『デストロイヤー』シリーズを筆頭に、数々の名竿を世に送り出してきたメガバスがもし、本気でパックロッドを作ったらどうなるか? 2019年にリリースされた『トライザ』はまさしくその回答かもしれません。そんな気になるロッドのリアルを、メガバスのプロスタッフである疋田星奈さんに解説していただきましょう。
【Profile】
疋田星奈(ひきた・せいな)
子供の頃からバス釣りに慣れ親しみ、学生時代からトーナメントに参戦。JBトーナメントでの年間優勝経験も持つ。近年は野池でのオカッパリ釣行を中心にYoutube動画への出演などを行い、幅広いアングラー層から支持を受ける
マルチピース専用設計がもたらす新時代の訪れ
代名詞とも呼べるシリーズ『デストロイヤー』をはじめ、メガバスロッドの多くは1ピースモデルだ。
もちろん、中には2ピースやマルチピースのロッドもありはしたものの、それらは言ってみれば1ピースロッドの派生形。
しかし、2019年からメガバスのラインナップに加わった3ピースロッド『トライザ』は、シリーズのコンセプト段階からマルチピースロッドとして開発が進められていたという。
SEINA「近年良くなってきているとは言え、マルチピースロッドはどうしても継ぎ目が気になるという人が多いと思います、でも『トライザ』は違います。3ピースであるということを忘れてしまうほど、綺麗に曲がってくれるんです」
極端な話、1ピースロッドを適当なところで切り、繋ぎ目を作ればそれでもマルチピースロッドは出来てしまう。
しかしトライザの場合、3ピースそれぞれのブランクス、すなわちバット、ベリー、ティップそれぞれの部位において最適な設計で制作されているのだ。
1ピースモデルをベースにしたのではなく、あくまでも、マルチピース専用設計。だからこそ、誰もが驚く、恐るべきスペックに仕上がっているのだ。
そしてそのセクションごとに独立して設計できる利点を活かし、2021年にはロッドの性能を変化させる交換用ティップの販売もはじまった。
マルチピース新時代が今、幕を開けようとしている!
過去に無いその性能に秘められた『遊びゴコロ』
SEINA「メガバスのラインナップですと、張りの強いロッドがほとんどです。でもトライザはかなり曲がる。今までにないタイプの調子なんです」
そのあまりの柔らかさは、オリジナルのデストロイヤーを長く使っている人では違和感を覚えるほどだとか。
SEINA「強いて挙げるとすれば、初代デストロイヤーのHT1000Xに近い印象ですね。とはいえ、全体的にはクセが無い扱いやすい設計になっています。ベイト、スピニング合わせて全10機種をラインナップしていますが、その内容は、トライザさえあれば、一通りの釣りがやりきれるようになっているんです」
Item | Sub name | Length | Action | Lure capa | Line capa | Weight | 継数 | カーボン含有率 | Other.1 | Other.2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
F0-63XTZ | Aello | 6’3″ | SLOW | 1/32 – 3/16oz. | 2 – 7lb. | 86g | 3本 | 90% | Closed Length : 66.5cm | |
F2-66XTZ | Sparna | 6’6″ | MEDIUM FAST | 1/8 – 1/2oz. | 6 -12lb. | 99g | 3本 | 90% | Closed Length : 69cm | エクスクルーシブティップ対応モデル |
F3-68XTZ | Grils | 6’8″ | MEDIUM FAST | 1/4 – 5/8oz. | 6 -14lb. | 104g | 3本 | 90% | Closed Length : 70.5cm | |
F4-69XTZ | Thunderbird | 6’9″ | REGULAR | 1/4 – 3/4oz. | 8 – 20lb. | 107g | 3本 | 90% | Closed Length : 71.5cm | |
F5-70XTZ | StymPalides | 7’0″ | MEDIUM FAST | 3/8 – 1oz. | 10 – 25lb. | 123g | 3本 | 90% | Closed Length : 74cm | |
F7-72XTZ | Dragoon | 7’2″ | ①REGULAR / ②FAST | 1/2 – 3oz. | 12 – 30lb. | – | 3本 | – | Closed Length : 76cm | エクスクルーシブティップ対応モデル |
F0-68XSTZ | Hibali (雲雀(ひばり)) | 6’8″ | FAST | 1/32 – 3/16oz. | 2 – 7lb. | 88g | 3本 | 90% | Closed Length : 70.5cm | エクスクルーシブティップ対応モデル |
F1-66XSTZ | Yamasemi | 6’6″ | ①FAST / ②EX FAST(Solid Tip) | 1/32 – 3/16oz. | 3 – 8lb. | – | 3本 | – | Closed Length : 69cm | エクスクルーシブティップ対応モデル |
F2-70XSTZ | Lopros | 7’0″ | MEDIUM FAST | 1/32 – 1/4oz. | 3 – 10lb. | 101g | 3本 | 90% | Closed Length : 74cm | |
F3-72XSTZ | Ageha | 7’2″ | MEDIUM FAST | 1/16 – 1/2oz. | 4 – 12lb. | – | 3本 | – | Closed Length : 76cm |
つまりよく曲がるとは言えトライザは、『パガーニ』の様な趣を突き詰めたロッドと言うよりはむしろ、あらゆる場面を想定して揃える『デストロイヤー』に近い使い方が想定されているともいえそうだ。
しかし特徴はそれだけではない。
SEINA「リールシート部分には天然バーズアイピーコックウッドを使用。トリガー部分はアルミの削り出し。ガイドはポリッシュで磨き上げられていますし、極めつけに伊東社長の手描きデザインのロゴ(笑)。性能面だけでなく、細部に至る見た目にまでこだわっているのもトライザの特徴なんですよ」
釣り竿が、魚を釣るためだけの道具であるのならば、デザイン製の追求は単なる『遊び』に過ぎないのかもしれない。
しかし感性を大切にするメガバスだからこそ、優れた実釣性能には匠の美学が内包されているのだ。
トライザの設計思想だからこそ出来た『エクスクルーシブティップシステム』
3ピースそれぞれのセクション毎に異なる役割を持たせたトライザ。
だからこその武器として誕生したのが「エクスクルーシブティップシステム」だ。
2021年の今年に発表となったのは、交換用ティップ2種と、システム搭載型ロッド2機種。
交換用ティップは、既存のモデルである『F2-66XTZ』と『F0-68XSTZ』の2機種それぞれに対応したソリッドティップが販売。
交換すればこれらのロッドでより繊細なルアー操作が可能になったり、吸い込みを妨げにくくなったりといったメリットを得られるのだ。
一方、エクスクルーシブティップシステムを標準搭載して発売となるのは『F7-72XTZ』は『F1-66XSTZ』の2本。
Item | Sub name | Length | Action | Lure capa | Line capa | Weight | 継数 | カーボン含有率 | Other.1 |
F7-72XTZ | Dragoon | 7’2″ | ①REGULAR / ②FAST | 1/2 – 3oz. | 12 – 30lb. | – | 3本 | – | Closed Length : 76cm |
F1-66XSTZ | Yamasemi | 6’6″ | ①FAST / ②EX FAST(Solid Tip) | 1/32 – 3/16oz. | 3 – 8lb. | – | 3本 | – | Closed Length : 69cm |
こちらは2種類のティップが同梱されての販売となっており、トライザ1本があれば、ティップを付け替えることでこれまでの普通のパックロッドでは考えられないような幅の広い釣りが可能になるわけだ。
疋田星奈のオススメは?
これまで様々なフィールド、様々なタイプのバスと対峙してきた疋田さんにトライザのオススメロッドを聞いてみた。
SEINA「私が実際に使って気に入っているのは、ベイトフィネスの『F2-66XTZ』とスピニング『F1-66XSTZ』の2本。どちらも今回エクスクルーシブティップが登場したモデルです」
繊細な釣りを得意とする疋田さんは、トライザの登場当初からこれら2機種を使用していたという。
SEINA「3ピースのコンパクトさはやっぱり魅力的ですよね。小さい車にもポンと積んでおけるので、ちょっとした空き時間に野池で軽く釣りをする、というのが非常に気軽になりました。服装も軽装で2~3時間ちょっと楽しむ、というのに丁度いいんですよ」
もちろん、追加されるエクスクルーシブティップによる利便性も高いという。
SEINA「例えば、いざフィールドに立ってみたらまだちょっと季節感が思っていたよりずれていて、使うルアーの内容が変わってきそう…まさしくそんなときに便利なんです。わざわざロッドをもう一本用意するまでもなく、ティップを交換するだけで対応できてしまいます」
SEINA「具体的な対応ルアーで言えば、『F2-66XTZ』はチューブラーティップを使うならシャッディングXやグリフォンベイトフィネス、ベビーポップXなんかの小型プラグ、ハゼドンシャッド+重めのブレディをよく使っています。これをソリッドティップに変えれば、ジグヘッドワッキーや3.5gくらいまでのスモラバでより喰わせに寄せた釣りが可能です」
SEINA「スピニングの『F1-66XSTZ』の場合、チューブラーならダウンショットリグを機敏に操作させたい時や軽いウェイトのブレディ+ハゼドンシャッドを巻くときにいいですね。ソリッドティップは軽いウェイトのライトリグ全般を網羅してくれます」
トライザが釣りのスタイルを変える!?
SEINA「野池で釣りをしていると、仕事前後にちょっとだけやりにきているんだろうなって思える人をよく見るんです。そんな人にこそ使ってみてほしいですね。それと今は時勢的に難しいですが、やっぱりパックロッドということを活かして海外旅行に持っていくのもよさそうですよね」
バサーとは、あらゆる状況を考えてついついタックルが増えてしまう生き物なのだ。そして突き詰めれば突き詰めるほど、気軽さとは縁遠いスタイルになってしまうもの。
しかし『トライザ』は、そんな重荷を取り払ってくれる存在なのかもしれない。
『トライザ』なら、家のそば、あるいはちょっとした旅先の水辺で、気軽にスキマ時間に釣りを楽しむことができる。
装備も気持ちも軽やかになるときがやって来たのだ。