40万年前は多摩川本流だった!? そんな入間川水系霞川で行われた在来魚を増やす産卵床を造成の話【オイカワを増やそう】



2020年6月30日。埼玉県入間川支流霞川で3年連続となる、オイカワの産卵床造成事業が行われました。主催は公益財団法人日本釣振興会埼玉支部。そして、記者も所属する埼玉県入間漁協も協力してのイベントとなりました。そちらの様子をレポートします。



産卵床の造成事業で在来魚を増やす取り組み

冒頭にも記載しましたが、この取り組みの主催となったのは日本釣振興会埼玉支部。そして、釣り環境ビジョンコンセプトに基づく「LOVE BLUE」事業の取り組みの一環として地元漁協と共に行われました。内容はオイカワの産卵床の造成です。2018年と2019年の様子は下記リンクにてレポートしておりますので、よろしければ合わせてご覧ください。

増殖の対象になったオイカワはここ霞川では在来魚であることが知られています。オイカワというと、西日本を中心に国内移入として東日本方面に拡散が進んでいる魚種ではあるのですが、こちらでは、いろいろな研究結果から在来種であることが確定しております。

煽りとしてここまで遡ってもいいものかとは思いますが40万年前までは、入間川水系は多摩川本流だったという地質学的な話もあり、多摩川にはその土地の在来種としてのオイカワが存在していたわけですから、霞川に在来種としてのオイカワがいるというお話は何も突飛な話ではないと、漁協関係者のお話。

里川のプリンスともいうべき虹色の婚姻色を纏ったオスは、まさに日本の渓流魚の至宝とも言うべきたたずまいです。昨年の記事の写真の使い回しで申し訳ないですが、水槽での飼育状態でもこの通り。天然の魚の美しさは、極上で息を飲みますよ!

造成のために集結したのは、日本釣振興会埼玉支部長(岡田信義・マルキユー代表取締役社長)のメンバーのほかに、モーリス、NPOバーブレスフック普及協会、そして入間川漁協の武蔵支部の面々。

肝心の産卵床ですが、1畳程度のスペースを木枠で囲い、そこに流速をコントロールする大石を配置。木枠が大雨の増水などで流されないように固定したのち、スペース内にオイカワの産卵に適したサイズの砂利を敷き詰めてこれを造成します。今回はこれを2面。そして、川底を耕すことで、泥や砂利を洗い流し産卵に適した環境に造成する「川耕し」を行いました。方法については去年の記事を参照ください。

川底を慣らし、泥や苔を洗い流した上で、オイカワの産卵に適した石の大きさで整うようにクワなどで川を耕していく「川耕し」。
木枠を固定し、砂利を敷き詰めて造成する産卵床。オイカワの産卵に適した流れを選んで設置している。
40万年前は、多摩川本流だったと言われる入間川・霞川。そこの水系に脈々と命を繋ぐ種を絶やさぬよう、こういった活動が行われている。


昨年は台風19号などの影響はあったものの…

さて、その効果ですが、管理している入間漁協の吉田俊彦さんにお話を聞いてみました。

吉田「魚は顕著に増えました。増えたこともあって、カワウやサギたちが集まってしまうという、逆風はありましたが、確実に効果があることはわかっています」

畳数枚分のスペースの産卵床とはいえ、顕著な効果が見られるんですね!

吉田「はい。去年も、台風19号がくるまではしっかりと機能していましたね。今回も本日未明より記録的な豪雨の可能性が予報されていますので、いつもより頑丈に造成しました。場合によってはケアが必要ですが、今後とも続けていきたいですね」

環境破壊、外来魚やカワウなど様々な問題が山積する河川環境ではありますが、「魚を増やす」という取り組みは、駆除するというネガティブな活動より、よっぽど有意義だと常々思いますので、今後もこういった取り組みが継続されると良いですね!