超豆アジ用フック開発秘話 <タイキさん編>【サーティフォー/34・超現場主義!#01】



アジングなどのライトゲームのパイオニアメーカーとして、人気のサーティフォー。CEOとしてメーカー指揮を執るのは家邊克己さんだ。その家邊さんによってう次々と生み出されるアジング・ブレイクスルー。今までは、釣り人「家邊克己」が主役になり、アジングの普及を意識したモノづくりが行われてきたサーティフォー。しかし、ここにきて信頼できるスタッフを得ることで、メーカーのものづくりが変わろうとしている。アジングのパイオニア、家邊克己氏が先頭に立つことは変わらないが、より幅広いアジングシーンを構築するために、サーティフォーは新たな風を起こそうとしているのだ。その本格的な動きのひとつが「超・豆アジ専用フック&タックル」。ここから、このメーカーがどのようにアジングのためのモノづくりをしているのかを追いかけてみよう。





超・豆アジ専用という発想は「家邊克己」には無かった。各地で広まる「超・豆アジ」に対する需要

今、サーティフォーが取り組んでいるテーマのひとつは、豆アジ用のフック&タックルの開発。豆アジと言っても10cm以下の超が付く豆アジを対象にしているタックル群だ。これらを釣るためのアイテムに関する要望は、全国に散らばるサーティフォーのフィールドスタッフの要望が色濃く商品に反映されている。

超・豆アジ専用タックルにこだわったサーティフォーのフィールドスタッフは3人。今回はその3人のうちの1人、石川県など日本海のフィールドをホームとする山根大輝ことタイキさんに、お話を伺うことにした。

山根大輝(やまね・たいき)。タイキの愛称で活躍するサーティフォーのフィールドインストラクターのひとり。石川県能登半島をホームに日々釣り歩くアジングジャンキー。土地柄、豆アジの相手をすることが多く、今回、サーティフォーで超・豆アジ対応のフック&タックルの開発に携わっている。

家邊克己(やべ・かつみ)。アジングなどを主とする、ライトゲームのアイテムを数多く排出するサーティフォーのCEOを務める。徹底した現場主義を唱えてアイテムを創造。同社の製品群の開発期間の長さはそのこだわりゆえ。近年は誰でも楽しめるアジングを強く提唱し、日本各地だけでなく世界各地へライトゲームの楽しさを伝える伝道師。また、アジングタックルで様々なターゲットを狙っていくスタイルを提唱中でもある。

タイキ「日本海側では、6月後半〜夏にかけて、アジのメインターゲットは10cm以下の豆アジになることが多いんです。そんな豆アジを会社の帰りや、休日のアジングとして楽しんでいる層も多いと感じています」

そういうこともあって、スタッフとして超・豆アジ用のタックルを作りたいと思われたのですね?

タイキ「はい。サーティフォーには元々、ザ豆という豆アジ用のフックが展開されているのですが、あれは家邊さんも語っているように15cm〜くらいのアジをターゲットに開発されているフックなんですね。僕らは15cmは愚か10cm以下の豆アジをしっかりと釣りたいと考えました」

独特な形状のヘッドが、豆っぽいことから商品名の「ザ豆」になったであろうことは、容易に想像できる。独特なオープンリマリック形状

10cm以下! ただ、おっしゃるとおりアジングの文化のひとつに、豆アジをしっかり狙って仕留めるという釣りを楽しんでる方は確かに多いですよね。他でもそんな話しは聞きます。



家邊「狙えないことはないですが、ザ豆は10cmアンダーの豆アジのことは考えていません。タイキが言うような釣りの需要があるというのなら、アジングの専門メーカーを謳っているわけですから、そういった部分もフォローする必要がありますよね。需要がニッチだとしても、それはメーカーとしてしっかりと取り組まなきゃいけない(笑)」

タイキ「最初は、ザ豆じゃないですが、アンダー10cmを仕留められるフックの開発から始まったのですが、どうでならロッドも欲しいという話になりまして、フックとロッドの開発を行っています」

サーティフォーらしい。この世にないアジングのための道具を。フックもご覧のように珍しい形状だが。そこにこだわるからこそのジレンマも存在するという。タイキ「今までに無い形、ない物。でも、テーマに沿って抜群の性能を発揮するものである必要があります」

なるほど、それが今回の取材で使われている4ft6incというショートロッドなんですね。

タイキ「ええ。超・豆アジでも楽しんでもらえる仕様ですが、別に30cm以上の尺アジがきてもまったく問題なく使えますけどね(笑)。このロッドに関しては僕自身は感度にこだわっています。そういうこともあって、ワンハンド仕様のショートグリップに行き着いたのですが、家邊のほうは、ワンハンドキャストに慣れていない層のためにグリップエンドは付けたほうが良いという話もでましてですね(笑)」

4ft6inというショートレングス。1ピースの超豆アジを釣って楽しむロッド。まだプロトで改良の余地はあるという。
取材時は、グリップエンドレスの仕様になっている。タイキ「感度を追い求めるとこの形状にいきつきました。ですが、デザイン的には既存の商品でも先行して発表されていますから、そこを考えてまだまだ変わっていくと思いますよ」。

家邊「道具として尖っていくのは大いに結構なんですが、そういった道具を欲しい人が、タイキのような技量を持っているとは限りません。最大公約数的に道具を仕上げていかないと、多くの人が満足してくれるアイテムにはならないと思っています。豆アジ用ロッドと聞くと、一見、ニッチなジャンルに思えますが、それからアジングを始めるという人もいるかもしれない。そうなってくると、ただ尖っているってだけではダメなんです。そういった初心者でさえ、使える専用ロッドでないといけないと僕は考えています」

これは、ある意味、全体を考えなければいけない家邊さんのお立場と、現場の最前線でものづくりをするスタッフのせめぎ合いですね。

タックルの開発には、家邊さんもタッフのものづくりにアドバイスはかなりされているとは聞いてはいますが。

タイキ「そうですね。ベーシックな部分は、まず家邊のほうが今までの経験を元に固めてくれて、そこから開発がスタートします。それだけである程度の性能が既に出ていますから。ただ、サーティフォーのコンセプトとして、他社にないもの。今、世の中にないものをという思いも強いこともあり、そこを意識して作っていく必要もあります。グリップエンドのないアジングロッドというのは既に、市場にある商品でもあるので、サーティフォー的には一工夫したいという部分ではありますね」

家邊「アジングは日本全国、比較的同じような釣り方で成立しやすいジャンルではあるのですが、それでも地方における微細な差はあります。タイキは日本海側、石川県界隈の豆アジを狙ってテストをしていますが、それだけではダメなんですよね。

そこで、ある程度、テスターは分散しています。今度、ルアマガプラスさんに紹介する予定の、まえやんは、激戦区・兵庫県神戸のアングラー。人の多い兵庫の港で豆アジを狙い続けて、毎晩のようにテストしています。

もうひとりはこちらも激戦区・名古屋知多半島を中心にテストをしてくれているhide。ひとりだけでは、やはりダメだと思いますので。タイキ、まえやん、hide以外のスタッフにもサンプルは配って、意見は拾い上げていますよ。」

取材時にはレディーススタッフのみぃさんも駆けつけた。ビギナー的な視線で、超豆アジ専用ロッドやフックの使い勝手をタイキさんにフィードバックする。

なるほど、それプラス、日本だけなく世界中のアジを求めて釣りをしている家邊さんの幅広い知見が活かされるわけですね。

家邊「机上ではいいものはできません。現場に出なければ。毎年、100名近くのフィールドスタッフを集めて合宿をするのですが、その時は海に潜って、実際にルアーがどんな動きをしているかなど、各スタッフに確かめさせたりしているくらいですから(笑)」

徹底した現場主義。サーティフォーの物作りの姿勢がわかるお話でした。ありがとうございます。

いわゆる20cm前後のアベレージサイズを掛けると、とびきり面白い豆アジ用ロッド。華奢な感じはしないので、尺を超えてきても十分に捌けるスペックは持っている。