夏はアウトドアの最盛期。家族連れ、友達同士、カップルでアウトドアを楽しむ機会が増える。旅行先で、帰省先で、あるいは近所の湖沼で、未経験者に釣りを教えることもあるはず。そこで今回は夏休み特別編として、プロアングラーのセンドウタカシさんに「釣りを教えるコツ」を解説してもらった。今回はいざ実戦!ロッドとリールを使い、ルアーを投げてアクションさせる教え方のコツを。また、初めて投げるのに最適なおすすめルアーをセンドウさんに教えて頂きました!
教えてくれるのは「釣りニンジャ」ならぬ「釣り先生」
【Profile】
センドウタカシ(せんどう・たかし)
千藤卓 a.k.a ニンジャ/本誌連載『ネバーマインド・ザ・ブラックバス』でもお馴染みのプロアングラー。釣りビジョンなどの映像メディアに多数出演するほか、現在は、琵琶湖などを中心にガイドも行っている。近年はエリアトラウト(管理釣り場のルアー釣り)に傾注し、 強者が集結するトラウトキング選手権エキスパート戦にも出場。エリアトラウト競技者としての側面も併せ持つ。
超重要!キャストを教えるその前に…「教える場所」にもこだわるべし!
釣りを教えるときは1ヵ所でじっくり釣ろう
センドウ「誰かに釣りを教えるときは、移動はまずできないと考える。霞ヶ浦の護岸を釣り歩くなんてのはやめておく。回遊待ちや、普段から魚影が濃い場所に入りたい」
また、入門者に「あそこに投げて」とピンポイントを狙わせるのは至難の業。技術的にあまり難しいことを求めると、せっかくのやる気をそぎかねない。ざっくり投げても魚が釣れる場所を選ぶことが大切だという。
センドウ「さらに、教える側がやりがちなミスがあります。それは釣り場で投げる練習だけさせちゃうこと。やる気のある大人ならまだしも、子供はすぐに飽きちゃいます。実際の釣り場では、練習ではなく、あくまで本番の釣り(魚が釣れる可能性が少しでもある釣り)をさせるべきです」
センドウ「桟橋は、初めての釣りにおすすめ。過度な期待は禁物ながら、魚が比較的着きやすい。山中湖マリンハウスモモの場合、桟橋利用料1000円(小学校低学年無料、高学年500円)で終日利用できます」
他の湖でも、マリーナや併設ホテルの利用者限定で、桟橋で釣りができるケースはある。
センドウ「また偏光グラスを着用させてあげれば、飛んできたルアーから顔を守れるだけでなく、水中を泳ぐ魚の姿もはっきり見えるので入門者も集中力を保ちやすいです」
夏はお子様にも日焼け対策もお忘れなく!
楽しみながらキャストを教えよう!
ルアー釣りの大基本まずは前に飛ばそう
ルアー釣りにおいて、キャストは最重要テクニック。魚がいるところに投げることは、釣果を得るための第一歩なのだ。では、どれくらい飛ばせればいい?
センドウ「飛距離は気にしない。極端な天ぷらキャストになるときや、ルアーを水面に叩きつけてしまうときだけ矯正してやる感じかな。それより注目したいのは、左右のコントロールです。これはキャスト時のスタンス(構え)に注意するだけで改善することも多いので、ぜひ覚えておきましょう」
今回は、センドウさんがおすすめするスピニングタックルの投げ方をメインに教えてもらおう。
センドウ「持ち方は、いわゆる芸能人持ちでなければ問題なし。2フィンガーでも3フィンガーでもいい。まだ握力の弱い子供は、3フィンガーのほうが持ちやすいかも。キャスト時に意識すべきは、竿をしならせること。テイクバックから竿先を振り抜く瞬間まで、キャスト動作を止めない。ワンモーションで投げさせてください」
人指し指のリリース法
センドウ「指先にかけたラインは、9時から11時までの間に放すと、ビシッと飛んでいきます。ただ、これがなかなか難しい。早すぎると天ぷらになるし、遅すぎると水面に叩きつけちゃう。また、10時で放そうとするばかりに、投げるときに竿を止めちゃったりする。ラインをタイミングよくリリースするには、『沖の投げたい方向を指さす』こと。するとだいたい10時になります」
釣りを教えるときの立ち位置
センドウ「生徒が右投げの場合は、左後方に立ちましょう。ここならキャストが乱れてもルアーが当たりません。左真横も安全ですが、生徒の視界に入るため、無駄に緊張させてしまう場合があります」
サイドキャスト
センドウ「ほとんどの場合、オーバーヘッドキャスト+指さしリリースでルアーを飛ばせるようになりますが、それでも上手く投げられないときはどうするか。そんなときはサイドキャストを試させる。入門者にとって、特にベイト使用時は横からのほうが自然に投げられたりします」※写真のセンドウ家次男・素晴くんはベイトタックルを使用
左右のズレを矯正する
センドウ「キャストが左右にズレるときは、投げるときの体の向きを変える。ルアーが右に飛ぶときは、右足を前に出す。左に飛ぶときは、左足を前に出す。これだけでキャストの方向が定まります」※センドウ家長男・清志朗くんもベイトを使用
釣り場じゃなくても庭や公園でもキャスト練習は可能!
センドウ「自宅の庭や近所の広場で、キャスティング用のラバーシンカーを投げて遊んでいるうちにキャストが上達したりもします」
ピッチングなら部屋でも練習可能。子供の遊びにいかが?
基本アクションはやはり「ただ巻き」
最適な巻き速度は先生が手本を見せよう
センドウ「ルアーが着水したら、ひたすら巻くだけ。ルアーによって最適な巻き速度は異なるので、これはまず先生が「これくらいの速度で巻くんだよ」とお手本を見せてあげる。また、ルアーを沈める必要があるときも、『ルアーを投げたらこれくらい待つ』と実際に沈める動作(時間)を見せてあげるとよりわかりやすいでしょう」
もうひとつ注意点がある。
センドウ「入門者あるあるなんですが、釣り竿をギュッと握っちゃう。ギュッと握ると、疲れるし、急な動作に対応できないし、操作がブレやすい。ロッドの持ち方には、いろいろな流派があって僕自身状況によって使い分けますが、薬指と小指でホールドし、人差し指と中指は支えるだけ、というスタイルが一般的」
センドウ「あとは、できるだけ一定の速度でリールを巻く。これが基本です。なお、入門者は巻き速度が乱れがちですが、ちょっと乱れたからといって、それが釣れない誘いとは限らない。極端に速いとか極端に遅いのでない限り、あえて指摘して矯正するほどではない…かも!? できるだけ自由に、ノビノビやらせてあげるのが釣りを楽しんでもらうコツです」
ただ巻き用参考ルアー
ジグヘッドリグ
センドウ「ただ巻きのみの簡単な誘いでも、ワームが勝手に動き、勝手に魚を誘ってくれる。スピニングで使いやすいのは、1.8~3.5gのジグヘッド。ただ巻き以外ではボトム放置で誘うのも有効」
ミノープラグ
センドウ「形状が小魚っぽいので、『なんか釣れそう…』とモチベーションを高めやすい。トゥイッチやジャークで使うイメージがあるけど、まずはただ巻き(もしくはデジ巻き)してもらいましょう」
スモールクランク
センドウ「投げで巻くだけで、確実に釣れるアクションが出るのが強み。リトリーブがちょっと雑でも狙いのレンジを引ける。手元に巻き感があるから、小さな子供も集中力をキープしやすい」
チャター系
センドウ「実はチャター系はかなりおすすめ。ハードルアーとワームの中間みたいなイメージで使える。ただ巻きでも手元に振動がちゃんと伝わるし、巻きを止めてもラバージグみたいに自然に揺らぐ」
スピナーベイト
センドウ「抜群のウィードレス性能が武器。ルアー釣りの入門者にとって、ウィードをかわしながら釣るのは至難の業。そんなとき、シングルフック搭載の軽量スピナーベイトがあると重宝します」
4inグラブ is ジャスティス!!
センドウ「初めてのバス釣りで、どんなルアーを投げさせるか。これは本当に迷うところですが…僕のおすすめは4inグラブ。巻いてよし、沈めてよし、巻きを止めても勝手に動く。ジグヘッド、ノーシンカー、スプリットショットなどどんなリグにも合う。汎用性が高くとても使いやすいですよ」
ニンジャのイチ押し!
ジグスピナー
センドウ「スピナーベイトよりも安価なのがうれしい。トレーラーは、4inグラブでも3inヤマセンコーでもサイズがマッチしていれば何でもいい。ただ巻き、放置、ズル引きなど多彩なテクニックに対応する」
シャロークランク
センドウ「夏の朝夕におすすめなのがシャロークランク。飛距離が出るのでキャストの感覚をつかみやすく、また操作法も水面で引き波を立てながら巻くだけと簡単。ベイトタックルが基本ながら、強めのスピニングなら普通に使えますよ」
ベイト使用時の参考ルアー
センドウ「ベイトタックル使用時は、以下のようなルアーがおすすめ。スピナーベイト(ビーブル 3/8~1/2oz/ボトムアップ)、ミノープラグ(ハードコアミノーフラット95F/デュエル)、クランクベイト(3DSクランクMR 50F/ヨーヅリ)、バイブレーション(ハードコア フラッシンバイブ65/デュエル)あたりが使いやすい」
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!