2022年日本を代表する釣具メーカーDAIWAのシーバスルアーフィッシングブランド「morethan(モアザン)」が発足20年の節目を迎える。同ブランドを代表するアングラーであり、これまで数多くのモアザンタックルやルアーを監修してきたのが東京湾を中心に活動する大人気シーバスプロ・大野ゆうきさん。今回大野さんには20周年を記念した特別実釣をしていただきながら、自身とモアザンの歴史を振り返っていただいた。
●文:ルアマガプラス編集部
実釣にチャレンジするのは東京湾奥を代表する「超」シーバスエキスパート!大野さん
大野ゆうき(おおの・ゆうき)
東京都在住。都市型河川や港湾部をはじめ、あらゆるフィールドで的確な釣りを展開するシーバス界きってのプロアングラー。正確なキャスト精度を持つ腕前と、明快な状況分析力で優れた釣獲力を誇る。DAIWAフィールドテスター、ポップシークルー代表。
実釣模様はこちらの動画をチェック!
モアザン20周年記念!20時間耐久!シーバスチャレンジ!!
今回はモアザン20周年を迎えたスペシャル実釣を、同ブランドを代表するシーバスプロアングラー・大野ゆうきさんと敢行。
お題はズバリ、20周年にちなみ、『20時間耐久!モアザンルアーでシーバス何尾釣れるかチャレンジ!』
20時間内にモアザンルアーを使って、何尾シーバスを釣れるかチャレンジしていただく「超シンプル」なお題である。
大野「てっきり20周年だから匹数やルアーの種類を絡めたお題が来るかと思ってましたけど、時間できましたか。とりあえず釣れるだけ釣ればいいんですね、でも寝れませんね(笑)」
東京湾の「超」エキスパートは20時間本気で釣りをしたらシーバスが何匹釣れるのか、そして最大サイズは何cmを釣り上げるのか、「現時点」での東京湾を大野ゆうきはどう攻略するのか見たいのだ。
モアザンと大野さんは「同級生」!? 共に歩むDAIWAシーバスの歴史
実釣は午後15時40分から、都内河川下流部の橋の架かるシャローエリアにてスタート。
大野「本番は18時以降からの下げ潮のタイミングでウェーディングし、明暗部を狙います。今の時間は上げ潮が効いているタイミングなので、イナッコや護岸際のスジエビなどを狙ってシャローに入ってくる活性の高い魚を拾えればと思います」
大野さんはまず手始めに橋脚近辺のシャローエリアをモアザンガルバ87Sの水面直下ドッグウォーク、通称「ガルバダンス」でアプローチしていく。時折シーバスらしきボイルもありチャンスはありそう!
大野「モアザンが20周年ですか、もうそんなに経つんですね~」
感慨深い面持ちで釣りを始める大野さん。大野さんはいつ頃からDAIWAとの付き合いがはじまったのか。
大野「それこそ、モアザンが立ち上がった時期くらいからだったと思います。初期のモアザンのプロダクトには関わっていなかったのですが、使ってはいました。初代モアザンはたしか村越(正海)さんが監修するプロダクトが多かったと思うんですよね。僕は7ft後半のモデルをグリップを改造してボートシーバスでよく使ってました」
開始早々いきなり「ガルバダンス」が炸裂!
思い出を語りながらも、ガルバ87Sの水面直下ドッグウォークを行っていると突如水柱が!
大野「喰いました!まさか開始3投目!幸先いいですね」
丁寧なファイトの末、上がってきたのはグッドコンディションな60cmクラスのシーバス!
大野「よっしゃ!今上げ潮のタイミングで、潮位上がっていくにつれて、イナッコやスジエビが岸際に寄ってくるのでそれを追いかけてきたシーバスが喰ってきてくれました!」
大野さんのデイゲームにおける代名詞的ルアー&アクションと言っても過言ではない『モアザン ガルバ87S/73S(DAIWA)』の水面直下のドッグウォークアクション「ガルバダンス」。
通常は水面直下のタダ巻きで使うガルバをトップウォーター的に使うこのアクションはいつ頃からやり始めたのか。
モアザン ガルバ87S/73S(DAIWA)
【スペック】
サイズ (mm) | 標準自重 (g) | 潜行レンジ | フック仕様 | カラー | メーカー希望 本体価格(円) |
---|---|---|---|---|---|
73 | 12.8 | 水面直下~20cm | ST-46#8トレブル リング#2 | 12 | 1,700 |
87 | 19.3 | 水面直下~20cm | ST-46#3トレブル リング#3 | 12 | 1,850 |
大野「ガルバを製作している際に、理想の動きを出していく中で、ただ巻き以外にも時折トゥイッチやジャークも試していたんですよ。そしてテストを重ねて、ただ巻きでのベストな動きを詰めていったときに、大体どのサンプルもドッグウォークが出るようになってたんです。最初にリリースした73Sはそれを見越してつくっています」
大野さんは既にルアー製作段階で、ドッグウォークアクションが可能なことを見出していたのだ。
大野「ガルバは水面に上がろうとするアクションですが、シンキングペンシルなのでもちろん沈みます。その2つの要素があるから、ガルバ独自の水面直下を出たり、出なかったりするランダムなドッグウォークアクションが出せるんです。浮上してスプラッシュで魚を寄せながらも、水中にルアーが入ったりもするので魚に喰わせやすい、通常のフローティングのペンシルよりも乗りがいいんです。デイだけでなく、常夜灯でのイワシパターンなどにも効くアクションなので是非試して頂きたいですね」
「DAIWAらしくない」ルアーこそが大野さん監修ルアーの真骨頂!
デイゲームで見事なガルバフィッシュを釣り上げた大野さん。ガルバ以外にもこれまで多くのモアザンルアーを手掛けてきた大野さんに、自身のモアザンプロダクトの思い出を聞いてみた。
大野「う~ん、そうですね。それぞれのルアーに思い出はありますね。僕が最初にDAIWAで監修したバイブレーションの『ミニエント』は、橋脚でのフォールの釣りは結構思い出がありますね。もちろんタダ巻きでも釣れるルアーなんですが、それ以外の使い方として、流れのある橋脚の際に落としていく釣り。普通だと橋周りだと明暗をやるのがセオリーなんですが、明暗の立ち位置じゃなくて橋脚を撃っていてめちゃくちゃ釣ったのは我ながらインパクトありましたね」
大野「あとはフローティングミノーの『ソラリア』。それこそルアマガソルトのWアウェイで鈴木斉さんとバトルしたときです。アウェイの洗礼なので情報がない場所で釣りをするんですけど、ロケをやったのが2月ですよ。無茶苦茶なセッティングですよ(苦笑)。でも持ち込んだソラリアの最終プロトで88cmを釣ったのはかなり痺れましたね」
大野「僕がこれまで監修してきたルアーはあえて『DAIWAにないもの』を作ってきたつもりです。
ただのバリエーションや、オーソドックスな物ではないのですが、どんなルアーを投げても釣れないときに、そのルアーやそのルアーのアクションだけ『ハマる』シーンがそれなりにあるようになってくれたのかなと思います」
リップ付きシンキングペンシルをはじめ、現在のシーバスシーンの「主流」を生み出して来たと言っても過言ではない大野さんのモアザンプロダクト。その影響力は東京湾だけでなく、全国各地で釣果をもたらし、多くのアングラーから支持を受けている。
絶大な人気を誇る大野さん監修シーバスロッド『アーバンサイドカスタム』秘話
大野さんとモアザンといえば「ロッド」においても、日本のシーバスシーンのムーブメントを大きく動かしている。そう、現在はモアザンブランドを象徴するロッドとなり、ブランジーノEXシリーズにおいても継承される「URBANSIDE CUSTOM(アーバンサイドカスタム)」。そのルーツは2007年にまで遡る。
大野「アーバンサイドカスタムが生まれた背景は僕が当時東京湾の釣りをしていく中で、それまで港湾部で主流とされた8ft半のシーバスロッドだとリアのグリップが長すぎてどうしても使いにくかった。東京はどうしても柵越しに釣りをするシチュエーションが多かったので。またグリップが長い分有効レングスも活かしきれていなかったんです」
大野「グリップを短くすることで取り回しが良く、且つリールフットからティップまでの有効レングスを長く取ることができれば操作性も高く飛距離も出しやすいと考えたんです」
今でこそグリップ部が短くレスポンス性を高めたシーバスロッドは多くなったが、そのルーツは大野さんが作りあげたアーバンサイドカスタムにある。
大野「初代アーバンサイドカスタムはテストサンプルを相当つくりましたね。当時住んでいた家に数十本サンプルがあったので、DAIWAにはその倍、もしくはそれ以上あったんじゃないかと思います。でもあのベースがあったからこそ、今使っているロッドも出せているんだと思います。当時はグリップ短いロッドは7ft台が主流だったんですけど、それを8ft台に落とし込めた。それが割りと新しかったというか、多くのユーザーに受け入れてもらえたのは嬉しかったですね」
大野さんが作り上げたロッドは瞬く間に東京中のアングラーから支持され、さらには全国各地のアングラーやフィールドにも適応し、シーバスロッドの「ニュースタンダード」となったのだ。
「AGS」搭載により大野ロッドがさらなる進化を遂げる!
そして2011年にはアーバンサイドカスタムの派生モデルである「87ML オービット3」がリリースされる。このロッド以降大野さん監修ロッドには、DAIWAオリジナルのカーボンガイド「AGSガイド」が搭載されていく。このガイドは大野さんプロダクトロッドにも大きな変化を与えた。
大野「ガイドはそれまで付いていたのがハイエンドの『チタンガイド』でした。もう少し手頃な価格帯のものでステンレスガイドがあるんですが、それぞれの性質でいうとチタンは軽いけど柔らかめ、ステンレスは重いけど硬く感度がある。それぞれに特性はあるのですが、柔らかくて捻れるので飛距離や感度を落としてしまったり、重くなってしまったりとメリットを相殺していることが多かったんです」
大野「そのチタンとステンレスのメリットだけを残したのが、軽さと感度に優れた『AGSガイド』です。特に自身の監修ロッドとは相性が良くて、先述したようにグリップ部を短くしていることにより、リールフットが後ろに下がるので有効レングスが長くなるけれど、先端が重くなるんですよ。キャストもある程度力がなければ竿を曲げづらかったんです。ですがAGSが搭載されることで先重りが軽減され、キャスタビリティも上がり感度も高くメリットがどんどん出てきたんです。カーボンフレームの強度面が不安視されていたのですが、テストでは改良毎に良くなりました。普通に釣りをしている分には破損することはないです」
的確にシーバスを捉えていく「マッチ・ザ・バイト」が炸裂!
日暮れと共に満潮を迎え、下げ潮が効き出すタイミングでウェーディング開始。
大野「今日は風向きが下げ潮と同調しているので、表層は先に流れが出始めてますね。明るい時間帯にいたイナッコなどのベイトたちが動いてくれればチャンスはあるので様子見ながらウェーディングしていきましょう」
護岸から実釣を再開、徐々に潮位が下がりはじめるタイミングで入水し、流芯方向に向きながら橋脚の明暗を狙っていく。
大野「橋脚と橋脚の間の筋が良いですね、ちょうどボイルもおきてます…よし喰った! 」
「釣れそう」と言ってから瞬く間にヒットに持ち込む大野さん。シーバスを一気に橋脚から剥がしランディング。ヒットルアーはガルバ87S。
大野「ベイトはかなり浮いていて、上流側からどんどん流れてくるのでそれをシーバスが明暗で待ち構えていて、ボイルが頻発している感じです。それにレンジを合わせて、+α飛距離を出して遠目の魚を狙いたかったのでガルバをチョイスしました」
ウェーディング開始後も順調な滑り出しを見せる大野さん。
大野「実を言うとウェーディングする前からボイルは始まってたんですけど、まだボイルの数が少なくてちょっと待ってたんです。丁度入水するタイミングで増え始めましたね。でもサイズがちょっと小さいかな、いかにも秋の最初の群れという感じです」
そしてリスタート後、立て続けに同サイズをキャッチ!ルアーは先程と同じくガルバ87S。
大野「サイズは変わらないけど、連発は楽しいですね」
勢いは止まらずさらにガルバ87Sでヒットを重ねる。このまま順調に数を重ねられるかと思いきや…徐々に反応が薄れていく。すかさず、ルアーをガルバ73Sに変更し、再びヒット!
大野「これも同じくらいですね、魚のヒットレンジは変わらないんですが、ベイトが上流から下ってくるタイミングや釣れる筋が都度変わっていますね。ガルバの飛距離はそのままに、ルアーサイズでローテーションしたら反応が変わるかと思ったらそうでもなかったですね(笑)」
しかし、その後反応がなくなる。
大野「今下げの潮がかなり効いて流れが出ているんですが、川の水温がまだ高くて体積した泥が巻き上げて濁りが出てしまっているんです。そうなるとベイトもシーバスも散ってしまって捉えづらくなってきてます」
好調な滑り出しから一転、厳しい状況へと傾きつつあるが…
大野「よっしゃ!久しぶりのヒット!」
厳しい状況ながらも、魚を絞りだしていく。ヒットルアーはフローティングミノーのソラリア85F。
モアザン ソラリア 70F/85F/100F(DAIWA)
【スペック】
タイプ | サイズ (mm) | 標準自重 (g) | 潜行レンジ (cm) | 色数 | アクション | 飛距離 (m) | フック仕様 | メーカー希望 本体価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
フローティング | 70 | 8.4 | 0-50 | 11 | スローピッチ ウォブンロール | 最大 50 平均 49.6 | ST-46#8 リング#2 | 1,750 |
フローティング | 85 | 11.3 | 0-50 | 10 | スローピッチ ウォブンロール | 最大58.5 平均57.7 | ST-46#5 リング#3 | 1,800 |
フローティング | 100 | 16.4 | 0-100 | 7 | スローピッチ ウォブンロール | 最大64 平均60.6 | ST-46#3 リング#3 | 1,900 |
大野「ちょっとサイズアップしましたね、かなり濁ってて魚もだいぶ散っているのですが、ベイトっ気が出たタイミングでその筋を流したら反応してくれましたね。ただ単発なので状況を観察しながら魚を拾っていく状況です。難しいですがこれはこれで面白い(笑)」
その後さらに1尾追加。ルアーは先程と同じくソラリア85F。
大野「橋脚の裏に流し込んで喰ってくれましたね、橋脚周りは魚が浮きやすいんで散ってるとはいえ、魚はいましたね。ただこれ以上は同じ展開になってしまうので一回上がって休憩しましょう」
今回実釣を行ったのは10月の中旬。東京湾における秋シーバスシーズンが始まってまもないころであり、水温も高くベイトの動きにもムラがあったため、特にウェーディングでのナイトゲームは散ったシーバスをどう釣っていくか大野さん自身のスキルを問われる展開だった。
しかし大野さんは的確に状況を判断し、ルアーのレンジ、アクション、スピードに加え、都度変わるコースも見極めしっかりとアジャストさせていった。これぞ「マッチ・ザ・バイト」という展開で前半戦を終えることとなった。