ルアーマガジン本誌で最長期連載を誇る「菊元俊文のQ&A一刀両断」。今回は「バラム300を使ったエイトトラップのコツ」を解説。基本的な釣り方から創始者のひとりである菊元さんの「完璧」なロッド・リール・ラインといったタックルの組み合わせを語っていただきます。バス釣りの中でも「エイトトラップ」はかなり特殊な技術ですが、興奮度も格段です!
バス釣りの疑問点を菊元さんが「一刀両断」!
Q:バラム300を池原ダムで使っています。
うまくエイトトラップに持ち込むにはどうすれば?
バラムの釣りを学ぶには、池原ダムは最適な場所ですね。エイトトラップは、巻いて来て食い切らないバスに対し、食わせるための最後の悪あがきです。でも、追いかけて来るバスにやる気がなかったりすると、エイトトラップはたいてい不発に終わります。
菊元さんのエイトトラップ成功例。そのコツは…?
まずはキャストアキュラシーを磨こう
まず最初のステップは、重たいバラムをある程度以上コントロールできるようになること。これには練習が必要です。どこが釣れる場所なのかは経験を積まないと理解できませんが、キャストは慣れと練習で上達できます。
エイトトラップが有効な場所とは?
次のステップは釣れる場所の見極めです。バラムでは追い詰められる水面に加えて、もう一つ別の壁がある方が有利なので、垂直な岩盤、それもテラス状の張り出しや裂け目などバスが待ち伏せ出来る壁。あるいは橋脚などの垂直マンメイドが分かりやすい狙い目です。
バスに感づかせない「操船技術」もキモ
こうした「壁」に対して、引いて来るバラムを当てるくらいタイトにトレースします。つまりタイトトレースができる操船技術が必要になります。
またキャストするまではエレキでボートの向きを決めますが、バラムを巻き始めてからは、エレキを踏むのは「厳禁」です。チェイスして来たバスが、エレキの音の違和感で一気にチェイスを止めます。これは最も多い間違やすい操船です。
よって風や流れ、エレキの惰性を読みながらタイトトレースしつつ、最終的にエイトトラップで仕留めたい場合、ボート近くまでバスが追って来た時に、岩盤や橋脚の壁際などエイトトラップが有効な位置にボートを導く操船が必要になります。壁から離れた場所でのエイトトラップは、よほどやる気のあるバスか、複数のバスで獲り合う状態でないとバイトする確率がかなり低くなります。
エイトトラップは「完璧なタックル」で臨むべし
エイトトラップで釣ろうとするとき、なにより大切なのはタックルです。エイトトラップ創始者のサタン島田と僕が愛用しているのは、ヘラクレスアクテオンマグナムEXというロッド。
他のロッドに比べると柔らかく感じるかも知れませんが、168グラムのバラム300を乗せて楽に遠くまで運べること、さらに至近距離でラインがほとんど出ていない状態のエイトトラップにおいて、高い確率でフッキングに持ち込めるしなやかなティップを備える唯一無二のロッドです。
次にリール。これは糸巻量が多く、ハードな使用に耐え、超速巻きに対応し、しなやかな巻き心地が絶対必要と言うことで、今のところアンタレスDC MD XG一択です。ラインはナイロン、バスザイルフレックスハードHD25ポンドです。これも至近距離での食い込みを重視したラインで必須です。
すべてを合計するとかなりの出費にはなりますが、この手のエクストリームな釣りではタックルセッティングが釣果を左右すると断言します。
A:エイトトラップは最後の手段。
まずは万全の対策と経験が必要だ。
まとめると①完璧なタックルで臨むこと。②アキュラシーを磨く。③タイトトレースを心がける。④巻き始めたらエレキは踏まない。⑤操船技術を磨き、水面ともう一つの壁を利用する。ということです。
ある程度やり込んで、バスが出て来る場所が理解できるようになったら、ローライトになる、雨が降り出す、カレントが強くなる、強風が当たるなどのタイミングで、同じスポットに何度も入り直してください。
何時間もノーバイトでも、上記のことができていれば5投連続でデカバスが出て来るのがバラムの釣りの魔力です。
最初はノーフィッシュなど恐れず、投げ続けることで分かってくることがあるはずです。
菊元さんは池原ダムでのロケ中に番組記録の63.5センチをキャッチ!
すでに観てくれた方もおられると思いますが、釣りビジョン「BIGBITE」池原ダム編では番組記録となる63.5cmをバラム300でゲットしました。
エイトトラップではなく、橋脚すれすれを速巻きしてのポーズで、おもむろに出てくれました。ロケ2日目の出来事です。
この時はタフだったこともあり、ラストエース80Fやスモラバまで総動員させてしのいでいたのですが、狙いに行って研ぎ澄ました橋脚へのバラムの第1投が不発。「これはダメだ」と思った直後、「ひょっとして…」と至近距離から投げられたことがデカバスに結びつきました。
器用にライトリグなどでしのいでいては、結果的に遠回りして出会えなかった魚、釣れなかった魚が釣れてしまうのです。ましてバラムにはそういったデカバスを引いて来る力があるのだからなおさらです。今回のロケでのロクマルはそれを再認識させてくれる魚でした。
その次のThe Hitのロケもドピーカンベタ凪で、途中からノーフィッシュを覚悟するほどヤバかったのですが、少しの風を感じて結んだラウドバズでの1本。さらに、ドクリアかつ浅すぎのバックウォーターのドン付きで、「ひょっとして…」と思い、それまで全然ダメだったバラムを投入して釣った魚も決してデカバスとは言えないサイズでした。
これらの魚は今後も自分は、自分の勘や閃きにしたがってバス釣りを続けるのが正しい道だと、教えてくれた気がしました。
いまさらながらですが、自粛期間に釣りに出れず悶々とした気持ちでいた頃のことを思い返せば、釣りに出られること、アタリを感じること、そしてデカバスを釣る喜びと幸せに感謝しながらバス釣りを続けていきたいな。