近年、日本各地で話題になりつつあるソルトルアーフィッシングでクランクベイトを使う『ソルトクランク』。単にその名前を聞いただけでは、そういった楽しみ方もあるのかな? と思うかもしれないが、実は違う。『ソルトクランク』だからこその強みが大いにあるのだという。『ソルトクランク』の第一人者とも呼べる乃村弘栄さんに詳しくお聞きした。
なぜ『ハードルアー』? なぜ『クランクベイト』?
ロックフィッシュゲームといえばワームが基本というイメージがある。
その名の通り、岩礁地帯や消波ブロック帯といった根掛りの激しいエリアに生息していることが多いからだ。
また多くの場合、そういったエリアの底付近にいるため、浮力のあるハードルアーでは狙いにくいという理由もあるだろう。
だが、それでも『クランクベイト』を投げる利点があるのだと、ソルトクランクの第一人者とも呼べるプロアングラー・乃村弘栄さんは語る。
【Profile】
乃村弘栄(のむら・こうえい)
琵琶湖のレンタルボートショップ『フィッシングゲート』のオーナーであり、琵琶湖ガイドも行うプロアングラー。かつてはJBトップ50でも活躍していた。日本はもちろん世界中での釣りの経験を持ち、様々な釣りに精通する。一見すると強面だが丁寧かつ物腰柔らか。
乃村「実はクランクベイトを使ったロックフィッシュの釣りって、理にかなっている部分も多いんです。それは他のハードルアーではなく、クランクベイトというルアータイプだからこその利点。それを紹介していきますね」
唯一無二とも言える『強波動』
乃村「まずひとつめが、クランクベイトのアクションです。ターゲットの種類にもよりますが、多くの場合、ロックフィッシュは甲殻類を好む傾向にあります。甲殻類は魚類と違って細かい波動を出して泳ぐと言うよりも、ブルブルと強い波動を出して泳ぎますよね。あのアクションに近いものがクランクベイトなら出せるんです」
もちろん、ソフトベイトが出すものより強い波動は、より広い範囲の魚に効率的にアピーすることもできる。
しかし強波動のルアーという意味では、ロックフィッシュではブレーデッドジグ(チャター)系のルアーも使われるはず。だがそこにもクランクベイトだからこその利点が隠されていた。
浮力のおかげで根掛りに強い
乃村「クランクベイトには浮力がありますから、根掛りに強いんです!」
狙う場所の都合上、ロックフィッシュとは切っても切れない関係にある根掛り。それに強いとなれば、かなり心強い。
乃村「たとえ根掛りの激しい岩礁地帯でも、ボトムにタッチしすぎないように巻くだけでかなり根掛りを防げます。そして仮に引っかかったとしても、長いリップがスタックしているだけの場合も多く、引っ張るか巻くのをやめて浮かせるだけで簡単に外れてくれるんです。それでも心配であれば、一旦潜らせてからサビくのも有効です。リーリングせず、ロッドワークでルアーを動かすだけでもブルブルと動いて何をしているかわよくわかりますよ」
また、ロックフィッシュ狙いでよくある、魚を掛けてからのハプニングにも強いという。
乃村「必然的にボトムから浮かせて喰わせることが多いので、フックアップ後に潜られる心配が少ないんです。もちろん、それを考慮してドラグはキツめの設定にするなどの準備は必要ですけどね」
竿抜けポイントこそが狙い目
根掛りに強いという特性を持つクランクベイトだが、唯一の欠点がフローティングルアーがゆえの潜行レンジの限界値。つまり、あまりにも深い場所は狙えないということだ。
しかしそれすらも『ソルトクランク』では利点に変わるのだという。
乃村「深い場所は苦手ですが、その分浅い場所は大得意なんです。むしろ浅い場所の場合、ソフトルアーが使いにくすぎる。ルアーとラインとの角度がつけにくいぶん根掛りしやすいし、ワームをジックリと魚に見せにくい。その点、ソルトクランクであれば、根掛りを回避しつつ強い波動で魚にアピールできるわけです」
例えば水深2~3mの地磯。
ボトムが見えるこういったポイントは多くの場合でスルーし、もっと水深のある場所を狙いに行くはずだ。
だがソルトクランクではこういった場所こそが本領を発揮できる場所なのだ。
乃村「場所によっては堤防も狙い目です。堤防の足元に入っている基礎や消波ブロックは言わばブレイクのエッジ。そこを効率よく狙っていくことができるのもソルトクランクの利点なんですよ」
堤防といえばついつい沖に遠投しがちだが、ソルトクランクならショートキャストで足元の地形変化をテンポよく釣っていくことが可能なのだそうだ。
クランクベイトの選び方・使い方
『ソルトクランク』の核心部であるクランクベイトはどのようなものがいいのだろうか?
乃村「自分が使っているのはハイドアップのHUクランクシリーズ。しっかり潜ってアクションがいいのはもちろんですが、止めて浮かせたときにも『ライザーアクション』によって口を使わせることができるすぐれものです」
HUシリーズにはいくつか種類があるが、その中でも200,300,400を主に使うのだという。
乃村「使い分けの基準はエリアの深さです。まず一番潜る400(潜行深度4m)から投げることが多いのですが、これでボトム全く叩けない場所はソルトクランクではなくワームを投げます。逆に底を取りすぎる(=浅すぎる)場合に、300(潜行深度3m)、200(潜行深度2m)とルアーを変えていきます」
乃村「使い方の基本はボトムノックです。といってもゴツゴツ常にボトムを叩くというよりは適度にタッチするぐらいがベストです。浮上アクションでも狙えるので、ここぞという場所でロッドをチョンチョンと動かして誘ってから浮かせて喰わせる、なんて技もあります。先述している通り、一度ボトムを取ってからサビくのも有効ですよ」
タックルセッティング
最後に、『ソルトクランク』のためのタックルについてお聞きしよう。
【タックル】
●ロッド:エンピナード91S+(トランスセンデンス)
●リール:ツインパワーC5000XG(シマノ)
●ライン:マックスパワーPE X8 1.5号+シーバスショックリーダーフロロ22lb(共にバリバス)
乃村「ロッドはヒラスズキ用ロッドのエンピナード(トランスセンデンス)を使っています。バットパワーがあって、全体的に張りのある竿が操作しやすいですね。特に竿先が入りすぎるとすぐに根掛ってしまいますので注意が必要です。もっと短くてもいいのであれば、バスロッドでも使えます。リールはツインパワーC5000XG(シマノ)です」
乃村「ラインはマックスパワーPE X8(バリバス)の1.5号。性能は高いのに安価なため、傷なんかが入りやすい磯場で釣りが多いときにも気軽に巻きかえができます。またラインカラーの蛍光色も気に入っていて、ルアーのトレースラインや、ファイト中の魚の位置把握等にとてもありがたいんですよ。ローライト時の視認性も良いですので、朝マヅメ・夕マヅメにも使いやすいラインです」
乃村「リーダーはシーバスショックリーダーフロロの22lbを2ヒロほど。磯での釣りとしては若干細いかもしれませんが、太すぎるラインはクランクベイトのアクションを殺してしまうため、この太さにしています。むしろ堤防などの潜られる心配が少ない場合はもう少し細くてもいいかもしれません」
乃村「それと是非試してほしいのが『PEにシュッ!』です。パサパサの髪の毛って手触りが悪いじゃないですか。あれを改善できるイメージなんですよ。キャストしたときの飛距離も20%はアップします」
乃村「特に夏場はラインが乾きやすいので、釣り場でもこまめに吹きかけるのがオススメです。あと自分は釣りが終わってタックルを水洗いしたあとにスプール全体にスプレーしています。いずれの場合も、スプール全体にスプレーすれば、浸透していってくれるのでお手軽ですよ。コンパクトでノンガスタイプの携帯用もあるので、遠征にもオススメです!」
ソルトクランクを始めるなら今!
まだまだ挑戦するアングラーの少ないソルトクランク。
つまり今ならまだ竿抜けポイントがたくさんあるということだ。
乃村さんの教えを参考に、一味違うロックフィッシュゲームを堪能しよう!