さて、フライフィッシングという遊びは実はとっても簡単な釣りのジャンルなんですが、どーにも難しい釣りにしたい勢力があるようで…..。いや、それは冗談ですが、この釣りは実はとっても気軽にエントリーできるんですよ! というのをお伝えする連載の6回目。今回はフライタイイングは実はとても簡単ですよというのをお伝えします!
フライタイイングって何? 必要なの?
まず、フライタイイングというのは、フライフィッシングで使う毛鉤を巻く作業がソレにあたります。あんな小さな毛鉤を巻くなんて、不器用なオレには無理! なんて思ってませんか? そんなことはありません!と煽りたいところですが、とりあえず順を追って説明いたします。
フライで使う毛鉤を手に入れる方法は2つあります。まず、コマーシャルフライと呼ばれる、出来合いのフライを釣具屋やネットで手に入れる方法。そして、自分で巻く方法です。
実はフライフィッシャーはフライタイイングもセットですべし!たる文化は、日本では当たり前のように考えられていますが、本場アメリカなどではコマーシャルフライを購入して釣りを楽しむのが普通だったりします。買えばいいじゃんということなんですが、この釣りを趣味まで昇華するつもりなら、自分に巻いたほうがコスト的には安上がりなんですね。ちなみに購入すると、渓流用のフライでひとつ350円前後が相場でしょうか。
あと、日本てば生物の多様性が半端ない国なので、メインターゲットとなるヤマメやイワナたちが食する水生昆虫や陸生昆虫の種類が尋常じゃないのです。より釣果を挙げるためのフライフィッシング攻略法「マッチ・ザ・ハッチ」(簡単に言うと、魚が食べている虫に合わせてフライをアプローチする)という概念を効率よく遂行するためには、タイイングができる釣り人のほうが良いのですね。種類が多いわけですから、それにアワセたフライを探すより、自分で巻いたほうが早いというコトなのであります。
タイイングか…興味あるけど、僕にも、私にもできますか!?
結論から言いますと、どなたでも練習すればできると思います。小生も決して器用な部類ではございませんが、よくよく考えると、そんなに難しい作業では無いことに気づきました。ということで、今回は、とあるベーシックなフライパターンのタイイング過程を掲載します。
こちら、この通りにやればそのフライが巻ける手順ではございますが、今回の意図は「あ〜、こんな感じで毛鉤って作っていくのね?」という雰囲気のご紹介でございます。構えず、流しながらごらんくださいませ。
用意する道具も材料も意外に少ない。
今回、紹介するのは、日本の渓流で非常に使いやすい「パラシュート」と呼ばれるベーシックなフライパターンです。イワナやヤマメは水生昆虫を主食としており、そちらを水面でプカリと浮かべていると、パクリと食べてくれるので、その捕食されている水生昆虫の代表格「カゲロウ」類を模したフライ(毛鉤)になっております。
一般的な渓流はとりあえず、このパラシュート(下の写真左)と、ソラックスダン(下の写真右)の2パターンを巻けるようになれば、釣りができますので、今回はパラシュートという毛鉤を作ってみますね。
パラシュートフライはこんな感じで巻きます
必要な道具と材料
今回タイイングするパラシュートに必要な材料は
◯フライフック:TMC100 #14(ティムコ)
◯毛鉤の尻尾:コックフェザー(雄鶏の羽)
◯羽の部分:ドライフライ用のハックルフェザー
◯ボデイ材:スーパーファイン・ドライフライダビング(WAPSI)
◯目印:TMCハイビズドライウイング(ティムコ)
◯巻き止めるための糸:ダンビルスレッド6/0の茶色いヤツ
タイイングのために必要な道具
◯フックを固定するバイス
◯毛を切るハサミ
◯スレッドボビン(フライを巻くための糸をはさむやつ)
◯フィニッシャー(フライを巻く糸を最後に縛る小道具)
雑な説明ですが、案外、必要なものは少ないです。バイスというのは、フライフックを固定してフライタイイングの土台を確保する重要アイテムです。言うなれば釣り竿みたいなものです。道具類については近いうちに詳しく解説しますので、今回はさらりと、こんな感じかと思っていただければと思います。
では、早速タイイングの過程を追ってみましょう。コロナ禍で外取材に行きにくい情勢で、タイヤーも記者、スタジオも簡易&スマホ撮影になっておりますので、少々見にくいかもしれませんがご了承ください。
1 フックをバイスにセットする
こんな感じで、フライ用のフックを繊細な万力みたいな器具で固定します。バイスは数千円から10万円を超える価格のがありますが、通常のタイイングなら1万円前後出せば、一生使えるような道具として十分なフライバイスが手に入ります。フックはスタンダード、ド定番のTMC100をチョイス。ただフライフィッシングにはまったくもってカエシは不要なのでTMC100SPあたりが記者的にはオススメです。
お高い! でも始めてみたいという方は、ティムコから発売されている「フライタイイングバイス&ツールセット」がオススメ。だいたい必要なツールも詰まっておりますので!
2 下巻きの糸(スレッド)をフックに巻きつけます
フックのシャンクにスレッドを巻きつけます。下巻きですね。記者はダンビルと言う会社の専用糸が好きですが、コイツ、安いボビン(糸をセットしてタイイングしやすくする器具)を使うと、毛羽立ってしまいにゃ切れちゃうので、ボビンは1000円以上のセラミックパイプが入ってる奴を買ったほうが苛つきません。今回の撮影では、自宅倉庫ひっくりかえすの面倒で、安いやつでいいやと500円くらいので代用したら、ダメでした。
3 カゲロウの尻尾をオスの鶏の羽をむしって束ね、フックにとりつける
尻尾は毛を使うのがいいですが、尻尾として売られている材料もあります。比較的ハリのある毛を使うのが良いですよ。ハックルに使うフェザーで代用もできます。
4 水面をフライが流れている時の目印になるインジケーターを設置します。
使用するインジケーターは「TMCハイビズドライウイング」。こちらのフローラルオレンジというカラーをチョイスしました。環境によりますがダムが多く、石に苔が付きやすい日本の環境では非常に見やすいカラーです。こちらは、シャンクの真ん中あたりに束ねて、巻き止めます。
5 インジケーターを立てて固定する
設置したインジケーターを写真のように立てて固定します。ついでに、後ほど羽を巻きつけるためのスペースをスレッドで作ってやります。
6 ボディ材のスーパーファイン・ドライフライダビングを、垂れ下がっている糸に依り着ける。
フライのボディを細かい繊維を糸に絡ませて整形しますので、下準備として、小袋からボディ材をほんの少量取り出して、写真の糸の部分のようにボディ材を糸に依り着けます。ほんのりでいいです。ボフッと着けると、ファッティになります。悪くはありませんが、かっこ悪いので少しでいいです。このボディ材の色を変えて、色んな種類を表現します。今回は、汎用的な茶色系でコーデ。
7 ボディをスレッドで巻きつける
スレッドにボディ材を依り着けていますので、いったんスレッドをお尻側に持っていき、前に糸を重ねるように巻き上げていくと、写真のようにカゲロウのボディが出来上がります。テーパーをつけたり、そのあたりはセンスで整形してください。
8 ハックルのストークをポストに固定する
ハックルというのは、フライのウイングなどに巻きつける羽のことです。今回使っているのは、ホワイティング社で発売されているフライ専用の鶏の首の羽です。まるっと1尾(首)分買うと、1万円超えちゃって、初心者向きじゃありませんが、1尾買うと2〜3年分の毛鉤は賄えるので、案外経済的です。いや、やっぱり高いよ。でも、これじゃないと困るからね….。小分けにされているものもありますので、それはお財布事情を鑑みて考えてくださいね。
ハックルは写真のように、ストーク(羽の骨みたいな部分)をポストに縛り付けてまずは固定します。
9 ハックルをくるくると、時計回り方向にポストに巻きつけていきます。
やり方は、動画などでお見せするほかないので、なんか「目印にこんな風に毛を巻きつけていくんだな」というのがわかればと思います。時計回りにくるくると巻いて、スレッドで固定します。ハックルを目印に上方向に巻き上げますが、回数は3〜4回転程度です。エンスーな人は1〜2巻程度に抑える人もいますが、僕は多めに巻いちゃいます。
ハックルを巻きつけるのには「ハックルプライヤー」なるツールを使います。こちらがあると、巻きつけるのが楽になるのであります。
10 ポストをカットして出来上がり。
数年ぶりに巻いたので、ちょいとハックルがバラけてますが、たぶん釣れる機能は十二分に備わっていると思います。パラシュートに似てるから、パラシュートと呼ばれいます。そのままですね。
オレンジのインジケーターが、飛行姿勢を安定させて着水しますので、使いやすいフライのひとつです。弱点としては、魚がよーくフライを観察するようなスレた状況では騙しにくいパターンです。が、流のあるポイントでは、しっかり浮いて見やすいので主戦力になります。
ということで、今回は、代表的なフライパターンがどんな過程を経て完成するのかを見ていただく目的で記事を作成してみました。近いうちに動画などで巻き方をご紹介しようと思いますが、なんか楽しそうだなぁと思ったら、道具と材料を用意しておいてくださいね。今回のパターンに使った材料と道具で、2〜3種類のパターンがタイイング可能です。冒頭の写真の右側のフライパターン、「ソラックスダン」もパラシュートに負けず劣らず釣れる使いやすいフライです。
こんな感じで、色や形状を工夫していくことで、フライパターンが増えていくのであります。そして、釣り場での引き出しも増えていくのです。
さぁ、あなたもフライタイイングを始めてみませんか? 楽しいですよ〜。