【『カゲロウMD 125F(メガバス)』新登場!】 『カゲロウ』はなぜ釣れるのか? 人気の秘密と最新モデルを久保田剛之さんが解説!



メガバスの大人気ルアー『カゲロウ』といえば、今やシーバスアングラーなら知らない人はいないとも言えるベストセラー。あまりの好評ぶりに、手に入りにくい状況が続いているとも言われている。ところがこのルアー、発売当初は普通に買えていたのをご存知だろうか? つまり、最初からメガバスは製造し続けているわけだ。ところが人気に火が付くや否や、あっという間に希少ルアーの仲間入り…。口コミで評価が広がることによる言わば『健全な』人気のルアー。果たしてその秘密とは? そして新たにリリースされる『カゲロウ MD 125F』とは? メガバスプロスタッフにして、カゲロウシリーズの生みの親である久保田剛之さんに語っていただいた。

Profile

久保田剛之(くぼた・よしゆき)

神奈川県の相模川へと、ほぼ毎日足を運んでランカーハンティングとルアー開発に明け暮れるシーバススペシャリスト。学生時代に学んだ知識と釣への情熱が結実した監修ルアーは確かな釣果を約束する。fimoブログでも目からウロコのルアー論を語っているのでそちらも要チェック!

今更聞けない? 『カゲロウ』というルアーの釣れるわけ

――これまでに3サイズのカゲロウがリリースされ、新しくMDモデルも登場するということですが、そもそも『カゲロウ』とはどういうルアーなのでしょうか? リップレスミノー…?

久保田「そうですね。既存のシーバス用ルアーのジャンルに分けるのであればリップレスミノーでしょうね。でも実際はバス用ルアーではおなじみのダーターに近いですね」

――ヘドンのラッキー13とかですよね。下顎が長いタイプのポッパー、みたいなイメージですね。

久保田「そうですそうです。普通のリップレスミノーとの違いで言えば、上顎があるかないか、です」

――なぜこの形なのでしょうか?

久保田「規則正しく動かさないための工夫とでもいいましょうか。普通のミノーやリップレスミノー、シンキングペンシルなんかもそうですが、リップやボディが水流を規則正しく受け流すことで規則正しいアクションを生み出しています」

久保田「ところがカゲロウのようにダーター形状だと、下顎は水流を規則正しく受け流そうとするのですが、カップが水を掴み、上顎部分はちょっとした水流の変化でも水流を乱し、アクションに揺らぎを生じさせてくれるんです」

――それが釣れる理由につながると。

久保田「そうなんです。そもそも水というのは一見するとただそこに水があるだけのように見えますが、例え止水であっても実は大小様々ないくつもの流れが存在しています」

――ルアーを引いていて感じる『潮が効いている』、みたいな感覚が、大なり小なりあらゆる水域であるわけですね。

久保田「この流れの変化は、体が大きく遊泳力もあるシーバスにはほとんど影響を与えません。ところがこれが小さな生物になると話は別です。小魚であればちょっとした水流の境目を超えるにしても泳ぎが乱れるなどの影響を受ける。人間で言う段差に躓く、みたいな状態になるわけです。するとその瞬間、そこにいるシーバスにはアドバンテージが生じるんです」

――なるほど! 水流の変化で戸惑う(手間取る)ベイトフィッシュを捕食する!!

久保田「そのベイトフィッシュの躓きを誰にでも再現できるようにしたのが『カゲロウ』なんです! つまり、普通に巻いているだけで、上顎の働きによってちょっとした水流の変化でもアクションにゆらぎを生じさせる。これがベイトフィッシュでいうところの躓きになって、シーバスが捕食する間となるわけなんです」

――アングラー側が意識しなくても、シーバスが捕食したい場所で捕食しやすいように自動的に動いてくれるわけですね! 釣れるわけです!

カゲロウシリーズに新モデルが追加!

カゲロウ MD 125F(メガバス)

【Spec】

●全長:125mm
●重さ:21g
●タイプ:フローティング
●潜行深度:MAX80cm
●フック:#4×3
●カラー:全15色
●価格:2,530円(税込)

潜行深度とボディサイズのこだわり

――そんな『カゲロウ』ですが、今回、新モデルが登場するんですよね。

久保田「『カゲロウ MD 125F』。その名の通り、ミディアムダイバー、つまりオリジナルのカゲロウ124Fよりも潜るモデルですね」

――具体的にはどのくらい潜るんですか?

久保田「124FがMAX20cm程度だったのに対して、60cm~70cm程度、最大でも80cmしか潜らないように設計しています」

――結構間が空いているんですね。どういった基準でこの潜行深度となっているのでしょうか?

久保田「まず124Fであれば、潜行深度がMAX20cmだとしてもそれより深い場所にいる魚を引っ張り上げる能力があります。つまりMDは、124Fでは捕れない魚を狙うための深度設定になっているんです。その基準の一つが、ウェーディング時の水深です。シーバスアングラーの平均身長を170cmと仮定して、股下までウェーディングしたときの水深がおよそ80cmなんです。このシチュエーションで投げれば、ボトムをこすることなく、カゲロウ124Fでは捕れない魚を狙うこともできるわけです」

――ほかにも80cmの理由があるんですか?

久保田「例えば足元から水深のあるサーフですね。波打ち際の最初の深みがだいたい80cmくらいなので、そういったフィールドでスタックさせることなく引いてこられる深さです。河川なんかで使うときも、ファーストブレイクに付く魚を狙うときに丁度いい深さだと思いますよ」

左が124Fで右がMD125F。下顎が突き出ているのが大きな特徴だ。

――サイズは1mmだけ、MDのほうが大きいようですが、ここにはどんな秘密が?

久保田「下顎が長い分、MDのほうが1mm大きくなっているのですが、最初は124mmのままで作ろうとしました。浮力を下げる、つまり重くすることでレンジが入るようにもできたからです。でもそれではカゲロウらしい釣果が出なかったんです」

――どういうことでしょうか?

こだわりの3フック。針の大きさと配置の絶妙なバランスがフッキング性能を大きく左右するという。

久保田「重くなると流れを突破してしまう、つまり浮力が下がると、流れの変化に強くなってゆらぎを発生しにくくなってしまうんです。そこで120mmサイズにデザインし直して、それに見合った浮力でのセッティングをすすめました。ところが、小さなボディだとフックセッティングが思うようにいかなかった。結局、124Fのフックバランスが使えるということで再度デザインし直してできたのが下顎の分だけ長い125mmだったわけです」

大きさの違いは下顎分でしか無いが、よく見ると顔周りだけでなく、側線やフックの位置が微妙に変わっていることがわかる。単なるバリエーションではなく、目的に即して1から設計していることの何よりの証と言えそうだ。

久保田「メガバスの開発さんには非常に迷惑をかけました(笑)。ですがおかげで124Fと同じ様な使用感のままで純粋に違う魚(深い場所)を狙える『カゲロウMD125F』が完成したんです」

MDだからこその特徴と釣り方の極意

――その他にも124Fとの違いはありますか?

久保田「MDはロールを抑え気味にしています。というのも、同じ泳ぎにしたら124Fのほうが釣れると思うんです。MDにはMDでしか釣れない魚を釣りたい。だからアクションの質を敢えて変えています」

――サイズ感はほぼ同じなので、キャスタビリティは変わらずよく飛ぶんですか?

久保田「これは良し悪しなのですが、MDは124Fよりもよく飛びます。というのも、実は124Fは泳ぎ出しを最優先にしたセッティングで、LBOⅡが一番後ろまで行ききらない設定になっていたんです。でもMDはそこを再調整し、しっかりと飛ぶようにLBOⅡが一番うしろまで移動するようになっているんですよ」

――なるほど! MDの潜行レンジを活かしてファーストブレイクに届かせたいなら、飛距離は重要ですもんね。

久保田「でも一つ覚えておいてもらいたいのが、飛ばせば釣れるとは限らないということです。大きい魚ほど浅い場所にベイトを追い込んで捕食すると考えています。その浅い場所というのはつまり岸際なんですよ。MDで沖のブレイクを探るのもいいですが、まずは手前を124Fで探ることもとても大切です。それに遠投して巻く時間が長くなるほど、手前にルアーが寄ってきたときの集中力が切れがちですしね」



カゲロウは何故こうも人を惹き付けるのか?

――シチュエーションや124Fとの差別化など、使うアングラーのことを第一に考えて設計されているんですね。MDも人気が出そうです! ところで久保田さんはカゲロウシリーズの人気に関して、どのように分析しますか?

久保田「初心者~中級者にとっては特にありがたいルアーになっているんじゃないかと考えています」

――というと?

久保田「カゲロウシリーズの根幹にある、わずかな水流の変化に対してもシーバスの喰わせの間をオートマチックに作れるという点です。上級者であれば、リーリングする手元で流れの変化なんかを感じ取って、普通のルアーでも意図的にアクションを乱れさせて喰わせの間を作り出すことはできます。ですが、ついついハンドルをきつく握ってしまいがちな初心者ではそうはいきませんからね。カゲロウなら、不慣れな人がグリグリとハンドルを巻くだけでも自動的にシーバスが喰いやすい様、アクションにゆらぎを生じさせることができるわけなんです」

――つまり誰が使っても効果的なアクションが出せると。

久保田「それと根掛りさせにくい、というのもあります。例えば124Fなら最大でも20cm程度しか潜らないので、普通に使っていればボトムに根がかるということはなかなかありません。せっかく買ったルアーなら長く使いたいじゃないですか。無くしにくい、というのが効いているんだと思います。ちなみにMDをどんなタックルで使っても80cm以上は潜らない用にした狙いも実はそこにあります。80cmより深い場所で使えば、ボトムに根がかるということはほとんどない」

――たしかに、MAX80cmだとわかっていたら、無くしたくないからわざわざそれより浅い場所では投げないですもんね。

MDの下顎はえぐれている。より水を掴むためのデザインだが、想像以上に潜行深度が深くなるというジレンマがあったという。メガバス開発陣の高い技術力が水噛みとMAX80cmの潜行深度を両立させた。

久保田「ロストしないのは投げ続けられる理由になる。そうするとカゲロウはオートマチックに魚を釣らせてくれるので、どこかで釣果をもたらせてくれる。ダーターカップは水流の変化を感じやすくもあるので、慣れてくればすぐに手元に感じることができるし、そのタイミングでシーバスが喰ってくれば学びにもなって、自分自身のステップアップもさせてくれますしね」

――それがまた自信につながって、もっと『カゲロウ』の魅力にハマり込んでいくわけですね!

久保田「それで不慣れな人でも釣れるという話題が広がれば、上級者としても放ってはおけないですよね(笑)。そんな感じで多くの人に使ってもらえているのだと思いますよ」

――アングラーの経験や腕前に関わらずとにかく『釣れる』能力が高い。その結果として口コミで人気が高まったわけですね。X-80に続くシーバスルアーのスタンダードモデルになりそうです!

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