これが本当の海の怖い話。「魚がニッポンから居なくなる」。釣り人が変える日本の海の近未来【#プロローグ】



ここ数年、コロナ禍の影響もあり、釣りを楽しむ人が増えました。それだけが原因ではないですが、以前から「釣り人」を取り巻いていたマナー問題などが最近顕在化しつつあります。それに腹を据え兼ねた人たちが「釣り禁止」の看板を立て、どんどんと釣りを楽しめなくなる状況が広がっています。それだけでも防いでいきたい、対処しなければならない問題です。が、もっと、もっと釣り人にとっては恐ろしい事態が差し迫っています。

「日本の海から魚が居なくなる」。またまた、そんな大げさな……。と思われたかもしれません。海は広いな大きいな〜。無限の海! 魚が居なくなるなんてありえない! とも言ってはいられない事態なんです……。と、ある人が鳴らした警笛と提示するデータから、差し迫る危機を皆さんに感じていただきつつ、それを回避する方法をこの連載でお知らせできればと思います。

目に見える異変は「一時的」なものではない

業界的には「魚が居なくなる」なんてネガティブな情報を流さないでくれ。と、言われてしまいそうなのですが、臭いものには蓋をする風習。もう、辞めにしましょう。これが「破滅」への道ならば、ネガティブすぎる話しですが、回避する方法が「釣り人ひとりひとり」にある(出来る)とするならば、その方法論は知るべきです。

理由があって、記事内ではどなたがナビゲートしているかは(現在は)公開しません。ですが、事実としてのソースやデータは公開します。この記事は定期的に連載をしていきますが、読み進めていくと、なぜ、記事のナビゲーターの存在を公開しないかがわかってくると思います。<「関係者の証言」とかソースとしては薄いのですが、ちゃんとした情報源だなというのは解るように噛み砕いていきます>

さておき。「魚がニッポンから居なくなる」この破滅的状況を打開する「はじめの一歩」は、何なのか。

それは、現状を知り、原因が何処にあるかを知ることです。ですので、この連載では、今、日本を取り巻く「海(水辺」で何が起こっているのかを、まず、知っていただこうと思います。

記者が、この連載を始めようと思ったきっかけをお話します

私はアジングがすこぶる好きです。何処にでもいる大衆魚でターゲット。身近な魚のアジ。

数年前、アジのパラダイスと呼ばれるような地域に何度も足を運びました。四国西岸。愛媛県の海です。正直、何処にでもアジが居ました。どの港にも少なからず居ました。その総量は豊富。群れを見つけるのに苦労しませんでした。ですが、最近、その地域に何度が出向いたのですが……。

アジは身近に釣れて、美味しい大衆魚。

あれだけ居たアジが、しっかりとポイントを選ばないと居なくなっていました。

明らかにアジの数が減りました。理由は? 温暖化による影響? 黒潮の蛇行によるもの? それぐらいなら、一時的な年度ごとの増減の差で片付けられます。でも、単なる感覚だったではお話になりません。データは? 海面漁業生産統計調査(農林水産省)のデータを見てみるとやはり、漁獲高も減っています。漁獲高については減るファクターが他に存在するにせよ(漁師の減少など)、明らかに減少していることがわかります。

釣獲圧? 漁獲圧? 何が原因だ??? ある釣り人は言いました。

「明らかに漁で獲りすぎている。小さなアジから根こそぎ。巻き網で一網打尽! 目の前で何度もやられているからね。産卵期もお構いなしだ」

とある人はこう言いました。

「温暖化により、植物性プランクトンが減り、動物性プランクトンが減っています。それにより魚の数は世界的に減っています。ですが、日本近海では特に魚が減っていますよ。世界は既に魚が減る事に気づいていて対策をとりつつあります。なので、日本近海の資源量の減少は他国の海より加速度的です」

結論から言うと、「獲り過ぎ」による個体数の激減は大きな原因のひとつです。そんな話を聞くと、釣り人的にはバイアスが掛かってしまいます。「仕事とは言え「漁師が獲りすぎている」から悪いんじゃねぇか」。と。端的な事実からはそう解を導き出したくなるのも道理でしょう。

現状を知らない人にとっては「釣り人」だって資源減少のトリガーになっているし、我々釣りのメディアだって……。

釣り人の釣獲圧も無罪というわけではない。


獲る人が主原因だと片付けるのはナンセンスだ

ですが、「漁師が獲りすぎているから魚が居なくなる」と結論づけるのは間違いだと、この連載のきっかけをくれた人は言いました。「原因はそこじゃない。もっと深いところにある。漁師が、釣り人が悪いわけじゃないんです、もっとミクロな指摘をすると巻き網が悪いわけでもありませんよ(笑)」

巻き網を例に出したのは、近年、漁師の巻き網による漁法が横行しており、それにより資源の枯渇が進んでいるという風潮が一部にあるからです。

ちなみにですが。現在、海の魚資源の話しをしておりますが、内水面(河川湖沼)の資源量の枯渇の主原因は、釣り人の釣獲圧が大半ですが、これも結論、釣り人が悪いという単純構造で無いことも申し添えておきます。

現況、内水面(河川湖沼)から魚が減る主原因は、釣り人、鵜の食害。もちろん、それを取り巻く環境要因が大きく絡んではいます。

そもそも犯人探しというのが下衆な話しです。敢えて犯人を晒すとすれば、「知ろうとしない国民」です。つまり、我々ひとりひとりが、こののっぴきならない状況を作り出してしったということになります。反省の意味を込めて、記者含めてこの記事を書きながら勉強していきたいと思います。

海洋資源後進国ニッポン。世界の悪い見本のオンパレード。無知が日本の海を殺している!?

例えば。春のマダイは桜鯛。旬で美味しい。これは、大きな間違いです。でも、卵も持っていていプリプリに太っている! 見た目はすごい! 旬なのでは??? しかし、最も「美味しい」からは遠い、最悪の旬といえます。可食部となる身のエネルギーは卵や生殖のためのエネルギーとしてもっていかれ、味はスカスカ。

こちらは初夏のマダイ。春先のマダイよりはコンディションがよく美味しいです。

じゃあ 春のマダイを「旬」に仕立て上げたのは??

  1. 産卵シーズンのマダイは釣りでも漁でも狙いやすい
  2. 一網打尽にできる
  3. 釣れやすい
  4. 量が安定して獲れる
  5. 売りやすい
  6. ついでに旬にしちゃったら価格も上がる。

マダイに限らずわりと日本ではこういったトリックがあります。

消費者も消費者です。こういった誤った旬の情報さえ耳に入れば、魚は美味しく感じるし、旬だと思いこんでしまい、美味しくもない時期のマダイをありがたがってしまう。ドヤ顔で語っていますが記者だって以前はマダイの旬は春だと思っていました。

ルアマガプラスでもおなじみの魚仕立て屋として知られる究極の血抜き開発者・津本光弘さんもいつも言っている「旬とか天然という言葉を聞いて”脳”で美味しい、惜しくないを決めてるよね。ほんまに魚の美味しい時期、本当の旬を知らない」

別に思い込みやプラシーボ効果を否定はしないし、それだけで済むのなら、美味しくもないマダイを有難がって食べてればいい。と、味音痴と突っぱねることもできるのだけど、そうもいかないのが現状なのです。

とある方はこう語っていらっしゃいました。

「取り急ぎですが、産卵期の魚の乱獲、成長しきっていない魚の採捕。この2つのもたらす魚資源量への影響は深刻です。漁業先進国と呼ばれている国々は、ここをしっかりとコントロールして資源量の低下を防いでいます。このコントロールができずに、資源量の極端な枯渇に向かっているのが日本の海です。もちろん、この2点の問題だけではないですが……」

じゃぁ、捕るの漁師がやめればいいじゃん。釣り人も控えればいいじゃん。

そんな単純な問題でもないというのが現状なのです。現状なのですが、この繰り返しで魚が枯渇していく速度は、加速度的に進んでおり、10年とか20年先の話ではなく、数年先、いや、1〜2年先に訪れる未来の話になりかねないと言います。

「無知」が世界6位とも言われる広大なEEZを持つ日本の海を殺しているのです。ウナギの旬は夏ではありません。ハモの旬も同じくです。初鰹に戻り鰹? 初鰹はサッパリしていて美味しい???? 確かに日本の魚食は文化です。でも文化だから……と、起こっていることに目をそむけていては、そんな文化すら消し飛ぶくらいの危機が目の前に迫っているわけです。本末転倒だと思いませんか?

土用の丑の日。夏のウナギは実は旬ではぜんぜんありません。ウナギは、晩秋から冬にかけてが最も美味しい季節。

すでに海洋資源の資源管理の稚拙さは、世界でも後ろ指刺されて笑われるぐらい「悪い見本」として取り上げられている日本(連載中にそのソースは提示します)。さてはて。経済的には先進国なんて言われる我が国ですが、海洋資源管理に関しては「ぶっちぎりの後進国」という現状を僕らはまず、知らなければなりません。

日本は「漁業」で復活できる道を自ら潰している。そして、釣り人は「魚が棲む海を見捨てている」

どうしても字面を追っていくと、獲りすぎが問題なんじゃないか。つまり漁師が悪い。みたいな感じになりそうですが、繰り返し申し上げておきます。漁師が悪いわけではありません。むしろ、日本の海の復活の旗手になるのは漁師であり、重要なキーマンになっています。

美味しい魚を食べ続けるためにも、我々は考えなければいけないことがあると思います。記者も勉強をはじめたばかり。一緒に学んでいきませんか?

漁師というのは職業で、自信の生活を支える手段として魚を獲っているわけです。仮に、危機感を感じた漁師の方が、声を上げて、漁業資源の管理に声を上げたとしても、国全体で同調は疎か、他国との同調が即時可能なわけではありません。そうなると、「やり損」になってしまいます。

だからこそ、現場の環境の変化に敏感で、SNSなどの発信力も高く、日本全国の水辺に足繁く通う釣り人の力が必要なのです。釣り人と漁師がちゃんと手を取り合えば、漁師だけでなく、地方の再生、大風呂敷を広げれば日本という国の50年、100年を支える「資源」を取り戻すことも可能な話なのです。

どんどんと衰退し、後継者が少なくなる漁業? いえ、花形の職業に返り咲く、意外な手段が存在しています。夢物語でも宗教の類でもありません。しかも、短期間でドラスティックに「やれば変わる」方法です。その方法を、この連載のキーマンとなる方を取材しつつ、話を噛み砕いてお伝えしていきます。

できるのにやれない? やろうとしない? 原因についても追求していきます。

そしてこれが、釣り人にとっては、魚がいる水辺。それが最も欲しい、手に入れたいものに繋がります。なので、ぜひ、読者の皆様のお力をお貸しください!

では、何を変えなければいけないのでしょうか。ひとつめは、現状を正しいデータを持って知ること。それを広めること。そして……。それについては徐々にお伝えしていこうと思います。