遅咲きのルーキー、前田憲次朗43歳。トップ50昇格わずか4戦目で堂々の初優勝!【第4戦エバーグリーンカップ@茨城&千葉・霞ヶ浦水系9/6~9/8】



チーム・フェンウィックのスーパーレジェンド、沢村幸弘選手から祝福を受け、笑みを浮かべるスーパールーキーは誰だ。その名は、前田憲次朗選手。沢村選手とロゴを同じくするトーナメントジャージに今季2019年から身を包み、トップ50昇格からわずか4戦目でのスピード優勝を果たした“マエケン“。43歳で大一番に挑む大器晩成型。今後の最高峰戦シーンを盛り上げるキーパーソンとなりそうだ。

まえだ・けんじろう/1975年(昭和50年)12月29日生まれ(43歳)、愛知県春日井市出身。スポンサー:ティムコ、セリオ(*自身がCEOを務める電気工事施工業の会社)。2010年よりNBCチャプターの愛知や琵琶湖に参戦の後、2015年からJB津風呂湖でプロ参戦を開始。JB2ndカテゴリーのマスターズ2年目となる昨季2018年に年間11位を獲得して、今季からトップ50に昇格。JBプロ戦での表彰台は、前戦旧吉野川戦に続き2度目。


実力未知数の前田選手が予選1位通過!

台風15号の接近により、今年の冷夏を覆すかのような猛暑に襲われたトップ50第4戦霞ヶ浦水系。予選2日間の気温は連日30度超で、風が吹くタイミングも少ない。大方の予想通り、試合展開は荒れに荒れた。

ローウェイト戦は免れないなかで、堂々の暫定首位に立ったのが今季からトップ50に参戦するルーキー・前田憲次朗選手だった。

多くの選手が浮き沈み激しいスコアメイクの中で、2日連続で安定して3キロ超を持ち込む術が気になる。同じくタフな試合となった前戦の旧吉野川戦で最終日に虎の子の1尾を持ち込み、尻上がりでスコアを上げ表彰台の末席に滑り込んだことも記憶に新しいところだ。

ルーキーであればプレッシャーに押し潰され、本来のポテンシャルを発揮できないことも少なくない。何せ、今戦は彼の背後に気鋭の若手・藤田京弥、この地での優勝経験もあるベテラン・小野俊郎や小森嗣彦といった各選手が、首位奪還を虎視眈々と狙い連なる。

運命の最終日、結果や如何に。当サイト記者は、前田選手に同船取材をオファーすることにした。

開始30分で1キロ超のクォリティフィッシュ!

スタート会場の潮来マリーナから約30分をかけて到着したのは、競技エリア最下流となる常陸利根エリアの逆水門周辺。ピーカン無風、流れ皆無。しかし、時折イナッコが水面を飛び跳ね、この水域の生命感はゼロではない。

前田「練習では護岸際を小さいサンマみたいな魚が泳いでいるのをよく見かけたんですよ。下流から上流へ泳いでいて…あの魚は何ですかね?」

おそらく淡水サヨリ(=クルメサヨリ)のことだろう。前田選手も『サンマ』同様に愛艇を下流から上流へエレキで流し、岸から3〜4メートルほど離れたラインを撃っていく。クイ撃ちにも見えるが、けっしてタイトではなくアバウト。この釣りが結果的に決勝打となるが、この時点で詳細は聞いていない。

前田「気が遠くなるような作業です…。『次の取水塔(!?)まで頑張ろう』と自分に言い聞かせて、ひたすら撃ち続けていきます」

水門を取水塔と言い間違える辺りは、琵琶湖育ちの前田選手ならでは。50メートルほどのストレッチを撃ち終えると、ようやく、その『取水塔』に辿り着いた。

それまでのネコリグが結ばれたロッド、GWT610CLP+Jから持ち替えたのは、同じくフェンウィックのエイシスACES60CLJベイトフィネススペシャルにスモラバのセットアップ。昇り始めた太陽に対して、シェードとなる下流側の壁を撃ち始めて数投。即座に結果は出た。



釣れた魚はキロフィッシュ。大方の選手がキーパークラスでさえ手を焼くなかで、このアドバンテージは大きい。

前田「このワームには何度も助けられています。この間の旧吉野川でも、最終日にダウンショットリグで」

PDLベイトフィネスジグ ファイン2.7グラム+PDLロコイズム フレキシーシャッド3.5インチ(共にティムコ)。

タフを制する切り札か。ワームのパワーで大型を引き寄せたとも考えられるが、この状況と釣り方自体に特筆すべき事項は他にない。ひとことで言えば『水門のシェード撃ち』。ただそれだけだ。

しかし、この後、2尾目の釣果を得た釣り方が独創的だった。この日の1尾目を得るまでに「気の遠くなる作業」と語っていたのが、その釣り方だ。

前田「すべては練習が教えてくれた」

決勝DAY3、トレーラーウェイインショー。

釣果は2尾ながら共にキロフィッシュを揃えることで、後続選手による追い上げを振り切り、見事に初優勝! マスターズシリーズ参戦時に霞ヶ浦戦こそ経験はあるものの、北浦及び下流域を含める広大な水域がトーナメントエリアとなるトップ50シリーズは無論、今戦が初めて。

どの試合でも、事前1ヵ月の毎週末3日間をプラクティスに充ててきた練習の虫。誰よりも多い練習量で経験値を補い、フィールドの今を見極めた形だ。

はたして、前田選手はどんな釣りで霞ヶ浦水系戦を制したのか。詳細は、9月26日発売のルアーマガジンでお届けすることにしよう。



A.O.Y.レース大詰め! 三原直之VS藤田京弥

2019シリーズも第4戦を消化して、残すはあと1戦のみ。A.O.Y.(Angler Of the Year=年間チャンピオン)レースの行方は、前戦終了時と変わらず、三原直之選手がリード。

DAY3の三原直之選手。

今戦は予選を24位通過で、あわや首位陥落かと思いきや、決勝最終日に単日2位となる2754グラムを持ち込み16位まで回復。自身が苦手と公言する霞ヶ浦水系戦で、何かを掴み覚醒したことは間違いない。

一方、前戦の優勝で年間暫定2位に着けていた藤田京弥選手は、今戦でまたしても表彰台を獲得。前人未到の2連勝も期待されたがそつなく準優勝を果たして、三原選手との距離を縮めた。

DAY3の藤田京弥選手。

前戦までの両者の得点差は17点と溝は深かったが、今戦の結果により、その差はわずかに『3』へ。最終戦が運命を分かつことになりそうだ。

最終戦、第5戦がまかつCUPの舞台は福島・桧原湖(10/11〜10/13)。試合最終日、最後の瞬間まで見逃せそうにない。

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