数多の釣種の中でも繊細な釣りが要求されるエリアトラウトでは、より軽いハンドルが求められてきた。そして、さらなる限界を目指しSLP WORKSが満を持して発表したのが「超軽量の湾曲したカーボンハンドル」その機能性と実力を、開発秘話を交えお届けしていこう。
SLP WORKS(エスエルピー・ワークス)とは?
DAIWA(グローブライド)は2008年7月、多様化するユーザーのあらゆるニーズに応えるため、アフターサービス部門(修理、ご指摘等)を独立分社化、サービス品質の充実ならびに技術力のさらなる向上を図るため(株)スポーツライフプラネッツを設立。
現在はDAIWA商品のアフターメンテナンスだけでなく、新しいサービスや、リールやロッドのチューンナップ・ドレスアップサービス、そして、あらゆるコアユーザーの尖がったカスタムパーツ・カスタムサービスを提供している。それが「SLP WORKS(エスエルピー・ワークス)」。
リールのメンテナンスツールをはじめ、スプールやハンドル、ハンドルノブ、ベアリングなどバスやソルトルアーのみならず、磯釣りや投げ釣り、船用電動リールのパーツも揃っている。
SLP WORKS渾身の超軽量ハンドル『SLPW 40mmカーボンライトハンドル /ゴールド』
【スペック】
- 自重:7g
- 用途:エリアトラウト、ライトソルト用(※海水での使用後は、流水による十分な洗浄が必要となります)
- 対応機種:LT1000~2000サイズ、RCS1000~2000サイズ(※シャフト貫通タイプは対応不可、Sサイズノブへの交換可能)
- 付属品:ボールベアリング(CRBB)×2、ハンドルノブスクリュー×1、ワッシャー×4、ハンドルキャップ外しピン×1
- 価格:22,000円(税込)
軽さと強度への飽くなき探究から創り出された一品
リールは流れを巻いている最中に流れを感じることができる。そしてハンドルは直接指へ情報を伝えてくれる伝達機関のようなもの。特にエリアトラウトは他の釣り以上に繊細。よりハンドルの感度が重要になってくるのだ。
感度を上げるために、まずSLP WORKSが取り組んだのは軽さ。ハンドルが軽ければ軽いほど、リールが回転する時の違和感や水流変化のノイズといった、水中の状況が明確に分かってくる。もちろん、魚のアタリもより判別できるようになる。
田島「でもイグジストといったDAIWA最高峰のリールに付いているハンドルは、もう十分以上に軽いんですよね。さらに軽量化するにはどうするか。そこをクリアできる新しい提案がこのハンドルだったんです」
今まで販売していたRCSマシンカットライトハンドルは40mmで11g。SLPW 40mmカーボンライトハンドルは7gと、大幅な軽量化を達成したのだ。
さらなる軽さと強度を実現した「究極」のカーボンハンドル
宇宙分野の技術開発で実現した最高強度の炭素繊維トレカ®T1100Gを主材料に使用。カーボン繊維をとりまとめる樹脂はナノメートルオーダーで混合した、東レ㈱ナノアロイ®テクノロジー適応材料を用いた。軽量かつ高強度、高剛性を実現。
既存モデルとの比較
アルミ製シャフトを採用したハンドルとして十分に軽量なRCSマシンカットライトハンドル(※画像左、ノブ装着済)を実測すると14.3g。カーボンライトハンドル(※画像右、ノブ装着済)は10.47gその差は4gながら全体受領を考えるとその差は歴然である。
田島「その差は4gですが、全体自重を考えれば1/3の軽量化。これだけ差があれば手に伝わる感度は大きく変わります」
そしてこのハンドルの特長は軽さだけに留まらない。
田島「見てわかるようにハンドルが湾曲しています。カーボンをこのように曲げるのはDAIWAならではの工夫と技術の蓄積だと自負しています」
この曲がりは、リール本体に干渉せず心地よく巻けるように計算されている。そして、極力金属部分を減らし軽量化を図るための工夫だという。
湾曲箇所
カーボンパイプを湾曲させることで、ベールとの接触を避けながら、最短距離でハンドル軸と繋ぐことが可能となり、大幅な軽量化を実現している。
角度をつけた取り付け部
カーボンパイプとの結合部をハンドル軸の中心より対称側へオフセット配置されている。そうすることで軽量化を図ると同時にカウンターバランスとしての機能も有している。
田島「軽量化することで問題になってきたのが強度。破断することなく強靭さを保つため、最高強度の炭素繊維トレカ®T1100Gを使い多くの試作品を重ねてここに至りました」
幾度の細かい試作とテスト。たった7gの繊細なハンドルだがDAIWAとSLP WORKSが持てる技術と労力を凝縮。まさしく逸品と呼べるハンドルに仕上がっているのだ。
より良いモノを作るため協力し合った開発者たち
最高強度のカーボンをハンドルへ。このハンドル設計には、ロッドの技術を応用している。総合釣具メーカーであるDAIWAの土壌を最大限に生かしてロッド開発者、リール開発者、SLP WORKSスタッフが手を組み、今回の製品化が実現した。
田島「私からどうにか軽いハンドルが出来ないか。そのオーダーは確かに出しましたが、ロッド用のカーボンを使った具体的な提案自体は、ロッド開発担当の川村さんとリール開発担当の佐久間さんのお二人から話がきました」
この提案こそカーボンライトハンドルが実現する始まりであり、若き2人の技術者が部署を越えて連携した結果といえる。ここから設計担当の對馬さんへ具体的な設計図が持ち込まれ、デザイナーの近藤さんから実際のハンドル形状をデザインした図案をアップ。それをさらに對馬さんが、川村さん、佐久間さんと設計を調整し、煮詰めて形にしていったのだ。
田島「最終的にOKを出したのは私になりますが、その過程には多くの開発者、設計者、デザイナーが携わって作り上げられたものになっています。そして、それを量産していったのが國分になります」
軽量かつ高強度。DAIWAの持つ様々なテクノロジーを集結した唯一無二のハンドルアームへと昇華されるのだ。
トップエリアトーナメンターが語る! 釣り人視点でのカスタムハンドル考察
【Profile】
和田浩輝(わだ・こうき)
第17回、第20回トラウトキング選手権大会総合優勝。第16回トラウトキング選手権大会2位、トリプルマイスターといった、若くして数多くの戦歴を持つトップトーナメンター。DAIWAの、ヴァンフックなどからサポートを受ける。
初動が凄く軽いので巻き始めもスムース
数多くのエリアトラウト大会で優勝し、若手アングラーの中でも注目度の高い和田さん。実際にカーボンライトハンドルで釣りをしており、作り手目線の話から視点を変え、アングラー目線でその使用感について語ってもらった。
和田「まず、ハンドルが軽くなるほど繊細な釣りができます。そしてこのハンドルは前モデルから4g軽くなっているので初動がすごく軽いんです。軽量スプーンでもキャストして巻き始めから軽いので、着水してフォール後の巻き始めのバイトも取りやすい。あと、クランクやボトムの釣りでも軽いのでクイックなアクションがしやすくなっているんです」
さらに軽さによるメリットを別の点でも指摘してくれた。
和田「あと、ハンドルが軽いと重力の影響も受けにくい。つまり、巻きの安定にも繋がっているんです。だから意図した巻き速度を保ちやすくストレスなくステディリトリーブができるんです」
これによってスロー巻き速巻きの両方とも安定し、魚のタッチも感じやすくなったという。
和田「さらに剛性感も大きく釣りに関わってくると思います。力を入れて止めて…を繰り返すミノーの釣りをしても力が伝わりやすい。プラスして、硬さは感度もアップしてくれています。すごくリールを巻いている時の違和感も察知しやすくて、水流変化も分かりやすくなっています。軽い触り程度の魚のアタリも感じ取れるようになるので、釣り自体の上達に繋がると思います」
最近の試合でもハンドルによる違いを実感したと言い、去る11月7日のジャパントラウト静岡大会(東山湖開催)で実践投入。その模様を話してくれた。
和田「試合になるとこの違いが顕著に釣果へと出てくるんです。アルミハンドルよりも明らかに水流変化、魚のアタリ、レンジも分かりやすくなっていて、巻き感が鮮明なっていました。スプーンの波動、クランクの波動の乱れも感じ取りやすいので、魚がフッと寄ってきたな…という情報まで察知できました」
この大会では、これらが奏功し優勝。身を持ってカーボンライトハンドルの有効性を証明したのだった。
和田「プレッシャーがかかるとレンジが10cm違うだけでバイトしないこともあるのですが、そんなときもこのハンドルが手助けしてくれます。リールのパフォーマンスを最大限に引き出してくれるので、是非体感して頂きたい。そんなハンドルです!」