樹脂に生命を吹き込んだデザイナーが、エリアトラウトの世界にさらなるパラダイムシフトを起こそうとしている。樹脂製スプーン「パラト」シリーズを生んだ本多智紀さんが、新作「ウルキ」を手に山間のポンドへ。スプーンのようなルックスだが、実はミノーというウルキで魚たちと戯れるために。本多智紀さんが解説。
●文:ルアーマガジン編集部
本多智紀さんのプロフィール
本多智紀(ほんだ・とものり)
北海道と茨城のDNAを持ち、千葉で育った本多さんは、ルアーブランド「カルテラス」の代表兼デザイナー。比重にとことんこだわったモノ作りは独自性の塊だ。国内外問わず、ネイティブやオフショアまで自分の興味に制限をつけず、その旅程も楽しむ釣り人。
ウルキ70(カルテラス)
2022年、遅れてやってきたニューノーマル
凹んだ側を上にしてフォールやアクションを見せるウルキ。2022年内にリリースすべくプロトが急ピッチで進められている。2フックでルアーのサイドやアタマからのバイトに対応。ウエイトは5.5gを予定。
本多「キングパラトより少し小さいサイズ。パラトシリーズと同じく内蔵ウエイトはなく、造形だけで重心を決めています」
フロントフック(半固定)
追尾型のニジマスに対し、横や前方からのバイトが多いイワナ系を獲るためのフロントフック。ボディ中央のスリットに半固定でき、掛かったらフリーになる。
本多「フロントがヴァンフックME-41B#3でリアがME-41BL#2です」
どちらもミノー向きのフックだ。
ウルキはフロントフックが装着されている側が上面となる。おかげで、ボトムに着いても根掛かりしづらい。ボディ設計のみで低重心設定になっているので、スイム時もフォール時も安定した姿勢を見せる。
カラーサンプル
エリアトラウトルアーとしては大型の70mm。シンプルで生命を感じさせる文様がカルテラスのマナー。
本多「カラーは17色をラインナップ予定。プロパーカラーと明滅カラーで構成しようかなと」
最終版は、ここからスリットの構造など若干の変更が決まっている。
前方バイトと根がかり回避の「ウルキ」
樹脂スプーン「パラト」シリーズでは後ろからのバイトを想定し、リアフックのみの構成。
本多「その中でも最大サイズのキングパラトを使っていると、どうしても横からのバイトが少なくなかった。特に、ボトムに絡めたとき。縄張り争いだったり産卵絡みだったり、イワナのように頭に回って食って来るような場合に、横や前からのバイトがあり、ミスが多かったんです」
中層を引いて使うことが多いパラト。ボトムでも強烈に魚を惹きつけるが、フッキング率がどうしても悪かった。
本多「ブラウントラウトやイワナなどは、頭から食ってきます。シャローやブレイクでボトムに触れる使い方だと、今まで狙えていなかった魚が食ってくるようになった。そこでフロントフックを考えるように」
そこからは一気に最適解へと近づいていった。
本多「ボトムを想定しているので、フックは上面に。フックはフリーでもいいが、センターに固定すると動きがより安定し、キャストも伸びる。ボトムだと放置や、デジ巻きでのリフト&フォール。ただ巻きでも良い動きをするので、追尾してきたら一瞬高速巻きでボディグルリと回転させ、リアクション。トゥイッチだと短いダートで狂わせる。スプーンではなく、プラグ……それもミノーとして扱っています。エリア専用ではなく、ネイティブも視野に入れているので太軸のフックも換装可能。いろんな場面で使っていけます」
【アクション】あくまでもミノー……ただ巻きで魅了し、ショートダートもこなす
本多「ストレートリトリーブすると、ウォブンロールで泳ぎます。そこから速巻きすると、回転し食わせのタイミングを演出。トラウトってスピナーとか回転するものが大好き。スピード変化とスイム変化でリアクションを狙えます。またフォールは若干バックスライドしながらよたよたとしたロールを見せます。トゥイッチなどのロッドワークでは、短いダートを披露しイワナ族にアピールできます」
ブレイクのショルダーに追い込むパターン。ボトムを壁として使うフィッシュイーターにドンピシャ
遅めの朝。フィールドはひと通り叩かれているが、活性はある。この日は表層?中層での反応が良いようだ。だがスレきっている。ハンドメイドのニョロ系、ハイスウェイブ70Hi-MR(ポッシブ)のボトムコンタクトで一発良型が出た。その食い方からウルキで試行錯誤し、早い時間に待望のバイトを得た。
パラト 0.3g(カルテラス)
パラトシリーズ最軽量となる超マイクロモデル
食わせに特化した0.3g仕様。なのにシルエットは小さ過ぎない。
本多「明滅がすごくて、魚がすっ飛んできます! 止水ではただ巻きからの、高速巻き2回。するとボディが回転し、激しくフラッシングしてアピールします。直後にホバリングのような動きを見せ、そこでのバイトが多発。近距離戦や、タフなプールトラウトで威力を発揮します」
流れはドリフト、止水は「高速2回転」
フライフィッシングにも造詣の深い本多さん。昆虫の比重を突き詰めたパラト+GF30モデルなども、フライに通じるセンスから生まれたものだ。
本多「パラト0.3gは、沈むタイプの毛針、ウェットフライをイメージして使ってみてください」
超軽量のパラトだが、流れのあるところはナチュラルドリフト(ラインテンションフリーで漂わす)がいいとのこと。ウェットフライの釣りそのものだ。
本多「止水では、巻いていて急に高速でハンドルを2回転。そうすると、ボディが回転しフラッシング。遠くからでも魚が飛んでくる。そこで目の前に現れるのは、簡単に食えちゃうマイクロな物体。見切られずに食べてしまいます」
ちなみに、まだ世に出していないパラトは少なくとも12モデルくらいあるらしい。まだまだ新たなポテンシャルを秘めたパラトシリーズに、刮目せよ!
流れのあるポンド。パラト0.3gをアップクロスに投げて、流れに馴染ませていくと……! 「流れ込みは、クリアウォーター、どシャロー。かなりセレクティブな個体でしたが、流下物をついばんでくれました」
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- 発売日:2022年11月16日
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