晩秋のコノシロパターンで大爆発のモンスタースライダー160F(DAIWA)こだわりや使い方のコツを開発担当者に聞いてみた!

シーバス釣りのシーズンで最も盛り上がりを見せるのが、晩秋。そんな季節を釣るための必釣ルアーとして爆発的人気を誇るのが「ビッグベイト」だ。その爆発力や大興奮のヒットシーンに多くのアングラーが魅了されて続けてきた。名作も多数存在するが、今回紹介するのが、DAIWAのモンスタースライダー160F。このルアーの開発に携わった岡本隆治さんに、開発秘話や使い方について聞いてみた。

●写真/文:岡本隆治

2024 チニング特集

岡本隆治(おかもと・りゅうじ)
DAIWAの営業マン。これまで転勤先である、大阪湾、北陸、東京湾などで釣りを楽しんできたが、今年からは九州をメインフィールドにしている。シーバスの釣りを得意とし、今回のテーマでもあるビッグペンシル「モンスタースライダー」の開発にも携わる。

岡本さんも開発に携わった人気のビッグペンシル

1年で最もシーバスフィッシングが盛り上がる晩秋シーズンはビッグベイトのトップゲームが面白い! ということで、今回はDAIWAの岡本隆治さんに、その魅力と、自身が携わったルアー『モンスタースライダー160F』についてお話をしてもらった。

岡本「ルアーの大きさにかかわらず、さらに水面からボトムまでレンジも幅広く狙える晩秋は、様々な釣り方が楽しめます。そんな季節におすすめなのが、今やシーバスルアーのメインストリームとまでなったビッグペンシルのトップゲームです!」

数年前までは一部のアングラーがこっそりやっていた釣りではあるが、ルアー自体の爆発力や、大興奮のヒットシーンに魅了されるアングラーが続出。一昨年あたりから一大ブームとなっている。

岡本「今回メインで紹介させていただくのが『モアザン モンスタースライダー160F』です。DAIWAのフィールドテスター兼開発担当のミッチーさん(高橋慶朗)と共に、私も現場を知るセールスとして開発に関わらせていただいたアイテムです」

フナを追い回すシーバス! ではなくコノシロを追うシーバス!

DAIWAの営業マンとして活躍する岡本さん。転勤が多く、それをうまく利用して全国各地のフィールドで釣りを楽しんできたそうだ。

これまで大阪湾、北陸、東京湾などの釣りを経験してきたそうだが、2022年からは九州が拠点となっている。そんな岡本さんが“コノシロパターン”と出会ったのは、数年前のこと。富山湾周辺を拠点にしていたタイミングだった。

岡本「…実は、体高があるベイトを見て、最初はコノシロじゃなくて、フナを食べていると思っていたんです…(笑)。凪いだ川面でフナ(実際はコノシロ)を追い回すシーバスを目撃し、直感で最初に使ったルアーはプガチョフコブラ(ima様)でした。とりあえずトップなら反応させられそうだなと思ったんです。一撃で水面が爆発し、大興奮したのを今でも忘れられません」

プガチョフコブラ(ima)で水面爆発!

この時、岡本さんは様々なルアーを投入したという。

岡本「次に選んだのはジョインテッドクロー(ガンクラフト様)で、これにもビッグフィッシュがヒットしました。そして、この日を境にフィールドに通いこむようになり、様々なルアーを使い込む中で、水面・水中を問わず『スライドアクション』が効果的である、ということに気づくことができました」

シーバスが捕食しているベイトはフナではなくコノシロだったことにも、このタイミングで気づくことができたそうだ(笑)。

岡本「最初は、現在廃盤のスカウター130(DAIWA)や、ヤマト(O.S.P様)、ガラスライド(シマノ様)、シャワーブローズ(エバーグリーン様)、ジョインテッドクロー(ガンクラフト様)等を使用してそれなりの釣果を得ることができていました。ただ、イマイチ、パターンにハメきれていないと感じていました。

のちにアマゾンペンシル(エバーグリーン様)、スーパースプーク(ヘドン様)を使いだした途端に劇的に釣果が伸び始めたのです」

/『ヤマトjr.(O.S.P様)』での釣果。/確か小学生の時に中古で買ってもらったバスカラーのアマゾンペンシル(エバーグリーン様)。そのルアーで仕留めた90アップのシーバス!

驚かされた!東京湾のポテンシャル

 デイでもナイトでも、コノシロの絨毯に覆われる中、ボコボコにランカーが襲ってくる。

岡本「左右への大きな蛇行が明らかにランカーシーバスを狂わせている…。これに気づいた時、鼻息が荒くなりました! 実際に意識して釣りをしてみると、キャッチには至りませんでしたが、メータークラスとの遭遇も増えてきたんです」

とにかくストイックにビッグベイトの釣りを研究し続けてきた岡本さんだったが、この時期に急遽東京への転勤が決まり、北陸シーバスとはしばしのお別れとなる。

岡本「こうなったら東京湾のシーバスをペンシルでボコボコに釣ってやるしかない! と。必然的に東京湾に通うようになりました」

――東京湾と富山の違いはどんなところにありましたか?

岡本「デイでもナイトでも、コノシロの絨毯。そんな中から、ボコボコにランカーが襲ってくる。これが上京してすぐの東京湾の印象です。この頃、メガドッグ(メガバス様)も発売され、徐々に大型トップの威力が世間に知れ渡っていきました。

東京でもさらにコノシロパターンをやり込み、このパターンに必要なルアーの要素が自分の中に蓄積されていきました。もともと他のエリアでこの釣りをやっていたので、コノシロパターンという先入観なく開拓ができていたんです。結果的に様々なアプローチを試し、ルアーに求めるものが明確化されたと実感しています」

モアザンモンスタースライダーの開発

【スペック】
●サイズ:160mm●タイプ:フローティング●ウエイト:51.2g●色数:12色●フック:#2(リング:#3)●価格:2,200円(税別)

岡本「私が数年かけてコノシロパターンを開拓する中で、トップに求めたものは、大きく分けると6つの項目が挙げられます」

  • スライド幅
  • 規則性
  • 浮力設定
  • 水押し
  • フッキング性能
  • 飛距離

岡本「上記の要素はそれぞれ関連性があるので、説明が重複する部分もありますが、それぞれの要素を深堀りしていくと以下のイメージになります」

スライド幅

岡本「これまで、様々なルアーに鉛シールやフックの交換等をして、少しでもスライド幅を伸ばす工夫をしてきました。モンスタースライダーに求めたのは、ほぼ水平姿勢で、喫水線(船が水上に浮かんでいるときの水面と船体との交線のこと。岡本さんは、ルアーを船に見立てて、そう表現する)も、ルアーが沈むくらいの位置に設定。

これにより上下運動を極力抑え、ロッドアクションによる出力をうまくスライドに変換できるようになっています。また、一度スライドし始めると、お腹に設けた「Vハル機構」(船型のキール)がスライドを伸ばし続けます」

これらの設計により、従来のトップウォータープラグの中でも異質なほどスライドが伸びるようになっているとのことだ。さらに、このスライドによって得られる恩恵は以下の通り。

  • スローテンポ(BPM1分間の拍数40程度)なドッグウォークでもルアーが止まらない。だから見切られない。
  • シーバスが大きな蛇行に異常に反応。釣果が圧倒的に伸びる。
  • ミスキャストした際、スライド幅で軌道修正ができる。
  • ラフウォーターでも首が振れる

水平で頭を少し出すだけの喫水線。

規則性

岡本「コノシロパターンにおいて、『止めて食った』『ランダムアクションで食わす』等の言葉を耳にします。もちろんこれらが有効な状況はありますし、重要なファクターではあるのですが、個人的には、一定のテンポを保ったアクションを続けることが非常に重要であると考えます。

魚に見切らせず、苛つかせて狂わせる。これが最も重要なファクターで、バスアングラーの方なら、羽根モノのスローリトリーブというと、その雰囲気が伝わるでしょうか。前述したように、モンスタースライダーはスライド時間が長いため、どれだけピッチを落としてもキレイに動きます。

スライドしないルアーはピッチが短く見切られがち。でも、スライド幅が長い分にはピッチを速くすることができるので、幅広い状況に対応できます。まさに『大は小を兼ねる!』といったところ。

なお、テール側にシンカーを貼って、若干頭を上げるセッティングにすれば、ランダムアクションを簡単に出せるようになります。まさに「水平は垂直を(少しだけ)兼ねる」(垂直浮きを水平に変えて良いアクションを出すのは難しいのです)」

浮力設定

岡本「ルアーの本質は水中での姿勢や比重にあるとも考えています。たとえば、ゲーリーヤマモトの高比重ワームは置いておくだけでバスが釣れるように、それぞれのジャンルのルアーに最適な比重というものがあると思います。

モンスタースライダーは、ペンシルベイトの中では比較的浮力を抑えています。これにより、まとわりつくような水噛み=エサ感や、スライドモーション、そして、バイトした際のフッキング率が格段に向上しています。高浮力でレスポンスを上げるのは簡単ですが、低浮力で良いアクションを出し、本物のベイトのような存在感を放つのがモンスラのよさだと思います」

水押し

岡本「これは『浮力設定』に通ずるものですが、浮力を抑えたボリューミーかつ、フラット面を多く作ったボディーが、しっかり水を押し、存在感を主張します。正直なところ、コノシロパターンにおけるトップゲームにおいて、ルアーのサイズやアピール力は、あまり重要ではないと思っています。小さいルアーでも大きいルアーでも、重要な要素だけ押さえていれば、シーバスは口を使います。

しかし、広範囲を探る際や、ベイトが増えた際にはある程度の水押しがあった方が魚との遭遇率が上がるため、効率的には良い感覚です。なので、この水押し(水絡みと言ってもいいかもしれません)はしっかり出せるサンプルを選びました」

フッキング性能

岡本「恐らく、この手の釣りで最もアングラーを悩ませるのが、出たのに乗らない「誤爆」じゃないでしょうか。これを解消するために、強烈な水面バイトであってもシーバスの口の中に残る可能性を上げるために、まず浮力を落としています。

また、ペンシルベイトは大きく左右に動くルアー故にフックも暴れやすく、針先が安定しないというデメリットがあります。この点に関しては、よりフラット面を多く作ったボディがロールアクションを軽減してくれています。さらに、フックアイを横アイにすることで、ボディの揺れがフックに直接伝わらないようにしています。 

変則的なスプリットリングセッティングでボディから、針先を適切な距離に合わせていることでフックアップし易くなっています。更に、リングが二つあることで、シーバスの挙動でフックが捻じられ伸びることも軽減しています」

飛距離

岡本「どんな釣りでも同じですが、ルアーが飛ぶに越したことはありません。モンスタースライダーはフラット面が多いし、尻すぼみなボディだし、正直投げる前は『あまり飛ばんやろな…』と思っていました。しかし実際に投げてみたら、『いや、めっちゃ飛ぶやん!』と驚かされました(笑)。ダイワの開発陣の底力を改めて見直した次第です。

また、ラトル音に関しては市場の要望が非常に高かったという理由もあり採用しています。デイゲームでもしっかり聞こえて、ナイトでも大き過ぎない音質、音量を吟味しました。実釣性能以外にも、ラトルが入っていると、ナイトで使う際、音でルアーがエビってる(絡まっている)かどうかも把握することができます」