今年度注目の新製品としてDAIWAからリリースされた、青物やヒラメをはじめとするショアから狙えるあらゆる魚種をターゲットとしながら、遠投性能と軽量性、そしてパワーを兼ね備えたマルチキャスティングロッド『オーバーゼアAIR/オーバゼア』。今回ルアーマガジンソルト10月号にて、開発に携わったDAIWAスタッフ・高橋慶朗さん実釣取材を通じてその魅力を徹底解説してもらいました。
オーバーゼアのおさらいはこちら
OVER THERE/OVER THE…
新しい『ショアキャスティングゲームの入口』と『サーフフィネス』への対応
ソルトルアーフィッシングの隆盛は、シーバスフィッシングに端を発すると言えるであろう。今でこそ多くの魚種が岸からのルアー釣りで狙われているが、全国的にその人口が一気に増えた要因がシーバスだったことに異を唱えるものは少ないはずだ。
今ほどの規模ではないにせよ、サーフエリアもそのご多分に漏れず、多くのアングラーが訪れた。そしてやがては新たなターゲットとして、ヒラメやマゴチと言ったフラットフィッシュが台頭していった。
また、同じ頃からフィールドを絞らず、遠投して青物からロックフィッシュまであらゆるターゲットが釣れるショアジギ系の釣りも人気となっていった。似て非なるこれらの釣りを分け隔てたのは業界の功罪か。
しかして再びこれらの釣りがひとつになるときが訪れたのかもしれない。その大いなるきっかけとなるロッドをDAIWAがリリースしたのだ。
その名は「オーバーゼア」。
このロッドが生まれたきっかけを、生みの親であるDAIWAスタッフ・高橋慶朗さんにお話を伺った。
高橋「シーバスから始まり、フラットフィッシュゲームに発展してきたサーフの釣りですが、今では青物も狙うショアジギ要素を兼ね備えた『バーサタイルゲーム』として人気になりつつあります。
そのユーザー層って、実はビギナーが多いんですよ。
そのきっかけというのが、例えばサーファーが浜で釣りをしている姿を見て、とか、定年退職した人が浜辺を散歩している時に青物を釣っているのを見かけて、とかなんです。だから値段を高く設定してしまうと、敷居が高くなっちゃますよね。だから敢えて2~3万円代に抑えるようにしているんです」
高橋さんいわく、サーフでのキャスティンゲームに入門してくるのは、サーファーや定年退職した人が多いのだという。確かに思い返してみると、マリンスポーツを楽しんでいる人や、水辺を散歩している人を見かけることが多いかもしれない。新たな仲間を増やすためにも、そういった人たちにも好印象を持たれるように心がけよう。
とは言え、そのコンプトにもちろん抜かりは無い。
高橋「オーバーゼアを一言で表すなら、サーフでも堤防でも、この竿で色々釣ってしまおう。というわけです。そして全モデルで共通しているのが、一日中使っても疲れない軽快感。そのためのキモである軽さがこだわりのポイントです。
でもだからといって、軽いだけでパワーが無いだけではありません。張りがあって飛距離を出せつつ、軽い!これこそがオーバーゼアのコンセプトです」
そこだけ聞くとまるで入門モデルなだけの印象を受けるが、実はそうではないのがオーバーゼアの凄いところだ。
高橋「『フィネスサーフ』。これは私が以前から提唱している釣りなのですが、バス釣りで言うフィネスのように、繊細でスローな釣りをサーフでやろうというものです。周りが沈黙する中で一人だけ爆釣を味わえるこの釣りにも対応させているんですよ!」
全投フルキャストからの脱却
ショアジギ用では強い、シーバス用では弱い。それなら…
高橋「極端な言い方をすると、全力のフルキャストで出せていた飛距離が、8割の力で出せるイメージなんですよ」
ショアジギをはじめとしたキャスティングゲームでは、とにかく遠くへ飛ばすことが要求される。すると理想は毎回フルキャストであり、そうなると体力の消耗もかなり激しい。しかしオーバーゼアであれば、同じ距離を飛ばすのにも20%も余力を残せるのだという。これは間違いなく、強力な武器となるはずだ。
高橋「実はこの釣りって、シーバスロッドを流用している人が多いんですよ。でもシーバス用のロッドはあくまでもプラグを巻くためのロッドでよく曲がるじゃないですか。つまり張りが無いってことなのですが、そうすると遠投しにくい上にジグをシャクる動作との相性が悪い」
もちろん、ショアジギ専用ロッドも存在するのだが、オーバーゼアではそこに隠されていた欠点をもクリアしたのだ。
高橋「ショアジギ用ロッドなら確かに遠投に適した張りの強さがあります。でもその分、しっかりと力を入れて曲げる必要がある。力の弱い女性なんかであれば特に顕著で、ほかのロッドでは出せなかった距離が、オーバーゼアなら簡単に出せています」
そんなオーバーゼアの特徴を決定づけている要素こそがブランクスの設計だ。
高橋「このロッドのブランクスは、薄く太く巻くことを意識して作られているんです。だから実物を手にとると太いという印象を受けると思います。例えば似たスペックのシーバス用ロッド『モアザン』と比べると、1.5倍くらい太いと思います。ですがこのことで、ショアジギロッドよりもよく曲がるけど感度が良いというセッティングを実現しているんです。そしてバット部分に補強を入れることで、ジグの操作性も確立しているわけなんです」
オーバーゼアのコンセプトや特徴が分かったところで、現在リリースされている4機種について高橋さんに各番手ごとのインプレッションをして頂こう!
オーバーゼアAIR 109ML/M
高橋「もともとはサーフ用のシーバスロッドで同モデルがあるのですが、そのモデルよりもバットを強くしてティップに繊細さをもたせました。1~2kgクラスの青物や大型のヒラメ掛かってもしっかりと対応ができ、メタルジグやヒラメルアーなども繊細に操作することが可能となっています。
またこのロッドは私が提唱する『サーフフィネス』を具現化したロッドになっています。
昨今、ヒラメのルアー釣りがブームになって、サーフには人が溢れています。でももちろん全員が全員、ヒラメをそこで釣っているわけじゃない。でもヒラメは確かにそこにいる。朝マヅメが終わって、他のアングラーが釣れずに帰ったあと、サーフで色々試す中で、弱い動きや軽いルアーを使うとまだまだ反応を得られることがわかったんです。そういった言わば繊細な釣りを『サーフフィネス』と呼んでいて、そこに対応した操作感を持たせているのがオーバーゼアの109ML/Mという番手です」
【スペック】
●全長:10ft9in(3.28m)●自重:180g ●継数:2 ●適合ルアー重量:7~45g ●適合ジグ重量:7~50g ●適合ライン(PE):0.8~2.0号 ●価格:33,000円(税抜き)
オーバーゼアAIR 1010M/MH
高橋「109ML/Mに強さを持たせたロッド。実はこちらもDAIWAシーバスロッドでも同番手があって、そのロッドもすごく使いやすかった。元々大型のシーバスに対応したモデルだったのですが、ヒラスズキも出来て、3kgクラスの青物に対応出来る非常に使い勝手の良い番手だったんです。それをオーバーゼアに落とし込んでバットからベリーは強め、ティップはシーバスロッドの繊細さを兼ね備えているんです。ブランクスによる特性の違いはありますが、軽快感はハイエンドクラスにも劣りません。
M/MHというアクションにしたのは、MHであるとショアジギロッドになってしまうので、ミノーやシンキングペンシル、バイブレーションなどの操作性も兼ね備えながらメタルジグも扱えるようにバーサタイル性をもたせるためです。
座布団クラスのヒラメからイナワラ(メジロ)やオオニベ、アカなどにも対応したシリーズの中核を担うロングスタンダードモデルになります」
【スペック】
●全長:10ft10in(3.30m)●自重:195g ●継数:2 ●適合ルアー重量:10~60g ●適合ジグ重量:10~65g ●適合ライン(PE):0.8~2.0号 ●価格:33,500円(税抜き)
オーバーゼアAIR 103MH、オーバーゼアAIR 109MH
高橋「この2本のロッドはスペック通りMHのロッドです。ティップも強いので、上記のロッドのような繊細な操作というよりは、ダイビングペンシルやポッパーなどのアクションのしやすさ、通常のショアジギングのシャクリに対応したハリをもたせ、フルベントさせたときも安心してファイトできるレギュラーテーパーアクションのロッドになっています。
青物は5kgクラスのワラサ(メジロ)まで対応していてサーフでしっかり走らせてファイトすればブリまでいけちゃいます。103はショアジギング、109はプラッギングに寄せたスペックになっています。あと近年西日本でも話題になっている「ショアレッド(真鯛)」にも対応出来ますよ」
【スペック】
●全長:10ft3in(3.12m)●自重:189g ●継数:2 ●適合ルアー重量:15~60g ●適合ジグ重量:12~65g ●適合ライン(PE):1.0~2.5号 ●価格:33,500円(税抜き)
【スペック】※109MH
●全長:10ft9in(3.28m)●自重:203g ●継数:2 ●適合ルアー重量:15~60g ●適合ジグ重量:12~65g ●適合ライン(PE):1.0~2.5号 ●価格:34,000円(税抜き)
まもなく秋本番を迎え、ソルトルアーフィッシングもハイシーズン突入! あらゆる魚種が狙える秋こそ「オーバーゼア」の真価もさらに発揮されるだろう。 気になる方は一度手に取られてみてはいかがだろうか?