今年もタチウオシーズンが本格開幕しました。漁師が膨大な量のタチウオを水揚げしているせいか、年々タチウオの釣果は厳しくなってきています。そんな難しくなってきているタチウオ界の中で、一人気を吐いているのが『どじょうテンヤ』釣りです。バイトが多い、ハリ持ちがいい、釣れ続く、などいいとこだらけのどじょうエサでのタチウオテンヤ釣法。淡路島での実釣記録をお届けします。
(Text & Phito : 柳生豊志)
解説していただくのはタチウオテンヤ釣法のパイオニア!
今回の実釣取材場所:淡路島おのころ周辺
淡路島おのころ周辺※駐車できなくなってます!
ロケは淡路島中部のおのころ周辺で行った。盆前まではこれまでどおり岸壁沿いの空きスペースに駐車できていたが、現在は進入できなくなっています。おそらくコロナで激増した釣り人の残していったゴミが原因だと思われます(家族連れやバーベキューなどをする人が激増していた)。取材班は徒歩15分ほどの公共駐車スペースに停めて取材を行いました。くれぐれも路上駐車はしないようにお願いします。
集魚効果が高く、どじょう1尾でタチウオ10尾は釣れる驚異のエサ持ち
バイト多し、エサ持ちヨシ、手返し抜群どじょうテンヤのアドバンテージ
これまで何度かどじょうを使ったタチウオのテンヤ釣りを弊誌「釣りどき関西」にてご紹介してきましたが、ここでもう一度まとめておきましょう。どじょうテンヤの何が優れているのかを。
まずは「どじょうの集魚力の高さ」。どじょうは田んぼに澄んでいる淡水魚であり、粘液を出し独特のクセがある。そのため海の魚を釣るエサとしてはどうなのか?と素人は思ってしまうが、これが実に高い集魚力を誇る。どんな魚種にも万能、というエサでは決してないが、タチウオには抜群に効く! というのはこれまでの取材結果からも間違いない。
そして「どじょうは丈夫」というのも大きな魅力。タチウオの歯は魚類最強と言っても過言ではないほど鋭い。指なんか触れただけでスパッです。そのためキビナゴやサンマエサでは1度バイトされるだけでボロボロになってしまう。つまりバイトがあるたびにエサ交換が必要という、たいへん手返しの悪い釣りになってしまう。
しかしどじょうは皮は切られるが身が非常に丈夫で、おおげさではなくどじょう1尾でタチウオ10尾は釣れるのです。これは活性の高まったバイトラッシュ時にはものすごく大きな差になるし、一度どじょうをセットするとルアー感覚で使えるのです。
STARTフィッシング! 「テンヤ」はとにかくアタリが多い!
タチウオがいればなんらかの反応がある
日没直後にチーム浜番長の全員が揃ったのでSTARTフィッシング。やはり暗くなってからがいいですか?
市橋「そうやね、接岸して浮き始めるのは暗くなってからがほとんどやね。まだ薄明るいうちはカウントダウンしてちょっと深めのレンジから探っていきます」と市橋さん。この日は大潮で潮が右から左へとかなり効いている。
市橋「潮が効いてないとカウント0から巻き始めて、途中でフォールを入れて深い層も探っていくけど、今日みたいに沈みにくい潮だったら、最初に沈ませないと深いところは探れない」
市橋さんが得意なのは完全に暗くなってからのシャローレンジの釣りだが、まずめに近い時間帯は広いレンジを釣り分けるのが基本的な作業となる。
市橋「タチウオがおったらどじょうテンヤには絶対に当たって来るので、おるかおらんかがはっきり認識できるのがいいね。場所の見極めにも役立つし、なにより勝負が早いのがいい」
という解説を効いている間に川口さん、宮前さんがポンポンと釣り上げた。
市橋「結構上で釣れてるね。潮がいってるから11gにしてたけど、6gで十分そう」
市橋さん得意の軽量ヘッドにチェンジすると、速攻でヒット。指3本ほどのレギュラーサイズ。
市橋「タチウオがおったら当たってくるからわかりやすい。どじょうも全然ボロボロになってないでしょ。一度セットしたら何度も使えるのもどじょうテンヤのええとこなんです」
どじょうテンヤにうってつけな『スパークテンヤ(アクアウェーブ)』
どじょうをセットすることを念頭に開発されたタチウオ用テンヤである「スパークテンヤ(アクアウェーブ)」。市橋さんのどじょうテンヤのノウハウが凝縮されているのだ。
ロングとショートはエサのサイズで使い分ける
市橋さんはショートタイプにアシストフックを取り付けて使用。フックポイントが後ろに伸びるので、どじょうとの相性は抜群。
ショートタイプには“必須”な「スパーク・アシスト(アクアウェーブ)」
ショートタイプにはこれまた市橋さん開発のスパークアシストをセットしよう。メインフックにしっかりと固定できるためトラブルが少なく、絶妙な張りのワイヤーを使っているため、触れただけのバイトでもしっかりと掛かっていくれる。ワイヤー効果でバラシも少ない。
どじょうやキビナゴの代わりにワームをセットするのもあり!
スパークテンヤシリーズには専用のワーム「スパークテンヤワーム」もある。エラストマー製で非常に丈夫なため、活性が超高く手返し重視のタイミングでは強みを発揮する。
スパークテンヤのバリエーションは6g,8g,11g、15gの4種類。ワイヤーリーダーもセットされているが、市橋さんはナイロン70ポンドリーダーを使用する。アシストフックは1サイズ展開。
どじょうテンヤタックル例
ロッドはエギングロッドや柔らかめのシーバスロッドで十分。ラインはPE1号程度、ショックリーダーにフロロ4〜5号を1mほどとり、テンヤに付属のワイヤーリーダーにセットするか、市橋さん式に70号程度のナイロンリーダーを50cm以上とる。どじょうエサならミスバイトが少ないのでワイヤーリーダーはなくても大丈夫なことが多い。ケミホタルはテンヤの上50cmぐらいの場所にセット。通常の黄緑色が無難。
テンヤにどじょうをセットアップ!
どじょうテンヤの釣りでもっともハードルが高いのが、どじょうのセット方法。最初にしっかりと気絶させると、案外簡単にセットできますよ。
どじょうの入手方法と保管方法
活きどじょうは海に近い釣具店では販売していることが多い。事前に電話で確認するのが無難。なるべく大きなサイズを購入しよう。どじょうは肺呼吸ができるので、こんな入れ物に入れておいても弱らない。このまま持って帰っても数日なら元気にしている。非常に利便性の高いエサなのだ。
冷凍どじょうもあり! ネット通販などで冷凍どじょうを購入することもできる。喰いは活きどじょうと変わらないそうだ。
どじょう固定用ワイヤーも用意しておこう!
ワイヤーもパッケージに入っているが、なくなったらホームセンターで安価に入手できる。0.3ミリ径が使いやすい。
もちろんキビナゴでも使えます!
タチウオ釣りの定番エサである冷凍キビナゴも、スパークテンヤにセットできます。アシストフックは付けてもいいが、お好みで。喰いはいいのだが、1度バイトがあっただけでボロボロになってしまうのが辛いところ。
必見!市橋さんの裏ワザセッティング
テンヤとさらなる一体化頭と内臓をとってセット
市橋さんは喰いの渋いときなどは、どじょうの頭と内臓をカットし、テンヤヘッドの高さと同じになるようにどじょうをセットする。大型のどじょうを購入するのがポイントだ。
逆に抵抗になるようなセットも
同じ頭をカットしたセット方でも、内臓をとらずにあえて段差を設けるセットも。風が強く流されやすいときは、この段差で抵抗を生みアンカーのように水中で踏ん張らせるのだ。
どじょうテンヤのアクション
どじょうテンヤのアクションは極めてシンプル!着水後に2〜3度やさしくシャクってテンヤの存在をタチウオに知らせてやる。そこから一定速度のリトリーブでレンジをキープしてアタリを待つのだ。
明るいうちはカウントダウンで沈めてからフワフワ&リトリーブ。暗くなれば着水直後にフワフワ&リトリーブで表層付近を探る。
今年は群れが小さいので食いが止んでも諦めるな
日没直後に川口さん、宮前さんがキャッチしたあとに、市橋さん、上田さん、奥さんとたて続けにキャッチ。速攻でチーム浜番長全員安打を達成してしまった。最近は大阪湾のタチウオが不調で心配してたんですよ。
「やっぱりだいぶ減りましたよ。今年は少し戻してますが、サイズが小さいですね」と市橋さん。
市橋「スタート時期も遅くなってるし、数も減っている。最近は魚屋にタチウオがたくさん並んでいるが、漁師が相当捕りまくっているのも影響しているかもしれない。昔と比べるとむずかしくなったタチウオ、しかし工夫次第でまだまだたくさん釣れます。
大事なのは、実績のあるポイントで、潮の効いている時間帯に粘ることでしょうね。キャストで届く範囲に群れがいるかどうかなので、少しの違いが大きな差になって現れることが多いです」
タチウオ釣りをしていて一番不安なのが、キャストしているところに果たしてタチウオが回遊してくるのかどうか。アタリが少ない釣法でやっていると、タチウオが居ても反応がないかもしれず、そこで粘るか移動するかの判断基準となる情報が足りない。
その点、どじょうテンヤは、タチウオがいれば必ず反応がある。ちょっとした魚探のようにも使える安心感が、タチウオ釣りをより簡単にしてくれるのだ。
市橋「強風のときや潮が早すぎるとき、明るい時間帯などは11gも使うけど、やっぱりよく釣れるのは6g。フワフワと軽いほうが喰いは断然いいですよ」
誰かに当たると周囲の人にヒットが続く。一旦アタリが止まっても、30分ほどすればまたアタリ始める。群れの規模が小さいようで、一度に釣れる数は少ないが、粘っていれば新しい群れが入ってきて再びパタパタと釣れ始める。今年はこんなパターンが多そうだ。
どじょうとキビナゴを交互に使っていた川口さんが尾数を伸ばしている。今日はキビナゴもいいみたいですね。
川口「アタリはどじょうと同じぐらいですけど、今日は乗る回数が多いですね。でもキビナゴは一撃でボロボロになってしまうのでだいぶ面倒ですよ。前に買ったキビナゴが残っているので、使い切ろうという目標だからやれていますが…」
市橋「バイトはキビナゴでも十分出てるようなので、どじょうが手に入らない人も冷凍キビナゴで大丈夫です。ただハリ持ちはどじょうが圧倒的に優勢のようですが。少し釣果的には簡単ではなくなってきたタチウオ釣りですが、工夫と努力でまだまだたくさん釣れています。ぜひ一度、どじょうテンヤのバイト多発ワールドを体験してみてください」
潮の大小は関係あるの?
実釣取材日は満月の大潮。タチウオにいい潮というのはあるのでしょうか?
市橋「岸釣りではあんまりこだわらないね。動いてたらいい程度。それより潮目が近いかどうかが大事。上げでも下げでもどっちでもいい。潮が当たってる、というよりも払い出してるときのほうがよく釣れるね」
どじょうは延々釣れ続くんです!
どじょうテンヤにはスレるという概念があまりない。タチウオが居てくれればバイトが延々続く、数釣りを目指すには最高の釣法だ。
激しくシャクらず、おとなしい一定リトリーブで誘えるという釣法が、スレずに延々釣れ続ける秘訣だろう。エサを付け替える手間が不要に近いのも数が伸ばせるヒミツだ。