BETOBETOのルアー第一弾となるHOO155F。2022年のバスフィッシングシーズン終盤に差し掛かった頃の発売にも関わらず、大変な人気となっている。そのHOO155Fを少しだけチューンすることで、釣りをより一層楽しむ方法があるというので、製作者の川島勉さんに話を聞いてきた。
●文:ルアマガプラス編集部
ビッグベイトのど真ん中にして最先端
HOO155Fは、ジョイント部分の前後のボディが、それぞれ独自のアクションをする。それは百戦錬磨のプロアングラーの視点からしても非常に興味深いアクションとなっており「前後のボディが異なるルアーのように動く」「こんなアクション見たことない!」そんな声が多方面から挙がっている。同時に、全国各地のフィールドから、釣果報告が届いているようだ。
また、通常のジョイントベイトとは異なり、キャストがしやすい点も魅力のひとつ。カバー周りのピンスポットに着水させたいとき、キャストフィールはまるでフルサイズのラバージグのよう。ハイプレッシャーなポイントで特に重要なファーストキャストが、意のままになるのは、この上ないアドバンテージとなる。
HOO155Fは、アクション・キャストという点において、非常に考え抜かれたビッグベイトなのだ。それに加えて、使い手の好みに応じたカスタムやチューンの余地を、しっかりと設けているのだから、日本のビッグベイトのど真ん中にして最先端だろう。
正解はバスのみぞ知る
そんなHOO155Fをどうカスタムして使うかが、アングラーとしての個性が光る部分であるが、まず先に知っておきたいのは「ルアーチューンに正解はない」ということ。正確には、人間には判断できない。一見とんでもないカスタムだとしても、バスが釣れればそれは正解だ。だからこそ、自由な発想で手を加えて、バスフィッシングを楽しんでほしい。それは、川島さんがHOO155Fに込めた想いの一部なのだ。
とはいえ、アレンジが得意なアングラーもいれば、そうではないアングラーもいるだろう。開発者のチューニングの参考にしたいという人も少なくないはずだ。そこで編集部では、HOO155Fのカスタムについて川島さんご本人に話を聞かせてもらった。
今回紹介するチューニングは、下記の11種類。
もちろんこれらは、チューニングの例に過ぎず、どんなふうにカスタムしてもいい。なので今回は、じっくり煮詰めたものから、SNSで見て川島さん自身が面白いと感じたものまで、幅広く紹介してもらった。
着脱可能なリップについて
具体的なチューニング例の紹介の前に、実は外すことができるリップについて教えてもらおう。
川島「リップは着脱可能です。パッケージには書いてないんですけどね。リップに対して横方向に力を加えると、割と簡単に外せます」
川島「HOO155Fで採用しているリップの着脱システムって、実はパテントがあって。これはガンちゃん(ガンクラフト代表の平岩孝典さん)のところで持っていたんですよ。OSAを作った時に取得したみたいで。採用していいかどうか聞いたら、快くOKしてくれました!」
平岩さんとも交流がある川島さん。2022年の夏には湖上でのセッションが実現した。ビッグベイトゲームを愛する者として、妥協なきものづくりの最前線に立つビルダーとして、2人には通ずるものがあるようだ。
――さすが平岩さん、寛大で優しい人ですね。ところで、なぜリップを着脱式にしようと考えたんですか?
川島「過去にジョイントベイトを、攻めたキャストで岩盤にぶつけたりすると、リップが折れることがあったんです。どこから折れるかというと根元から。ここで折れると、もうリップを取り出せない。そうなるとルーターで削るしか方法がないんですけど、誤ってボディまで削ってしまうこともあって。当然ながら浸水しちゃうんですよね」
――自分のルアーがそうなったら悲しいですね。使い込んだルアーならなおのこと。
川島「なのでHOO155Fのリップは着脱式にしました。素材は折れにくいポリプロピレン製。万が一、根元から折れたとしても安心してください。あえて根元から折ってみたこともありますが、リップの付け根が二股になっているので、細い部分だけがボディに残ります。これは、フックとかで掻き出せば簡単に取り除けるんです。ちなみにリップは別売り予定なので、もう少々お待ちください」
それでは次項から具体的なチューンの例を教えてもらおう。
1.ショートリップ
川島「ノーマルリップだと、水の抵抗が大きいので、速巻きすると巻き重り感が強くなる。そんな時は小さいリップの方がいい。こんな感じで。このリップは柔らかいので、ハサミで切ることもできます。こんなふうに切ると、潜行震度も浅くなりますね。ノーマルだと1メートルくらい潜りますが、これだと少し浅くもできます」
川島「角をとっていって、リップが小さくなるにつれてアクションも小さくなっていく。ボディの振り幅が小さくなる感じです。よりローアピールにできますね」
――リップを変えるだけでタフコンディションにも対応できるというのは便利ですね。
川島「テスト時には、あえて小さくしすぎたリップを使ったこともありますが、釣れてます。リップが小さすぎて、スローに引くとちゃんと動いているように見えないんだけど、それでも釣れた。人間が良いと思わない動きでも、魚が釣れたらそれは正解なわけだから。いろいろチューンして、自分だけの釣れるアクションを見出す、そんな楽しみ方もできるのがHOO155Fです」
2.リップ曲げ
川島「このリップ、ポリプロピレンだからすごく柔らかいんですけど、こんなふうに力を加えると曲がります。現場でそのまま曲げてもいいんですが、フックが手に刺さらないように気を付けてください。バーブレスにしておくと、万が一手に刺さった時も安心ですね。家でやるなら、ライターやドライヤーで熱を加えると曲げやすいです」
――これは柔らかい素材のリップならではの簡単チューンですね。
川島「逆曲げ(後方に曲げる)もかなりアリです。潜りにくくなって、巻きスピード次第ではウエイクベイトのような動きも出ます。速巻きであれば、動きが破綻する直前のギリギリの速度、クリアウォーターなフィールドでは、おいしいタイミングが絶対ありますよ」
3.リップレス
川島「リップレスの場合、ゆっくりただ巻きするとフラフラ泳ぎます。S字まではいかない感じ。操作難度は少し高いけど、あえてそれを操るのが個人的には楽しいんです」
川島「例えば、『トン、ト、トン。トン、ト、トン』というリズムでロッドワークを加えると、ヘッドを左右に振ってアクションします。ワンアクション加えた直後にしっかりラインを弛ませると、ヘッドが180°回転して、後ろを向かせることもできる。その際の糸絡みもしにくい設定になっています」
――マニュアル的というか、自由度が高そうなセッティングですね。
川島「リズムや強弱はアングラー次第です。例えば、水中を泳いでいたベイトフィッシュが、何かの拍子に表層まで出てきて、餌を探して水面をピシャピシャやるようなアクションを自分で演出できますよ」
――慣れたら大きな武器になりそうですね。強いロッドワークだと、どんな動きになりますか?
川島「強めにジャークすると、左右にダートしながらボディが回転して、止まるときにブルッと震えるような動きが出ます。それも左右だけではなく、上下にも動いているので、3次元的なパニックアクションですね」
川島「人によっては、ダートでルアーが回転するのを嫌がったりしますが、実際にそのアクションで魚が反応しているんです。規則正しいアクションを好む場合もあれば、こんなパニックアクションが有効なこともある。ちなみにシーバスでもパニックアクションは有効でしたね」
4.強ロール
川島「リアフックをテールの先端に付け替えると、ロールアクションがより強くなります。オリジナルの位置にリアフックがあると、軽くフラッシングする程度の弱いロールです。テールの先端のアイに付け替えると、ロールが強くなり、フラッシング効果が更に高まります」
――どんな時に効果的なんでしょうか?
川島「濁りが入ったとき、ローライトでフラッシングを強めたほうが反応が良いときですね。フックを付け替えるだけでアクションが変えられるので簡単です」
5.ブレード
川島「これは発売後にSNSで見たんですよ。HOO155Fのテールにウイローリーフのブレードを付けて、亀山で釣っている人がいて。自分の中では考えていなかったんですけど、試してみて、ありなんだなぁと」
――亀山で釣れているなら、大正解のチューンですね。どんなアクションになるんでしょうか?
「テールの動きがタイトになりますね。ピリピリ動き、ブレードが回ってアピールがプラスされます。アクションとしては全く別物です。ブレードの形状やサイズによってもアクションが変わるので、このへんは使い手の好みですね」
6.フェザーフック
川島「フェザーフックをつけてもいいんです。キレがなくなって、よりヌメヌメした動きになります」
――意図的にアクションのキレを調節できるんですね。
川島「あと、フェザーフックは移動距離を抑えたいという場合も一役買ってくれますね」
7.フックチェンジ
川島「フックを変えることもチューンのひとつ。初期装備のST-46を、ST-36に変えるだけでも違いが出ます」
――フックの重さが変わるということでしょうか。
川島「そうです。フックが少し軽くなるので、その分アクションのキレが増しますね」
8.スリーフック
川島「好みに応じて、フックを3箇所にしてもいいと思います」
――なるほど。フックサイズは落としますか?
川島「そうですね。オリジナルの2番だとフック同士が絡むことがあるので、4番にするといいですね。テールの振り幅が小さいアクションになります。もちろん2番フック2つでもしっかり掛かるので、ここはホントに好みですね」
9.逆結び
川島「人間的には頭が前に来ないと気持ち悪いかもしれないけど、テール側のアイにラインを結ぶと、水面をガコガコいって騒がしく泳いできます」
――これは意外というか、想像が及びませんでした。
川島「そんな遊び方もできますよ、という例ではあるんですが、ネチネチと移動距離を抑えて使いたいときなんか、実はアリですね」
10.ピクピク
川島「リップレスにして、フロントフックのアイにラインを結べば、ピクピクアクションです」
――このサイズのルアーでのピクピクアクションというのは予想外です。
川島「中途半端な感じじゃなくて、ちゃんとピクピクするんですコレが。意外とトラブル少ないし。やってみたら『あ、コレいけるね』って、わかる人は結構いると思います」
11.連結
川島「これはまだ釣ってないんだけど、全く反応なかった場所にコレを入れたら、バスが湧いてきたことがあって」
――単体で使うよりも、集魚効果があるんですね。
川島「バスが急に反応を示す感じでしたね。ロングワームに近い感覚って言ったらわかりやすいかな」
自由な発想で、好きなように楽しもう!
多くのチューニング例を紹介してもらったが、これらはあくまで参考例であって、こうすべきというものではない。その証拠に、川島さんのユーザーへの想いは一貫している。
川島「とにかく、このルアーを手にとってくれたアングラーさんに、自由にチューンしたり、パーツをつけたり、自分好みの使い方で楽しんでほしい。そのチューンが正しいかどうかはバスにしかわからないから、思うままにやってみてください!可能性は無限に近いです!」