シーバスフィッシングの世界ではお馴染みであり、独自のコンセプトから異彩を放ち続けるルアーブランド『邪道』。テールスピンジグの代名詞ともなった「クルクル」をはじめ、多数のロングセラールアーを世に送りだし、多くのアングラーから愛され、支持を受けている。今回はそんな邪道ルアーの中から、全国シーバス最激戦区「東京湾」を誰よりも深く知る技巧派として、全国的な人気を誇り、他の追随を許さない経験値とスキルを持つ“湾奥のプリンス”こと大野ゆうきが作り上げた大人気ロングセラーシーバスミノー『ゴッツアンミノー』について紐解いていきたい。
東京湾を拠点に全国のシーバスを釣りまくるプロフェッショナルアングラー
ごっつあんミノー89F/125F(邪道)
89Fはオートマ的、125Fはマニュアル的な使い方
大野さんのホームである東京湾奥の都市型河川をテストフィールドとして開発。89Fはストラクチャーに囲まれたタイトスポットでも使えるように固定重心のただ巻き仕様。125Fは重心移動で飛距離を稼ぎつつ、意図的にダートさせて捕食スイッチを入れられるレアな12cmクラスミノー。
【スペック】
89F
●タイプ:スローフローティング ●全長:89mm ●自重8g ●フック:#6×2 ●カラー:28色
●価格:1,680円、1,850円 (3Dプリントカラー)
125F
●タイプ:スローフローティング ●全長:125mm ●自重15g ●フック:#6×3 ●カラー:25色
●価格:1,890円
ルアーブランド「邪道」とのナレソメ
ヨレヨレと村岡さんがキッカケでやる流れに
大野「今から15年くらい前でしょうか…。ヨレヨレを使い始めたことが邪道とつながるキッカケになったんだと思います。当時はこの手のタイプのルアーは『ジグミノー』と呼ばれていました。そうは言っても種類そのものも少なく、シーバスで使われていたのはヨレヨレの他にはラッキークラフトのワンダーくらいだったと記憶しています」
大野「ヨレヨレはとても良く釣れるルアーだと評判になり、一気に全国へと広まりました。ただ、決して簡単に使えるルアーではなく、速く巻けば浮き上がってしまい、逆に遅く巻きすぎれば沈んでしまって動きが出せなくなる。今までにない飛距離が出せるのも大きな武器でしたが、ルアーとの距離が遠ければ遠いほど、意図したレンジをキープしつつアクションをさせるのは難しくなる。爆発的な破壊力を持っているけれど使い手を選ぶ、当時はそんなルアーでした。
僕は港湾部や河川で使ってけっこうな釣果を上げていたので、村岡(昌憲)さんを通じて、邪道とルアーをつくることになったんです」
大野「ゴッツアンミノーを作るに当たっては、僕の頭の中に欲しいルアーのコンセプトがおぼろげながらも出来上がっていました。東京湾奥エリアのハイシーズンは河川の橋脚周りにできる明暗部を狙うアングラーが非常に多く、プレッシャーも高くて相当苦労します。だからそういう人気スポットは避けて、橋と橋の間で光がほとんどない、真っ暗なシャローエリアを狙うことがあります。イナッコを壁際まで追い詰めて捕食するアクティブな魚とのゲームが楽しめて、当時はフローティングのリップレスミノーを多用していました。
しかし、そのどれもが重心移動タイプで、飛距離は出るけれどアクションの立ち上がりがイマイチ。距離の短いプロダクティブゾーンの中で着水直後からすぐにアクションして誘えるためは、どうしても固定重心モデルが欲しかったんです」
「ごっつあんミノー」ネーミング由来
信じて使えばごっつあんバイトも期待できる…か!?
大野「僕の祖父が横綱・照国ということで…相撲用語の『頂戴しました、ごちそうさま』の意味をもつ“ごっつあん”を付けてみました。シーバスが釣れた時に『釣れてくれてありがとう、遊んでくれてありがとう』という意味も込めてのダブルミーニングでもあります」
ごっつあんミノーの誕生
大きさも違うだけでなく、コンセプトも大きく違う
大野「ごっつあんミノーは89Fと125Fの2種類がありますが、固定重心モデルは89Fのみ。まずはその89Fの特長を説明します。前述のように短いプロダクティブゾーンの中でキャスト後すぐに誘いのアクションが出せるのは、固定重心モデルが圧倒的に有利です。しかし、それだけでリトリーブと同時に理想のアクションが出せるわけではありません。固定重心と同時に重要なのが水受けでヘッド前面&リップの面積や角度のバランス取りには苦労した記憶があります。
大野「ここで勘の良い読者の方なら『リップの面積?リップレスミノーを作りたかったのでは?』と疑問に思うでしょう。このリップのように見えている部分は無着色かつ斜め下に大きくせり出してるのでそう見えますが、僕はボディの延長線上にあるフォルムの一部と捉えています。
使い方はデッドスロー~スローリトリーブだけでOK。20~30cmのレンジをキープしつつ、スローピッチのウォブンロールを発生してアピールします。また動くか動かないかのスピードで水面に引き波を立てながら巻くことで、群れからはぐれた単体のイナッコを演出することができます。岸際のシャローで、アップクロスに投げて流れに同調させるとより効果的です」
てっきりリップ付きのミノーだと思っていたが…。
リップに見える突起物、大野さん的には『ボディフォルムの一部』という解釈なので、リップレスミノーなのだ。ベリーのエッジパターンとテールのくぼみによって水流をコントロールし、スローピッチな喰わせのアクションを実現。
大野「一方の125Fは飛距離を追求して重心移動システムを採用し、コンセプトも89Fとは異なります。12cmクラスのミノーといえば、ただ巻きによるルアーアクションで誘うのが一般的です。意図的なアクションを加えようとするならば、一瞬もんどりうって終わり…がほとんどです」
大野「しかし、この125Fはアングラーがアクションを与えることで、キレイにダートさせることができる。逃げ惑うベイトを演出できたり、喰わせの間を作ったりすることができるのは、12cmクラスのミノーとしては大きなアドバンテージになるはずです。使い所は橋脚周りの明暗部はもちろん、干潟などの広大なシャローエリアをロングキャストで広く探るのも効果的。その中で何らかの変化が感じられる『ここぞ』という場所が見つけられて、そこでダートさせることが出来ればバイト率は確実にアップします」
ごっつあんミノー125Fの得意技”スーパーうっちゃりダート”とは?
必死に逃げるベイトは最後の最後で驚異的な動きを見せる!?
シーバス」に追い詰められたベイトフィッシュが、何とか逃れようと懸命に右往左往する様。これを演出するダートが、あたかも土俵際まで追いやられた力士が火事場のバカ力で最後の攻勢をかける“うっちゃり”のようだということで、命名。この辺りにも祖父の横綱・照国の影響が大きい。
ごっつあんミノーは少し真面目に作りすぎたかも
大野「ごっつあんミノー、特に89Fはただ巻きで誰もが使えて釣れるオーソドックスなルアーです。だからこそ発売から6年経った今でも第一線で活躍できるロングセラーになったと自負しています。
ただ後悔というわけではないですが、どうせ『邪道』というキテレツなブランドから出すのであれば、もう少し良い意味でキレた、イカれたルアーを作っておけば良かったかも…という思いがあるのも事実です。今後機会があれば、邪道という名に偽りのない誰もが驚く、もちろんしっかりと釣れる性能を持ったルアーを作りたいと、今は改めて思っています」
大野色=ハッピーレモンは夜に強い!
ごっつあんミノーに限らず、大野さんと言えば「ハッピーレモン」。
大野「夜に圧倒的に強い色。側面弱スケルトン&クリアホロで微妙なフラッシングを起こすのがいい。逆に日中はブルースカイなどのベイトライクなナチュラル系がメイン」
オーソドックスで誰でも使えるルアーだからこそ釣れる、だからこそロングセラーで未だに人気が高い。
大野「邪道としてはマトモ過ぎて、ある意味邪道っぽくないルアー。第三弾はやるとしたら、もう少しトンガってもいい…かな?」