世界初の水中バチ抜け映像かもしれない、とんでもない量のトリックバチに遭遇【みんなの釣りレポート】

バチ抜けというと春頃のイメージのある自然現象だが、さまざまな種類のゴカイがいて種類ごとに「抜ける」時期が異なり、周年に近い幅広い時期で見かけることがあるという。つまりわりといつでも遭遇する可能性がある現象。近年では日本近海の海水温の上昇などによって海の中の生活史もズレが生じているとも言われ、季節外れの状況に遭遇することも……。釣りYouTuberとして活躍しているreLight調査隊を率いるボス吉田さんが日常的に出かけている釣り場で遭遇した奇跡(?)のような光景と釣りレポートをご紹介する。

なお、大量の多毛類画像がふんだんに登場するので、苦手な人は見ないように!

●文:吉田光輝(reLight調査隊)

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reLight調査隊(りらいとちょうさたい)
ロブルアーハゼクラテスターをやりながらオールマイティに釣りを楽しむボス吉田光輝を筆頭に、酔っ払い釣り初心者担当カツ、真面目な釣りバカ担当高橋、若さ担当ひろぽん、の4人組。釣りの楽しさを伝えるべく淡水、海水問わずルアーフィッシングを中心に活動。ハゼ~GT・サメまでやろうとしている生粋の釣りバカYouTuber。
ちなみに吉田さんはハゼクラの数少ない公式釣り大会「Hz-1グランプリ」で、和やかな雰囲気の中で黙々と大型ハゼを狙い撃ちして大人気なく優勝をもぎ取っていく釣技の持ち主。
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バチ抜けとは?

ゴカイ類(多毛類)が、川底や海底の砂泥などの中から水面付近に泳いで上がって産卵行動をする「バチ抜け」。釣りのエサで使用する「ゴカイ」や「イソメ」の総称を「バチ」と呼び、バチが底から上がってくる為、「抜ける」という。これが「バチ抜け」。一般的に大潮~中潮の満潮からの引き潮で抜ける事が多い現象とされる。

釣り人のみなさんがよく見かけるだろうバチ抜けがこちらだろうか。 [写真タップで拡大]

バチ抜けの時期

一般的に春頃の現象として認識されやすいが、実は10月後半~6月頃に発生するとされる。バチの種類によって時期が異なるようだ。今回は特に釣り人に知られる2種類のバチをご紹介。

ヤマトカワゴカイ

アオイソメが自然繁殖しているようにも見えるが、だいたいヤマトカワゴカイ。 [写真タップで拡大]

釣り具屋で購入する「アオイソメ」に似ているゴカイで、シーバスのバチ抜けで有名なのがこちら。汽水域で10月~4月にバチ抜けする。通常、体色は茶色。バチ抜け行動をしている際は白っぽくなっているのがオスで、メスは緑色になっている。

アシナガゴカイ

トリックバチ、またはクルクルバチ。ここまで大量に湧くところは見たことがない……(吉田談)。 [写真タップで拡大]

港湾部で5月~6月に多く見られる小さくて素早い動きの、通称「トリックバチ」「クルクルバチ」などと呼ばれる。ゴカイとは思えない素早い動きに加え、予測不能な動きや、くるくる回っていたりするので狙いが定まらず、悶絶パターンを味わうシーバスマンも多いはず。
通称名が有名過ぎて正式名称を知らない方が多いのではないかと思うが、実はこの「トリックバチ」、他のバチに比べて1年中幅広い期間で抜ける可能性があるらしい。時間帯に関係なく抜ける事もあり油断できないバチでもある。

7月、大量トリックバチ抜けに遭遇!

7月になると、ハゼやハク(ボラの稚魚)が大きくなってくる。「今年はどうかな?」とリライト調査隊BOSS吉田が港湾部の魚の成長を確認しに行くと、ポイントの水面に無数の引き波が常夜灯に照らされている様子を確認。

「おぉー、なんだろう?」と覗き込むと……ボシュ! と足元で魚が何かを食べた音が響きわたる。

「いるねぇー」と水面をライトで照らした瞬間……。

「ぎゃぁぁぁ~!?」と叫んでしまいそうな大量のバチ抜けが発生している様子。しかも、猛スピードで動いている「トリックバチ」。 夜釣りをされる方は少数のトリックバチが魚のように泳ぎ回る姿を見たことがある人も多いと思うが、ここまで大量に「トリックバチ」が抜けているのは初めての経験。圧巻の光景だ。

トリックバチを捕まえて観察してみる

なかなか大量発生に出会えない「トリックバチ」。泳ぐスピードも早い為、捕獲するのも難しいバチだが、水中カメラを入れた際にカメラに絡まってきたので観察してみた。

「ゴカイ類」は、沢山の節「体節」が連なっていて、それぞれの体節に「いぼあし」があり、「いぼあし」にかたい毛の束「剛毛」が生えている。この「剛毛」を使って前に進むのだが、「トリックバチ」は遊泳力が高く、猛スピードでS字や円を描く様に泳ぎ回る。

泳いでいる様子は小魚にしか見えないくらい速い。 [写真タップで拡大]

あまりにもその速度がはやすぎるため、上から泳いでいるところを見ると楕円形に見えるが、ちゃんと見てみればしっかりゴカイ類の形をしている。

イソゴカイ(ジャリメ)によく似ているが、ジャリメほどぬめりはない様子。ツルツルしていて「なんか可愛い」と思ってしまう(笑)。

ジャリメのようにも見えるが頭が黒く細長く、陸上にあがると妙に弱々しい。 [写真タップで拡大]

マルタウグイ連発! トリックバチ抜け中の狙い方

バチ抜けで狙いやすい魚といえばシーバス。そしてシーバス釣りではゲスト扱いされやすいのがマルタウグイだが、シーバスがキャスト範囲に寄っていない場合、水面爆発でヒットし、引きも強い「マルタウグイ」も本命ターゲットにすると面白い魚だ。

「トリックバチ」は小さくて猛スピードなので魚もシビアに反応する。しかも大量バチ抜けとなるとルアーに気付いてもらえない事が多くなり、かなり難しいパターンと感じる方も多いと思う。

マニック95(オリカラシャルロッテ)【DUO】

バチ抜け中にルアーを投げるとこんなもしゃもしゃになることも……。 [写真タップで拡大]

こんなときは通常のバチパターンで使うルアーよりも、ライトゲームフィッシングで使う浮き上がりが早く小さいシンキングペンシル(シンペン)を使用し、ルアーのシルエットを小さくしつつ、派手なカラーを選ぶ事でヒット率が高くなる。

見ると、マルタウグイは流れの緩んだ壁際でバチをボシュ! と水面で捕食している様子。捕食した波紋が見えた先にルアーを投げて、ロッドを立てて引き波が立つようにゆっくり巻いてくると……1発でヒット!

近距離で狙えるので夜でもヒットする瞬間が丸見えで引きも強く楽しい。足元はマルタだらけなのだろうか、連発できてしっかり釣りになった。

トリックバチに果敢にアタックしていたマルタウグイをキャッチ。 [写真タップで拡大]

バチ抜けは海の生き物の生活環における重要なシーン

バチ抜けという現象を知らずにこの光景を目の当たりにすると、あまりの異様さに天変地異の前触れのようにも見えてしまうかもしれない。

しかし普段、砂泥の中にいるバチが抜ける事により、シーバスやマルタウグイ、ハゼなどの魚類や、甲殻類、鳥類などの重要なエサになっていて、このタイミングの水中はお祭り状態のような賑やかさになる。

生態系に欠かせない生物の営みといえるバチ抜け。一見気持ち悪いけれども、興味を持ってみると動きが可愛いと思える時がくる……かも(笑)?

普通の生活ではなかなか見る事のできない自然現象だが、ルアー釣りの場合は特定のパターンで釣りになる。1年中バチ抜け対応ルアーを少しだけでも用意しておくと、楽しい釣りができるかもしれない。

今回の釣りレポート

項目釣りの情報
釣り物マルタウグイのルアー釣り(トリックバチ抜け中)
ターゲットウグイ
釣った場所東京港湾部
釣行日時2022年7月13日(水)00:30~01:30
釣果マルタウグイ:44~55cm×3尾
使用タックルロッド:ルアーロッド 210cm 6.88ft(ダイソー)
リール:フリームス3000C(DAIWA)
ライン:PEライン1.0号
リーダー:フロロカンボンライン20lb
ルアートパーズ45S(ツララ)

今回の釣り攻略情報

  • こんなこともあろうかとバチ抜けルアーを常にBOXに忍ばせていたので釣りになった(笑)。
  • バチのサイズに合う小さいルアーを使用。
  • 壁際の表層を引き波を立てて丁寧にゆっくり巻いてヒットパターンになった。

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