日進月歩。いま、注目を集め、一大ジャンルに成長しつつある「アジング」という釣り。そのパイオニアメーカーとして、業界を牽引するライトゲーム専門メーカーでもあるサーティフォーから、最新のグラファイト素材を使用した最先端のアジングロッド「ADVANCEMENT63 VersionⅢ」が発売される。どんな特徴があるのか。開発時から追いかけてきたルアマガプラス が徹底解説します。
高弾性素材の特徴を生かすナノアロイ技術を採用した
攻めの55tカーボンを採用した次世代機
高弾性=高性能という業界のミスリードは終焉し、全ての素材は適材適所、釣り方次第という正しい情報がようやく浸透してきたなか、今回紹介するサーティフォーの「ADVANCEMENT63 VersionⅢ」は、その時代の流れに抗うような、高弾性カーボン素材となる55tグラファイトを採用しています。
ですが、適材適所という考え方をするならば、高弾性グラファイト素材と、アジングロッドの相性はそもそも悪くはありません。ただ、今まで、相性が良い高弾性グラファイト素材をアジングロッドに採用しずらかった理由のひとつが、高弾性素材ゆえの破損率の高さ(強度不足)といえます。
仮に実用域に高めようと思うと、強化のためにレジン量(グラファイト素材を束ねてシート状にするための接着剤のようなもの)を増やす必要があり、そうなると重量が増すことから、高弾性の持つ性能を活かしきれない、そういった難点があり、神経質にならざるを得なかった背景がありました。
圧倒的にセンシティブで軽く、軽いジグヘッドを少ない入力で遠くに飛ばすことのできる高弾性グラファイトの存在がありながら有効に生かす技術がなかったと言えるかもしれません。
ですが、東レの革新的技術「ナノアロイ®️」の登場により、高弾性グラファイトの強度が格段に向上しました(正確には高弾性素材を活かしやすくなった)。その技術と高弾性グラファイトのシナジーは、ある意味革新的だったと言えます。
ナノアロイ技術はとってもロッドと相性の良い技術だったのだ!
ヤズ「なぁ、いまやぁ、エギングロッドを物色しているんやけどやぁ、このナノアロイがどーのこーのゆうのはなんなんや。ナノアロイやったらなにがええんや」
高価格帯のロッドに使われること…
高弾性グラファイトの高い反発率、性能を生かす強度と粘りが素材に与えられ、まさにその性能をリニアに活かすことが可能になったわけですから、もともと、アジングロッドと高弾性グラファイトの相性に注目していたサーティフォーの家邊克己さんは、ナノアロイ技術採用の高弾性アジングロッドの開発にすぐさま着手しました。
さらりと、55tと申し上げましたが、高弾性カーボンのなかでも、さすがにこの弾性率の素材を使ったルアーロッドは多くありません。なおかつ、ナノアロイ技術を採用した55tプリプレグとなると、一部のメーカーでしか使用していません。
なおかつ、この弾性率を活かしたルアー釣りジャンルもそう多くはありません。アジングは、ある意味この高弾性素材を活かしやすいジャンルということもあり、実践主義のサーティフォー家邊さんの目にとまったのでしょう。その最新素材を全身に纏ったのが「ADVANCEMENT63 VersionⅢ」なのです。
「ADVANCEMENT63 VersionⅢ」の実力
高弾性らしいティップの収束により、キャストのスムーズさは非常に高いレベル。高弾性素材を意識すると、このスルスルと違和感無くラインが抜けて行く感覚は、非常に奇妙な感覚ですらあります。
家邊さんは「0.5gの軽量ジグヘッドがサーティフォー全ラインナップの中でもっとも投げやすいレベル」と話してらっしゃいます。本来軽いリグの場合、ルアーの自重だけでなく、振り抜いた際のロッドの曲がりなども利用してディスタンスを稼ぐわけですが、その挙動を感じさせないので、びっくりします。なので、実際に使い込んでいないともしかして不安に思われるかもしれません。
ナノアロイ技術が採用されたロッドは通常よりもやや高弾性に感じる特徴もあり、空振りやウエイトを載せない状態で振ると、「棒のように」感じがちですが、0.5gのジグヘッドでもしっかりとブランクにウエイトを乗せて、距離を稼げるあたりを考えると、ロッドとしてのキャスト機能は一切スポイルされておらず、むしろこの部分の高弾性さが際立ちます。
ちなみに、中弾性素材のT1100Gはナノアロイ技術が採用されているプリプレグですが、これを使ったロッドが相対的に感度が高く感じるのは軽量化されている恩恵だと感じています。ティップのブレ収束が速くなるのも同じ原理かと思われます。
高弾性化すると、メリットとしては情報感度が高くなること、強い反発力ゆえのリニアな操作感などが挙げられるかと思います。家邊さんご自身は「必要以上の感度はロッドには必要ない」とおっしゃっている釣り人ではありますが、55tという高弾性の持つ水中を丸裸にするかのような感度ともなると、少し、事情が変わってきます。扱える人にとっては、武器になるからです。
製品版の最終プロト実釣から見えた、新次元
ルアマガプラススタッフは、7月後半にADVANCEMENT63 VersionⅢの製品モデルの実釣に立ち会うことができました。取材地は鹿児島県錦江湾。ボートでガイドを行なっている「クレイジーフィッシュ」。船長は四元(よつもと)さん。
錦江湾の「クレイジーフィッシュ」は、止水域のように穏やかで時化にくい錦江湾ということもあり、まるで陸っぱりで釣りをするようなアジングが楽しめることから、家邊さんが商品のテスト釣行で多用する釣り船です。
狙うレンジは25m前後。この日のアベレージは20cmから25cm前後。ジグ単、ARシステム(ナス型重りを使ったボート向けの釣り)などを駆使して、どんどんとアジを釣り上げていく家邊さん。55tナノアロイという最先端素材を纏った良い意味での違和感は開発者の家邊さんですら笑みが溢れる使用感と、異次元の操作感。
空振りするだけだと、棒のように感じるかもしれないそんなロッドですが豆アジクラスを掛けても、楽しめるアクション。そして、水中の探知機としての極限性能を秘めた高感度。記者も触らせていただきましたが、ここまでくると、水中を丸裸にするようなレベルなので、その使いやすさに舌を巻きます。
ADVANCEMENT63 VersionⅢ。8月に店頭にならぶとのこと。手に取られた方で、もし、「パワーがありすぎるのではないか….。固すぎるのではないか…」と思われた方、安心してください。使用すると良い意味で裏切られます。最先端素材のアジングの楽しさをこのロッドで味わってみてください。
ルアマガとコラボ開発中のADVANCEMENT65にも乞うご期待!
現在、サーティフォーで欠番となっている6フィート5インチという、ADVANCEMENTを冠したロッドを開発中です。こちらも最新マテリアルを活用しつつ、連日、実釣テストを刊行し、アクションを煮詰めております。
家邊「なんで6フィート5インチがなかったかって? 好きな長さなんで取ってたんですよ(笑)」
そういや、アジングロッドは6フィートを切る長さが流行りですし、家邊さんも短いロッドを推してらっしゃいませんでしたか?
家邊 「短いロッドは初心者が扱いやすいからですよ。動かさないフォールで釣るアジングを僕らは提唱してますからね。短いロッドだと動かし過ぎないでしょ? 逆に、僕は6フィート代のロッドのほうが好きですよ。動かし過ぎないということをわかっていれば、捌きやすい局面が多いですからね」
こちらも現在鋭意テスト中。しばしお待ちくださいね。すごいロッド作りますよ!