春シーバスのコノシロパターンは「ランカー」のチャンスあり! 春の涸沼攻略法を徹底解説!!【ヒヤマンの茨城涸沼1年釣記】



関東唯一の汽水湖であり、東京湾に次ぐシーバスフィールドとして名高い「涸沼」。特に秋のイナッコパターンは有名で、毎年多くのアングラーがランカーシーバスを追い求めチャレンジしに訪れる。しかし、決してイージーではなく、地元の名手も手を焼くほど癖の強いフィールドであるのが涸沼。そんな涸沼に20年以上通い、エキスパートとしてコンスタントに釣果を出し続けるのが「涸沼のヒヤマン」こと檜山敏崇さん。今回から同フィールドに通うスペシャリストが自身の釣行をもとにシーズンごとの攻略法を徹底解説! 涸沼を攻略したいアングラーは要必見です!!

涸沼シーバスから茨城サーフまで! 茨城のランカーハンター・ヒヤマン!

【Profile】

檜山敏崇(ひやま・としたか)

茨城シーバスの聖地・涸沼をホームとするDAIWAフィールドテスター。「涸沼=ヒヤマン」と呼ばれるほどの涸沼水系エキスパートであり、これまでに数多の涸沼ランカーをキャッチしてきた凄腕。大型ルアーからワームまで、幅広いルアーを使いこなし、難攻不落とされるボイル攻略も得意とする。茨城サーフのフラットフィッシュのエキスパートとしての顔も持つ。

檜山さんの涸沼シーバス攻略「春はこう狙え!」

攻略項目攻略情報
季節3月~4月
水温12℃~14℃
ベイトコノシロやサヨリが産卵で遡上
パターンコノシロのベイトが集まる明るいエリア(常夜灯)
水流に変化のある場所
狙い目潮回り小潮、もしくは長潮等の比較的潮が緩い潮回り
潮が緩んだタイミングや、走り出しの一瞬
ルアー選択12cmのミノーをベースにアピール力の有るS字形のジョイントプラグ
水押しの強い太めなシンキングペンシル
ルアー例「モアザン モンスターウェイク156F」
「モアザン レイジーファシャッドJ156F/S」
「モアザン レイジーファシャッド140F」
ロッド例パワーと感度を兼ね備え飛距離も稼げる9ft後半
「モアザンブランジーノEX AGS 98M/MH」

「涸沼」ってどんなところ?

檜山「皆様、こんにちは! ダイワシーバスフィールドテスターの檜山敏崇と申します。今回から1年間、私のメインフィールドである茨城県・涸沼を中心とたシーバス攻略をご紹介したいと思います。皆様の釣行のお役に立てるような情報を発信して参りますので何卒、宜しくお願いいたします!」

――檜山さん、1年間宜しくお願い致します(ペコリ)! さて、早速ですが、檜山さんのホームとする「涸沼」について改めてご解説頂けますでしょうか?

檜山「はい、涸沼は茨城県の中央部にある周囲22kmの涸沼本湖とその下流を流れる約7kmの涸沼川とで形成された関東唯一の汽水湖です。涸沼は海抜0mと、海との高低差がほとんど無く、それにより干満差で上げ潮、下げ潮で川の流れが逆流するのが特徴です」

檜山「ご存じの通り、シーバスゲームがとても盛んなフィールドで、ハイシーズンの夏になるとメインベイトとなるボラの幼魚(イナッコ)が大量に接岸し、それに狂ったようにシーバスがボイルする姿が見られます。大型のシーバスが狙える関東屈指のランカーフィールドです」

――涸沼は夏からハイシーズンがスタートするんですね。 秋のイナッコパターンは各メディアや動画でも露出されていて、エキサイティングなボイルやトップウォーターでの激しいバイトシーンは非常に印象深いです!

檜山「そうですね、シーバスファンの皆様なら1度は目にしたことがあるのではないかと思います(笑)。そんなイナッコパターンで有名な涸沼ですが、3月中旬から4月初頭にかけて春らしくなってくると、コノシロやサヨリが産卵の為に涸沼を目指し遡上し始めます。

そのコノシロやサヨリに付いて来たシーバスは良型が多く、数は出ないものの、釣れれば良型なのが特徴です」

――てっきりコノシロパターンって秋のものかとイメージしてましたが、涸沼では春のパターンになるんですね! しかもランカークラスが狙えるとは……シーズンインから夢がありますっ!!

今年の春は例年よりも遅れ気味!?

――では今年の春の涸沼のコノシロパターンはどのような状況なんでしょうか?

檜山「涸沼水系のシーズンインは産卵に絡まないセイゴクラスを除いて、3月後半から4月上旬と関東では比較的遅く、例年では桜の咲き始め頃からがシーズンインとなります。しかし、今年の春は茨城県沿岸の海水温が安定せず、例年だと4月に13℃~14℃程になる沿岸の水温が、今年の4月頭に10℃まで下回りました。それに伴いシーバスの遡上が遅くなっている感じでした」

――なるほど、確かに今年は例年以上に冷え込んでいましたからね……。

檜山「3月頭に河川内でコノシロを確認していたので期待はしていたのですが、いっこうにシーバスの雰囲気は感じられず、コノシロやサヨリが居たとしてもシーバスが付いていない事が多々ありました。

とはいえ、釣れなくても出来る限り水辺に立って、状況の変化をチェックしていました」

檜山「ネットで沿岸海水温を頻繁にチェックして水温の上昇を期待していると、徐々に上昇しはじめて、それとともに河川内のベイトの量も増え、カワウの姿も多く見られるようになりました。

そして4月中旬、徐々にシーバスの雰囲気も感じられるようになり、少しずつ例年通りの春の涸沼水系に近づいてきているのが現在の状況です」

大型のサヨリを捕らえたカワウ。カワウが水に潜り何を追っているかでその日のパターン解析やルアーセレクトの参考になる。よく観察する事でアングラー側に情報を伝えてくれる水鳥の有無は涸沼のシーバス釣りにおいても欠かせないファクターである。

狙うポイントは「常夜灯」。でも狙う時合は「緩い」潮回り!

――では春の涸沼のコノシロパターン、狙うポイントやタイミングを教えてください!

檜山「はい、まずはポイントですが、ベイトとなるコノシロは主にプランクトンを主食としていて、プランクトンの多い水域を好む傾向があります。特に涸沼川ではアミやゾエアの様な動物性プランクトンも多く、そのようなプランクトンは常夜灯などの比較的明るいエリアに溜まる傾向があるので、『明るいエリアかつ水流に変化のある場所』にコノシロも多く溜まります。

イナッコの様に夜になると岸際に逃げ込むのとは違い、暗くなるに従い水面付近に集まりだし水面に波紋を出しながら素早く泳ぐのでイナッコと区別がつきやすいと思います。

シーバスは消波ブロック帯や橋桁、ストラクチャーに流れがぶつかって出来たヨレや岸際のブレイクラインの物陰などに隠れてコノシロを狙っています。

産卵後のアフターからいち早く体力を付けたい大型のシーバスにとって、大型のベイトであるコノシロは一度の捕食でより多くのエネルギーを摂れるこの上ないタンパク源に違いありません」

――なるほど、ということはシーバスは常夜灯周り+潮が動き出したタイミングが狙い目?

檜山「普通ならそう考えますよね。ですが、ランカーと呼ばれる80cmを越える大型のシーバスは素早い動きのコノシロを、速い流れの中で追いかけ回しながら捕食する体力がないのか、はたまた小回りの利かない体型を把握しているからかは定かでは無いのですが、潮が効いていて流れが速いタイミングよりも『潮が緩んだタイミングや、走り出しの一瞬』にフィーディングに入るようなんです。

過去のランカーシーバスのヒットも、流れが緩くなり、潮止まりまで1時間のソコリ間際に集中しているんです。

それに加え、流れの速くなりやすい大潮、中潮といった潮回りよりも『小潮、もしくは長潮等の比較的潮が緩い潮回り』にヒットする確率が高い様に感じます。

個人的な感覚ですが、水温もまだ比較的低く体力も完全回復まで至っていない老体な大型シーバスには速い流れの中での捕食よりも、潮の緩いタイミングや流芯から外れた、淀みの様なヨレの中の方が捕食しやすいのではないかと感じています」

――確かに、回復途中の大型の個体が、20cmクラスの素早いコノシロを捕食するのは決してイージーではない。なのでハイシーズンのようなフィーディング場や潮回りよりも、比較的イージーに捕食できる場所とタイミングを見極めることが大事なんですね!



12cmクラスのミノーからアピール力のあるビッグベイトを使用!

――次にルアーやタックルを解説していただきたいのですが、コノシロをベイトにしているということは、やはり使用するルアーもかなり大きめ?

檜山「そうですね、20cmを越えるコノシロやサヨリがメインベイトになるランカー狙いの釣行に的を絞っているので使うルアーも大きめと思いがちですが、12cmのミノーをベースにアピール力の有るS字形のジョイントプラグ、水押しの強い太めなシンキングペンシル等を使用します。

まずミノータイプでいうと『SLS-ZバーティスR140F/S』、『SLS-ZバーティスR125F』、『SLS-ZバーティスR125F-SSR』、『モアザン シャローアッパースリム165F-SSR』を使用します」

画像上から「SLS-ZバーティスR140F」、「SLS-ZバーティスR140S」、「SLS-ZバーティスR125F」、「SLS-ZバーティスR125F-SSR」、「モアザン シャローアッパースリム165F-SSR」(※すべてDAIWA)。

檜山「次によりコノシロに近い、アピール力のあるシンキングペンシルやビッグベイトを使用するのであれば、『モアザン モンスターウェイク156F』、『モアザン レイジーファシャッドJ 156F/S』、『モアザン レイジーファシャッド140F』」

画像上から「モアザン モンスターウェイク156F」、「モアザン レイジーファシャッドJ 156S」、「モアザン レイジーファシャッド140F」(※すべてDAIWA)。

檜山「上記のルアーを軸にその日の状況に応じてヒットパターンを探していきます」

――ホントに秋のハイシーズンのようなルアーを使うんですね……スゴイ! これらのルアーを扱うのであればタックルも強め?

檜山「そうですね、ロッドはパワーと感度を兼ね備え飛距離も稼げる9ft後半の『モアザンブランジーノEX AGS 98M/MH』を使用します。

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檜山「このロッドはMAXウェイトが50gと、ランカークラスをねじ伏せる強靭なバットパワーを持つロッドなのですが、9cmクラスのフローティングミノーも操れる繊細なティップも兼ね備えています」

――まさに涸沼にうってつけなランカー対応型のロッドなんですね! 河川やサーフ、汽水湖など全国のランカーフィールドにも良さそうですね!

檜山「もちろん、全国各地のフィールドにも対応できますよ。またリールは4000番クラスの『ルビアスエアリティLT4000-CXH』というハイギアモデルを使用しています。春のフィールドは比較的風の強い日が多く、強風を真横から受ける状況も多々有ります。

風を受けて大きくはらんだラインを素早く回収して、思い通りのトレースコースに軌道修正しやすいのもハイギアの利点です」

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檜山さんの春涸沼の使用タックル

  • ロッド:モアザンブランジーノEX AGS98M/MH
  • リール:ルビアスエアリティLT4000-CXH
  • メインライン:UVF モアザン デュラセンサー×8+Si²1.2号
  • ショックリーダー:モアザンリーダーEX II TYPE-F20lb(※すべてDAIWA)

苦心の末、手にした2022年1尾目が「90cm超え」のランカー!!

――涸沼に精通するエキスパートの檜山さんとはいえ、今シーズンのスタートはかなり苦戦したとか……。

檜山「そうなんです……。3月半ばからコノシロパターンをずっと追い求めて釣行を重ねるも、シーバスからの反応は得られませんでした(泣)。ですが4月の初旬に別ポイントにて同パターンで釣友が先行して結果を出していたので、この週の潮のタイミングに期待を寄せていました」

檜山「その際に釣友が釣ったのは70cm後半のコンディションの良いシーバス。この時、捕食して間もない大きめのサッパを吐き出しました」

――コノシロやサヨリだけでなく、サッパもいるなんて(笑)。涸沼のベイトの豊富さとランカーが育つ環境が整っているのが分かる気がします。

檜山「そうなんですよ(笑)。本来、コノシロに混ざってサッパが入るのはもう少し後の5月過ぎからで、4月頭にサッパを見たのはかなり久しぶりです。

でも今年の春は釣れない日々が長く、コノシロの河川入りは例年よりも早かったのに対し、シーバスがそれに付いていない。ベイトの入りに対して今年はシーズンインが遅いかなと半信半疑だったのですが、仲間が掛けたこの1匹が私の中での不安を解消してくれました。水温は冷たいが魚は確実に戻ってきていると!

そして仲間が釣り上げた翌週、仕事帰りに涸沼川へ向かいました。潮は若潮。タイドグラフは満潮がAM2時54分で100cm、干潮がPM18時35分に31cm。

満潮の2時54分から夕方18時までの約15時間で70cmしか動かず、昼間はほぼ潮止まりで魚釣りにはあまりよろしくない潮回りでした。

涸沼水系は潮位にタイムラグがあり、大潮を基準に約3時間遅れます。この日は若潮で、そもそも干満差の少ない潮周りでは3時間以上の遅れが生じ、天候不順等の状況によっては4時間半以上も遅れて動き出す場合もあります」

――そんなに大きくずれるとは! ハイシーズンはともかく、通いこんでなければ狙うタイミングは中々絞りきれませんね。

檜山「そうなんです。当日は干満差の少ない若潮でしたが、下げ潮の流れも後半に近かったのでそれなりに流れも出ていて風も有る状況。多少波立つ水面に時折コノシロの背ビレがスーッと走っていて、ベイトの存在は確認できました。

ポイントに立って30分程投げていると、波立つ水面を時折コノシロが三角波を立てて素早く走るようになりました。流芯は流れているが手前は緩く、少し風が収まった頃数匹のコノシロが流芯側からこちらに向かって逃げてきたと同時に水面が大きく盛り上がりました。

水面には出切ってなかったのですが、何かに追われて喰われたように感じ、それまで投げ込んでいたフローティングミノーからS字形のファシャッドJ156Sにチェンジ。

水面が盛り上がった位置から少し上流に投げ込みドリフトで自然に流すこと数投。『ココン!』と軽めなバイトをしっかりと合わせるとズシっとバットに伝わる重量感から大型と確信しました。岸からの距離は約10mほど。あまり暴れないので70cmクラスかと思いましたが、少し強引にロッドをリフトすると、水面を割ったのはデカい頭!」

檜山「すぐさま背中のランディングネットに手を掛けスムーズにネットイン。近距離でのヒットだった事もあり、掛けてからランディングまで20秒はなかったと思います。魚体を目の当たりにして、思わず『いきなりこれかよ……』と声が漏れてしまいました……」

――シーズンインの1尾目がこんなナイスコンディションな魚とは……ヤバイですね……。秋のランカークラスと何ら遜色はない魚体(爆)!

檜山「はい、釣れたのは春のコノシロをたらふく食っている腹パンなランカーシーバスでした。バットパワーのあるモアザンブランジーノEXで相手に主導権を与えず、ファイト時間も最短だったこの魚は、簡易計測ではありますが、フイッシュグリップの計りは6kgを振り切り、長さは申し分の無い91cmでした」

――このサイズが出たら、3月の苦労が報われますね! 本当にスゴイ!!

檜山「苦労なんてどこかに吹っ飛んで行きましたね(笑)。決して秋のように魚の数は多いわけではないのですが、秋のハイシーズン以外にも大型の魚が狙えるのが涸沼の春のコノシロパターンなんです。

これからの時期もっと状況は良くなってくるので、皆様も是非チャレンジしていただければと。もしかしたらレコードを更新するチャンスかもしれませんよ!」

――なるほど、価値ある1尾がランカーの可能性があるかもしれないんですね! ちなみに先程、5月からサッパがベイトになるとおっしゃってましたが、次回はサッパパターン!?

檜山「お、鋭いですね! またパターンが変わってデイゲームなども成立しやすくなる時期なので乞うご期待ですよ♪」

今回のヒットルアー

檜山さん&涸沼の実釣動画も要チェックです!

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