西伊豆で気軽に「カヤックフィッシングツアー」を楽しめる宿『ロッジモンド』って知ってる?【オーナーが語るツアーを始めた理由とは】



「カヤックフィッシング」と聞くと、釣り人自らカヤックを操作し、オカッパリや遊漁船では行けないポイントにもアプローチできて、釣果を出しやすいイメージを持つ人が多いだろう。またそれ以上に水面が近く、風や波を感じることが出来てよりダイレクトに自然を満喫できるのも魅力のひとつだ。しかし、いざ挑戦しようと思ってもどのよう始めてみればいいか分からない人も多いハズ。そんなカヤックフィッシングビギナーに向けたフィッシングツアー&宿泊施設を運営するのが西伊豆の「ロッジモンド」オーナー・松本潤一郎さん。今回は何故「カヤックフィッシングツアー」を始めたのか語って頂いた。

西伊豆の新たな魅力を発信するさすらいのニューリーダー・松本さん

【Profile】

松本潤一郎(まつもと・じゅんいちろう)

株式会社 BASE TRES 代表。西伊豆の山を【まわす】BASE TRESのシャチョー。幼稚園を中退する輝かしい学歴からスタートし、中学はもちろん不登校。修学旅行の積立金を返してもらったお金でテントを買い、一人旅へ出掛けるようになり早々とメインストリームからドロップアウト。
17歳にはヒマラヤのトレイルを歩きはじめ、その後カラコルムやアンデスへ。南米大陸をオートバイで走りまわったあと西伊豆へ移住。ギターを弾いて飲み代を稼ぐのがライフワーク。

世界中を放浪後、海と山に囲まれた西伊豆で古道再生と宿泊施設をオープン!

はじめまして。伊豆半島を拠点にカヤックフィッシングツアーのmondo fishingを主催している松本です。


伊豆に移住して15年近くたちますが、出身は横浜で、子供の頃は工業地帯が立ち並ぶ東京湾で釣りをして過ごしていました。17歳からバックパックを担いでヒマラヤや中南米を旅しに出かけるようになりましたが、その時も可能な限り少ない荷物に釣り道具を忍ばせて旅先でも釣りを楽しんできました。
その中でとても印象的だった場所はオートバイで旅した南米大陸。アンデス山脈に張り付くようにオートバイを走らせ、適当な川の流れ込みにルアーを投げ入れると面白いようにトゥルーチャ(ニジマス)が釣れたものでした。

帰国後、日本で暮らすなら自然が多く残る土地に住んでみたいと考え、海と山とがコンパクトにまとまっている西伊豆へ移住。

すぐ目の前にある駿河湾で釣り三昧の日々を送るつもりが、伊豆の山の中にある使われなくなった古道があることを知り、その古道を再生させてマウンテンバイクで山を駆けるツアーを始めたため、少しの間、目の前にある海から遠ざかるようになってしまいました。

その後、MTBツアーの他に宿泊施設「LODGE MONDO -聞土-」をスタート。

しかし、開始したものの、2020年よりはじまったコロナ禍により、観光全体が大きくストップすることに。突然、目の前に現れた長期休暇をどうやって過ごそうか。ここで、ふと我に返るように思い出した。

コロナ渦がもたらしたカヤック×釣り

「カヤックに乗って釣りをしながら暮らそう」

カヤックは伊豆に来てから乗り始めていたものの、釣り用のカヤックではなかったので少し使いにくいものだった。そこで釣りに特化した足漕ぎのドライブが付いたホビーカヤックを手に入れ、凪の日は毎日海へ釣りに出かける生活を送るように。

海との距離と一体感がカヤックフィッシングの醍醐味のひとつ/画像提供:blooper backpacks

僕には4人の子供がおり、観光事業が止まったことで収入も途切れてしまった今、家族が食べられる分の食糧調達にも励まなくてはならない。いざカヤックフィッシングで食料調達の日々を送るようになると、伊豆の海というのは本当にいろいろな魚が釣れるのだということを再確認したのでした。

写真の魚はオオモンハタ。ほかにもヒラメやマダイ、ブリ、シイラ、イトヨリダイなど様々な魚が釣れる。

スーパーで肉を買うことは少なくなり、魚はほぼ自給できることに!(観光事業も少しずつですがまわるようになった現在、忙しくてさすがに自給率は少し落ちてきていますがww。)



カヤックフィッシングツアーをスタートさせるため自ら漁協員に。環境省からのサポートも!!

そんな暮らしを送る中で、このカヤックフィッシングはアクティビティツアーとして成立するだろうと確信。以前から不思議に思っていたのが、カヤックフィッシングのサービスが国内にはほとんど無いこと。カヤックツアーは各地にたくさんあるのになぜ釣りをするサービスがこれほどまでに無いのだろう? カヤックは本来、狩猟のための道具であったはずなのに…。

ひとつの理由として、漁協や遊漁船などとの利権でバッティングしてしまうことがあるかもしれません。そこで、自分も伊豆漁協へ組合員として加盟し漁業権を取得。タイやヒラメの稚魚放流の協力金なども収め、遊漁船の方たちと同じラインに立たせてもらえることに。

ちょうど良いタイミングで環境省の国立公園誘客事業に参画できることになり、レンタルカヤックを安定感がとても高く、力の少ない女性や子供でも扱いやすい足漕ぎドライブのホビーカヤックを10艇導入。カヤックフィッシングツアーのmondo fishingを2020年の秋からスタートさせることができました。

安定感に優れたドライブ付きのホビーカヤックは、足で漕ぐために力の少ない女性や子どもでも思い通りに海の上を移動できる。

環境省が釣りのサービスを支援? と思われる方がいるかもしれませんが、僕たちは古道を再生させたMTBツアーと同時に、その周りにある手入れがされていなかった森林整備にも取り組んでいます。伐採した木材は自分たちが運営している宿泊施設「LODGE MONDO -聞土-」のウッドボイラーの燃料や、客室のリノベーション用の木材として活用しています。

山に降った雨は森を伝い、やがて海へと流れ着きます。このカヤックフィッシングツアーは山と海との循環の中をアクティビティとして体感できるのと同時に、二酸化炭素を排出しないゼロエミッションな釣りサービスであるということが環境省にも評価されたようです。

カヤックフィッシングツアーはゼロエミッションな釣りサービスとして環境省の支援も受けている。

春を迎えれば本格的なカヤックシーズン、是非西伊豆へ、是非「ロッジモンド」へ!

カヤックに乗り、自分の力だけで海の上を漕ぎ進め、沖のポイントへと向かう。釣りをするために海の上にいるはずなのに、いつもなら鳴りやむことがないエンジン音は無く、舳先が水面を割って押し進む音だけが静かに聞こえてくる。そして、少し手を伸ばせば、そこはすぐに海面。

はじめてカヤックフィッシングを経験した人が誰もが最初に感じるのは、この海との距離の近さと一体感なのです!

普段から船に乗って釣りを楽しんでいる人こそ、音も無く海の上を進むカヤックフィッシングの感覚がとても新鮮に感じられるはずです。

これから暖かくなるにつれてカヤックフィッシングに最適なシーズンがやってきます。皆様も是非伊豆の海へ漕ぎだしてみてはいかがでしょうか。いつもとはちょっと違う新しい釣り体験してみてください!

【寄稿:松本潤一郎】

オーナー・松本さんの日本全国を巡るカヤックフィッシング旅ブログ「ニッポン、カヤック釣り紀行」も必見です!