ソルトルアーの定番タックルといえば、スピニング。もちろん、一部の船釣りではベイトロッドとベイトリールで楽しむ釣りも存在するが、陸っぱりでベイトキャスティングゲームを楽しむ人は、正直そんなに多くない。「だって、飛距離も出ないし、バックラッシュ怖いし」こんな意見が大勢を占めるかもしれない。いや、まって! 実はどちらも「扱い方」次第でなんとでもなる! そう語ってくれるのはFishmanのテスターを務める上宮則之さん! では、よろしくおねがいします。
【Profile】
上宮則幸(かんみやのりゆき)
ロッド開発中に『もっと投げやすく、もっと遠くに』を追求することでロングキャストとアンチバックラッシュに開眼! 釣るより投げることに夢中になるあまり、『釣れないおじさん』になってしまいました(笑)。ベイトキャスティング用ロッドの専門メーカーFishmanのテスターを務める。
アンチバックラッシュとロングキャスト (文:上宮則之)
ソルトルアーフィッシングにベイトタックルは向かないのか?
バスフィッシングでは一般的なベイトタックルだが、シーバスや磯ヒラスズキ、サーフのフラットフィッシュゲーム等、いわゆるソルトルアーフィッシングでのベイトタックル使用は最近でこそ徐々に見かけるようになってきたものの、まだまだマイナーな存在です。その主な理由を挙げるとすると、まずバックラッシュというリールトラブル。そして、そのバックラッシュを恐れるがあまり飛距離が出せないという悪循環に起因するのではないでしょうか。
【不都合な真実】ベイトは飛ぶ!
しかし、あなたは見たことありませんか? ベイトタックルで驚くほどカッ飛ばすアングラーを見たことが….。
バックラッシュを恐れずロッドを満月のようにしならせ、スピニングユーザーのあなたが諦める遥か遠くの潮目までルアーを届ける姿に驚き、不思議に思ったことはありませんか?
あれは、何か特別なチューニングでも施している? あるいは、メタルジグか何か飛んで当たり前の、チートで場違いなルアーを、ただ飛ばして喜んでいるのだろう…そんなふうに考えて、見て見ぬふりをしてはいませんか? 実はそうではないのです。
事実、ベイトは驚く程にルアーを跳ばせます! わたし自身、川で磯でサーフで周りのスピニングユーザーからの驚嘆の視線を浴びてきました。彼らの、何か不都合な物でも見てしまったかのような様子は実に気分がいいものです(笑)。
もちろん、ベイトキャスティングで飛距離を稼ぐには、ソルトベイトキャスティングに特化したスイングが不可欠になります。
ソルトベイトキャスティング特化型スイング
あなたは「ベイトに特化したスイング? オレはバス上がりだからベイトのスイングはマスターしているが、シーバスルアーはスピニングより飛ばねーよ!」と言うかもしれません。
その通り、バスフィッシングでのベイトのスイングはソルトではまるで役に立たない。まずソルトではロッドのレングスが全く違うのに、バスで覚えたスイングにこだわることこそが、ソルトベイトキャスティングの最初のつまずきとなってしまいます。
では、ソルトベイトキャスティングに特化したキャスティングとはどんなキャスティングなのでしょうか?
そこで、わたしはまず、ソルトベイトキャスティングゲームの、【キャスティング】にフォーカスしたいと思います。世にある勘違いを正すべきだと考えました! ただ、もちろん1回で語り尽くせるものではないので、3回に分けて解説したいと思います。
ノウハウはある筈なのに少ない情報
ソルトベイトキャスティングをネットで検索してみると、いくつもそれに該当するテキストや動画は散見できます。しかしわたしに言わせれば、コレだ!と思えるものは残念ながら探すことができません。
リールのブレーキセッティングがどうだとか、マグブレーキが安定するやら遠心ブレーキが飛ぶやら…わたしに言わせれば、そもそもブレーキセッティングはそんなに重要ではありません。もし知人にベイトマスターがいるなら、不慣れな、あなたのタックルを彼に投げさせてみるといいででしょう。おそらく彼はやすやすとあなたよりもディスタンスを稼ぐはずです。
感覚を言葉で伝える難しさ
確かに、ソルトベイトキャスティングにおける最も重要なポイントとしてタックルセッティングも挙げられます。それに関しては非常に役立つ詳細情報がすぐに見つかります。ですが、タックルセッティングと同じかそれ以上に肝心とわたしが感じるスイング方法に関しての情報は…例えそれが真のベイトマスターの発信であったとしても、あまりにザックリとし過ぎていて、要領を得ません。
理由は簡単で、言葉にしようがない感覚の世界の話だからと言えます。ベイトマスターたちは日々の試行錯誤でアップデートを繰り返し、時間をかけてその技術を身体に感覚として覚え込ませてきたのです。それをスピニングのキャストやバスでのベイトキャストとの相違点などと言う視点では語りようがないと言えます。
その違いをマスターした者だけが、スピニングを蹴散らす優越感に浸れベイトタックルの優位性を生かせると言うのに…
プロフェッショナルとは
ただ、安心してください。それをマスターし技術的にも情報発信者としても自他共にプロフェッショナルと認めるわたしには、ソルトベイトキャスティングの何たるか? を語るだけの充分な言葉が備わっています。
なぜならわたしはベイトロッド専門メーカー【Fishman】に寄せられるキャスティングに関するユーザー様達の悩みに真っ正面から向き合い続けてきたからです。『どうやれば上手く投げられる』と言うロジックを一方通行的に伝えるのではなく、『なぜ上手く投げられないのか?』と言う、ユーザー様自身が気付けない理由の解明に努めてきました。
ときには悩めるユーザー様のキャスト動画を送ってもらい、目に付くポイントに指摘をさせていただくこともあります。ですが、わたしはそれだけでは充分ではないと考えています。
いや、それだけでもユーザー様自身が驚くような飛距離アップは可能でした。ただ、わたしが納得できなかったのです。
そこでわたしが試したこととは、ユーザー様のスイングをわたし自身がコピーすることによって、動画を見ただけではわからないダメな理由を探ると言うコペルニクス的発想でした。そしてそれが大いに役に立ち、何人ものベイトマスターを育て上げるに至りました。さらにその経験は、わたし自身のソルトベイトキャスティング、取り分けロングキャストに関する知見に一層の深みを増してきたと言えます。
動画と併せて相乗効果を
そのベイトキャスティングに関するノウハウは、すでにわたしのYouTubeチャンネル【釣れないおじさんチャンネル】で度々動画で公開してきていますが、動画独特の勢いと言うか流れで詳しく解説しきれていない不親切な部分があるのも確かです。
本連載では、そう言ったディテールに光を当てて、より情報的に厚みのある発信に努めていくつもりです。わたしのチャンネルと併せて、次回からの連載が貴方のベイトマスターへの道しるべになることをお約束しましょう!
また、『ベイトには興味はあるが、自分にできるか不安で手を出せない』と言った層にもぜひ読んでいただきたいと思います。一人でも多くの方の活眼を開くことに繋がれば、これ程嬉しいことはありません。
Profile
西村均(にしむらひとし)
ベイトロッド専門メーカー「Fishman」のテスターを務める。新潟県をホームに小渓流から海のルアー釣りまで幅広く楽しむマルチアングラー。人気サイトfimoでブログも執筆中。
Fishmanスタッフの西村 …
Profile
赤塚ケンイチ(あかつかけんいち)
ベイトキャステ…