1990年代に巻き起こったバス釣りブームの時に、当時の釣りキッズのバイブルとも言われた漫画作品がありました。その名も「Mr.釣りどれん」、通称ミス釣り!! この記事では作者であるとだ勝之先生に単独インタビューを行い、当時の執筆秘話やこれからの活動について語ってもらいました!
※記事内の画像は許可を得たうえで使用しています!
『Mr.釣りどれん』。それは我々釣り人にとって、不朽の名作にしてバイブル的存在。月刊少年マガジン(講談社)で連載が終了して早20年が経とうとしているが、未なお色褪せず我々の心を掴み続ける。縁あって作者[…]
「Mr.釣りどれん」は多くの釣り少年に影響を与えた!?
釣り好きの人でもそうでない人でも、釣りマンガで思い浮かべるのは「釣りキチ三平」か「釣りバカ日誌」だと思います。
ですが、この記事を書いている福重は1988年生まれ。多感な小中学生の頃はまさにバスバブルの最盛期でした。
ルアーマガジンが創刊したのも丁度そのぐらいですしね。
そんなブームに乗っかって(?)、自分も小学生のころにバスフィッシングを始めました。最初のきっかけはそれこそコロコロコミックに連載中だった「グランダー武蔵」だったかもしれません。
特集は2本立て!【特集1】は春における100問100答! 有名アングラーから編集部員まで、各方面にリサーチ!そして、【特集2】は約20年前、少年アングラーたちを虜にした伝説的釣り漫画「グランダー武[…]
最初は色々と悪戦苦闘したものです。
何せ直接教えてくれる人もいないし、おバカな小学生だったので、入門書は眺めるだけの絵本状態。動画だって気軽に見られる時代ではありません。
特に、ベイトタックルの投げ方がわからず、ベイトリールがバックラッシュしたらその時点でその日の釣行は終了レベルでした。
そんな時、ふとしたきっかけでとある漫画本と出会いました。
それがこの『Mr.釣りどれん』。
たまたま1巻を読んで目からウロコ!!
ベイトタックルでのキャスティング方法や、バックラッシュの直し方が超わかりやすく漫画で説明されていたのです!!
何てタメになるマンガなんだ!!
そう思った自分は親に泣きつき、何とか1巻と2巻を買ってもらったのでした。
「あとはアナタの腕次第」(14巻のセリフより)。
の言葉通り、その後どのくらい釣れたのかはともかくとして、自分の中のバス釣りの礎を築いてくれたのは間違いなく、この漫画でした。
実は現在のバス釣り業界内にもファンは多いようです。
また、随所に投入されたパロディや時事ネタなどで日常漫画としても非常に面白く、しばらく釣りから離れていた期間ですら、コミックスは全巻きちんと揃えておりました。
5年半という長期連載で、全17巻の大作となった『Mr.釣りどれん』。 今回福重は、そんな偉大な漫画の作者・とだ勝之さんに直接お話しを聞く事ができました!!
ミス釣りの始まりと村田基さん
福重「とだ先生! 本日はよろしくお願いします!! 早速ですが、Mr.釣りどれん(以降:ミス釣り)が始まったきっかけを教えてください!」
とだ先生「よろしくお願いします! 実は自分、釣りに対する興味は薄かったんですが、編集部の方から薦められて、バス釣り漫画を描く事になったんです」
福重「コミックスに収録されているおまけ漫画では、全くの初心者であるとだ先生の悪戦苦闘している姿が描かれていますもんね」
とだ先生「そうなんですよ(笑)。アシスタントに1人経験者が居て、はじめはその人に連れられて真冬の霞ヶ浦に行きました。わけもわからずひたすら沖にルアーを投げ続けたのですが当然釣れず……。そこでこのままじゃいけない! と思って、技術指導をお願いしたのが……」
福重「あ、『某釣具屋の店長さん』ですね」
とだ先生「そうです。ミス釣りの登場人物・カイザーこと『貝沢潮』のモデルにもなっている方です。ぶっちゃけ、村田基さんですね」
福重「読んでいた側としてはバレバレな感じでしたけど、名前、出しちゃっていいんですか?」
とだ先生「実は当時、村田さんのすすめで名前は伏せさせてもらってたんです。でも今はもう大丈夫ですよ(笑)。漫画内の技術的な部分をはじめ、村田さんには非常にお世話になりました」
福重「とだ先生の初バスGETも村田さんと一緒に釣りをしている時だと、おまけ漫画に描かれてましたよね」
とだ先生「そうなんです。投げる場所を指示してもらって、そこに投げたら本当に釣れたんです!『村田さんのおかげです!』と言うと、村田さんは一言『釣ったのはキミだ!』って。最高にカッコいいですよね!! でもその後もなかなか上手くならなくて、その苦労は漫画にも表れていると思いますよ(笑)」
釣りを中心とした日常を描きたかった
福重「小学生の頃は全く気がつきませんでしたけど、タイトルからすでにパロディなんですよね」
とだ先生「そうですね。仮でつけたのが、主人公・日和コーイチ君の名前と絡めた『明日は釣り日和』という普通~のタイトルでした(笑)。ですが、たまたまUSENの雑誌で某ミュージシャンの名前を見かけた時にこのタイトルがおりてきたんです。「コレだ!!」って(笑)。へろへろになりながら思い付いたタイトルだったので、一晩置いて冷静になってもう一度考えましたが、やはりこのMr.釣りどれんが1番しっくりときましたね」
福重「『ミス釣り』と、呼びやすい愛称もいいですよね!」
とだ先生「そうですね。それに、『釣りどれん』という部分に、釣り仲間という意味合いを持たせられたのも気にいっています」
福重「とだ先生はそれまで、『DANDANだんく!』や『あきら翔ぶ!!』といったスポーツ漫画を描かれていますが、ミス釣りはあまり汗臭くないと言うか、スポ根感の無い作風ですよね」
とだ先生「丁度『DANDANだんく!』は連載時期が重なっていたということもあり、こちらとは異なる日常のドタバタコメディを描きたかったんです。だから基本的にはガチンコな釣り対決をメインにする事は無く、あくまで、釣りを中心とした日常を描くようにしたんです」
福重「作中では毎回様々な釣りに関するお話が出てきていましたが、ストーリーはどのようにして決められていたのですか?」
とだ先生「打合せは毎回、編集さん達何人かと集まって、馬鹿話から始めます(笑)。その話の中から、例えば「梅雨だから雨の日の釣りの話にしよう」とか、「もうすぐバレンタインですね!」みたいなテーマを決めて、それに合わせたキャラクターやストーリーを考えて行きます」
とだ先生「そしてそこに、村田さんのアドバイスを加えて完成させていくんです」
釣り素人だからこそ描けたわかりやすさ
福重「ミス釣りは小学生の頃の自分が読んでもわかりやすく、非常に勉強させていただきました。釣りの経験が無いのに何故、あんなにわかりやすく描く事が出来たのですか?」
とだ先生「それは逆に釣りの素人だったからこそだと思いますね。毎月取材と称して(笑)釣りに行かせてもらっていたのですが、釣り素人ならではの、心から『おお!』と感じられる体験を毎回させてもらってたんです。それがそのまま表現できたのだと思いますね」
福重「とだ先生自身の感動は、釣り経験の浅い読者も共感する事が容易だったのですね」
とだ先生「そうです。そう言う事だと思います。それに自分自身があまり詳しくないからこそ、突飛な発想が出来たと思います。きっと釣りに詳しかったら常識やセオリーが邪魔してボケる事が出来なかった。だから釣りを知らなかったことはきっと逆に武器になっていたと思いますね」
とだ先生「それに漫画という表現方法であれば、話の流れから連想して学んだことを思い出しやすいですしね~」
福重「主人公が水中に潜って派手なカラーのルアーはすぐ見つかるのに地味な色のルアーには気づかなかったエピソードや、興味本位で集まってきたバスに驚いて『食われるー』と叫ぶシーンなど、実際の釣りに役立ちつつも印象に残っているシーンは多い気がします!」
とだ先生「ちなみに、この漫画を描くにあたって、編集さんから言われていたことがあるんですが、何だと思いますか?」
福重「え、一体何でしょうか?」
とだ先生「『読者の9割は釣りをしたことがないと思って描いてください』という事でした。釣りみたいなアウトドアが趣味になると漫画からちょっと離れるじゃないですか。食堂にある週刊マガジンは読んでも、月刊マガジンまではねぇ(笑)。どちらかというと漫画好きが読む雑誌でしたから。だから、主人公を初心者にして、専門的な事はその友達に喋らせるようにしたんです」
福重「釣りをしない人でも感情移入しやすいように、釣り未経験のキャラクターを主人公にしたんですね」
とだ先生「ですが、話が進むにつれて、どうしても内容がマニアックになっていってしまいました。そのため、後半は特に人間ドラマを意識したストーリー展開にしていったんですよ」
福重「最終話で、コーイチとちょー太がお互いの思いをぶつけ合うシーンはアツかったですよね~!」
思い入れのある話・キャラクター
福重「作者としては全部、と言いたいところだとは思うのですが、とだ先生のお気に入りのお話しだとか、思い入れの強いキャラクターって、何かありますか?」
とだ先生「そうですね。基本的にミス釣りは1話完結だったり割と短いお話が多いのですが、主人公達が京都・奈良へ修学旅行に行き、流れに流れて四国まで行ってしまう話(4~5巻)は、色んな人、釣りと出会うロードムービー的な要素を含んでいて気にいっていますね」
とだ先生「キャラクターでは、北浦かすみちゃんですかね。ヒロイン的な立ち位置であるのと同時に、常にいる『釣りを知らない』キャラクターとしても重要なんです。段々と主人公も釣りに詳しくなってしまいますからね」
福重「確かにかすみちゃんは最後まで釣りにのめり込むことはなく、色んな話を『へ~そうなんだ』と聞く役回りでしたもんね」
最近のとだ先生
福重「とだ先生はミス釣り以降もDIY女子の活躍を描いた『ホームセンターてんこ』や、エギングの漫画『えぎすとら!』を描かれていましたが、近年はどのような活動をされているのですか?」
とだ先生「同人誌でミス釣りの続編を描いたりもしていますよ。また、ミス釣り関係のグッズを同人イベントやフィッシングショーで販売したりもしていますね。それと雑誌『釣りどき関西』では釣り漫画を連載させていただいています!!」
最後に
福重「最後に、釣りプラスを読んでいる方にメッセージをお願いします!」
とだ先生「釣りは長く楽しめる遊びですし、釣りを通して友達も多くできると思います。ミス釣りを読んで、そんな『釣りどれん』の輪が広がって行くと嬉しいです。今は電子書籍でも読むことが出来るので、大人からお子さんまで、ゲラゲラ笑いながら読んでください!!」
福重「とだ先生。本日はありがとうございました!!」
とだ先生の作品はこちらで読むことが可能!!
また、ミス釣りのラインスタンプもあるのだ!!
……余談?
福重「すいません、とだ先生。最後にひとつご相談がございまして……」
とだ先生「何でしょうか? ルアマガでも連載ですか?」
福重「ルアマガで連載!? それもぜひお願いしたいのですが……この色紙にサインとキャラクターを描いてもらっていいいですか? あと、自分の似顔絵を……」
とだ先生「おやすい御用ですよ」
福重「よっしゃああああああありがとうございます!!!」
完成!!
福重「やったあ! 先生ありがとうございます!! 家宝にします!!」
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