いろんな釣りを楽しみたいからこそ手に取る人の多い「万能」ロッド。でも、いろんな釣りって何だ? 気づいたらサビキと穴釣りばっかりやってんな…釣れるし美味いし。確かにそれはスバラシイ。でも、こと「釣れる」かつ「ウマい」ということにフィーチャーしたとき、管理釣り場で放流ニジマスを狙う「エリアトラウト」という釣りもおすすめなのです。なぜって、そこには「必ず魚がいる」!
エリアトラウトは「いる魚を釣る釣り」です
人間はなんでも2種類に分けたがる人間と、べつにそうでもない人たちに分かれるといいますが、釣りも2種類に分けられるのだといいます。
すなわち、「魚を探す釣り」と「魚に食わす釣り」の2つ。
前者はポイント重視。居場所さえ分かれば釣ること自体はそこまで難しくないのだとか。フィールドが広大すぎて魚の場所が分かりにくい釣りなんかだと、「ポイント探し」が釣りの中心命題になってくるのだそう。
日本と比べると桁違いに広いアメリカのバス釣りはそんな事情らしいです。また日本でも、東京湾全体がフィールドとなるシーバスゲームでは知っているポイントの数が手数になると言えますね。

こうした「魚を探す釣り」は極論、穴釣りが典型と言えるかもしれません。その穴に魚がいれば釣れるし、いなければ釣れない…というのがとにかく顕著。

一方で、「魚に食わす釣り」はテクニック重視。定石でほぼほぼ居場所が分かっていたり、魚探で水中の様子が分かる船釣りなどでは「いる魚をどうやって釣り上げるか」ということに心を砕くことになります。
例えば日本のバス釣りは「夏の日中はシェード」「秋は広範囲に散っているから巻き物」「冬はメタルバイブでボトム狙い」「風が吹いたらスピナベ」…などなど、生態に即した釣り方がある程度確立されています。(もちろんそれだけじゃないのが魅力ですが!)
しかしこれらを全部鵜呑みにすれば釣れる! …わけじゃないのがこのタイプの釣り。みんなが同じ場所で同じ釣り方をするので、魚が見切るのも早いんです。

だからこそ精緻に工夫を凝らす必要があって、星の数だけルアーが存在するというわけ。
そして、凝らした工夫が成果として返って来やすいのも特徴。
ですがそこに魚がいるかどうかも分からないのにお金を掛けて工夫したり、長い時間ずっとネバるのは僕らのようなビギナーズには結構苦痛だったり。
そこでエリアトラウトなんすよ。
エリアトラウトってどんな釣りなんですか。
簡単に言えば養殖したニジマスを人工池などの管理釣り場に放流し、主にスプーンやクランクベイトといったルアーで釣るのが「エリアトラウト」という釣りであります。
要するに「釣り堀」。定期的に放流が行われるため、一定の個体数が担保されています。つまり魚は必ずそこにいるわけです。
釣果ゼロで帰ってきては「相模湾の魚類は絶滅した!」なんて慟哭する釣り人もいる時代。
それと比べれば、多少は頑張れる気がしませんか?
エリアトラウト専用ロッドと言えば「柔らかくて短め」
エリアトラウトでよく用いられているロッドはおおむね6フィート前後で柔らかめのもの。釣り場は人工池などが多く、思いっきり遠投する必要も少ないのでこれくらいの長さです。

同じくらいの設定なら万能ロッドでじゅうぶん楽しむことができます。アジング、メバリングなどのライトゲーム用ロッドでもOK。扱うルアーも1~2グラムほどと、エリアトラウトとドンピシャです。
しかし万能ロッドとはいえ、エギングやシーバスを意識した8フィート近いモデルだとさすがに持て余すので注意。長すぎるとジャマですよ!
また一般的にロッドは短いほど感度が高く、魚の反応がわかりやすくなっています。もちろん素材や太さも関係してきますが、ご参考までに。
広いフィールドを想定したエギングロッドだとエリアトラウトはきびしい。残念。
エリアトラウトの狙い目は「放流日」
「そこに魚がいる」ならば、釣れるか否かを左右する要素は純粋に釣りの「ウデ」。ただしシビア過ぎるわけではありません。正確に言えば「釣れるか」「たくさん釣れるか」。
エリアトラウトは若干「ウデ」が怪しくてもワリと釣れる、懐の深さも併せ持っているのです。
もちろん、時間帯などのタイミングや活性の具合などで「たくさん」釣れるかどうかは日によるのですが…エリアトラウトにはボーナスタイム「放流日」が存在します。
放流があるとルアーに慣れていない釣りやすいトラウトの数が増えるほか、彼らが回遊することで古参トラウトの活性もUP。釣り人にとって非常に都合のよい状況が出来上がるのです。

というわけで。
やってきました「西武園ゆうえんちフィッシングランド」
ルアマガプラス編集部は「西武園ゆうえんちフィッシングランド」の放流日情報をゲット。都内からのアクセスも良く、ルアーマガジン総合プロデューサー・マイケルも足繁く通うエリアです。
新作ロッドのテストという大義名分を得た編集部アズマ&深谷ことフカポンは、意気揚々と朝イチに乗り込んだものの…。

アズマ「えっ放流って昼からなんですか」
フカポン「そうらしいよ。つまりこのプールには1週間逃げ延びたスレっからし、百戦錬磨のトラウトしか残ってないというわけや」
話が違うぞ。…なんとなくそんな気はしていましたが。
フカポン「大丈夫や。初心者のお前のために夜なべして秘密兵器を作ってあるから! ギブアップするときは言うてな」
その秘密兵器とは…。
エリアトラウトの秘密兵器、フカポン氏謹製フェザージグ
アズマ「…フェザージグじゃないですか。ズルいって言ってませんでしたっけ?」
フェザージグとはジグヘッドに鳥の羽やウールなどを巻きつけたもの。場所によってはレギュレーションで禁止されているので、ご注意ください。
かつて下の記事を校正中に「ズルや! 釣れるに決まっとるやんけ!」と叫び声を上げたことでも知られるフカポン。
とはいえ、氏が元フライ雑誌の編集長であったことを考えれば納得のルアーチョイスでもあります。
アズマ「このタイプのルアーって虫とかを模したものなんですか?」
フカポン「わかっとらんな。ええか。フェザージグっていうのは運命なんや。魚とジグの出会いなんや。DNAに刻まれとるんや。食いつかずにはいられないんだよ」
アズマ「なるほど!(適当)」

フカポン「おっほ! ワンキャストワンアタリあるわ! でも乗らんなあ。…オッ! いややっぱり乗らんわ」
放流前のタフな状況下でフカポンにだけアタリが連発。さすがフェザージグ。そして…。


アズマ「あー…確かに反応はありますけどフッキングしませんね」

なるほどアタリはあります。しかし、スレっからしのトラウトたちは警戒してシッカリ口を使ってくれません。フッキングさせられない。
フカポン「それソリッドティップやろ。チューブラーに変えたほうがええよ」
ソリッドティップ or チューブラーティップ?
超・端的に言うと、ソリッドティップとはティップ(竿先のこと)に素材が詰まった構造のこと。基本的には柔らかく、魚が口にくわえたときに違和感を持たせにくい反面、その分瞬発的に操作するのは難しい。
一方のチューブラーティップは中空構造。硬く、手元のアクションを機敏に伝えることができるので、こちらから素早く鋭くアワセを入れてハリを魚の口元に「突き刺す」イメージ。
どうもかなりスレたマスのようなので、当たったらより素早く合わせられるチューブラーティップのほうが掛かりがいいはず! という意図です。
このように魚の反応に合わせて色々試しやすいのが「釣り堀」エリアトラウトの良さのひとつなのだと思います。個人的に!
…で、今回僕が使っているのは、1本のロッドで2種類のティップを使い分けられるマルチピースロッド『INTRO LG-ALL』。

LG-ALLはライトゲーム-オールの意。アジングやメバリング、こうしたエリアトラウトなどにも使える軽量級の万能ロッドです。2021年6月頃発売予定デスよろしくお願いしマス!【AD】
…と、なかば冗談ぎみなプロモーション活動は置いておいて、ティップが2本あるとマジで便利です。上記でお伝えしたように色んなことを考えながら釣りができるし、そもそもできる釣りの種類が増えます。
身もふたもない話をすると、ぶっちゃけ片方折れてもまだ使えるのも利点ですよ! いちばん折りやすいのがティップですからね…。
ご興味のある方、発売まで、もうしばらくお待ちくださいませ。
万能ロッドでどうしてもトラウトを釣る。
で、我々も待ちました。放流が始まる昼過ぎまで。釣るためならどんな手でも使います。
その甲斐もあり徐々に活性が上がり始め、トラウトの反応も軽くついばむアタリからガブッと食いつく掛けやすいアタリに変わってきました。

アズマ「若干バレやすくなった、ような…」
チューブラーティップに替えたおかげで魚の口にハリを掛けられるようになった反面、足元に寄せてくるまでにハリが外れてしまう(=バレる)ことも多くなってしまいました。
ソリッドティップに比べて硬いぶん、トラウトの動きに追随しきれていない感じ。魚が首を振るたびにラインが張ったり緩んだりして、その拍子にハリが外れてしまうようです。なるべく一定のテンションを保ち続けるのがバラさないコツですが…。
フカポン「多少はチューブラーティップの特性として仕方ないけど、ドラグをもっと緩くすればパワーを吸収してくれるよ」
なるほど、魚の動きに合わせてリールのドラグ機能でテンションを調整するわけですね。
トラウトはそこまで大きくパワフルな魚というわけではないですが、それでもラインが出るようにワリと緩めに設定してみましょう。
などと、いろいと考えた甲斐あってか。

と、いうわけでまとめますと。
万能ロッドで挑むエリアトラウトの注意点
・ロッドは6からせいぜい7フィートほどがオススメ。主にアジングやメバリング、それこそトラウトなどを意識したモデルがこれにあたります。
・柔らかいほうが基本的にはバラしにくい。専用ロッドの設定は「UL(ウルトラライト)」「SUL(スーパーウルトラライト)」などがスタンダードなくらい柔らかめです。
・リールのドラグ設定は緩めに。ドラグノブ(上部のタブ)を回転させて調整します。オススメのサイズは1000~2000番ほど。ちなみに今回使用したのはこちらもライトゲーム用「月下美人MX」でした。
まとめ
なんやかんやで合計8尾ほどを釣ることができました。いちおうお伝えしますが、放流前にも1尾釣っていますからね! 僕の小社ロッドの名誉にかけて申し上げておきます。
釣れるし楽しいよ、エリアトラウト!
撮影用の持ち方がヘタクソ。まだまだ修行が足りませんな。
