『Mr.釣りどれん』裏話満載超ロング対談! とだ勝之さん&村田基さん&講談社編集猪熊泰則さん

2024 シーバス特集

ミス釣りKeyword3「今だから言えること。」

それでも釣りどれんに関わった理由とは何か

釣りどれん読者なら既にご存知かと思うが、不思議なことにコミックスには『村田基』というクレジットは存在しない。冒頭でもわかるように、村田さんはアドバイザーという役割を果たしているはずだが……これは如何に。

奇しくも当時の人気釣りマンガもう一方の雄(※注10)にも深く関わっていたのが村田さんだったのだ。今でこそ語れる事実が明らかになる。

村田さん自身が登場したマンガ名はあえて伏せる。

ほぼ同時期に2つの釣りマンガに関わり合った村田さん。もう一方の雄には制作の立ち上げから深い関係にあった。そのため、釣りどれんチームにも肩入れしていることを大々的に公言できなかったのは、今でこそ語れる事実だ。

「注10 当時の人気釣りマンガもう一方の雄」

第11巻でカイザーが駆るSUV&バスボートは、2000年当時の村田さん所有物とほぼ同じ。激レア車のダッジ・ラムチャージャー、そしてスキーター。第13巻(2001年)に『バスボートは中古でも300万』とあるが「今だと新艇はその5倍」(村田)。物価は爆上がり……。

とだ「コミックス1巻が出る時に、村田さん推薦の帯を付けたいと相談すると『とだちゃん、俺の名前は出さないほうがいいよ』と」

村田「でも、マンガを見りゃどう見ても明らかに俺だってことはわかるよね、物語的にもさ(笑)」

とだ 「王様だとそのまんまだから、帝王=カイザー、貝沢。潮来つり具センターじゃなくて、貝沢つり具にしてますし(笑)(※注11)」

「注11 貝沢つり具」

入り口に「帝」マーク無論、イタツリがモデル。

王様・村田さんの潮来つり具センターに対して、帝王・カイザー=貝沢潮の貝沢つり具。センターの表記はないものの、『つり』が平仮名であることにピンと来る。看板や建物自体も実物そのままだ。

村田「当時は同時期に別のマンガにも関わっていて、そっちの出版社からは『講談社でもやってるんですか?』と(笑)。まぁ、今だからこそ言える話だけどね。でも、ウチの店の裏に池はないよ(※注12)。川ならあるけど(笑)」

「注12 北利根川ならあるんだけど(笑)」

第12巻では元々あった池の前に貝沢つり具を建設したエピソードがあるが、本家イタツリの裏には北利根川が実在。現在は店頭のプールでデモンストレーションする村田さんだが、かつては川でミラクルキャストを披露してくれていたこともあった。

未来の釣り人を育てるために果たすべきこと

第17巻で将来の釣具店経営を頭に描く、ちょー太くんが幼い少年と向き合うシーンは印象的。経営ノウハウという穿った見方はすべきではない。村田さんから得た想いを、とだ先生が代弁して表現。今読むと喉元が熱くなる。

連載時期(※注13)を振り返ると、ほぼ同時期。むしろ釣りどれんのほうが早く、そして長かった。同じ釣りマンガとしてライバル視していたのだろうか。

「注13 連載時期」

ミレニアム前後を駆け抜けた全68『GET』。

釣りどれんのエピソードは『第何話』ではなく『GET1』のように表現。1巻あたり4話、全17巻で『GET68』までのエピソードが存在する。なお、もう一方の雄は1996年11月号から2002年2月号までの連載。釣りどれんの方が早く始まり、より長い期間の連載だった。

猪熊「んー、なかったですねぇ」

とだ「釣りという題材は同じでも全くの別物ですからね」

村田「それがブームってもんだと思うよ。だってあの頃、バス雑誌(※注14)だっていっぱいあって、ルアマガだってそのひとつだったわけじゃん。他誌を気にした? しなかったでしょ?」

「注14 バス雑誌」

実はルアーマガジン本誌の月刊化は1999年7月号から。

写真は創刊号。1997年に季刊でスタートした。当時から今に至るまで現存するのは本誌とバサー誌のみに。

惜しまれつつも休刊して本誌にも元関係者が多いのはロッド&リールやバスワールド、アングリングバスなどなど。中でも当時人気を誇っていたのはタックルボックス。「ウチのお店で月に300冊売れた(村田)」。

200円前後と手頃な価格も人気の秘密だった。

最古参にして現存する老舗雑誌・バサーを初め、グラビア誌や広告誌にサブカル系などなど、ルアーフィッシングという大枠では推定10誌以上が存在した時代もあった。村田さん曰く、ルアマガは「関西系に強い雑誌」というイメージ。雑誌もマンガも、良い意味で棲み分けが出来ていた時代だった。

釣りどれんの連載開始に当たって、どんな経緯があったのか。やはりそこも気になるものだ。

猪熊「当時バス釣りが流行っているぞというムーブメントが大きかったですね。月刊マガジンって流行りものにはあまり関わらないスタイルなんですけど、たまには良いかというのがあったんだと思います。その頃、とだ先生がちょうど月マガでの連載作品(※注15)が終了して次回作を、となっていので、じゃあお願いしてみようかと。それが95年の12月くらいだったと思います」

「注15 とだ先生の連載」

とだ「バス『ゲ』ットクラブの前にはバスケ漫画を(笑)」

あみこ高校に転校してきたコーイチくんはバス『ケ』ット部を見誤り、ちょー太くん率いるバス『ゲ』ット部に入部希望したのは第1巻のエピソード。なお『DANDANだんく!』は同じく講談社刊行のコミックボンボンで93年9月号から97年4月号に連載された。

話はバスブームへと……。

【年表】Mr.釣りどれん クロニクル

1996年7月6日
12月13日
4月17日
8月12日
12月26日
月刊少年マガジン8月号 連載スタート
第1巻刊行
第2巻刊行
第3巻刊行
第4巻刊行
1998年5月15日
9月17日
第5巻刊行
第6巻刊行
1999年1月14日
4月16日
9月16日
第7巻刊行
第8巻刊行
第9巻刊行
2000年2月17日
6月16日
10月17日
第10巻刊行
第11巻刊行
第12巻刊行
2001年2月16日
6月15日
10月17日
第13巻刊行
第14巻刊行
第15巻刊行
2002年1月17日
2月6日
4月17日
第16巻刊行
2002年3月号 連載最終回
第17巻刊行
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