磯やサーフ、ウェーディングを要する陸っぱりのソルトルアーフィッシングに必要不可欠なのが、浮力体入りのフィッシングベストだ。安全性はもちろんのこと、機能性に優れたものが各社からリリースされているが、ここで紹介するのはパズデザインの名作『コンプリートシリーズ』である。現場の意見をフィードバックしながら常にアップデートを重ねてきたアイテムであり、2022年には画期的な機能を搭載した「コンプリートV（5）」がついに完成。「完璧」を目指すコンプリートシリーズの変遷から気になる新作の詳細まで、全3回に渡って紹介していこう。
代表の大野晴夫さんとフィールドテスターの森大介氏に解説してもらった！
【Profile】
森大介（もり・だいすけ）
長きに渡り、パズデザインのテスターとして様々なアイテムの開発に携わってきた。テスター陣の中でもリーダー的な役割を担う。「コンプリート」シリーズに関しては初代から開発に参加し、現場の意見をフィードバックし続けてきた。
【Profile】
大野晴夫（おおの・はるお）
最高のデザインとクオリティを念頭に置いた製品開発を追求し続ける、パズデザインの代表。テスター陣の声を聞きながら、自らも新しいアイデアを生み出し続けてきた。ソルトのオフショアからフライフィッシングまで幅広い釣りを楽しむ。
パズデザインの旗艦アイテムとも言えるのがフィッシングベスト『コンプリート』シリーズだ。このアイテムが産声を上げたのは2003年（カタログ掲載は2004年）のこと。2022年には満を辞して『コンプリートV（5）』がラインナップに加わった。まずは、このシリーズの変遷を紹介していきたい。
大野「一番最初のルアーマン向けのフィッシングベストは『ゲームベスト』というものでした。ただ、安全性に欠けるということで次に浮力体を入れた『ウェーディングゲームベスト』というアイテムを開発。そんな流れで、フィッシングベストを開発していく中でハイエンドモデルが欲しいよねという話になり、テスター陣の現場の意見を聞きながら開発に着手したのがコンプリートシリーズでした」
森「当時はとくにシーバスに夢中になっていて、磯や干潟など車から遠いポイントなんかにはできるだけ多くのルアーを持っていきたかったし、それ以外にもプライヤーなどの小物、食料＆飲み物の一切合切を持ち込まなければなりませんでした。昔からあるフィッシングベストはポケットが小さいものがほとんどで使い勝手も悪く、お世辞にもかっこいいと思えるものがなかったんです」
歴代のコンプリートシリーズってどんな風に変わっていったの？
防波堤や陸っぱりのシーバスマンを始め、多くのソルトルアーアングラーの定番として君臨する『コンプリート』シリーズ。2004年の初期型から、数年おきにアップデートを重ねてきた。ここからはどのように変化していったのか、その変遷を見ていこう。ルアマガプラス編集部でも「なつかしい?！」という声が聞こえてきた！
『コンプリートI（1）』
原点となるファーストモデル。明邦の3020サイズが2つ入る大型ポケットを左右に配置し、大容量の荷物を運べるほか、浮力体も採用。プライヤーケースやペットボトルケースなど、とにかくルアーマンのわがままを随所に取り入れたスタイルは、コンプリートシリーズのベースデザインとなっている。2004年のカタログに掲載。
『コンプリートII（2）』
構造としてはほぼ「1」と同様だが、高波を被った際に上から水が浸水してくるのを防ぐために大型ポケットの上側にカバーが採用され、さらにファスナーも止水タイプに変更。これにより、大幅に水の侵入を抑えられるようになった。2010年のカタログに掲載。
『コンプリートIII（3）』
防水対策をしっかり行なった『コンプリート2』であったが、タックルボックスを素早く出し入れしたいというテスター陣の声が多かったこともあり、『コンプリート3』では大型ポケットのカバーを廃止。その分、「ファスナーを開けている状態でもタックルボックスを固定できるマジックテープ」を採用。さらに、潮によって開け閉めがしにくくなる止水ファスナーを、一部塩噛みが少ないプラ製のファスナー（ビスロンファスナー）に変更した。2012年のカタログに掲載。
『コンプリートIV（4）』
大きく変化したのは腰ベルトの存在だろう。体への密着度が高まり、走ったり飛んだりしてもしっかり体に追従してくれるフィット感を得た。これに伴い、それまで採用していた肩ベルトの「滑らない素材」をあえて「滑りやすく」することで、腰ベルトとのバランスを調整。キャスティングのストレスを大幅に軽減している。2016年のカタログに掲載。
『コンプリートIV+（4プラス）』
基本は『コンプリートIV』を踏襲しているが、これまで長らく採用していた浮力体を「ビーズフロートシステム」に変更したマイナーチェンジモデル。細かなビーズ状の浮力材は十分な浮力を持ち、軽量かつ着心地も抜群。また、外側に取り付けられていたペットボトルホルダーを背面ポケットの下部に配置。邪魔にならず取り出しやすい仕様に。2020年のカタログに掲載。
そして2022年、満を辞して登場する『コンプリートV（5）』
こちらが2022年のカタログにも掲載された『コンプリートV（5）』だ。デザインの部分では大幅な変更はないものの、IV+で採用されたビーズフロートシステムを背面まで含めた本体全面に採用し、「スマートストレージシステム」という革新的な機能が追加されている。どんな機能かといえば、その秘密は前方の大型ポケットの中に…。
新開発！「スマートストレージシステム」
フロント部分の浮力材をくり抜き、そこにボックス1個分サイズのEVA製の成形トレーをはめ込むことでボックス2個収納しても1個分しかポケットが膨らまないという驚きの機能。これにより収納力を維持したまま、見た目だけでなく、ポケットの膨らみを極限まで押さえ込むことに成功。キャスティングなどに干渉することなく、ストレスのない釣りに貢献している。後方の袋はビーズフロートシステム。ベストの中で収まりがよくなるように、一体化させている。
スペック
- 本体素材：インビスタ社製500Dコーデュラリップストップ（ポリエステル100%）
- 浮力材：ビーズフロートシステム（ポリスチレン）
- サイズ：フリー
- カラー：ブラック、ブラックホワイト、ブラックピンク、グレーカモ
- 価格：35,200円（税込）
カラーバリエーション
- 1
