三原直之さんがプロデュースするエクストリーム系バスロッド『ロデオライドリバイバー』(イマカツ)から今年は3本(ベイト2+スピニング1)の新作が登場予定! ベイト『Ten-Five』に続いてご解説していただくのは、スピニング『LINER SPIN』。全体像が即座にイメージできるサブネームの1本、その実力とは如何に。
解説していただくのはバス釣り界の「傾奇者」にして次世代のオカッパリスター! ミハラマン!!
【Profile】
三原直之(みはら・なおゆき)
2015JBスーパーバスクラシック池原ダム優勝、2019年トップ50七色ダム戦優勝、2019JBスーパーバスクラシックほか、トップカテゴリで表彰台多数、ローカル戦での優勝多数の若手プロ筆頭。バスの習性を熟知したフィーディングサイトを得意とし、リアクションに頼らない食わせの美学を追求している。鳥取県境港市出身、兵庫県三田市在住の伸び盛りな31歳。
『アンセム』と共に段階的に担うスピニングの主軸ロッド
三原「元々『パワーフィネス』の竿が必要と感じていたところから開発はスタートしました」
三原直之さんがプロデュースするバスロッドシリーズ『ロデオライドリバイバー』でスピニング2作目となるのが、ここで解説していただく『LINER SPIN』(=ライナー・スピン RRR-607M)だ。
シリーズスピニング1作目として知られるのは『アンセム』(RRR-601UL-M)。キャスト精度と早掛けを求め完成したショートソリッドティップ2ピース。サイトフィッシングに特化したモデルとして生まれたモデルだが、およそ考え得るライトリグ全般で幅広く機能する1本に仕上がっている。
三原「アンセムが一般的なライトリグ用なら、その数ランク上のパワーを持ったスピニングが『ライナー・スピン』とお考えいただければいいかと。やや重め大きめのルアー&リグでのオールラウンダーです」
スモラバやネコリグなどのパワーフィネスのみならず、ベビーステルススイマー130(イマカツ)や5インチクラスのシャッドテール、高比重バックスライドワームのノーシンカーやウェイテッドフックなどにも有効だ。
スピニングとしてはパワフルな部類に属するMパワーならではの対応力を発揮。また6ft7inの存分なレングスは、遠投能力にも長けている。
三原「僕のスピニングの釣りでメインとなる範囲のルアーを何でもこなせる1本です」
三原さんのスピニング主軸ルアーは『アンセム』と『ライナー・スピン』が段階的に担うことになる。
難攻不落のカバーと戦える! 新世代の“陸王スティック”
三原「開発の発端は…そうです、陸王です」
『ライナー・スピン』渇望の源泉がそこにあった。
3年連続で決勝進出の快挙を継続する三原さんが、4年目への決意と共に開発に着手。いわば、新世代の“陸王スティック”とも呼べる1本を思い描いた。
現在、陸王のタックルレギュレーションは予選及び決勝の2日間を通じて、使用可能なタックルは5セット以内。うち釣り場へ携行可能となるのは2セットのみ。そして、替えスプールは2個まで。
となれば、プラクティスの結果を考慮に入れ、未来予想図を描いたロッド選択が重要となる。後に使うべくルアーに対してパワーやレングス、そしてテーパーに過不足はないか、脳内でCPUがフル回転させるものだ。
ライトリグ全般は既にアンセムでカバー可能。もはや不安はない。次に見据えたのはそのワンランク上を満たすスピニングロッド。カバー対応モデルの開発が急務となったのだ。
三原「刺激となったのは、一昨年の艇王予選七色ダム戦。対戦相手の山田祐五さんに触発されました。1本のスピニングでそんなに幅広く使う人が、僕以外にもおるんやと」
豪雨の中で行われたパワーゲーマー同士のでかバスバトルは、艇王ファンの記憶に新しいところだろう。両選手共に見せ場は多く、ここ数年で最も白熱した試合のひとつに数えられる名勝負だった。
陸王と同様、艇王のレギュレーションはボートに積み込める使用タックルは5セットまで。ロッドを厳選する考え方は無論、陸王に通ずる。
山田さんが軸としたPEスピニングロッドはスピンテールジグを始め、ダウンショットリグやスモラバまでをも1本で完結していた。結果こそ僅差での敗退となったが、三原さんを大いに触発したのだという。
負けは己を高める糧。得る物は大きい試合となったようだ。
不可能を可能にするために、異例の開発長期化を経て完成へ
三原「通常であれば、1本の竿を仕上げるためにプロトを数多く作ることは少ない。しかし、この1本に関しては作り込むほどに欲求が高まっていって…」
プロト作は異例の数となり、開発期間は長期化。三原流陸王スティックは幾多のトライ&エラーを繰り返して最終プロト、そして製品化へと着実に向かっていった。
ここで敢えて誤解を恐れずに言うならば、プロト作の多さが必ずしも完成度の高さに直結する物ではない。開発者、即ちプランナーの思いが、デザイナーへと漏れなく通じていれば、数多くのプロトを要することなく理想の完成型へと近付けるものだ。
三原「デザイナーの青木(晢)さんとは『竿をしっかり曲げて仕事をさせる』という点で、ロッドに対する考え方が一致しています。だから、やり取りのレスポンスが早い」
青木晢さんとは、兵庫県西宮市のプロショップ・疑似餌屋のオーナーにして、あらゆるタックルプロダクトに精通するロッド職人。昨季まで三原さんと同じく、国内最高峰JBトップ50シリーズに参戦を続けてきたトーナメントプロでもある。
高次元のレベルで相通じた共通言語としてのロッド観。阿吽の呼吸は無駄がない。
三原「レギュラーテーパーでフッキング時のクッション性はあるものの、張りのあるブランクは掛け重視。巻きモノは考えていない。パワーフィネスを始めとした撃ちの釣りが主軸」
三原さんの要望を青木さんが形に仕上げていく。不可能を可能にすべく、開発長期化は想定内だった。
全長は6ft7in、パワーはM。現代では長尺の部類には入らないレングスだが、ショートグリップ化を図ったことでブランク有効長を延長。存分な遠投能力を身に付けた。
またシングルハンドに加え、優れたトータルバランスに仕上げたことで軽快なスイングが可能に。必然的にキャストアキュラシーも高まっていく。
両者が納得いくまで作り込んだ結晶が『ライナー・スピン』。二人の優れた能力が相乗効果を生み出すことに成功している。
PEを組んだパワーフィネス、及び太糸フロロも兼用可能
そしていよいよ完成の時を迎えた『ライナー・スピン』。いわば、新世代の陸王スティックは今季中のリリースを予定している。
もう一度、その特徴をご解説いただこう。
三原「ブランクを曲げて、どんなルアーでも使える…というロッドではない。そのパワーでガンとしっかり掛け、カバーから魚を瞬時に引き剥がせる1本」。
PEライン+リーダーを組んだパワーフィネスでの使用を元に開発が進んだモデルだが、その限りではない。無論、フロロカーボンの使用も可能だ。
陸王レギュレーションでは冒頭の節で解説した通り、スプール2個までの用意が可能。ならば、PEとフロロをそれぞれ巻き込んだスプールの準備も可能だろう。
この1本で戦力が増強されることは間違いない。今後、陸王を始めとするショアゲーム、また国内最高峰トーナメントで戦う三原さんの活躍に注目してみたい。