一昨年である2019年、日本の老舗ラインメーカーとして国内のみならず、世界中から支持を得続けている「YGK」から新たなバスフィッシングラインが誕生した。その名は「オルトロス」。ギリシャ語で『夜明け、始まり』を意味し、その名の通り新たなる世界の扉をこじ開ける『硬質なのに柔らかい相反する特性をもったニューコンセプトフロロカーボンライン』というキャッチコピーで注目を集め、今や世界最高峰のバストーナメントシーンでも活躍を見せている。発売から2年、今回改めてオルトロスFCの特徴をXBRAIDスタッフに解説して頂いた。
解説して頂くのは大手釣具問屋のラインスペシャリスト!
【Profile】 福元秀樹(ふくもと・ひでき)
大阪を拠点にした大手釣具問屋・(株)魚矢の『エックスブレイドYGK課』というライン専門部署に所属し、マーケティングおよび生産管理を担当。日本各地で釣れる魚種の違いや釣り方の違い、そして自然環境の違いなどから生まれるさまざまなライン需要に応えるべく、いつも頭の中は糸のことで一杯のラインスペシャリスト。
オルトロスFC(XBRAID)
発売から2年経過しましたが、改めてオルトロスFCの特徴の解説をお願いします。
福元「今まで日本の市場リリースされてきたフロロカーボンラインは、はっきりと『硬い』ハードタイプのものと『柔らかい』ソフトタイプの2種がほとんどでした。
硬いフロロの特徴として直進性や耐磨耗性、そして障害物に巻き付かない回避性の部分に寄与しているところが多かった。しかし硬い部分の良さが逆に『使いづらい』と感じる方もいて、そのようなユーザーは柔らかくて少し伸びのあるようなフロロカーボンを使われることが多かったんですね。
逆に柔らかいフロロは、ラインがパーマ状になりづらかったり、操作性の部分でも硬いラインのよりもクセがなく、メンディングなどの操作性もしやすい部分がありました。
オルトロスFCは硬さと柔らかさの良いところを組み合わせたハイブリットフロロカーボンラインなんです。
ライン原糸の中心部には硬いフロロカーボンを採用し、直進性と強度、そして感度を出すことを可能としながら、外側(ライン表面部)を柔らかくすることによって今まで硬いフロロでありがちな『ナノスクラッチ(ライン表面上の小さい傷)』によるラインブレイクなどが防げるんです。
表面の柔らかさがクッションとなり少し傷が入っても硬い中心部に傷が到達しづらく、切れにくくなるんですよ。
これまで表面が硬く、中がソフトな逆の構成をされているフロロラインはけっこうあったのですが、逆の構成をしているラインは弊社のみ。
YGKこれまで培ってきたラインテクノロジーやフィールドから培った膨大なビッグデータをもとに突き詰めているので、間違いなく尖っている。けれども汎用性が高いラインです」
オールマイティだが真価を発揮するのはカバー周り!
先述のお話を聞くとオールマイティに使いやすそうなイメージがあるのですが、特に有効なシチュエーションなどはあるのでしょうか?
福元「そうですね、これまではカバー撃ちならハードなフロロ、クランキングならナイロンかソフトなフロロと、ラインの性質を変えて使い分けている人も多かったと思います。ですが、オルトロスFCは仰る通り、場所を選ばず、カバーゲームもオープンエリアの巻物でも使えます」
福元「プラッキングをするうえでマイナス面であった糸グセも低減し、カバーゲームにおける強度や操作性も兼ね備えているので多くのシチュエーションで使える汎用性の高さは間違いなくあります」
福元「その中でも力を一番発揮するのはカバーストラクチャー周り。障害物に擦った際に硬いだけのフロロだと『諸刃の剣』的な部分があって、強度がいくら強くても傷が入ってしまうことにより、そこから破断してしまうということが多かった。オルトロスFCはそれが解消されている部分がすごく大きいですね。同じ直線lb数でも切れる限界値が圧倒的に高いんです」
ショックリーダーとしても超優秀!世界の最前線でも戦い続けるオルトロス!
ここまで汎用性が高いのであれば、エキスパートだけでなくフロロに慣れていないビギナーでも使いやすそうですね。
福元「そうですね、ビギナーの方でも間違いなく使いやすいと思います!あと裏話にはなるのですが、ショックリーダーとして使っても超優秀なんです!パワーフィネスの『吊るし』で使われている方もけっこういたりして。直線的ですが、柔らかいのでノットも組みやすい、そして耐磨耗性で強度も高い。申し分ないですよね(笑)」
動画や記事を見ていると木村建太さんも巻物やトップ、カバーゲームとオールマイティに使われていますね。
福元「キムケンさんにもオルトロスを開発する際に現場での意見をたくさんフィードバックしてくださいました。このオルトロスに変えて高切れすることが全然なくなったと言ってましたね。アメリカの最前線で戦われているトッププロが自信をもって使えるラインというのは我々の自信にもなりますね」
ラインの交換時期もオルトロスならわかりやすい!
記者もバス釣りをするのですが、ライン交換のタイミングってちょっと分かりづらい時もあって…オルトロスを巻いた場合、どのくらいの頻度で巻きかえたりするのでしょうか?
福元「ラインの使用頻度や釣行回数によりますが、ラインが毛羽立ってきたら換えどきかと思います。オルトロスは実はダメージを受けた部分のサインが分かりやすく出るんですよ。
表面は柔らかいことによってダメージを受けた部分は毛羽立ったりとか傷が入っているのが手にとるようにわかる。硬いフロロカーボンだと表面に傷が入っても硬いがゆえにわかりづらくもあるんです。人並みには見えない傷もかなりあります。
オルトロスFCの場合はそれをはっきりと認識できるのでユーザーの方にもラインマネジメントはしやすいのかなと思います」