フィッシュマンがエギングロッドを作る!? この情報を聞きつけた編集部はスクープ記事を掲載するべく赤塚ケンイチさんに直撃。開発の経緯をうかがうと、そこにはベイトエギングの数多のアドバンテージが隠されていた!
●文:ルアーマガジンソルト編集部
赤塚ケンイチさんのプロフィール
赤塚ケンイチ(あかつか・けんいち)
ベイトロッド専門メーカー、フィッシュマン代表。渓流のトラウトから海外怪魚まで海水淡水を問わず開発中のロッドで挑み、フィールドワークで南船北馬の日々を過ごす。
高感度でシャクリ後の糸フケ処理も画期的!
ベイトエギングのアドバンテージ。まず思いつくのがベイトリールはカーブフォール中にクラッチを切ればすぐにフリーフォールに移行できる。払い出す潮にエギをのせて送り込むバックドリフトのラインの出し入れも親指1本で操作できる。スピニングリールのベールを返す戻すの動作よりかなり楽ですね。
赤塚「効率が良いです。さらにベイトリールはラインを送り出すときにサミングしながら常にラインに触れていられる。スピニングはパラッとスプール1周分のラインが出るときに1回人差し指の先に触れるだけ。フリーフォールやドリフト中の感度がベイトリールは圧倒的に高いです」
フォールでイカに喰う間を与えるエギングで、大きなアドバンテージになりますね。キャストで着水直前にサミングして糸フケを最小限に押さえ込めるのもベイトタックルのメリットです。
赤塚「そう。糸フケでいうとシャクリ後。シャクってロッドを戻すと糸フケが出ますよね。僕は右投げ左巻きですけど、シャクった後に右手の中指でリールのスタードラグを弾くんです。そうするとハンドルが2回転半くらいします」
ハンドルを握って回さなくても糸フケがとれる。画期的ですね!
赤塚「そうです。ハンドルひと巻き80㎝だとすると2回転半で約2mの糸フケがとれることになります」
ダブルハンドルのスピニングリールも同じようにクルッと慣性でハンドルを回して糸フケをとる人もいますが、逆にラインを巻きすぎてエギに不自然な動きを与えるという欠点があります。
赤塚「ベイトだともし巻きすぎそうになってもサミングですぐに止められます。しかもシャクって止めた瞬間にサミングでラインに触れることができるから、わずかな抱きも感じやすいです」
アタリが出ずに次のシャクリでのってた、という居食いのアタリがとれる可能性も高まりますね。
「テストではエギングシロウトの僕でもイカが抱いたのがすぐにわかりました(笑)。それくらいベイトエギングは感度が良いです。あともう一つ、ベイトエギングは大きなアドバンテージがあります」
それは?
「ロングリーダーが使えることです。ベイトリールはキャストでラインが直線的に出るから、飛距離を落とさず、ライントラブルもなくリーダーを長くできます」
リーダーを長くするメリットは?
「例えばスピニングタックルでフロロカーボンリーダー12lbが1ヒロ。ベイトタックルは4、5ヒロとれる。同号数のラインで同じエギで、どちらが狙ったレンジに到達させやすいか。潮に馴染ませやすいか、ということです」
高比重のフロロカーボンリーダーが長いほうが、潮に馴染ませやすい。釣れるということですね!リーダーが長ければボトムの起伏が激しい釣り場で根ズレ対策にもなります。
「ラインの出し入れや糸フケ処理の効率、感度、ロングリーダーなど、ベイトエギングには大きなアドバンテージがあります。そこに可能性を感じたから、ベイトエギングロッドを本気で作ろうと思ったわけです」
ベイトエギングの3大アドバンテージ
赤塚さんが考える、ベイトエギングのアドバンテージは大きく分けて3つ。1つずつチェックしていこう。
[アドバンテージ1]シャクリ後の糸フケ処理の効率化
スピニングでシャクリ後に糸フケをとるときは、ベールを戻してハンドルを巻くの2アクション。ベイトは写真のようにパーミングする手の中指でスタードラグのツマミを弾けばハンドルが回り、ワンハンドで糸フケ回収が可能。慣れは必要だがベイトタックル愛用者にとっては当然の操作だ。
[アドバンテージ2]親指1本で、ラインの送り出しができ、感度も得られる!
スピニングの場合、フリーフォールやエギを潮にのせて送り出すときはベールを返して、スプールから出るラインに1周に1回触れながらラインを出す。ベイトはラインを出したいときに親指でクラッチを切るだけ。ラインを送り出すときはサミングで常にラインに触れることができるから感度が高い。
[アドバンテージ3]ロングリーダーが使える!
ベイトリールはラインが直線的に出るためガイド抜けが良く、飛距離を落とさずに約10mのロングリーダーが使用可能。高比重のフロロカーボンリーダーを長くとれば、エギをより潮に馴染ませやすくなり、エギの姿勢安定にも貢献。ロングリーダーが釣果アップに直結する。スピニングリールにロングリーダーを巻き込むと、キャスト時にガイドにバチバチ当たって飛距離ダウンとライントラブル必至。
3.5号のエギを軸に切れ良くシャクれるロッドを目指す
ベイトエギングには多くのアドバンテージやメリットがある。ロッドの完成が待たれるところですが、開発の進捗状況は?
赤塚「まだ6ft6inと7ft7inのファーストプロトでテストが始まったばかりで、レングスもパワーも発売時期も、なにもかもが未定です(笑)。ただ、テストで一つの大きな課題がすでに見えています。そこをクリアすれば一気に完成に近づけると思います」
その課題とは?
赤塚「シャクリに対しての戻りの早さ。ブレの収束です。今のフィッシュマンの技術は、1ozから40gの鉄板バイブを140m飛ばせるロッドを作れます。ファーストプロトの66のテストでも3号のエギが50m以上飛びます。飛ばすロッドは、今までのノウハウを生かして問題なく作れます」
フィッシュマンのベイトロッドの3つのコンセプトを踏襲しつつ、エギングロッドの特性を持たせる?
赤塚「そうですね。単にブレの収束を早くするとキャスタビリティが落ちます。キャストは既存のフィッシュマンのロッドのようにしなやかに曲がって、シャクリではエギをキビキビ動かせるダルさのないアクションにしたい」
そのためのアイデアは?
赤塚「ブランクスの製法や素材を一から見直し、作り込むことになります。ロッドづくりの常識では考えられなかったマテリアルを入れるかもしれません。具体的にはまだお話できませんけど」
難題とはいえ課題は明確なので、完成への期待感が高まります!
赤塚「僕が土台を90%くらいまで作り込んで、最終的には熟練のエギンガーにテストしてもらいながら調整していく予定です。従来のフィッシュマンのベイトロッドの味付けはそのままに、3・5号のエギをメインにシャクるエギングに最適なセッティングを出す。これをクリアすれば完成です」
前述のとおりベイトエギングのアドバンテージは大きい。フィッシュマンがエギングに新風を吹き込む日が待たれる。
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