自分の釣りを完成させるためのピース」を作るべく、伝説のロッド『ARMS(アームズ)』を産みだし、メガバスをスタートさせた伊東由樹さん。膨大な数の名竿をデザインしてきたが、その中でも伊東さんが超個人的に思い入れのある10モデルを披露してもらった。
【Profile】
伊東由樹(いとう・ゆき)
メガバス&itoエンジニアリング・グループ統括CEO。ロッドはインディーズ時代に作った、腕であり武器であるアームズが発端。ユーザーの手に合わせて削り込んだウッドハンドルは、まさにバス釣り文化財。
ARMS M5702A デッドリーバー(メガバス)
デストロイヤーにも受け継がれた孤高の「ハンパレングス」
90数本しか製作されなかった伊東さんのハンドメイドロッド・アームズ。番手のMはメガバスの頭文字、数字の上位3ケタは長さ、下1ケタはパワーや役割を表している。ということで、こちらは5ft7in2パワー。
伊東「当時の2は、いわゆるMLですね。ウッドのZクランクや3/16ozの初代Vフラットにベストマッチするロッドを目指しました。当時のスタイルは、手返し重視のアシ際攻略。アキュラシーを重視して現場でブランクを詰めたりグリップを削ったりしていきついた先が、5ft7in。いわゆる日本初のハンパレングスですね。完全に自分用で開発したので、3の倍数であった当時の定番レングスは無視してしまっています」
デストロイヤー フェイズ1 F4-66X トーナメントバーサタイル(メガバス)
背水の陣で武器となった真の「バーサタイル」
プラなし事前情報なし、ぶっつけ土日撮影の伝説的ムービー『Xバイツ』(メガバス)。そこであり得ない乱獲を見せ人気機種となったのが初代デストロイヤー F4-66Xだ。
伊東「もう探る釣りでバスへの最短距離を模索するしかなくて、キャスタビリティもあり高感度、そしてレギュラーテーパーで何でも投げられるF4-66Xに頼るしかなかった。そのポテンシャルはトーナメンター達にも圧倒的な支持を得て、ランディ・ブロウキャットや柳栄次といった選手の原動力となった1本ですね」
デストロイヤー フェイズ1 F5-510X ジグスペシャルファンクション(メガバス)
5パワー×ショートロッドが生んだ瞬速フッキング
初代デストロイヤーの中で、異彩を放った通称「ゴーテン」。どこまでも硬く、そして短い…。
伊東「アタリ感知から0.2秒でアワせる『タキオンフックセット』を確立したロッドです。元々浜名湖のクロダイ釣りで、超シビアな糸フケアタリを即掛けしていたスタイルをバスに持ち込んで。ちょうど今江克隆さんが電撃アワセを世を広めたタイミングでしたね(笑)。一瞬でジグを吐き出すバスを獲るためのストローク・ロスレスなショートロッド」
ゴーテンの愛称は、ユーザーから自然と発生。
エヴォルジオン(C40-HDTS) F6-66ti トリプルシックス(itoエンジニアリング)
神の摂理を無視したマテリアルとエンジニアリング
伊東「悪魔の数字666(笑)。悪魔的なのは、7ft以上が欲しくなる釣りを、6ft6inでこなせてしまうところ。アイウィングやマグドラフトなどビッグサイズルアーや、ヘビーテキサス、重量級スピナーベイトなどは、どうしても長さが欲しくなる。そこをチタンインプラントしたシャフトで、ためをもたせつつ戻りの反発で扱える。腕の延長でロッドを考えるなら、短いほうが確実に有利です。同じルアーを扱えるとき、短いロッドは捌きやすさやキャスト精度、ダイレクタビリティに長じています」
素材とデザインの勝利だ。
NEWデストロイヤー F1st-66XS キリサメ(メガバス)
超繊細ティップと強靱バットを自然に曲げるデザインの妙
日本のバスロッドでも、究極の食わせの代名詞となった『KIRISAME』。
伊東「突き詰めたフィネスは、アメリカの表舞台でも完全に不可欠な要素となりましたね。繊細さを極めたティップでありながら、3番手以上の剛性を持つバットセクションなら、日米問わず最前線で戦える。極端なセクションなのに、青竹のようなしなやかさ…そう、竹が持つ繊細さと芯の強さ。そのイメージは、初代キリサメの広告にも用いましたね」
NEWデストロイヤー F2.1/2-611X カスミシックスイレブン(メガバス)
岸釣りもボートゲームも飲み込む革新バーサタイル・ニューノーマル
伊東「ディスタンスを取りたいボート釣りでも、土手上からアプローチせざるを得ない水路ゲームでもハマってしまうチョイ長レングス。ミディアムファストテーパーで、荷重に対してパラボリックに曲がり、ライトウエイトルアーを投げやすい。また接近戦も重宝していて、アルミボート…当時シーニンフ12Kで撃ちまくっていたイメージそのままに使っています。いわばアームズM5702Aの現代版ですね」
NEWデストロイヤー F6.1/2-67X タキオンシャフト(メガバス)
5Dグラファイトシステムによる、シン・ゴーテンが切り拓くセカイ
伊東「ゴーテンで当時展開していたゲームは、最大でも水深1.5mとシャロー主体。最近は、もっと深いところで繊細なアタリをとって即掛けしないと釣れないフィールドばかりになってしまった。とにかく近づかない、エレキも踏みたくない、カバー奥や深めにいるバスしか反応しない…しかも、掛ける釣りでしかフックアップしない。ゴーテンの釣りを、重量そのまま6ft7inにまで延長し、そんなタフコンでもストロークでタキオンフックセットできる。ゴーテンの魂を5D製法で昇華したモデルですね」。
NEWデストロイヤー F5.1/2-72X ザ・エックスバイツ(メガバス)
「X」つまり未知のバイトを獲るネクストスタンダード
伊東「ロッドやライン、リール…高強度、高剛性になっていく代わりに、サカナに与える違和感も増大している。そして、確実にバスがルアーを離すスピードが速くなっている。それに対応するのは、計算し尽くされた「ダル」さ。ヘビーからEXヘビークラスのロッドなのにティップはソフト。キャロをやってもブレーデッドジグでも、ティップのディレイで食わせながら、超軽量シャフトによる感度でダイレクタビリティは損なわれない。メガバスワークスでも最先端を提示するためのロッドです。ちょうど『Xバイツ』でメガバスが世間の度肝を抜いたように…」
トライザ F7-72XTZ ドラグーン(メガバス)
伝説の神獣と相対するための特殊任務用モバイルロッド
トライザは全て羽根のある生き物がサブネームに…こいつはドラゴン、昇竜だ。
伊東「F6以下、7ft以下でほぼ全ての釣りはまかなえますが、急所となる釣りが規格外のロッドでしか対応できないことがあります。でもいつでも帯同させるには、携帯性が…(笑)。そこで3ピースのトライザを密かに愛用しています。クルマに積みっぱなしでもボートに転がしていてもジャマにならない。でも、用途はフロッグやパンチング、ビッグベイトなどスペシャルミッション。替えティップでテーパーをシフトできる『エクスクルーシブティップシステム』で、さらに対応幅は広がりましたね」
アームズ・スーパーレジェーラASL6904X(itoエンジニアリング)
今でも色あせない先鋭性は、革新を常とするモノ作りのたまもの
伊東「そもそも僕たちにとってアームズは常に次世代の量産ロッドを作るための実験機。この時期は複雑な多軸シャフトを模索していたものです。番手的には、元来、強さではなくスペシャルタスクをこなすための「4」でしたが、こいつはMHのバーサタイルコードとなっています。まあ、自分のアイデンティティみたいな1本ですね。現行品も含めて、こうやって作ってきたロッドを振り返ってみると、メガバス創業から軸はブレてないですね。自分のため、アングラーのために作ってきたのだな…と。あえてビジネス的な合理化に逆らっている(笑)のも含め、自分らしいなと思う一方、それを受け入れてくれたファンの皆様に感謝しかないですね」
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!