2011年に誕生したポイズングロリアスはトーナメントシーンで鍛え上げられ、2021年に第3世代へと進化した。ベイトロッドの中心的なアイテムになるのがバーサタイルロッドの1610M。JBトップ50に参戦する小野敏郎さんが第二世代からの進化を解説する。
【Profile】
小野俊郎(おの・としろう)
大人気タックルメーカーとして不動の地位を築き上げたジャッカルCEO。アングラーとしても非凡な才能を持ち、98JBワールドチャンピオン、08エリート5優勝、04&13オールスタークラシック優勝など輝かしい戦歴を誇る。
『ロクテンM』の起源はジャッカルのポイズンにあった
長さ6ft10in、ミディアムパワーの「1610M」を小野さんは『ロクテンのM』という愛称で呼ぶ。日本のバスロッドシーンでスタンダードスペックになったロクテンの起源は、ジャッカルのポイズンシリーズにあった。
ポイズングロリアス1610M(ジャッカル×シマノ)
【スペック】
●全長(ft.):6.10
●テーパー:RF
●継数:2(グリップジョイント)
●仕舞寸法(cm):179.1
●自重(g):95
●ルアーウェイト(g):7~21
●適合ライン(lb):8~16
●本体価格(円):58,500円
小野「ロクテンは現在ではベイトロッドの中心的なアイテムになっていますが、その先鞭をつけたのがジャッカルです。シマノさんと共同開発を始める以前、ポイズンシリーズの中核モデルとしてロクテンのMがありました」
長さは標準的なスペックの6ft6inと7ftの中間に位置する6ft10in。ロッドパワーは中間的な領域をカバーするミディアムパワー。テーパーは操作性と投げやすさを両立させたミディアムファスト。全体的にバランスのよい中庸なスペックにすることで、巻き物からワーム系の釣りまで幅広く対応できることがコンセプトだ。
2011年にジャッカル×シマノの共同開発により、初代ポイズングロリアスが誕生。以前からのコンセプトを継承した610Mを中心アイテムとして、ベイトロッドのラインナップを完成させた。その後、ポイズングロリアスは2016年に第2世代に更新され、2021年に第3世代に進化した。ジャッカル時代を含めるとロクテンのMは4世代にわたり、3回の進化を遂げたことになる。
第3世代へのモデルチェンジによって1610Mは何が新しくなったのか。
小野「ブランクの大きな進化は『アルティメットブランクスデザイン(UBD)』が採用されたこと。ロッドはトップ、ベリー、バットそれぞれの部位ごとに求められる機能があります。100種類以上の素材のなかから、それぞれの部位に適したものを組み合わせて1本のブランクを構築しています。例えば強さが求められるバットセクションは、素材を重ね巻きするのではなく、バットに必要な弾性率が高い素材だけで構成されています。素材を重ね巻きする部分がないので、軽量化しつつ強度とテーパーが最適化されて、きれいに曲がるロッドに仕上がっています」
『フルカーボンモノコックグリップ』も第3世代の特徴だ。リアグリップをカーボンの一体成型による中空構造にしたことでさらなる軽量化が実現している。
自重は前作(16グロリアス1610M)の102gから7g軽量化して95gとなり、100gを下回るまでになった。そして、数値上の軽さに増して重要なことが、持ち重りの軽減だ。
小野「握って振ってもらえれば、95gという数字以上に持ち重りが軽くなっていることが体感できます。ロッドはトップを軽く感じるバランスに設計すると、持ち重りを軽くできます。ただし、グリップエンドにバランサー(ウエイト)を入れる従来の方法では自重が重くなってしまいます。1610Mは、設計段階でロッドの重心とリールシートを近づけることで、持ち重りを軽減して軽い操作感を実現しました」
ロッドの重心からリールシートまでの距離は前作の220mmから6mm近い214mm。持ち重りは前作を100%とすると88.8%に低減。ロッドを振ったときに感じる振り重りは前作を100%とすると90.2%に低減している。(※数値は最終プロトモデルの実測値)
小野「持ち重りが軽減したことで、よりシャープに振り抜けるので、飛距離やアキュラシー性能が向上しています。ワーム系の釣りでは操作感が軽いので、より細かいアクションがつけやすくなりました」
1610Mというバーサタイルロッドをどのように活用しているのか
小野「ロクテンMはスペック上ではルアー重量7~21gという中心的な領域をカバーしています。巻く釣りは小型のクランクベイトから、重めのスピナーベイトまでを快適に使えます。撃つ釣りは高比重ワームのノーシンカーから、シンカー11g前後までのフリーリグやテキサスリグにマッチしています」
1610Mはサッカーで言うところのポリバレントな選手。ひとりで複数のポジションをこなすことができるユーティリティープレイヤーと言える。
小野「僕はトーナメントで多数のロッドをボートに積むなかで、ルアーやメソッドに特化した専用ロッドのほかに、バーサタイルな1610Mを1~2本積んでいる。これがあると状況の変化に合わせて、巻く釣りやワームの釣りに対応できます。岸釣りの場合は、持ち歩くロッドの数を少なくしたいので、ベイトロッドを1本だけ使える場合は1610Mの一択です。バーサタイル性能が高く、岸釣りで使用頻度が高いルアーやリグはほぼ使うことができます」
小野さんが実際に使うことが多いのは、バイブレーション(TN60など)、14gまでのスピナーベイト、高比重ワームのノーシンカー、シンカーが3.5~10.5gのテキサスリグやフリーリグだという。
小野「1610Mは、とにかく使いやすさを追求して開発しました。ロッド全体のバランスを向上させて持ち重りを軽減、まるで手の延長であるかのような自然な操作感が気持ちいいロッドになっています。バーサタイルな1610Mは、初級者や中級者にこそ使ってほしいですね!」
タックルセッティング例。
小野さん巻く釣りがメインの場合は右巻き、撃つ釣りがメインの場合は左巻きのリールを使うという。ぜひ参考にしていただきたい。
●ロッド:ポイズングロリアス 1610M
●リール:メタニウムHG
●ライン:レッドスプール14lb
※ロッドとリールはジャッカル×シマノ、ラインはジャッカル