
フロントワイド形状という独自の形状を持つ「バックス」「オリエン」は、今や渓流や湖におけるトラウトスプーンの定番となっている。開発者はアングラーズシステムの福田紀之さん。釣れるアクションだけでなく、フラッシングやカラーにもエンジニアの魂が宿っていた。
●文:ルアーマガジンリバー編集部
【福田紀之(ふくだ・のりゆき)】
アングラーズシステムの代表兼ルアー開発者。名作「バックス」や「オリエン」など、スプーンにこだわり、多種多様なスプーンを世に送り出し続けてきた。大のネイティブトラウトフリークとしても知られる。ルアーマガジンリバー本誌では「スプーン回顧録」も好評連載中!
フロントワイドという独特の形状を持つネイティブトラウト用スプーン
数々の名作を世に送り出し続けてきた福田紀之さん。彼はアングラーズシステムという茨城県北茨城市のトラウトルアーメーカーの代表であり、開発者でもある。彼が生み出すルアーの中でも最も特徴的なものが「フロントワイド」という独自の形状を持つスプーンだ。
この形状はその名の通り、前方(ラインを結ぶ方)が幅広くなっており、後方(フックアイ)の幅が狭くなっている。「フロントワイドはうまく泳がない」などと言われた時代もあったが、苦心の末に出した答えがバックスやオリエンであり、これらは見事にトラウトアングラーたちの心をつかんだ。
バックス(右)とオリエン(左)。上がフロントアイで、下がテイルアイになる独自の「フロントワイド」形状を持つスプーンだ。前方のRで水を切り、後ろのカップが水を受けるため、遊泳時にはボディが水平をキープ。優れたバランスを持つ、レンジキープ能力の高いルアーなのである。
福田さんのこだわり「カラー&フラッシング理論」がおもしろい
今やトラウトスプーンの定番となったバックスやオリエンだが、これらのスプーンにはアクションだけでなく、開発者である福田さんの「フラッシングやカラー」へのこだわりも強く盛り込まれているようだ。
まずはカラーについて。アングラーズシステムのスプーンについて話を聞けば、手間(と塗料)を惜しまない贅沢な塗装が施されていることが見えてくる。たとえば「XPL」はベースカラーとなるラメの上からクリアコーティングを施し、さらに3色を塗装。
「BHP」はシルバーベースを際立たせるために、コーティングの上から3色を塗装しているそうだ。これらは限定カラーでなく、すべて定番のラインアップとしてリリースされている。そして、ここで紹介した3色の中でも最も手間のかかる「PCG」は実際に塗装の工程を以下で紹介したい。
「PCG」カラーの塗装工程を紹介。まずはベースの黒を両面に塗装し、パーマークを噴く。①その上からクリアでコーティング。②&③ボディサイドに白を噴き、その上からさらに蛍光ピンクを噴く。これにより蛍光ピンクの発色がよくなるそうだ。④最後に表面処理を行う。
銀山湖ではオークラの赤銀、中禅寺湖ではサラマンダーのシルバー
福田さんによれば、スプーンのカラー決めは、これまで釣りをしてきた経験や各地で収集した情報からヒントを得ているそうだ。
「銀山湖ではオークラの赤銀、中禅寺湖ではサラマンダーのシルバーなど、各地には古くからご当地カラーなんてものもありました。これもカラーリングのヒントのひとつ。手間ひま抜きにして、釣れないカラーを出してもしょうがないでしょ。釣れれば御の字」
福田さんは、写真のようにスプーンのボディを4分割した際の、それぞれの面によるアピールも重要視している。そのため、4つの面に異なる色が配色されたモデルもあるほどだ。色、輝きを総合して考え、日々研究を重ねているのである。
頭の中では常にフラッシングのことを考えている
「ここ15年くらいは頭をフルに回転させて、フラッシングのことを考えている」と福田さん。色だけでなく、スプーンのフラッシング=煌めきも重要な要素と考えているようだ。それを形にしたのが、コニカルスケールやファインスクエアカット、3Dスケールといった、乱反射を生む表面加工に表れている。
ウロコ模様や独特の凹凸により、激しいフラッシングで魚を魅了する。これに様々なカラーを組み合わせることで、さらに攻略の幅が広がっていくのである。形状、色、煌めき。シンプルな鉄板ルアーも多角的に攻め方を考えていくことで、強力な一手になりそうだ。
強烈なフラッシングで魚を魅了するために、表面加工にも力を入れている。
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