コロナ禍の影響もあって、初回記事から間があいてしまいましたが、ようやく取材に赴くことができたいのでご報告。何も知らない初心者が「ヘラブナ釣り」に触れて、2020年の秋に開催される大会に出場、優勝を目指すという無謀企画。取材時の時系列を追って記事を書くより、まず、この釣りに触れた記者がヘラブナ釣りに触れた感想からまずお伝えせねばと思った次第でございます。今回は触れて思った「ヘラブナ釣り」の魅力を!
なんじゃコラァ! この釣り震えるほど面白いぞっっ!!
正直に。正直に申しあげます。お仕事もあって、この釣りにトライすることになった「ヘラブナ釣り」ですが、行ってこい。記事にしてこいと申し遣わされた当初。小生、こんな事をを思っていました。
「ヘラブナ釣りとか、かったり〜」
胡座かいてぇ、座ってぇ、ぼーっと浮き眺めてぇ? アタリがでりゃ合わせるとか、ワイ、天才だし余裕だしバカにしてるの? 「ヘラ釣りに始まり、ヘラ釣りに終わる?」はぁ? バッチコイや。
思ってる事を口に出したら、おそらく全ヘラブナファンのヘイトを一身に集め炎上も大炎上するような不遜かつ傲慢な気持ちでおりました。ほんとウ◯コです。
結論から言います。一度の管理釣り場での「ヘラブナ釣り」で、その考え180度改めます。申し訳御座いませんでした。土下座してお詫び申し上げます。華麗なる手のひら返しです。
ヘラブナ釣り。釣り歴40年を超える記者の経験した釣りの中でも、1、2を争うほど面白い釣りでした。
えと、釣りファンのみなさん。ご経験なさっていないなら、はよう。はよう経験したほうがいいですよ。釣りを始めようと思ってるみなさん、この釣りから入るのもめちゃくちゃアリですよ! その理由を今回は語らせてください。
高みが見えないプロの技と、奥の深さ。そうでありながらビギナーに手を差し伸べてくれる楽しさ。半径3mの空間は釣りが凝縮された「劇場」でした。
今回おじゃましたのは、ヘラブナが放流され、管理されているいわゆる管理釣り場(埼玉県の幸手市営の神扇池)でした。が、いわゆるそうでない自然のフィールドであっても、ヘラブナ釣りとして水辺に対峙した際、自分のフィールドとなるのは、せいぜい自分を中心とした半径3mほどの半円です。
初見感想! その半径3mに、どれだけの情報量があり、どれだけの戦略があり、どれだけの戦術が凝縮されているのかっ! と震えました。
一度、釣座(釣りをするための位置)を構えると、基本的には半日〜そこに止まり、ヘラブナというターゲットと向き合わねばならないわけです。
練りエサを打ち込み、浮きの動きを見てアワセてヘラブナを釣り上げていくという、一聞すると、単純な所作のように見えます、思えます。が、その全ての所作がどれだけ洗練され、どれだけ極み尽くされたのかにより釣果が変わってくる、匠の世界。小宇宙(こ・す・も)が広がっているのです。
さすがにヘボとはいえ40年も釣りをやってりゃ、そいでもって釣りのメディアの編集をやってりゃ、いくら「何々のプロアングラー」の超絶技巧テクニックと言われようと、ああ、そういうコトなのか! と理解するくらいはできるのですが、今回、コーディネートしてくれたプロの所作を見て思いました。
プロが、ちょっとなにやってるのかわからない、修練積んでもその技の理解に届きそうにない感じがある……。ヤバイかもしんない……。初心者のときに見たNHK囲碁トーナメントの中継のようだ….。
そんな難しさと奥ゆかしさを秘めながらも、ビギナーでもめちゃくちゃ楽しめるのです。不思議ですよね。たぶんですが、この釣りの根幹とも言える「ウキ」というパーツは常に、水中の生命感を釣り人に伝えて、楽しませてくれるからなんでしょうね。そのお話は後半で。
ビギナーながらに分析する震えるほどこの釣りが面白い理由
魚の反応が必ずある(管理釣り場)
自然フィールドの経験がまだないので、そちらのお話は経験したあとで分析してみます。今回訪れた埼玉県・神扇池のような管理釣り場タイプのフィールドは、当然ながら、池にたくさんのヘラブナが放流されています。
今回のコーディネートを買って出てくれた、DAIWAのテスターであり神扇池のチーフアドバイザー、田邊忠史プロによると、
「冬場は難しいアタリだったり、反応の有無が素人にはわかりにくい部分はありますが、春から秋にかけてのシーズンは基本的になんらかの反応があるのが管理釣り場のヘラブナ釣りですよ♪」
profile
田邊忠史(たなべただし)
幸手市営釣り場神扇池で、チーフアドバイザーとして活躍する、ヘラブナ釣りのプロ。DAIWAのテスターとしても活動し、教え上手の褒め上手。褒められると乾いた笑いが出てしまうひねくれ者の記者にも、これでもかと褒めちりぎり、ヘラブナ釣りという深淵へ引きずりこもうとした、あれ? もしかして極悪人(震え)? 趣味の金魚ブリードもプロの域。本連載のキーマンになる。
との話。つまり、自分の投じた仕掛けになんらかの魚信は必ずあるので、魚のアタリがなくて釣りが終了するというような絶望状況にはなりません。しかも、ある程度、時合い(魚の反応が多くなるタイミング)が持続するタイプの釣りで、基本的には投じた仕掛けに毎回反応するくらいのアクティブさがあります。
私、ギャンブルはやりませんが、コインを投じたらスロットのドラムがくるくる必ず回るように、餌を投じたら等しくチャンスが回ってくるので、魚を掛けられるか、掛けれないかは、まさしく「腕次第」という「安定したゲーム性」がヘラブナ釣りの魅力です。
「ウキ」で「アタリ」をとるシンプルさと奥深さ
ウキ釣りというのは、ある意味、日本の釣りの象徴的アイテムかと思います。ウキで魚のアタリを取るという所作は、スマホゲームや、その他のミニゲームにも内包されているくらいですから、単純にウキの動きだけでゲームが成立するほどの楽しさがあります。
でも電子のゲームとは違って、そこは生きた魚が干渉してくるのでアタリ方は一通りではありません。もう、そのアタリの複雑さといったらゲーマーには燃える要素で、なおかつ、そのアタリを捉えられなかった時の悔しさは半端なくて、次へのゲームへと誘います。そんななか、刹那の瞬間を捉え、思い通りに魚がヒットしたときのあの感覚は……。
ギャンブルと同等。いや、以上の中毒性が内包されています。思い通りにそのアタリを捉えた時、心の中で何度ガッツポーズをしたことか。
変な話、ギャンブル依存症な方は、ヘラブナ釣りで治療できるんじゃないかというくらい、強烈な爽快感があります。かかるお金が優しい分、ヘラブナ釣り推奨でございます。
洗練されたシステム。合理性と効率の追求こそが釣果へ繋がる。だからこその競技性。
ながーく、日本で親しまれて来た釣りで、その釣りとしての完成度はすこぶる高い! と感じました。釣竿、仕掛け、ウキ、エサ。そして釣りの空間を快適なものにするための各種道具。これはもちろんのことです。
この釣りのテクニックは見る限り多岐に渡りますが、そのなかでも、おそらく重要なファクターとなっているのは、エサを投入してウキを機能させるまでの所作の「効率」です。
ヘラブナ釣りって、のんびりした釣りに見えますが、とんでもない誤解でした。
もちろん、のんびり釣りをしてもよい懐の深さはあるのですが、より釣りたい、極めたいと思うなら、全ての所作を研ぎ澄まし洗練し、効率化したうえでエサを投じるという「一連のルーティーンの速さと正確性が重要」であると感じました。これには技術と慣れが必要です。一朝一夕で身につかない技術です。
例えば1時間、プロと素人が釣れる尾数勝負をしたとします。ヘラブナ釣りに関してはビギナーズラックはありえません。それぐらい技術に差がでます。
今回の取材で小生と田邊プロ、無謀にも3枚早掛け勝負を何度か行いましたが、小生が1枚掛ける間もなくあっという間に3枚を釣られ、叩き伏せられました。多少の運要素が絡む早掛けでさえコレです。
釣りそのものの技術もそうですが、すべての所作に無駄がないのですよ……。この所作を磨くことも重要なヘラブナ釣りのテクニックであると思い知らされました。
総括。この釣りの面白さ。
ものすごく難しいのに、魚の反応は常にあるので、めちゃくちゃ楽しい釣りです。釣れたのは自分の実力。釣れなかったのは自分のせい。もう、残酷なまでにはっきりしています。
釣れなかった時の自分慰めあるある「今日は釣れなかったけど、ロッド振れただけで満足」というあの嘘くさいセリフ。ヘラブナ釣りの場合はその感想は嘘偽りなく「事実」です。例え釣れてなくてもむちゃくちゃ楽しい。そこがこの釣りの魅力でもあります。釣れなかったのはなぜだろうって、ものすごく考えます。そして、次、やりたくなります。
しかも、「極める」までの道のりが長いので、ワクワク感が半端ありません。いやぁ、じーちゃんになる前に、この釣りの面白さに気づいてよかったー。気づかずに後半から始める人に差がつけられるわ〜。これで、町の可愛いばーちゃんにもモテモテのまにょまにょですわ!
「あの人、ヘラブナ釣り超上手くてカッコいいのよ❤️ お腹出てるけど❤️」って言われちゃうぅ!
と、変な妄想はさておきですが、もうひとつ。このヘラブナ釣りは、あらゆる釣りの鍛錬にもなります。これホントです。個人的な感想を言うと、アジングが好きな人はどハマりします。
さて。ビギナー目線でのこの釣りの面白さの考察ですが、まだまだ伝えきれなかった気がします。後半戦は実際の釣りの様子から、さらに楽しさをお伝えしていければと思います。ということでこうご期待くださいませ!