リールの性能と選び方



釣り糸を巻くための道具を「リール」と呼び、釣り道具の中では唯一の機械的なアイテムになります。リールにもさまざまな種類があり、釣る魚の種類や場所の違いで使い分ける必要があったり、釣り人の好みで使い分けることもできます。まずはどんなリールがあるのか、簡単に説明していきましょう。

リールの種類

スピニングリール

もっともポピュラーで汎用性も高いのがスピニングリールです。釣り糸を巻き取る、仕掛けやルアーを投げたり沈めたりするという基本的な動作が、ビギナーからベテランまで誰もがやりやすいのが最大の特徴であり武器でもあります。かつては軽い仕掛けやルアーを扱う、もしくはそれほど大きくない魚を釣るためのリールという立ち位置でしたが、今では素材や技術が進歩したおかげで巻き上げ力がよりパワフルになり、重い仕掛けやルアーの扱いも、マグロ級の巨大魚と闘うこともできるようになっています。

ベイトキャスティングリール

ルアーフィッシングではスピニングリールと対極的な位置にあるリールで、ハードプラグなどの重いルアーや仕掛けを投げるためのものです。構造上スピニングリールよりパワフルな巻き上げ力を発揮できるので、水抵抗の大きなルアーを巻いたり重い仕掛けを扱ったりするのに向いています。ただ、ルアーや仕掛けを投げる「キャスティング」にはある程度の練習が必要で、ブレーキがうまく調整できていなかったり、力み過ぎて投げたりすると、釣り糸が絡まってしまう「バックラッシュ」を起こす原因になります。

電動リール

文字通り電動で釣り糸を巻き上げてくれるリールで、両軸リール(ベイトキャスティングリールの大型サイズ)の本体に強力なモーターが内蔵されていて、電源のバッテリーとつなげて作動させる仕組みです。深海に潜む大型魚を釣るために使用されることがメインですが、最近ではプログラミングされたアクションをメタルジグに伝えてブリやヒラマサなどの大型青物を狙う「電動ジギング」にも使用されています。

フライリール

フライフィッシング専用リールで、フライフィッシングに使われる専用の釣り糸「フライライン」を巻いておくためのものです。スピニングリールやベイトキャスティングリールのように魚がヒットした後のやりとりでリールを巻くというスタイルがメインではなく、あくまでフライラインをストックしておく「糸巻き」としての役割が大きいかもしれません。

ワカサギリール

ワカサギ釣り専用のリールで、氷上やボートから行うワカサギ釣りは基本的に垂直方向に仕掛けを投入するだけなので、投げるための機能はほぼ皆無です。細い釣り糸を数10m巻いておけば十分なのに加えてパワーもそれほど必要ないので、小さな両軸リールが多いです。ただ、近年は「電動リール」も広く普及し始め、パソコンのマウスのようなフォルムにクリック感覚で操作ができる仕掛け投入&巻き上げスイッチが配置されていて、よりゲームに近い感覚で釣りが楽しめます。

スピンキャストリール

基本的な構造はスピニングリールとほぼ同一なのですが、スピニングリールが釣り糸を巻き上げる「ベール」の替わりに糸巻きスプールを覆う「フェイスカバー」と「糸巻きピン」があり、釣り糸がその2つを介することで巻き上げができるようになっています。ボタンを押す、離すだけでルアーや仕掛けを投げることができるので、ビギナーが使うには最適なリールです。



リールの基本性能

前述のように代表的なリールのカテゴリー分けをしてみましたが、今度はどんなリールにも備え付けられている、リールの基本性能を簡単ですが紹介しましょう。

サイズ

例えばスピニングリールなら「500番~5000番」というサイズ表記があるなら、500番が小さくて軽く、細い釣り糸を巻いてライトな釣りをするのに適しています。対して5000番は大きくて重く、太い釣り糸がたくさん巻けてパワーもあるので、大きな魚を釣るのに向いています。

ギア比

ギア比とはハンドルと接続しているギアと釣り糸を巻いてあるスプールが接続しているギアとの対比のことで、その対比の差が大きければ大きいほど、ハンドル1回転でたくさんの釣り糸を巻くことができます。例えば「ギア比8:1」と「ギア比6:1」という2つの表記があるなら、8:1の方がたくさん巻き取ることができるのです。

ドラグ

ドラグとは魚がヒットした後にやりとりする中で、突然もの凄いパワーで引っ張られたときに釣り糸が切れないように、瞬間的に釣り糸を放出して魚からの力を緩和する装置のことです。釣り人が任意で調節することができ、緩めれば弱い力でも釣り糸は放出され、締め込めば強く引っ張られないと釣り糸は放出されません。

※フライリールには一般的にドラグは装備されていません

ベアリング

ベアリングはリールの回転部分に装備されている金属製の「軸受け」で、ハイクラスなリールほどベアリングがたくさん装備されていて、回転性能も高いのが一般的です。リーズナブルなモデルではベアリングの替わりに樹脂製の「ブッシュ」と呼ばれるパーツが装備されており、ハイクラスと比較すると回転性能は劣りますが、それでも釣りは十分に楽しめます。

ハンドルノブ

ハンドルノブにもさまざまな形があり、細かい操作をしながらルアーや仕掛けを操作することに長けている小型サイズのリールには、指先だけでつまむような小さいノブが装着されています。一方で細かい操作に加えてある程度のパワーも受け止められる小型サイズのリールには、特にスピニングリールの場合だとつまむ・握り込むの両方ができるT字型ノブが採用されています。そして、パワーファイトがメインとなる大型リールには、力強く握り込める球状や筒状のパワーハンドルノブが必須になります。

必要に迫られた特殊装備、最先端技術による電子制御

基本性能だけに留まらず、釣りが進化していく過程で開発された特殊装備もあります。例えば磯釣り用スピニングリールに搭載されている「レバーブレーキ」はその最たるもので、細い釣り糸と長く柔らかい釣り竿でパワフルな魚をいなそうとするとドラグ任せでは不安が残るので、釣り人が指先ひとつでラインの放出量を自由に調整することができます。

そして 「21世紀のリール大革命」と言っても過言ではないのが、シマノがベイトキャスティングリールに搭載した「デジタルコントロールブレーキ」です。ルアーを投げる際にブレーキを自動調節することでバックラッシュが起きにくくなるだけでなく、飛距離アップにも貢献してくれます。このようにリールは基本性能の進化はもちろん、釣り人の飽くなき欲求が原動力となり、想像を遙かに超えた「革命」まで起こし、魚との距離を縮めてくれているのです。