津本式・究極の血抜きから考察する、釣り場での魚締めの最適解



さて、話題の魚の仕立て方、完全マニュアル本を絶賛編集中ですが、取材をしていて解ってきた、津本式のすごさ! 研究機関が認め、料理人、釣り人がこぞって口にする美味しさ、その一端にも触れつつ今回は、釣った魚をどうすべきかをサラリと触れます。津本式実践している皆さま。案外勘違いしてるかも?

【Profile】
津本光弘(つもと・みつひろ)
革命的とも言える、血抜きの方法で魚を仕立て熟成させて、ポテンシャルを引き上げる、「津本式・究極の血抜き」の開発者。
腐敗や臭みの原因となる血を完全に取り除き、長期熟成に耐えうる仕立てをすることで、いままでにない魚の旨味を引き立てる。その方法をYouTubeなどで公開したところ大きな反響を呼び、現在、釣り人や料理人、学者などの注目を浴びている。
宮崎県の長谷川水産で日夜美味しい魚を仕立てている。

津本式・究極の血抜き、術式の利点は「死魚」でも血抜き処理ができること! つまり?

術式の開発者、津本光弘さんは、基本的に魚屋さんに勤める方。つまり扱う魚の大半は死魚。活魚を扱われることもありますが、鮮魚とはいえ、漁師などから市場で買い付けた死んだ魚を扱われ、それに津本式を施されます。

通常、津本さんが魚屋として買い付けるのは死んだ魚。因みに、こんな感じで氷に直接あてられて保存された魚は避けられる。
漁師の魚で、脱血、神経締めされた魚が市場に並んでいたが明らかに他の魚より色艶が違った。この手の処理がされていると処理が楽で質が良いのだと言う。
活魚の仕入れを積極的に行うのも津本流。魚のポテンシャルを高い段階で保持できるだからだそう。釣り人も同じなので、津本式処理と親和性が高い。

つまり死魚に脱血処理、血抜きを行われて(行えて)、その処理がほぼ完璧に行われていると言うのが、実は1番のエポックメイキングなことなのだと言う。

その話をしてくれたのは、東京海洋大学で津本式や熟成魚の研究をされている高橋希元助教。

高橋「魚の熟成に話題が集まっている気がしますが、津本式の最大の利点は、死魚でも高いレベルの血抜きが行われ、灌流処理により鮮魚の長期保存が可能だと言うことだと考えています」

これは、津本さん本人の話とも付随する。

津本「津本式により、長期熟成に耐えうる魚を仕立てるのが僕の仕事。熟成に関しては、職人の手腕ですから」

津本式熟成魚が美味しくなる、驚くべき仕組みについては詳しくは編集中の本で語ります。サラリとはwebでまた解説しますが、一旦話は置いて、本題に入ります。



現場で、津本式のノズル処理は必要か?

津本さんが完全脱血、神経締め、抜きに使うオリジナルノズル。

TwitterやInstagramなどを見ていると見様見真似であの、津本式の神経締めや、完全脱血を行うためのオリジナルのノズルを作成して、現場で行う為に持ち運んでいらっしゃいますが、津本さんや高橋助教の話を総合的に考えると解った事があります。

あれ? 現場でのノズル処理は絶対に必要なものじゃ無くね? 長期遠征で、釣った魚を1週間後に処理する事になるとか、完璧主義な人以外いらないかも。と言うか、大きな効果はないような……。

津本さんも、現場に簡易の道具を持ち込む動画を公開してるけど、理屈を紐解くと、津本式ノズルによる神経処理は、動脈からの血抜きと神経締めが同じ器具で出来る調理場での効率から来ていることがわかる。

むしろ、津本さんが推奨する現場での締め方や血抜き処理と考え抜かれた冷温処理。これが最優先だと言う事がわかりました。これらの部分は津本式以前の処理と言うことになりますが、津本さんの提案する手順は洗練されていて合理的なのです。理由理屈はとりあえず、またの機会に! 今回は絶対手順を簡単に!

これが、釣り場(漁場)での絶対手順、最適解だ!

はい、津本式のテストに出るからねー。何も今は考えずに、この手順でどうぞ〜。ちょっとだけ理屈にも触れておきます。

【1】釣り上げ
【2】素早く脳締め
【3】神経締め
【4】津本さん推奨の大動脈エラ切り
【5】水が入ったバケツなどで首振り脱血
【6】冷えすぎない氷水で、サカナの芯まで冷却
【7】ある程度冷やしたらなるべく氷に直接充てずに保冷
【8】自宅で津本式

【3】はこの時点ではノズルで行う必要はありません。もちろんノズルでできるなら良いですが、針金みたいな神経締め器具でもOK。素早い神経締めは鮮度保持の観点から避けたい死後硬直を防ぐ効果、魚のエネルギー保持に効果がありますが、釣り場で絶対必要な処理ではないとは津本さん。

津本「完璧目指すなら脳締めから神経締めやけど、釣りを優先したいならわざわざ神経締めまで、しなくても良いよ」

【4】【5】【6】の手順は重要。【7】は現場からの運搬の仕方を考えると有用。【6】の状態で自宅にもち帰るなら、氷結しない温度管理をしよう。

ほぼほぼ、現場での手順は津本さんの動画から確認可能。来年1月中旬に発売予定の小社、津本式の解説本と合わせれば、理屈込みで完全理解が可能です!

脳締めから、可能ならば神経締め。それぞれ役割が違う。神経締めから脳締めは手順違いなので注意。
エラ切り。この位置。この刃の方向が大事。
ナイフで背骨の下の大動脈を軽く切るだけ。
ふりふりと津本さんがよぶ、バケツなどでの脱血。首を30秒から1分程度振って血を抜く所作。
水氷で魚を芯まで冷やす→氷に直接触れないように保冷。

津本「釣りがメインな人は釣れてるときは、釣りに集中したいやろ? でも持ち帰るつもりなら、脳締めして血抜き、できれば神経締め。そして保冷だけ気をつければ帰ってから美味しく食べれるよ。で、長期保存や熟成を楽しみたいなら津本式を試してみて!」