《日本の四季消滅!?》3月の気温上昇が過去最高に

地球規模での気候変動の危機が叫ばれ、実感として毎年気温が高くなっているのではと感じる人も多いのではないだろうか。気象庁の観測データから、2023年3月の日本の月間平均気温偏差が観測史上最高の+2.75℃だったことが公表された。何だかやたら早いっぽい各地の雪解け情報や猛烈に襲来した花粉(個人の感想です)やらで体感的に3月ってこんなに暖かかったっけ? と首をかしげることもあったが、データで裏付けされたかたちだ。 どんな状況なのか、データを追ってみた。

→【気象庁発表】上昇が止まらない気温と海水温

●文:ルアマガプラス編集部(鈴川悠々)

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実はめちゃくちゃ暑くなっていた3月

気象庁は毎日各種の観測データを公表しているが、統計開始以降の過去最高値を叩いたのが「日本の3月平均気温偏差の経年変化(1898~2023年)」。

出典:気象庁

公表されているグラフをみると、過去100年からずっと平均気温が上昇している様子が伺えるが、特に2010年代中頃から「平年偏差」が過去にない勢いで上昇していることがわかる。

3月以外の月もここ10年は概ね平年偏差が上振れトレンドにあることがわかるが、特に3月に限って伸びが著しい。

ちなみにこの平均気温偏差の算出方法は、都市化による影響が小さく、また特定の地域に隔たらないように選定された下記地点の平均値となっている。

網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木(高岡市)、飯田、銚子、境、浜田、彦根、宮崎、多度津、名瀬、石垣島。

春の季節感がどんどんズレている

こうなってくると、「春といえば」と感じる様々な季節の変化が前倒しになるか圧縮されるともいえるだろう。

季節の移り変わり期の寒暖の急変で、SNSなどでは近年の日本の気候を指して「春と秋をすっ飛ばして冬と夏しかない!」なんて意見も目にするようになったが、ここ数年でいえばじわじわと本当にそうなってきている。

釣り人としても気になるのは水温の変化

気温上昇と同時に、近年の日本近海の海水面温度も上昇を続けている。

こちらの図は2023年3月下旬の日本近海の海水面温度と、1991年~2020年平均値と比較した平年差を表したもの。平年差は平均値と較べてプラス側の真っ赤になっていることがわかる。

水温の変化は必ずしも気温とそのまま比例してリンクしているわけではなく、海流などその他にも様々な要因があるが、観測データからわかる事実としては長期的な上昇傾向が伺える。

下の図は1983年~2023年までの10年ごとの平年差。

魚の動向も季節感がズレていく

最近ではブリが北海道でたくさん穫れるようになったなどの漁業の異変が報じられたり、ハタ科の魚が関東でもよく釣れるようになった、タチウオを東北でも見かけるようになったなど、魚の棲息北限がどんどん北にズレているのではないかと思われる声も耳にするようになっている。

日本列島単位で水温が変化すれば、大気の循環の変化や、水中の植生や魚の行動にも変化が出てくると予想できるし、生態系の大きな循環にも影響があると考えられる。

例えば「春の何月はこの魚がここで釣れる」というような昔から言われるシーズナルパターンも一定ではなくなってくるだろう。

環境を考えるうえではマクロな視点も必要だが、すでに変化している季節の感覚が身近な生物にどう影響を与えているのかという視点で自然を捉えやすいのは釣り人ならではといえるだろう。

荒ぶる気候。今後は釣り人の感覚も試されるようになっていくのかもしれない。

春の小魚釣り。冬が終わり水温や気温で変化する状況に合わせてシーズン入りする釣りで、暖かくなってくると毎年そわそわする。


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