくなっても10cm前後の種が多いことから、飼育にも向いており、また美しいことからコアな多いファンが多いことでも知られています。また、タナゴ釣りの文化も日本にはあるのですが……。
極小のハリとエサで、小さなタナゴたちを狙う釣りは、海の大物釣りとはまた真逆のオモシロさとゲーム性があり、こちらもコアなファンが多いんですよね。近くの水路や沼などで気軽に楽しめる点や、その対象魚となるタナゴ探しも宝探しに似てオモシロイのであります。
小生は釣りではなく、タモ網で採取して観察、写真撮影、場合によっては少量ですが持ち帰って飼育したりしております。
日本にはタナゴだけで、在来16種、外来2種の繁殖が確認されています。ミヤコタナゴ、アブラボテ、イタセンパラ、ニホンバラタナゴ、カゼトゲタナゴ、スイゲンゼニタナゴ、カネヒラ、ヤリタナゴ、アカヒレタビラ、キタノアカヒレタビラ、ミナミアカヒレタビラ、シロヒレタビラ、セボシタビラ、マタナゴ、イチモンジタナゴ、ゼニタナゴ、タイリクバラタナゴ(外来種)、オオタナゴ(外来種)。
この魚を全て釣ったり(一部天然記念物のため採捕は禁止されている)、見たりすることを目標にしている人も多かったりします。ちなみに、私はまだ6種しか制覇していません。まだまだコンプには先が長いのでワクワクしております(笑)
アブラボテの中のアブラボテ??
タナゴという魚はは生息地をミクロで公開することはご法度とされており、ネットで情報を探ってもほとんど出てきませんので、自分で生息している場所を探す必要があります。何県にいる、何水系にいる。どこの島にいる程度は割に情報が出てきますので、それを頼りに探すことになります。
私の所属する淡水魚LOVEなガサチームは、ホームが関東圏ということもあり、関西種にはあまり縁がありません。ただ、私の在住している埼玉県は移入種の多い県で意外に関西方面の種が生息している場所があるのですが、やはりオリジナルを探し当てたいというコダワリもあります。
さて、ある時、飼ってみたい、見てみたいタナゴは何だ?談義になったときに「アブラボテ飼いたい。黒光りするマッチョで気が荒くて…」という話がメンバーの中で出たんですよね。ならば、探したいということで情報収集。すると…。
長崎県に壱岐島という離島に「アブラボテの中のアブラボテ」がいるという情報を掴みました。なんでも、本土(本州・九州)のアブラボテよりも大型化するキング・アブラボテだというのです。どちらかというと朝鮮半島系のアブラボテのDNAが色濃く反映されているのでは?と噂される個体です。で、これが見たくなりました。
思ったよりプアだった壱岐島の内水面環境
長崎県の壱岐島は福岡県の北、玄界灘に浮かぶ大型の孤島です。壱岐島市なので市としての生活圏を有する規模になっています。コンビニはもちろん、イオンなどの大型小売チェーン系もありコンパクトながら、島内で本土に負けない生活ができる利便性を持つ島でもあります。
足繁く通っていたこともあり、定宿にしているオーナーから、アブラボテの情報を頂くことができました。なんでも、割に簡単に見つかるとのことで、情報を頂いた水辺を片っ端から当たることにしました。カゼトゲタナゴという希少種もいるのですが、そちらに関しては北九州ですでに採捕していたことから、捜索はアブラボテだけに絞ることにしました。
壱岐島は玄界灘に浮かぶこともあり、海産資源が豊富で、海釣り師には人気の島。素晴らしい環境です。ただ、内水面に関しては溜池や小規模ダム、小規模な河川はありますが、基本的にそこまで注目されているわけではありません。ほとんどの河川は護岸されていて、水路のようになっています。お世辞にも環境が良いわけではありません。
しかし、狙った場所で、網を入れると簡単にアブラボテが捕獲できました。他にはヨシノボリ類やドンコ(これが大型だった!)、カワムツと比較的、どこにでもいる種が網に入りました。ただ、他に生息しているというカゼトゲタナゴは一度も捕獲できませんでした。アブラボテの生息圏とはちょっと別れていたのかもしれません。
後日育ったところを、少し撮影。これがキングオブ・アブラボテ
採捕して少量を持ち帰り、現在飼育中ですが、やはりこの鈍色銅のカラーは美しい。婚姻色が出ると、ヒレがオレンジに染まりなかなかの迫力になります。比較的ヤンチャでタナゴの中でも非常にパワーがある種だと思います。
最後に、ちょっとしたタナゴ企画を思案中…近日発表!
はい。ということで、今回のアブラボテ編はこれでおしまいですが、実はタナゴ釣り界隈のオモシロイ文化を発見して注目中。釣ったり採ったりしたタナゴを、小さな陶磁器や漆器に薄く水を張り(これが重要。魚を痛めません!)、撮影してインスタやTwitterなどアップする人が多々いらっしゃる。これがなかなか粋な文化なんですよね〜。
有田焼、伊万里焼、信楽焼、美濃焼…、他には会津漆器、紀州漆器…。なだたるブランドの皿をフィールドに持ち出し、そこにタナゴを優しく乗せて、近くの花と添えたりと…。いやぁ、とても映えるし美しい。
こういった粋な文化に注目したちょっとしたイベントをルアマガプラスで行おうと考えております。タナゴ民の皆様、写真、撮り溜めておいてくださいね。おそらくテーマは「漆器と陶磁器とタナゴ」。ブランド皿じゃなくてももちろん大丈夫です。詳細は近日中に発表させていただきます!