寒さが堪える厳寒期の2月、全国各地でヒラメ釣りが最盛期を迎える。関東のヒラメ釣りは例年10月頃からシーズンを迎えるが、特にこの時期のヒラメは『寒ビラメ』と呼ばれ、春の産卵に備えて栄養を蓄えた体は脂も良く乗って身もきめ細かくなり美味しくなるといわれている。今回訪れた千葉県銚子沖は全国でも有数のヒラメ漁場であり、良い日に当たれば2桁釣果も夢ではない。真冬の絶品高級魚を求め、外川漁港のヒラメ専門船「源正丸」に友人2人と泳がせ釣りに挑戦してみた。
●文:袖山祐 ●写真:堀口俊
難しそうな印象のヒラメ泳がせ釣りだけど……?
まず今回の釣り方を説明しよう。船から狙うヒラメ釣り、関東で主流となる活きイワシを使った「泳がせ釣り」だ。
この釣り方は文字通り生きているイワシをエサとして使う釣りで、仕掛けはとても簡単な構造。初心者でも簡単に大物を狙える釣りだが、エサのイワシを仕掛けに上手に付けることと、仕掛けをうまく海底付近に漂わせ、ヒラメに違和感なくイワシを食べさせるというコツがある。
「ヒラメ40、コチ20」などと言われるくらい、長い時間をかけてエサをゆっくりヒラメに食わせるのが良いとされるが、必ずしもそうとは限らないとも言われたりする。さてはて……。
ヒラメを求め、いざ出船! すぐにアタリ到来!
午前5時30分に外川漁港を出船し、約15分で最初のポイントに到着。船長の「はい、いいよー! 水深は23mね!」というアナウンスとともに一斉に仕掛けをおろしていく。
船長曰く「ヒラメは根魚。砂地じゃなくて根の上を流して探る」とのことだったので、海底の状況を察知しやすいように仕掛けの捨て糸部分を50cmと短めにセットし、オモリは軽めの60号を使ってみた。仕掛けは短いほうが操作しやすく、長くするとイワシが自然に泳ぎやすい。オモリは軽いほうが操作しやすいが、潮に流されやすくなる。
オモリが着底するとゴツッとした硬い感触が手元に伝わり、船の下が岩礁帯であることがわかったのですぐに緩んだ糸ふけをとり海底から50cmほど浮かせて根掛かりを回避した。
手持ちスタイルで待っているとすぐにコツッ、コツコツッと細かいヒラメらしきアタリが到来! じっくり喰わせるためにそのまま待ってみるものの、一向に引き込む気配がない。それどころか、やけにシーンとしてしまっている。
竿をゆっくりとあおって聞きアワセをしてみてもやはりヒラメが掛かっている感じはなかった。
エサを確認するために仕掛けを上げてみると、元気だったイワシにはヒラメに齧られたのだろう、身体がボロボロになっていた。
わずかなアタリだったが、鋭い歯でボロボロにされてしまったエサのイワシ。
少し風が吹いており、波もあったため恐らくヒラメがアタックしてきた時に何かしらの違和感を察して放してしまったのだろう。次にアタったら船の揺れをかわしながらヒラメの食い込みを待ってみようと思い、再びイワシをセットして仕掛けをおろす。
しかしこの後はゲストのワカシが船中で2~3本上がっただけで、本命の顔は見れずに時間だけが過ぎていった。
ヒラメは何処へ……
開始から4時間が経過した。
朝1投目からあったアタリは完全に途絶え、誰のエサも齧られない状況になった。
このポイントは昨日とても調子が良かったそうで、船長も粘って付近の根を探っているがアタリが一向にない。
船のまわりにはイワシの大群が水面を賑やかしており、魚探にも底付近までびっしりイワシの反応が出ていた。
昨日はアタリが頻回にあり、今日もベイトが沢山着いていて船長も自信があるというポイントで誰にもアタリが無いまま時だけが過ぎていく……。
昨日も船に乗りこのポイントでヒラメを釣ったという常連さんが言うには「昨晩が満月で雲ひとつなかったから、ひょっとしたら月明りで明るい夜のうちに動きが鈍くなったイワシをかなり食ってしまっていて今は落ち着いてしまっているのかもしれない。ヒラメがここに居ることは間違いないはず」とのことだった。
長い沈黙タイム。なぜ釣れないのかという理由が頭をぐるぐる巡って試行錯誤を繰り返す。ヒラメ釣りではこういうとき焦ってエサのイワシを弱らせないのが重要。
こういう状況のとき大切なのは、とにかくエサのイワシを弱らせないこと。
イワシが弱るとヒラメへのアピール度も下がるうえに、船の生け簀に入っているイワシの数には限りがある。
イワシをエサにする泳がせ釣り。この釣りで1番気をつけなければならないのがイワシの活きの良さだ。
この釣りでは使っているイワシを元気な状態で長持ちさせ、エサの付け変え頻度を少なくするというところも重要になってくる。
とはいえ、イワシが泳がなくなってしまっては釣果に影響が出てしまうので、ポイント移動などの際に足元のバケツに入れたエサがぐったりしてしまっているようであれば元気なものに付け替えた方がいいだろう。
イワシを弱らせないエサ付け方法
待望の船中1枚目、浮上! 慎重に待って勝利!
船上がお手上げムードで包まれていると、どうやら離れたポイントでアタリが多く出ている場所が見つかったと僚船から無線が入ったらしく「上げてください。少し走って今調子が良いポイントに行ってみます」とアナウンスが入った。
粘りに粘ったポイントを離脱し、船を走らせること約20分。ポイント周辺にはヒラメ狙いの遊漁船が数多く集まっていた。
釣り場の変更はチャンスとなる。1投目に備えて気合を入れ直す。
「はい、いいよー! 水深25m!」という船長のアナウンスを受け、一斉に仕掛けをおろす。
海底は先程のポイントよりもっとゴツゴツした場所のようで、オモリが着底してから50cm浮かせてもときどきオモリが根にぶつかる感触が手元に伝わってくる。
するとグンッと根にオモリがぶつかるのとは明らかに違う感触が竿先に現れた。船の揺れで仕掛けが暴れないよう慎重に竿を操作して様子を見ていると、すぐにグググッと竿が抑え込まれる。
アタリを確信し、ヒラメの口から針がすっぽ抜けないよう竿に重みが十分乗るイメージでゆっくりと煽るようにアワセを決めるとグンッグンッと叩くような手ごたえがあった。
竿の弾性を利用して魚の引きをいなしつつやり取りをし、ついに船中1枚目のヒラメが上がってきた。
40cm弱のヒラメだったのでタモ網に入れず、そのままゴボウ抜きにしてようやく待望の1枚を手にした。
やりました!
「こんなでっかいヒラメ見たことねぇや!」とお得意のジョークを発射する船長の顔にはようやく笑顔が見られた。
ヒラメのアタリ連発チャンス!
1枚目が上がった直後、ヒラメ釣り初挑戦の友人にもアタリが到来! しっかり喰わせて上がってきたのは40cmちょっとのサイズ。
辛抱の末にキャッチした人生初ヒラメに嬉しさをにじませた。
その後も船中各所で本命が上がるものの、サイズは30~40cmとやや小ぶりが目立った。
そんななか、釣り経験豊かな友人に強烈な手応えの獲物がヒット! 慎重にやり取りして上がってきたのはこの日最大サイズとなる50cm越えの良型!
友人曰く「こまめに底を取り直して根掛かりしない程度に海底ギリギリをキープできるようにしたらアタリがきた」とのこと。
釣り方の基本をしっかり守りキャッチした良型に笑みがこぼれていた。
オマツリを防止するために仕掛けの設定変更
2人の本命キャッチを見届けて自分の釣りに戻り、先程と同じように釣りをしていると、隣の釣り人と仕掛けが絡んでオマツリをしてしまった……。どうやら潮が少し動き出したタイミングだったようで、潮下に流されてしまったらしい。
遊漁船では少しでもお互いに気持ちよく釣りをするために乗船時に隣にいる人とは挨拶をしておき、オマツリをしたら必ず謝るようにしよう。
このまま同じ仕掛けを使っていてもまたオマツリをしてしまっては元も子もないので、このタイミングでオモリを80号に変えてみることにした。オモリを重くしたことで潮下に流れすぎることを抑えることができ、その後オマツリは起こらなかった。
しかし、オモリを重たくしても潮に流されることはあるので、底を取りなおす場合は闇雲にラインを出さないようにし、ある程度流されてしまったらオマツリを防ぐために1度海面まで巻き上げて入れなおす等の工夫も必要だ。
ヒラメのアワセのタイミングは早くなくてもいい?
オモリを変えて底付近を意識しながら待っていると、ゴツンッと竿をひったくるようなアタリがきた。
しっかり竿が絞り込まれるまで喰わせてからアワセを入れようと思い、船の揺れを躱しながら次のシグナルに備えているとその後の反応が全くない。
確認のために聞き合わせを入れたが何の感触もなかったので仕掛けを上げて確認すると、なんとエサが無くなっていた。
ヒラメがエサをひと飲みで吸いこみ、その反動でイワシだけ持っていかれてしまったのかもしれない。
コツコツやモゾモゾとしたアタリの時はエサを齧っているため完全に口に入るまで待つ必要があるが、今回のアタリ方はイワシを1発で口に全部入れ込んだケースのようで、この場合は既に針が口に入っている可能性が高いので即アワセの方が掛かるのかもしれないと思い、次にこのアタリ方をしたらそうしてみようと思った。
イワシを付けなおして仕掛けを投入ししばらくすると今度はコツコツッ……と細かいアタリが出た。
これはまだ咥えてる段階だと考えそのまま待っているとグググッと竿が絞り込まれ、ここでアワセを入れると魚の重みが伝わりしっかり針掛かりしたことが分かった。
この日2枚目のヒラメは少しサイズアップした40cmちょっとのサイズ。
読み通りにしっかり待って掛けられた嬉しい1枚だった。
狙い通りに釣れてくれたのが嬉しい。
即アワセの方がいい場合もあるみたい
釣りも終盤に差し掛かり、生け簀のイワシも底を尽きた。
私の持っているエサも残り1尾だったので、今使っているイワシをなるべく弱らせないように慎重に使っていると、再びゴツンッという強烈なアタリが出た。
先程の教訓を活かし、鋭くなりすぎない程度にすかさずアワセを入れると魚の重みがズッシリ乗るのが感じられた。
上がってきたのは30cmちょっとの小ぶりなヒラメで、上顎付近にスレ掛かりのような形で掛かっていた。
もしアワセを入れなかったら針掛かりせずイワシだけ持っていかれるか噛み痕が付くだけで終わっていたかもしれない。
やはり竿を引っ手繰るような強烈なアタリ方をした場合は即アワセの方がいいのかもしれない。
今回の釣行を振り返って
11時15分ごろに船長から釣り終了のアナウンスが入り、納竿となった。
釣れるポイントに移動するまでが苦行になってしまった今回の釣行であったが、何とか40cm台を頭に3枚と結果を残すことができた。
一緒に来ていた友人たちも2~3枚と、ヒラメ釣りを楽しめたようだ。
常連の釣り客の中には終盤の短いタイミングで8枚釣ったという方もおり、数釣りが楽しめるという外川のポテンシャルの高さを垣間見た。
良い日に当たれば20枚以上釣れることも結構あるよと船長も言っており、ヒラメ釣りを楽しむには本当にうってつけの海なのだと改めて感じた。
外川のヒラメ釣りは3月31日で一旦シーズン終了となるが、開幕が6月1日からで、産卵期を除いたほぼ全てのシーズンで楽しむことができる。
しかも開幕したての6月上旬は5kgや6kgといった大型ヒラメが狙いやすい時期でもあるらしい。
皆さんも高級魚のヒラメを手にするチャンスが高いこの外川の海で、魅力的で奥深いヒラメの泳がせ釣りに挑戦してみてはいかがだろうか。
フッワフワのヒラメの天ぷらと骨せんべい。
イワシを追って肥えた寒平目のお刺身。自分で釣ればぷりぷりとした甘いエンガワもごそっと食べられる。
ヒラメの漬け丼。お茶漬けにしても楽しめる。
今回の釣りで気をつけた攻略ポイント
- エサのイワシをなるべく底付近に泳がせ漂わせるためにハリスより捨て糸を短くした。
- 海況や船の流れる速さに応じてオモリを変えて底付近をキープできるよう工夫した。
- タナの取り方やイワシの漂わせ方でアタリの出る人と中々アタらない人で差が出ていた。
- アタリが出てからも、じっくり喰わせるのか、すぐにアワセるのか、アタリの出方次第で正しい方を選択しなければ掛けられなかった。
ヒラメの泳がせ釣りおすすめの仕掛け
目玉集魚シンカー 舵型(ハヤブサ)
ホログラムのフラッシングでヒラメに強くアピール。舵型設計で速い潮や船の流れでも安定姿勢をキープできるのでハリスや幹糸のヨレも軽減されやすい。
ヒラメカレイシューター(フジワラ)
エサを視認して襲い掛かるヒラメの捕食スイッチを刺激する集魚ブレード。潮の流れでチラチラとフラッシングすることでよりヒラメにアピールできる。
今回の釣り概要
項目 | 情報 |
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釣り船 | 源正丸(げんしょうまる) |
出船場所 | 外川漁港(千葉県銚子市) |
連絡先 | 0479-23-0676 090-3499-6820 |
Webサイト | http://gensyoumaru.blue.coocan.jp/ |
釣り物 | ヒラメ泳がせ釣り(乗合) |
釣行費用 | 13,000円(エサの活きイワシ、氷、昼食のお弁当代込) |
レンタル | 貸し竿、ロッドキーパー等のレンタル有り(要予約相談) |
使用釣り竿 | プロファイター 潮LC 30-210(アルファタックル) オモリ負荷60~80号の万能船釣り竿 ライトタックル竿の場合は40~50号 |
使用リール | バルケッタ150HG(シマノ) ライン:タナトル4 1.5号(シマノ) |
使用仕掛け | ヒラメ泳がせ釣り仕掛け 親バリ:丸セイゴ17~18号 孫バリ:8号 ハリス:6号 |
釣れた魚 | ヒラメ:0.5~1.6kg 2~8枚(船中釣果) |
時刻 | 行程 |
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5:00 | 集合場所到着。船長が指定した釣り座に道具類積み込み。 |
5:15 | タックルセッティング。 |
5:30 | 出船。ポイントへ。 |
5:45 | 実釣スタート(外川沖)。 |
11:15 | 実釣終了アナウンス。 |
11:30 | 桟橋着岸。納竿。乗船料支払い。 |
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