水中がバスにとって過ごしやすい状況となり、魚の行方をつかみにくくなっていく秋は、1年を通して最も釣り方が多様になる季節と言えるだろう。しかし選択肢の多さは釣りを絞り込みにくくもするもの。ここでは、名だたる5名のアングラーによる、頭を悩ませる秋の釣りの基準となるような「セオリー」の釣りと、劇的に効くときがくるかもしれない「裏パターン」を紹介する。
●文:ルアーマガジン編集部
青木大介さん秋の王道パターン
スピナーベイト
D-αスピナーベイト&Dスパイカー【ディスタイル】
どちらもディスタイルのスピナーベイトだが、その運用方法は明確に異なる。D-αは一般的なスピナーベイト同様、魚を引っ張る力に長けている。その一方、Dスパイカーは食わせる力が強い。シチュエーションやタイミングに応じて使い分けたい。
秋らしく巻くならアールマイティなスピナベを!
秋になると水温が下がってバスがいろいろな場所にいるようになるから、巻きからはじめることが多いかな。その中でもよく使うルアーを挙げるならスピナーベイト。カバーにも強いし、表層も引けるし、沈めてレンジを入れた使い方もできる。小技が利くというか、なんでもできるのがその理由。モノに絡めるなら表層とかでも使うけど、メインは沈めて探ってくることが多いかな。
まずは色々なレンジを通して探っていく。そこからスピード感を調整したいときに、クランクやチャターにローテーションしていく。スピナーベイトの使い分けは、弱めで食わせに寄せるならDスパイカーを、スピナベらしく探ることを中心に考えるならD-αスピナーベイトを使うかな。
青木大介さん秋の裏パターン
i字系
ヴィローラ 2.8in/4in/5in【ディスタイル】
フックは各サイズ共にオフセットフックを使用する。障害物周りを安全にトレースさせられるのはもちろんだが、低重心化させることで安定したスイム姿勢に貢献している。
i字なら秋のでかバスを選んで釣れる!
秋のセオリーとはちょっと違うアプローチとしては、でかバスを選んで釣れるメソッドとしてi字系があるかな? 季節の進行とともに水温が下がると、小さい魚がディープに落ちる。そうすると、必然的に表層でi字系をやって浮いてきて食えるのはデカい魚だけになっていく、っていう釣り。もちろん寒くなりすぎると浮いてこないけど、そうなってくるとミドストが効くようになる。
i字系だしさすがにマッディウォーターでは難しいけど、クリアからステインくらいの水色のフィールドで、ブレイクに隣接したシャローの障害物周りとかが狙い目。ルアーはヴィローラなんだけど、大きさは一概に言えなくて、2.8in、4in、5inを試してみることが多いかな。
大津清彰さん秋の王道パターン
トップウォーター
クリッタータックル 野良ネズミ【ティムコ】
フックはスリットに収まりつつ耳の部分の働きで、スナッグレス性能に優れるカバーの多い流入河川上流部などでも臆せず使っていけるのだ。
水温12度以上なら流入河川で活躍し続ける!
意外に思われるかもしれませんが、野良ネズミは晩秋までかなり有効なんです。たしかに夏の釣りっぽいとは思いますが、やはり野良ネズミはシャローの魚を効率的に狂わせる力がスゴイ。使い場所にもキモがあって、例えば霞ヶ浦の流入河川みたいな場所がいいですね。
周りに植物がたくさん生えているような上流部。そういった場所って、人間が想像しているよりも長い期間バッタみたいな陸生生物が落ちてくるし、エビやゴリ、その他の小魚もしばらくは残り続けている。野良ネズミはそれらの生物を食べている魚に効果的なんです。流入河川の水温が12度を下回るくらいまではハイシーズンと同じ動かし方で釣れると思いますよ。
大津清彰さん秋の裏パターン
キャロシャッド
ステルスペッパー 70F【ティムコ】
キュアポップクランク【ティムコ】
ステルスペッパーで根がかる場所ではキュアポップクランクも使用。こちらなら立木の中でもゴリゴリと巻いてこられるという。なお、どちのルアーでもリーダーの長さは50センチ程度が基準となる。
釣れるのにやっているひとが少なすぎる「キャロステルス」
かれこれ10年くらいは使っていて、衰え知らずの釣果があるのがステルスペッパーのキャロライナリグです。自分がこれをやるのと同時期くらいにK-1マック(HMKL)のキャロもあったし、もっと流行るかと思ったんですが、いまだにやっているひとはほとんど見ませんね。フラットやブレイク沿いを、巻き物感覚で広く探っていく釣りになります。
シンカーがたまにボトムに当たるくらいのリトリーブスピードで引きますので、水深に応じてシンカーは3.5~2ozくらいまでを幅広く使い分けています。ちなみにこの釣り、ペラとシャフトが回転して擦れる音が水中で響くことにキモがあると思っています。しかも、プラスチックボディに共鳴することが重要なんですよ。
奥田学さん秋の王道パターン
ビッグベイト
アーマージョイント【シマノ】
どちらも20cmクラスのビッグベイトという点は共通。キモはその使い方にあり、双方とも圧倒的なリーリングスピードでも泳ぎ切る性能を持つ。
黒龍【シグナル・プロト】
秋はビッグベイト…の次元を超えた速さという武器
やっぱりビッグベイトだよね。秋はコレがマッチザベイトになるもんで。全国の河川やダムなんかで落ちアユがいるでしょう? あれを食ってるでかバスを狙うのが秋のセオリーかな。使うルアーはアーマージョイントとか黒龍とかで、とにかく速く巻いて使うのがキモやね。
ノーマルギアでは到達できない極限のスピード。バスが本気で捕食するスピードは人間が想像している以上に速いからね。騙すにはもっともっとスピードが必要になるわけ。そうすればルアーを視界に捉えたバスが、本能的に反応して食いに来る。サーチスピードが速いからガンガン回っていける。そういう意味では秋の巻き物に近いとも言えるかもしれないけど、次元が違うよね。
奥田学さん秋の裏パターン
スイムジグ
スピードヘッド 1oz【シグナル・プロト】+スピードシャッド 4in【シグナル】
ヘビースイムジグで未体験インパクトを与える!
秋の裏パターンね…。そっちもスピード系になるかな。ただし狙うレンジがキモになってくる。場所はある程度どこでもいいんだけど、とにかくミドルからスーパーディープで、1.5ozとかのでかいスイムジグを通す。例えば開発中のスピードヘッド1.5ozにスピードシャッドの4~5inを組み合わせて使うんだけど、これなら落ちるスピードは速いし、深いレンジも速いリトリーブスピードで通すことができる。
バスからすれば、そんな水深で見たことのない動きの物体が通れば、思わず口を使ってしまうわけ。食性ではなく、完全にリアクションの釣りやね。ターンオーバーを嫌ったり、冷え込みが始まってでかバスが真っ先にディープエリアに落ち始めたタイミングが釣りどきかな。
永野総一朗さん秋の王道パターン
トップウォーター
HUミノー111FS【ハイドアップ】
動ける魚を水面までヒッパレ
この季節、ガイドでいらしてくれるゲストさんにも楽しんでもらっているのがHUミノー111FSです。テールにプロップがついたミノーなんですが、今まで使ってきたこういったタイプの中でも断トツで魚を引っ張る力が強い印象です。使い方は巻くだけでシンプルなんですが、決して強すぎない、適度なウォブリングによる曳き波とプロップによる水しぶきが効くみたいです。
i字系ルアーではチェイスするだけの魚も食ってくるイメージですね。ガイドでは水面近くまで生えたウィードの上を通したりするほか、漁礁や島周りなど、水がキレイな場所かつ適度な流れがある場所でも使います。水深8m以上のところからバスが食いにくることもあるんですよ!
センドウアキラさん秋の王道パターン
ジャークベイト
強烈なフラッシングで効率よく!
ジャークベイトかな。きちんと使えれば、これほど秋に効率よく釣っていけるルアーはないよね。適水温になってバスは水中の色々な場所、色々なレンジにいるようになるわけですよ。その散っている状態からバスを引っ張ってくるとなったとき、ジャークベイト、とくにボディ側面がフラットなやつが効く。
水の色に関わらず、強烈なフラッシングは強烈にバスを惹きつけてくれるからね。ただし、レンジを一定にしてダートさせること。せっかくルアーを見つけて近づこうとしても、次の瞬間にレンジが外れると見失ったり、急にやる気をなくしたりするからね。ジャークベイトはクランクよりもスピナベよりも、この『レンジキープ』をしやすいのがいいんだよ。
センドウアキラさん秋の裏パターン
スピナーベイト
V-3 バレットシャッド【メガバス】
長距離砲でボトムを巻き倒せ!
どっちがどっちだよって話だけど、スピナーベイトかな。フラッシングが効くって話をしたわけだけど、その大本にあったのはこっち。それもブルーフォックスの『ビッグバス』っていう、ビッグブレードタイプね。でもそれとは別で、『V-3バレットシャッド』ってやつがいいかな。コンパクトかつヘビーウエイトなんだけど、これにテールをカットしたグラブをトレーラーにして、超遠投仕様にして使う。
川の対岸から足元まで、ボトムを感じながら全域をサーチできるわけ。やっぱり魚を引っ張ってくる力が強いけど、レンジを外さないようにして使うってのはジャークベイトと同じ。つまりボトムから離しすぎないように巻いてくるのがキモにはなってくるよね。
永野総一朗さん秋の裏パターン
ヘビーダウンショットリグ
コイケフルキャスト【ハイドアップ】
「痙攣アクション」で魅惑の誘いを!
去年の晩秋からやりだした釣りなんですが…「コイケフルキャスト」です。それもヘビダン! エラストマーを沈めて使うことのパワーの凄さを実感しています。ブームはまだまだ続きますね。季節的には、ウィードの中にいた魚が動き出すタイミングになってきます。なので、ウィードポケットに入れたり、シンカーだけをウィードに引っ掛ける形で移動距離を抑えて誘い続けます。
それ以前は、カバースキャットなどの高比重系で釣っていた魚を狙っているイメージですね。動かし方は、2~3秒毎にラインを一瞬だけチョンとはじく「痙攣アクション」。こうすると、コイケフルキャストがほとんど移動しないまま1/4回転を繰り返すのですが、その動きがスゴイ魅力的なんですよ!
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!
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