Vの系譜
ここからは初代Vフラットに端を発し、脈々と受け継がれていったメガバスのスピナーベイトの歴史、言わばVの系譜を紹介しよう。
1986年:Vフラット(MS001)
記念すべきメガバス初のルアー。現存数は少なく、写真のルアーもメガバス社に資料として残された貴重な品(スカートは換装済み)。
新利根川や印旛沼、カスミ水系のベジテーションエリア攻略を目的として開発された。
素早い浮き上がりと姿勢変化から復帰のレスポンスを求めた元祖Vフラット形状のヘッドが特徴的。砲弾型が一般的であった当時からすると、革新的な高機能ヘッドであり、アシのエグレにバックスライドさせることすら可能であった。
1989年:Vフラット(MS002)
全国的人気を受け、浜松の工場にて製作されたVフラット。
岡山県の高梁川など、リバーフィールドでの伊東さんの釣行が増えたことをきっかけに、流れの中でも浮き上がりにくい様にマイナーチェンジ。
001に比べてヘッド上側に若干のボリュームアップが見られる。
1991年:V-3シリーズ(MS003)
Vフラットとは異なるコンセプトのスピナーベイトであり、小魚ライクな美しいヘッドデザインが特徴。
琵琶湖に行く頻度が増えた伊東さんが、北湖のウィードの中を通すために浮き上がりにくくすり抜けの良いデザインを追求。合わせてクリアウォーター系フィールドにも通っていたことからフィッシュヘッドをデザインした。
同時期にはドラゴンスピン(ドラゴンルアーズ)やダイナモスピナーベイト(HMKL)など、箔貼りによるリアルヘッドスピナーベイトは存在したが、ヘッドそのものにウロコ模様が施されたのは世界初。
V-3ミノー、V-3ミッジ、V-3フラットシャッド、V-3バレットシャッドなどのレパートリーが存在する。
1997年:Vフラット(MSS005)
レンジキープ能力に長けたV-3シリーズの登場を受け、よりシャロー攻略に特化させたモデル。
ベースとなった02よりもさらにヘッドの横幅は広くなっており、上側は01に近いデザインとなっている。一方、ヘッド下側の張り出し具合は02譲りだ。
1998年:V-4バズ(MS004)
Vの名を関するバズベイト。
左右非対称設計のリアルなヘッドデザインは、クリアウォーターで魚に見られることを意識している。
バズベイトでありながらヒラ撃ちも得意。
一般的なプロップから前後2連、コロラドブレード付きなど、様々な種類が作られた。
2000年:Vフラット(MS006)
Vフラットでありながら、琵琶湖から野池といった国内のフィールドはもちろん、海外も意識したグローバル化モデル。
それに伴い、スカートのOリングやビーズの材質など、細部にまで及ぶアップデートが行わている。
前後のブレード回転をよりスムーズにするため、アッパーアームをクランクさせたZアームというギミックも登場。
2009年:スーパーVフラット(MS007)
伊東さんの手掛ける純粋なVフラットの系譜としては実質現行モデルとなるのがMS007。
006の頃から温めていたデザインを投入。
立ち気味のフックや長いアッパーアーム、ベンドしたロアアームによりスナッグレス性能にさらに磨きがかかり、伸びないワイヤーで強度アップ&プレス加工でバイブレーションが強化。
シャローカバーをゆっくりとコンタクトできる究極系とも言える完成度を誇る。
2012年:Vフラット パワーボム(MS008)
伊東さんの元で学び、成長したスタッフ陣が手掛けた「メガバス」としてのスピナーベイト。
全国的にハイプレッシャー化が進んでいたタイミングに生まれてたことでコンパクト&ハイアピール設計になっている。
様々なフィールドで使いやすいように仕上がっており、例え激流の中でもスローロールが可能。
ティアドロップ型のオリジナルブレードや、スカートにHIRAMENスカートが入るなど、意欲的なモデルだ。
20015年:V-9(MS009)
ワールドワイドに使えることを目標とした、VフラットともV-3シリーズとも異なる新設計のスピナーベイト。
スーパーVフラット譲りのアームデザインやパワーボムから続投のブレード形状、V3シリーズに通ずるリアルヘッドが特徴的だ。
2020年:SV-3(MS010)
VフラットシリーズとV-3シリーズの持つ優れた要素を集約させた傑作。
カバーに絡めて使ってこそのスピナーベイトであるという、言わば原点に立ち返り、それまでのものよりも大幅にワイヤーを強化。なおかつ、バイブレーションを強めることを実現している。
細いワイヤーで強いバイブレーションを発生させるという時代を超越した、現時点で最もスピナーベイトらしいスピナーベイト。
Vフラットとは違うスピナーベイトたち
MS001から脈々と受け継がれるスピナーベイトとは異なる独自のモデルもある。
ベノム
一見するとV-3の系譜であるように思えるが実は別物。1ozオーバーのウェイトで、スローローリング専用モデルとして設計されている。アメリカや琵琶湖などで人気のモデル。そのスペックや使い方の都合上、超玄人向けの逸品だ。
Iスピン
横扁平だが顎下が抉れた形状の「カタマランヘッド」が採用されたスピナーベイト。カエルのような見た目にカエルの足を模したラバーが可愛らしい。驚きの浮上性能を誇り、サーフェストレース能力に長けており、スローリトリーブでも表層攻略が可能。
伊東由樹のスピナーベイトTIPS
釣るための要素が濃縮された言わば漁具的ルアーのスピナーベイト。このルアーを使いこなすためのヒントを伊東さんにお聞きした。
スローテーパーに近いロッドが最適
伊東「ロッドはスローテーパーに近いものがいいでしょうね。ベリーからバットのあたりでバイブレーションを感じられるくらいの調子です。最新のデストロイヤーで言うと、F5-68Xブレイドや、F5-70Xマッドブルあたりがオススメです」
Lure capa : 3/8-1oz.
Line capa : 10-25lb.
Taper : MEDIUM FAST
部門名:ユニセックス大人
Lure capa : 3/8-1oz.
Line capa : 10-25lb.
Taper : REGULAR
伊東「過去のモデルにはなりますが、エヴォルジオンのF4.1/2-64Xtiイオタなんかは最高でしたね。実は小口径ガイドじゃないほうがいいんですよ。これは大口径でスラッグができやすいほうがスピナーベイトの振動を感じながら引きやすいからなんです。そういった意味では、最新のF4-65Xワンテンスティックも最適ですよ」
Lure capa : 1/4-3/4oz.
Line capa : 8-20lb.
Taper : SLOW
伊東「複雑なカバーの中を無理やり通して使うこともあるので、硬いフロロカーボンライン、そしてトルクがいるからローギアリールがおすすめですかね」
スピナーベイトがスピナーベイトたる強みを肝に銘じろ!
伊東「スピナーベイトの持つ強みはフラッシングとバイブレーションの組合わせに加えて、カバー周りをしっかりと攻められるという点です」
カバーに比較的強いファストムービング系ルアーと言えば、クランクベイトのイメージもある。しかしスピナーベイトにしか無い強みが当然あるのだ。
伊東「クランクベイトでも通せないような激しいカバーを舐めるようにゆっくりと通してくる事ができる。それでいて、ソフトベイトの様に点で探るわけでもないし、むしろブレードが高速回転することでリアクション要素も期待できる。もちろん、ウィードエリアの釣りにも強いです」
そして巻けば浮き、止めれば沈むスピナーベイト。その活躍のレンジは広い。
伊東「ゆっくり巻くことでボトム付近を狙えるし、高速巻きで表層を引いても使えます。スピナーベイトはパイロットルアーとしても、カバーについた魚をピンスポットから引っ張り出すことも可能です。でもまずは何かにコンタクトさせることを意識して、ゆっくり巻くところから始めてみてください。あらゆるフィールドで釣れるはずです」
餌木やバケ同様普遍の域に達したルアー
伊東「実は多くのメーカーさんでスピナーベイトは作りたがらないんですよね。細部にノウハウが必要とされるのと、生産管理のスキルと性能面の普遍的な維持など、漁具の生産に通じるものがあるからです。アングラー側は気にしないような少しの差で大きく性質が変わってしまう。プラグだと浮力のお陰でごまかしが効くんですけどね(笑)」
伊東「それだけスピナーベイトは完成されたルアーなんだと思います。餌木やバケなど、今も使われ続けている漁具というのは完成された普遍なもの。おそらく何十年、何百年と形を変えていないはずです。スピナーベイトも同様だと思うんですよね。ルアーには全て完成形があって、スピナーベイトというジャンルはその域に限りなく近い。そして釣るための要素が凝縮されたルアーであって、バス釣りの原理原則が集約していると言っても過言ではないでしょう。であればこそ、スピナーベイト制作で培った経験や知識はプラグ作りにも繋がっていくんです」
時の流れに合わせて変わるもの。
時の流れに関わらず変わらないもの。
伊東さんとってスピナーベイトとは、メガバスそのものの在り方をも表す、原点なのかもしれない。
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