2021年、第2世代へとフルモデルチェンジを果たしたDAIWA最高峰バスロッド『STEEZ』(読み:スティーズ)。現在15機種を揃える中で、ボトムサーチで秀でる2モデルの開発を担当したのが草深幸範さん。ここでは『HURRICANE』と『FURY』、それぞれの真価を語っていただくことにしよう。
【Profile】
草深幸範(くさぶか・ゆきのり)
霞ヶ浦を本拠地とするW.B.S.において、2012&2017A.O.Y.、2004&2014クラシックウィナーを始め数々のキャリアを積み上げる凄腕トーナメントプロ。その礎は、生まれ育った都下から足繁く通った奥神奈川リザーバーに在り。フィールドを問わず、フィネスからパワーゲームまで自在にこなすマルチプレイヤーだ。
『硬いソリッドティップ』で差を付ける草深の2モデル
草深「僕が開発した2モデルをまとめて語ると、長さの違い、硬さの違いはもちろんですが、『使うシチュエーション』と『使うルアーウェイト』の差がメインと言ったらわかりやすいかと思います」
草深幸範さんは自身が開発した2021年発表の2モデルに関してこう語り始めた。
『HURRICANE』(読み:ハリケーン)と『FURY』(読み:フューリー)。それぞれ旋風、猛威といった意味を持つ。DAIWA歴代最高峰バスロッドのヘリテージを受け継ぐことなく、ブランニューのサブネーム。昨今の時代の変化に対応したモデルと考えることができそうだ。
草深「基本的な構造は、21 STEEZでレッドが差し色のシリーズ。いずれもSVF COMPILE-Xを採用したモデルで、高弾性かつ超軽量・超高感度のワーム&ジグロッドです」
DAIWA最高峰バスロッドのみ採用が許される最先端カーボンテクノロジーとして知られる『SVF COMPILE-X』(読み:エスブイエフ・コンパイル・エックス)。しかし、その圧倒的なポテンシャルは「敢えてここで触れるまでもない」のだと草深さんは言う。
草深「注目すべきは、それらのティップセクションに搭載された『ソリッドティップ』です」
草深「かつてワーム&ジグロッドには上から下まで硬い高弾性カーボンのブランクが良いとされてきました」
張りを持ったブランクは操作性を高め、なおかつ優れた感度が水中から伝わる振動を手元へとしっかりと伝える。ワーム&ジグで障害物に絡めて躱すために高弾性ブランクは欠かせない存在だ。草深さんの2モデルではベリー~バット部を高弾性のSVF-COMPILE-Xが担っている。
草深「ところが、昨今のフィールド事情は難しい場所しかないと言ってもいい。そんな中で少しでも多く釣りたいと考えた時に行き着いたのが『硬いソリッドティップ』だったんです」
バス界でソリッドティップと言えば柔らかく食い込みが良いという、繊細なスピニングロッドに搭載されるイメージが強い。草深さんがカバーゲームに対応するワーム&ジグ用のベイトロッドに採用した真意とは何か。
バスの眼の前で誘い続けるソリッドの『持たれ感』
草深「硬いソリッドティップのメリットは『食い込みの良さ』だけではない。カバーゲームで大切な要素としては2つの軸があります」
ただ単に柔らかいだけではない。ソリッドティップのアドバンテージとは何か。
草深「ひとつめは『眼感度』。ボトムの何かに引っかかると『クッ』と竿先が入り込み、自らの眼で即座に感じることができます。と同時に、その感触をベリー~バットのSVF COMIPILE-Xが増幅して手元へとしっかり伝達してくれます」
眼で感じた情報と共に『手感度』へと繋げる。最高峰STEEZだからこそ享受できる優れた感度がそこにある。
草深「ふたつめは、その何かに引っかかった状態で、ルアーを止めることができること。『持たれ感』です」
ここが硬いソリッドティップの大きなメリットだ。草深さんはこの状態を「(ルアーがカバーに)持たれ(る)感(覚)」と表現する。張りのあるチューブラーのティップでは即座に躱してしまうため、バスの眼の前でルアーを見せ続けることができない。
草深「軽く引っかけて誘い続けることができる。ラインは張らず緩めずの状態を保ち、食わせのタイミングをより長く作り出すことができる。また引っかかった状態から外す際もソフトです」
反発力の強いチューブラーで外そうとすれば、そのカバーから大きく移動してしまうが、ソリッドティップなら舐めるように躱して最低限の移動距離で収まる。バスの視界にルアーを留め、次のバイトを期待できるのだ。
草深「集中力を高めれば、チューブラーロッドでも移動距離を少なくすることもできなくはない。けど、このソリッドティップなら軽く簡単に引っ掛けることもできるし、外すことも簡単。ロッド自体が機能してくれます」
いわば、オートマティックでバイトを得ることができるのだ。
冒頭で解説の通り、草深さんはこの『硬いソリッドティップ』+SVF COMIPILE-Xの21STEEZの2本を作り上げた。それぞれどんなモデルなのかご解説いただこう。
小さな変化にリグが持たれ、少ない移動距離で次のバイトへ
草深「先にも解説した通り、2本の差は『使うシチュエーション』と『使うシンカーウェイト』の差での使い分けです。目の前のカバーやボトムに対して、どちらが適しているのかは使ってみてこそ真価を発揮します」
一方が『HURRICANE』(C67MH-SV・ST)。番手の文字は6ft7in、Medium Heavyパワー、SVF COMPILE-X採用、ソリッドティップ搭載を意味する。
もう一方は『FURY』(C70H-SV・ST)。こちらは7ft、Heavyパワーのモデルだ。
草深「ワーム&ジグで狙うカバー撃ち及びボトムサーチで欠かせない2本。僕の場合、テキサスリグとリーダーレスダウンショットではこの2本しか使いません。カバーの濃さに応じて、2段階のシンカーを使い分ける形です」
それぞれのシンカーウェイトは「HURRICANEが3.5~10g。主に5~7g」、対して「FURYが5~14gで、主に7~10g」。前者が撃ちモノど真ん中のウェイト、後者がやや重めのウェイトを担う。
草深「いずれも『硬いソリッドティップ』で、HURRICANEが中弾性、FURYが高弾性。シンカーウェイトが重くなるほどに弾性率を高めることで、より操作性を向上しています」
単なる机上の理論ではなく、現場での度重なるフィールドテストから弾き出された回答。強靭なベリー~バットとのマッチングもそれぞれに適した設計となっていることは言うまでもない。
全長は前者が6ft7in、後者が7ft。パワーはMHとH。
草深「リグが重くなるほどに、長さによるストロークの差が活きてくる。それぞれキャストからフッキング、ファイトといった一連の動作において必要十二分なセッティングです」
使用ルアーはテキサスにリーダーレスはもちろん、ラバージグ、そして高比重ノーシンカーにもマッチ。ボトムサーチのみならず、スイミングでの使用にも万全だ。
【おすすめセッティング例】
HURRICANE C67MH-SV・ST
- ルアー:テキサスリグ、リーダーレスダウンショット。「シンカーウェイトは3.5から10g。メインは5〜7g」
- リール:STEEZ LIMITED 1000HL
- ライン:STEEZ フロロ type-モンスター14lb
【おすすめセッティング例】
FURY C70H-SV・ST
- ルアー:テキサスリグ、リーダーレスダウンショット。「シンカーウェイトは5から14g。メインは7〜10g」
- リール:STEEZ SV TW 1012SV-XHL
- ライン:STEEZ フロロ type-モンスター16lb
シンカーウェイト差での使い分けが2モデルの真価
草深「それぞれのポテンシャルは現場で確かめてこそわかります」
HURRICANEとFURYの威力は、竿先を天井に当てるだけでは判断できない。1度フィールドで使ってみることをおすすめしたいが、そんな機会もなかなか少ないものだ。
草深「例えばボトムに沈む何か。いま水中でルアーが接触している何かの高さが、硬さが伝わってくる。引いてはその種類も明確に分かるようになる」
情報量の多さは何よりの強い味方だ。
草深「そして引っ掛けて誘えることができ、移動距離少なく外すことも容易。情報量って、その際に、粘るべきかどうかの判断材料にもなる。バス釣りって判断の連続だと思うんですよ。そこを補ってくれる強い味方ですね」
東日本のマルチプレイヤー、かく語りき。
DAIWA歴代モデルの開発で蓄積してきたソリッドティップのノウハウを最大限に盛り込んだ最高峰モデル。HURRICANEとFURYの優れた潜在能力をぜひ確かめてみたい。